住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つで自分に関係する税がわかる

住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つで自分に関係する税がわかる

住み替えでは売ることと買うことがほぼ同時に進むため、関わる税の種類が一度に増えたように見えます。

自分に関わる税は、今の住まいを売って利益が出るかどうかで大きく分かれるので、そこを先に見分けると読む先を絞れます。

本記事では、自分に関わる税がどれなのかを、売るとき・買うとき・持ち続けるときの順に説明します。

住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つの3場面

住み替えの税金は、「今の家を売る」「新しい家を買う」「その家を持ち続ける」の3つの場面に分かれてかかります。

売却と購入がほぼ同時に進むぶん、関わる税金も売る・買う・持つの3つに分かれます。ここでは計算や要件には立ち入らず、全体像から自分に関係する税金を見つけ、次に深掘りすべき1記事を絞り込みます。

税金がかかる3つの場面

住み替えでかかる税金は、売る・買う・持つのどの場面かによって種類が変わります。

場面かかる主な税金
売る印紙税(売買契約書)/登録免許税(抵当権の抹消)/譲渡所得税(売却益が出たとき)
買う印紙税(契約書)/登録免許税(名義変更・抵当権の設定)/不動産取得税
持つ固定資産税・都市計画税(毎年)

場面ごとに種類が変わるのは、住み替えでは今の家の売却と新居の購入が同時に進むからです。売る側の税金と買う側の税金が、ほぼ同じ時期に重なって発生します。

この中で、印紙税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税は、金額の大小はあっても基本的にだれにでもかかります。契約書の印紙税や抵当権抹消の登録免許税は少額で済むことが多く、不動産取得税と固定資産税は物件の評価額をもとに決まります。

一方で譲渡所得税は、今の家を売って利益が出た人にだけかかります。利益が出なければ原則として課税はなく、住み替えの税金の不安は譲渡所得税ひとつに絞り込めます。

出典:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

マンションは売却見込み額を早めに固めやすい

マンションは、一戸ごとの個別性が戸建てより小さいため、売却見込み額を早めに固めやすい住まいです。

同じマンションや近隣の類似住戸は、間取りや面積が近く、そのまま比較の対象になります。取引の事例も多く、首都圏の中古マンションの成約件数は2025年(暦年)で49,114件でした(東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」)。売却見込み額は、譲渡益が出るかどうかの判定や、税金・諸費用の試算のベースになる数字です。実際の成約事例と複数社の査定で確かめてください。

戸建ては土地の形や築年、立地の個別性が大きく、近い条件の成約が見つかりにくくなります。マンションから住み替える人は、比較できる事例の多さを活かして、早い段階で売却見込み額を起点に税金を見通せます。

自分に関係する税金の見つけ方

どの税金が自分に関係するかは、まず売却益が出るかどうかを確かめると絞り込めます。

ここまでの全体像を持っておけば、あとは自分に関係する部分だけを読めば十分です。最初に売却益の有無で道が大きく分かれ、そのうえで売る・買う・持つの各税に進みます。

全体でいくらかかるかをまとめて知りたいときは、費用全体の試算から入る方法もあります。税金は住み替え費用の一部なので、総額の中で見ておくと負担感をつかみやすくなります。

売却益が出る人・出ない人で住み替えの税金は変わる

住み替えの税金で大きく差がつくのは、今の家の売却で利益(売却益)が出たかどうかです。

売却益が出なければ重い譲渡所得税はかからず、出ても特別控除で0円になる人が多くいます。まず自分に売却益が出るのかを見極めると、このあと読むべき先が決まります。

売却益が出るか出ないかの見分け方

売却益が出るかどうかは、売れた金額から、買ったときの費用と売るための費用を引いて判断します。

売却益 = 売れた金額 −(取得費 + 譲渡費用)

判定関係する主な税金
プラス(売却益あり)譲渡所得税と特例の確認が必要
ゼロ以下(売却益なし)購入・保有の税金が中心

売れた金額から差し引く「取得費」は、その家を買ったときの代金や仲介手数料などの合計です。差し引く「譲渡費用」は、今回の売却でかかった仲介手数料などを指します。

マンションの場合、面積要件や所有期間、取得日は建物(専有部分)と敷地権をあわせて見ます。取得費は購入時の売買契約書や重要事項説明書に価格が記載されていることが多く、戸建てより把握しやすい傾向です。

