売ってから買う住み替えでは、旧居を引き渡してから新居に入るまでの間に、住む場所が空いてしまうことがあります。 この「仮住まい」の費用と期間は、資金計画を立てるときに見落とされやすい部分です。 この記事では、住み替えのトビラが、自分に仮住まいが要るのかどうかから、費用と期間の目安、選び方、避ける方法までを、順を追って解説します。
住み替えで仮住まいが必要になるのはどんなとき
仮住まいは住み替えをする人全員に必要になるわけではなく、自宅の売却と新居の購入のタイミングがずれるときに発生します。
売ってから買う「売り先行」なのか、いまの家を解体する建て替えなのかといった、住む場所の空白が生まれる型かどうかで、仮住まいが要るかどうかが決まります。ここでは、その空白がどんな仕組みで生まれるのかを型ごとに見ていきます。
売り先行で先に自宅を引き渡すとき
売ってから買う売り先行では、旧居の引き渡しが新居の入居より先に来ると、住む場所の空白が生まれます。
売り先行を選ぶ人が多いのは、資金面で安心できるからです。先に自宅が売れて手元にお金が入るため、その資金を新居の購入にあてられます。売却額が確定してから新居の予算を組めるので、資金計画が立てやすく、住宅ローンが一時的に二重になる事態も避けられます。
ただし、この進め方には代償があります。買主への引き渡し日までに新居の入居先が決まっていないと、旧居を出てから新居に入るまでの間、どこかに住む必要が出てきます。この空白を埋めるのが仮住まいです。売り先行の安心と引き換えに生じる、いわば住み替え特有の追加コストといえます。
建て替え・大規模リフォームで自宅に住めない期間があるとき
建て替えや、住みながらでは進められない規模のリフォームでは、工事のあいだ自宅にまるごと住めなくなるため、別の場所へ移る必要があります。
この場合の仮住まいは、売買のタイミングのずれではなく、工事そのものが原因で発生します。いまの家を解体して新しく建て直すあいだは、当然そこには住めません。間取りを大きく変える、基礎や配管に手を入れるといった大規模なリフォームでも、工事中の生活は難しくなります。
売り先行の仮住まいが「売買の時間差を埋めるもの」であるのに対し、建て替えの仮住まいは「工事期間中の住まいを確保するもの」です。発生する理由が違うぶん、必要になる期間の長さも大きく変わってきます。
売却先行でなくても引き渡し時期がずれるとき
売却と購入を同時に進めていても、決済日や新居に入れる日がずれれば、短い空白が生じることがあります。
たとえば新築の住宅を買う場合、建物の完成を待つあいだに旧居の引き渡しが先に来ることがあります。中古住宅でも、売主側の退去や買主側のローン手続きの都合で、引き渡し日が数日から数週間ずれるのは珍しくありません。こうしたずれが生じると、その期間だけ短い仮住まいが必要になります。
住み替えの仮住まいにかかる費用の内訳と目安
仮住まいの費用は毎月の家賃に加えて、引っ越しが2回になることと、短い契約ゆえの割増によって、通常の賃貸より膨らみやすくなります。
費用は大きく「借りる費用」「引っ越し費用」「荷物の一時保管費用」に分かれます。ここに住み替えならではの割増が乗るため、あらかじめ内訳を知っておくと資金計画の見落としを防げます。なお、以下の金額はいずれも相場としての目安で、地域や物件によって幅があります。
仮住まいを借りる費用(家賃・敷金礼金・仲介手数料)
仮住まいの費用で最も大きいのは借りる費用で、毎月の家賃に加えて、契約時にまとまった初期費用がかかります。
初期費用の中身は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・火災保険料などです。一般的な賃貸では、敷金と礼金がそれぞれ家賃の1〜2か月分、仲介手数料が家賃の1か月分程度が目安になります。家賃10万円台の物件を借りるなら、初期費用として概ね家賃の4〜6か月分ほどを見込んでおくと安心です(地域・物件により異なります)。
つまり借り始めの時点で、毎月の家賃とは別に数十万円規模のお金が動きます。仮住まいは一時的な住まいでも、この初期費用は通常の引っ越しと同じようにかかる点をおさえておきましょう。
短期・定期借家で家賃が割高になる仕組み
住み替えの仮住まいは契約が数か月と短いため、通常の賃貸より月々の家賃や条件が割高になりやすいという特徴があります。