注意したいのは、取得費が分からないと売却益が実際より大きく出てしまう点です。取得費が不明なときは売却額の5%を概算取得費として使う方法もありますが、税負担が重くなりやすいため、古い家ほど購入時の書類を先に探しておくと安心です。

出典:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

売却益が出ない人に関係する税金

売却益が出ない人は、譲渡所得税や売却の特例を気にする必要がほとんどありません。

関わるのは新居を買うときと、その後持ち続けるあいだの税金が中心です。具体的には、購入時の印紙税・登録免許税・不動産取得税と、毎年の固定資産税です。

売却で利益が出ていなければ、譲渡所得税の確定申告も原則として不要です。ただし売却で損失が出た場合は、税金が戻る特例を使えることがあり、その点だけ確認しておくと安心です。

売却益が出る人が確認する税金と特例

売却益が出る人は、譲渡所得税の大きさと、それを軽くする特例を順番に確認します。

最初に見るのは、譲渡所得税が所有期間によって変わる点です。同じ売却益でも、家を持っていた年数で税率が変わります。

次に確認したいのが、税負担を大きく下げる特別控除です。自宅の売却なら、売却益から最高3,000万円を差し引ける控除があり、これで課税がゼロになる人も少なくありません。

さらに住み替えでは、売る側の特例と新居の住宅ローン控除が同時に関わります。両方を同時には使えないこともあるため、どちらを選ぶかを次に確かめます。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

売るときの住み替え税金|譲渡所得税と3000万円特別控除

売るときにかかる税金のうち、構えておきたいのは売却益が出た人の譲渡所得税だけです。

印紙税と抵当権抹消の登録免許税は少額で済み、重さがあるのは譲渡所得税です。ただし自宅の売却なら特別控除で0円になる人が多く、まず自分が課税されるのかを順に確かめます。

売却でかかる3つの税金

家を売るときは、印紙税・登録免許税・譲渡所得税の3つが関わります。

印紙税は、売買契約書に課される税金です。契約金額に応じた定額で、軽減措置の適用後は、売買代金1,000万円超5,000万円以下で10,000円、5,000万円超1億円以下で30,000円です(500万円超1,000万円以下は5,000円)。この軽減は令和9年3月31日までに作成される契約書に適用されます。

登録免許税は、住宅ローンを完済して抵当権を外す登記でかかります。税額は不動産1個につき1,000円の定額です(登録免許税法 別表第一 一(十五))。「程度」ではなく法定の定額で、幅が出るのは単価ではなく不動産の個数のほうです。個数は登記記録で決まるため、正確に出すなら登記事項証明書で数えて1,000円を掛けてください。マンションで専有部分1個+敷地1個なら2,000円です。同じ申請書で20個を超える不動産の抹消を受ける場合は、申請件数1件につき20,000円になります。

これに司法書士へ依頼する報酬が加わります。抵当権抹消登記の報酬は、日本司法書士会連合会の「報酬に関するアンケート」(令和6年3月実施・有効回答1,090)で全国平均17,470円でした。この報酬は法定ではなく、平成15年に報酬基準が撤廃されて以降は事務所ごとに決まります。登録免許税と合わせても、大きく動くのは残る譲渡所得税のほうです。

出典:登録免許税法 別表第一 一(十五)(e-Gov法令検索)日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」結果No.7108 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

譲渡所得税は、売却で利益が出た人だけにかかる税金です。3つのうち金額が大きく動くのは譲渡所得税で、ここからの確認の中心になります。

譲渡所得税の計算のしかたは、譲渡所得税の計算で確認できます。

不動産の印紙税はいくら?契約金額別の一覧と軽減措置 不動産の印紙税はいくら?契約金額別の一覧と軽減措置

譲渡所得税は所有期間で税率が変わる

譲渡所得税の税率は、その家を持っていた期間が5年を超えるかどうかで大きく変わります。

売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら短期、5年を超えれば長期に分かれます。所有期間は取得日から売却日までの実日数ではなく、売った年の1月1日現在で数えます。年末に売るか年明けに売るかで区分が変わることがあります。税率の内訳は次のとおりです。

区分所得税復興特別所得税住民税合計
長期(5年超)15%所得税額の2.1%5%20.315%
短期(5年以下)30%所得税額の2.1%9%39.63%
軽減税率の特例(マイホーム・所有期間10年超)/課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分10%所得税額の2.1%4%14.21%

合計の20.315%・39.63%・14.21%は、この内訳を足し上げた計算値です。法令や国税庁がその数字をそのまま掲げているわけではありません。復興特別所得税は譲渡所得の金額ではなく所得税額に対して2.1%を課すもので、令和19年分までの措置です。長期のほうがほぼ半分の税率で、同じ売却益でも税額が大きく変わります。

なお、マイホームの売却では3,000万円特別控除で課税譲渡所得が0円になる方が多く、その場合は税率の出番がありません。税率を見る前に、控除で0になるかどうかを先に確かめてください。

上の表の3行目のとおり、自宅を10年を超えて持っていた場合は、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に14.21%の軽減税率を使える特例があります。マンションでは、この所有期間を建物(専有部分)と敷地権の両方で見る点を押さえておきましょう。

面積が要件になる特例では、登記面積に注意が必要です。マンションの登記は壁の内側で測る内法面積で、販売図面の壁芯面積より狭くなるため、50㎡や40㎡前後の住戸は図面上は超えていても登記では要件に届かないことがあります。具体的な税率や判定の基準は、所有期間と税率の解説で確認できます。

出典:土地や建物を売ったとき|国税庁

不動産売却の譲渡所得税の計算方法|5つのSTEPとモデルケースで解説 不動産売却の譲渡所得税の計算方法|5つのSTEPとモデルケースで解説

3000万円特別控除で税金が0円になる場合

自宅の売却なら、売却益から最高3,000万円を差し引ける特別控除があり、これで税金が0円になる人も多くいます。

数値例例1(売却益が小さい)例2(売却益が大きい)
売却益2,000万円4,000万円
特別控除−3,000万円−3,000万円
課税の対象0円1,000万円

この特別控除は、マイホームを売ったときに使えるもので、所有期間の長さに関係なく適用できます。売却益が3,000万円以内に収まれば、譲渡所得税はかかりません。

一般的な住み替えでは、売却益が3,000万円を超えるケースはそれほど多くありません。そのため、譲渡所得税の不安があっても、実際には課税ゼロで済む人がかなりいます。

ただし、だれでも自動で使えるわけではありません。住むために所有していた自宅であることや、家族など特別な関係者への売却ではないことなど、いくつかの条件があります。

自分が使えそうかの目安は、売る家が今のマイホームか、過去に住んでいた家なら引っ越しから3年以内か、という点です。細かな要件と必要書類は、3,000万円特別控除の解説で確認できます。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較 マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較

残債と抵当権抹消費用を差し引いた「手取り」で考える

住宅ローンが残るマンションでは、税金の前に、売却額から諸費用を引いた手取りで残債を返せるかを見ます。

手取りは、査定額から仲介手数料や抵当権抹消の登記費用などの諸費用を差し引いた金額です。住宅ローンが残っている場合は、この手取りと残債を突き合わせて、完済できるかどうかを確かめます。

売却でローンを完済すると、金融機関が設定していた抵当権を外す抹消登記が必要になります。この登記の費用は少額ですが、住み替えの資金計画では手取りの中で見込んでおく項目です。

築年数が経ち残債が残る住み替えでは、税金だけでなく、手取りが残債を上回るかどうかが進め方を左右します。売却見込み額を早めに固め、諸費用と残債を並べて見ておくと判断がぶれにくくなります。

確定申告が必要になるのはどんな人か

確定申告が必要になるのは、売却益が出た人、特例を使う人、売却損を繰り越す人です。

売却益が出て譲渡所得税がかかる人は、翌年の確定申告で納税します。給与から天引きされる税金とは別に、自分で申告する必要があります。

見落としやすいのが、特別控除を使って税金が0円になる人です。控除で納税額がゼロでも、その控除を受けるには確定申告が欠かせません。

売却で損失が出た人も、税金を取り戻せる特例を使うなら申告します。申告の時期や必要書類、e-Taxでの手続きは、確定申告の解説でまとめています。

買うとき・持つときの住み替え税金

買うとき・持つときの税金は、譲渡所得税ほど重くはなく、軽減措置で抑えられます。

購入時の登録免許税や不動産取得税は住宅用の軽減で下がり、保有中は固定資産税が毎年かかります。ただし軽減の申請漏れと、遅れて届く不動産取得税の通知には注意が必要です。