割高になる理由は、貸す側のリスクとコストにあります。短い期間で退去されると、貸主は次の入居者を探す手間と空室の期間をすぐに抱えることになります。この回転の負担を家賃に上乗せするため、短期前提の物件やマンスリー型の住まいは、長期契約の相場より月額が高めに設定されがちです。数か月だけ住む定期借家契約も、同じ理由で条件が渋くなる傾向があります。
さらに、滞在が短くても敷金・礼金・仲介手数料といった初期費用は通常どおりかかります。たとえ2か月しか住まなくても、初期費用は1年住む場合と大きくは変わりません。仮住まいのあと新居でもう一度これらの初期費用が発生するため、短い期間に初期費用を二重に負担する形になります。
加えて、春の引っ越し繁忙期などは物件そのものが減り、選べる部屋が限られて条件が悪化しやすくなります。仮住まいの時期が繁忙期に重なりそうなら、割高になりやすい前提で早めに動くほうが安全です。
引っ越しが2回になる費用
仮住まいを挟むと、「旧居から仮住まい」「仮住まいから新居」で引っ越しが2回発生し、その分の費用も2回分かかります。
引っ越し費用は、荷物の量・移動の距離・時期によって動きます。家族の荷物が多いほど、遠方へ移るほど、そして繁忙期に重なるほど、1回あたりの金額は上がります。仮住まいを挟む場合はこれが単純に2倍近くになるため、住み替え全体の費用のなかでも見落とせない項目です。
荷物の一時保管(トランクルーム)の費用
仮住まいが手狭で荷物が入りきらない場合は、トランクルームなどの保管費用が上乗せされます。
仮住まいは一時的な住まいなので、いまの家より狭い部屋を選ぶことが多くなります。すると入りきらない家具や家電の置き場が必要になり、月々の保管料が発生します。仮住まいの広さを抑えて家賃を下げるほど、保管費がかさむという関係があるため、家賃と保管料を合わせて考えるとよいでしょう。
住み替えの仮住まいに必要な期間の目安
仮住まいに必要な期間はケースによって大きく違い、売買のタイミングのずれなら数週間から数か月、建て替えなら半年から1年規模が目安になります。
期間は「なぜ空白が生まれたか」によって変わります。そして期間が延びるほど家賃も保管料も積み重なるため、費用は期間にほぼ比例して増えていきます。どのくらいの長さを見込むべきか、起因ごとに確認していきましょう。
売り先行の住み替えでの期間目安
売り先行の仮住まいは、新居がすでに決まっていれば、数週間から数か月に収まることが多くなります。
長さを左右するのは、旧居の引き渡しから新居に入れるまでの調整幅です。新居が中古住宅で入居準備が短く済むなら、数週間の仮住まいで足りることもあります。一方で、新居のリフォームや手続きに時間がかかる場合や、そもそも新居がまだ決まっていない場合は、数か月に延びやすくなります。概ね数週間から数か月を目安に、余裕をもって見込んでおくと安心です(進行状況により異なります)。
建て替え・リフォームでの期間目安
建て替えでは解体から新しい家が建ち上がるまで自宅に住めないため、仮住まいは半年から1年規模と長くなりやすくなります。
期間は工事の規模と工法で変わります。木造の一般的な住宅でも、解体・基礎工事・建築・引き渡しまでを合わせると半年前後はかかるのが通常です。地盤改良が必要な土地や、規模の大きい住宅ではさらに延びます。売り先行の仮住まいが数週間から数か月なのに対し、建て替えは一段長い期間帯になると考えておきましょう。
期間は余裕をもって見積もる(延びる要因)
想定より期間が延びることがあるため、仮住まいは余裕をもって見積もっておくと安全です。
期間が延びる要因はいくつかあります。工事の遅れ、天候による工程のずれ、引き渡し日の再調整、繁忙期の物件不足などです。こうした遅れは自分の努力だけでは避けにくいものです。
とくに定期借家契約で仮住まいを借りる場合は、契約期間の設定に注意が必要です。期間を短く組みすぎると、工事や入居が延びたときに延長や再契約が必要になり、そのたびに手数料や割高な家賃がかさみます。最初から少し余裕をもった期間で契約しておくほうが、結果として費用を抑えられることも多いといえます。
住み替えの仮住まいの選択肢と選び方
仮住まいには賃貸のほかにも複数の選択肢があり、必要な期間の長さと家族構成によって向き不向きが分かれます。
短期ならマンスリーマンションやホテル、長期なら一般の賃貸やUR賃貸、費用を最優先するなら実家、というのが大まかな選び分けの軸です。まずは全体像を表で見渡してから、それぞれの特徴を確認していきましょう。
| 選択肢 | 向いている期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般の賃貸 | 数か月以上 | 物件が豊富・家族向けの間取りも選べる |