新居の購入でかかる税金と使える軽減措置

新居の購入では登録免許税・不動産取得税・印紙税がかかり、住宅用なら軽減で負担を抑えられます。

登録免許税は、新居の名義変更(所有権移転)と、住宅ローンの抵当権設定でかかります。マイホーム用の住宅には軽減税率があり、本来より低い税率で済みます。

不動産取得税は、不動産を取得したときに一度だけ課される都道府県税です。標準税率は本則4%ですが、住宅と土地は3%に軽減されています。この特例は令和9年(2027年)3月31日までの取得に適用されます。期限が切れると本則の4%に戻るため、3%だけを覚えず期限もあわせて確認してください。

なお税額は「売買価格×3%」ではありません。課税標準は固定資産税評価額で、建物は(評価額−控除額)×3%、土地は評価額×1/2×3%から住宅用地の減額を引きます。中古住宅の控除額は住宅の新築時期で変わるため、都道府県のページで自分の物件の新築年月に当たる額を見てください。軽減を受けるための申告の要否と期限も都道府県ごとに定めがあります。

印紙税は、売買契約書やローンの契約書にかかります。金額に応じた定額で、こちらも軽減措置の対象になる契約があります。

いずれの軽減も申請や要件確認が前提で、自動では適用されません。具体的な税率や軽減後の目安は、登記費用と印紙税の各解説で確認できます。

住み替えの補助金|場面別に使える制度と探し方・注意点 住み替えの補助金|場面別に使える制度と探し方・注意点

住み替え後も毎年かかる固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、新居を持ち続けるあいだ毎年かかる税金です。

どちらもその年の1月1日時点で物件を所有している人にかかり、固定資産税評価額をもとに計算されます。住宅が建つ土地には軽減があり、税額が抑えられます。

なお、広い土地の固定資産税や造成の費用といった論点は戸建て・土地の話で、敷地を共有の敷地権として持つマンションから住み替える人には関係が薄い部分です。マンションでは、次に説明する決済時の日割り精算のほうが身近な論点になります。

管理費・修繕積立金・固定資産税は決済時に日割り精算する

マンションでは、管理費・修繕積立金・固定資産税を引き渡しの決済時に売主と買主で日割り精算します。

固定資産税はその年の1月1日の所有者に1年分が課されますが、年の途中で引き渡す住み替えでは、引き渡し日を境に日割りして売主と買主で分け合うのが一般的です。売る側も買う側も、その年ぶんを丸ごと負担するわけではありません。

マンション固有なのが、毎月払う管理費と修繕積立金の精算です。これらも決済時に日割りで清算し、引き渡し後の分を買主が、それまでの分を売主が負担します。戸建てにはない項目なので、住み替えの資金の受け渡しでは見落とさないようにしておきましょう。

後から届く不動産取得税の通知に注意

不動産取得税は、購入から少し遅れて通知が届くため、納税ぶんを残しておくと安心です。

この税金は、物件を取得してから半年〜1年半ほどあとに、都道府県から納税通知書が届きます。購入時に支払う他の税金と違い、忘れたころに請求が来ます。

住み替えで資金を使い切っていると、あとからの通知に慌てかねません。軽減で税額が下がるとしても、念のため納税ぶんを取り置いておくと安心です。

不動産取得税には、課税標準となる額が一定未満なら課税しないという免税点があります。地方税法の現在の定めは、土地の取得は16万円、家屋のうち建築によるものは1戸につき66万円、それ以外(中古住宅の売買など)は1戸につき34万円です。ここでいう額は購入価格ではなく固定資産税評価額なので、自分の物件の評価額と見比べてください。中古マンションを買う場合、建物の評価額が34万円を下回ることはまれで、通常は課税対象になります。

評価額は市町村が個別に決めるもので、売買価格の何割という換算はできません。宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価し、家屋は再建築価格(同じ建物をいま建て直すのにかかる費用)をもとに評価するため、取引価格との対応関係がないからです。評価額と売買価格の比率を集計・公表した統計もありません。自分の評価額は、①毎年4〜6月に届く納税通知書に同封される固定資産税の課税明細書、②市町村の窓口で取れる固定資産評価証明書、③購入前で手元にない場合は仲介する不動産会社(登記費用の見積りに使うため把握しています)のいずれかで確かめてください。評価額は3年ごとに評価替えが行われます。

出典:総務省|地方税制度|不動産取得税地方税法第73条の15の2第1項(e-Gov法令検索)総務省|地方税制度|固定資産税の概要

住み替えで併用不可|3000万円控除・特定居住用財産の買換え特例・住宅ローン控除の選び方

住み替えでは、売却側の特例と新居の住宅ローン控除を同時には使えず、どれか一つを選びます。

ここからは売却益が出る人に向けた内容です。3,000万円特別控除・特定居住用財産の買換え特例・住宅ローン控除は重ねて使えないため、売却益の大きさや売買の順序を踏まえて、有利な一つを選びます。

売却の特例と住宅ローン控除を併用できない理由

売却益を抑える特例と新居の住宅ローン控除は、同じ時期には併用できません。

組み合わせ併用
3,000万円控除 × 住宅ローン控除×
特定居住用財産の買換え特例 × 住宅ローン控除×
3,000万円控除 × 特定居住用財産の買換え特例×

住宅ローン控除は、入居した年とその前後の一定期間に売却側の特例を使っていると、適用できなくなります。売って利益を非課税にした人は、原則として買う側の控除を受けられません。

これは、売却益を抑える優遇と購入を後押しする優遇を、二重には認めない仕組みだからです。住み替えでは、売る側と買う側のどちらで得をするかを早めに見比べておく必要があります。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

住宅ローン控除と買換え特例は併用できない|両取りの罠と選び方 住宅ローン控除と買換え特例は併用できない|両取りの罠と選び方

売却益が3000万円を超えるなら特定居住用財産の買換え特例も候補

売却益が3,000万円を超えそうなら、課税を先送りする特定居住用財産の買換え特例も選択肢に入ります。

3,000万円特別控除は、売却益が3,000万円までならその場で課税をゼロにできます。超える部分には税金がかかるため、利益が大きいほど控除だけでは収まりません。

そこで候補になるのが特定居住用財産の買換え特例です。新居に買い換える場合に、売却益への課税を今ではなく将来の売却時まで先送りできます。税金が消えるわけではなく、あくまで課税の繰り延べ(先送り)である点に注意が必要です。

この特例には適用の期限があります。いまは令和9年(2027年)12月31日までの売却が対象で、以前は令和7年(2025年)12月31日までとされていましたが、令和8年度税制改正(2025年12月26日閣議決定)で2年延長されました。さらに近年の改正で、災害の危険性が高い区域に建つ新築未使用の家へ令和10年(2028年)1月1日以降に入居する場合は対象外になる要件も加わっています。

今ゼロにするか先送りにするかは利益の大きさで変わるため、試算して見比べると判断しやすくなります。特定居住用財産の買換え特例のしくみと要件は、特定居住用財産の買換え特例で確認できます。期限や要件は改正されることがあるため、最新は国税庁または税理士で確認してください。

出典:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁住宅:居住用財産の譲渡に関する特例措置|国土交通省

住宅ローン控除と売却特例どちらが得か

売却特例と住宅ローン控除のどちらが得かは、売却益の大きさと、新居でのローンの組み方で分かれます。

売却益が大きい人は、その益を非課税にできる売却側の特例で得をしやすい傾向です。課税される額が大きいほど、控除で消せる効果も大きくなります。

反対に売却益が小さい、または出ない人は、新居の住宅ローン控除を選ぶほうが有利になりやすいです。売る側で消せる利益が少なければ、買う側の控除で取り戻すほうが手元に残ります。

住宅ローン控除は、令和8年度の税制改正(令和8年法律第12号・令和8年3月31日公布)で入居期限が5年延長され、令和12年(2030年)12月31日までの入居が対象になりました(以前は令和7年12月31日まで)。控除率は年末残高の0.7%で全区分共通ですが、控除の対象になる借入限度額と控除期間は住宅の区分で変わります。戻る総額はここで決まるため、売却益の見込みと並べて比べます。なお国税庁のタックスアンサーは、この記事の確認時点(2026年8月)でまだ改正前の表示のままのページがあります。

住み替えでの住宅ローン控除の条件は、住宅ローン控除と住み替えで確認できます。

どちらが得かは数字を並べないと決めにくいため、両方のケースを試算するのが近道です。具体的な比較は、住宅ローン控除と買換え特例の併用解説で確認できます。

出典:住宅:住宅ローン減税|国土交通省

売り先行・買い先行で変わる特例と控除のタイミング

先に売るか先に買うかで、特例の期限や住宅ローン控除の起点がずれることがあります。

売却側の特例には、住まなくなってから一定期間内に売る、といった期限があります。買うのを待ちすぎると、この期限を過ぎて使えなくなるおそれがあります。

一方で住宅ローン控除は、新居に入居した年が起点です。買い先行で先に入居すると、売却特例と併用できない期間と重なり、選択を迫られる場面が早く来ます。

売り先行と買い先行のどちらにするかは、資金繰りだけでなく税の使い勝手にも関わります。順序の決め方は、売り先行・買い先行とタイミングの解説で確認できます。

売り先行・買い先行はどちら?住み替えで損しない選び方と実践テクニック 売り先行・買い先行はどちら?住み替えで損しない選び方と実践テクニック

物件やケースで変わる住み替えの税金|マンションと戸建てで何が違うか

関係する税金や使える特例は、物件の種類や住み替えの事情によっても変わります。

マンションと戸建てでは取得費の出し方や見るべき論点が違い、相続した家や離婚にともなう住み替えには固有の注意点があります。自分のケースに当てはまる税金は、まず売却益の見込みを知ると見えてきます。

マンションは専有部分+敷地権、戸建て・土地の論点は仕分けて明示

マンションは専有部分と敷地権で見るため、戸建て・土地に特有の論点は自分に関係するかを仕分けられます。

売却益の計算では、建物部分の取得費から時間の経過ぶんを差し引きます。建物と土地の割合や構造によって結果が変わり、同じ売却額でもマンションと木造戸建てでは売却益が変わります。マンションでは、この建物が専有部分にあたり、敷地は共有の敷地権として持ちます。

一方で、土地面積の上限(特定居住用財産の買換え特例の土地500㎡以下など)や、古い家を壊して土地として売るときの取壊し費用・測量費は、土地付きの戸建てで出てくる論点です。敷地を共有の敷地権として持つマンションから住み替える人には、通常これらは関係しません。自分に関わるのは、専有部分の登記面積と、先に触れた内法面積の確認です。

相続した家を売る住み替えの税金

相続した家を売る住み替えでは、取得費が分かりにくく、相続税の一部を取得費に足せる特例があります。

親などから相続した家は、いついくらで買ったかの記録が残っていないことが多くあります。取得費が不明だと売却益が大きく出やすく、税負担も増えがちです。

そこで使えるのが、払った相続税の一部を取得費に加えられる特例です。取得費が増えれば売却益が圧縮され、譲渡所得税を抑えられます。相続したマンションでも、専有部分と敷地権をあわせて取得費や所有期間を引き継いで考えます。

ただし、この特例には相続から売却までの期限があります。土地の分筆や境界確定といった論点は戸建て・土地の話で、マンションでは通常関係しません。相続がからむ住み替えの税金は、相続向けの解説でまとめて確認できます。

不動産の評価額とは?一物五価の違いと目的別の調べ方 マンションの評価額の調べ方|一物五価の違いと目的別(売却・相続・保有税)の見方

離婚にともなう住み替えで注意する税金

離婚にともなう住み替えでは、財産分与で家を渡すときの税金と、名義の扱いに注意します。

財産分与で家を相手に渡す場合でも、渡す側に譲渡所得税がかかることがあります。分与した時点の評価額をもとに、売却と同じように利益を計算するためです。

マンションを夫婦の共有名義で持っている場合、共有のままにすると、あとで売るときの手続きが複雑になりがちです。離婚の住み替えに特有の進め方は、離婚向けの解説で確認できます。

離婚の財産分与|自宅の分け方・割合・税金・期限を解説 離婚の財産分与|自宅の分け方・割合・税金・期限を解説

売却益の見込みを知ると関係する税金が決まる

自分に関係する税金は、まず売却益の見込みを知ると、ほぼ決まります。

ここまで見てきたように、譲渡所得税も各種の特例も、売却益が出るかどうかが起点でした。売却益の見込みが分かれば、読むべき税金と特例を絞り込めます。

売却益の見込みは、今の家がいくらで売れそうかが分かると立てられます。マンションは比較できる成約事例が多く、複数の会社の査定を比べると見込み額の幅をつかみやすくなります。

まとめ:売却益が出るかどうかから税を読むなら、住み替えのトビラ

住み替えで自分に何の税がかかるのかは、今の住まいを売って利益が出るかどうかで見分けます。ここを飛ばすと、自分には関わらない特例まで読み込むことになります。

見分けるには、売れそうな額と、その住まいを買ったときの額を先に並べます。利益が出るかを知らないまま動くと、選び直せない場面で決めることになります。

申告の準備に入る段階で、自分に利益が出るのかをまず確かめてください。住み替えのトビラでは、売る・買う・持ち続けるでかかる税の全体像も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。