| UR賃貸 | 数か月以上 | 礼金・仲介手数料・更新料がかからず初期費用が軽い |
| マンスリーマンション | 数週間〜数か月 | 家具家電付きで身軽・月額は割高 |
| ホテル | 数日〜数週間 | 手続き不要で最も手軽・長期は割高 |
| 実家・知人宅 | 期間を問わず | 家賃を抑えられる・気兼ねや荷物置き場の課題 |
一般の賃貸・UR賃貸(長めの期間・家族向け)
数か月以上の長めの仮住まいや、家族での滞在には、間取りを選べる一般の賃貸やUR賃貸が向いています。
一般の賃貸は物件数が多く、エリアや間取りの選択肢が豊富です。そのぶん敷金・礼金・仲介手数料といった初期費用がかかり、短期の解約に条件が付く物件もあります。仮住まいで使うなら、短期解約が可能か、定期借家ではないかを契約前に確認しておくと安心です。
UR賃貸は、礼金・仲介手数料・更新料・保証人がいずれも不要で、初期費用を抑えやすいのが特徴です。入居時に必要なのは家賃2か月分の敷金と日割りの家賃・共益費のみで、契約は自動更新のため更新料もかかりません。一方で、募集は空室のある住宅に限られ、対応するエリアも一般の賃貸ほど幅広くはありません。希望の場所に空きがあれば、費用面で有力な選択肢になります。
マンスリーマンション・ホテル(短期・身軽さ重視)
数週間から1、2か月の短期や、家具を持ち込まず身軽に済ませたい場合は、マンスリーマンションやホテルが現実的です。
マンスリーマンションは家具・家電が備え付けで、敷金・礼金や家具の購入が要らないため、初期費用を軽くして短期間だけ住めます。そのぶん月額の家賃は一般の賃貸より割高で、家族向けの広い部屋は数が限られます。
ホテルはさらに手軽で、契約の手続きもほとんど要りません。数日から数週間程度の超短期であれば有力ですが、宿泊が長引くほど割高になるため、長期の仮住まいには向きません。滞在が数週間を超えそうなら、マンスリーや賃貸に切り替えるのが目安です。
実家・知人宅(費用を最優先するとき)
頼れる実家や知人宅があれば、家賃を抑えられ、費用の面では最も軽い選択肢になります。
ただし、費用以外の負担がある点は正直におさえておきたいところです。家財の置き場所が足りずトランクルームを併用することになりやすく、生活の動線や家族との距離感で気兼ねが生じることもあります。費用の軽さと、そうした暮らしにくさを天秤にかけて判断するとよいでしょう。
期間と家族構成で選ぶ考え方
仮住まいの選択肢は、「必要な期間の長さ」と「家族の人数・荷物量」の2つの軸で絞ると決めやすくなります。
短い期間で人数も少ないなら、身軽なマンスリーマンションやホテルが合います。数か月以上の長い期間で家族の荷物も多いなら、間取りを選べる一般の賃貸やUR賃貸が現実的です。とにかく費用を抑えたいなら、頼れる実家が第一候補になります。
この2軸で当てはめると、自分がどの選択肢を軸に検討すべきかが見えてきます。そのうえで、初期費用の軽さや家族の暮らしやすさといった条件を重ねて、最終的な住まいを絞り込んでいくとスムーズです。
仮住まいを避ける・短くする住み替えの進め方
仮住まいの費用や引っ越し2回の手間を避けたいなら、売却と購入のタイミングを合わせる進め方があります。
避ける手段は、買い先行にする、決済日をそろえる、引き渡し猶予の特約を付ける、の3つが代表的です。いずれも仮住まいを減らせる一方で、成立には条件や限界があります。順番に見ていきましょう。
買い先行にして引っ越しを1回にする
先に新居を買って移り住んでから旧居を売る「買い先行」にすれば、仮住まいを挟まず、引っ越しも1回で済みます。
新居に直接移れるため、住む場所の空白が生まれません。旧居はゆっくり売却活動を進められ、内覧のたびに部屋を片づける負担も減ります。仮住まいの費用と2回目の引っ越し費用を丸ごと省ける点が、買い先行の大きな利点です。
一方で、資金面のハードルがあります。旧居が売れる前に新居の購入費用を用意する必要があり、旧居のローンが残っていれば一時的に支払いが二重になることもあります。手元資金や住み替えローンの利用可否によって選べるかどうかが変わるため、資金計画とあわせて検討する進め方です。
売却と購入の決済日を同じ日にそろえる(同時決済)
旧居の売却と新居の購入の決済を同じ日に設定できれば、住む場所の空白が生まれず、仮住まいそのものが要らなくなります。
同じ日に売却代金を受け取り、その資金で新居の購入代金を支払う流れです。うまくいけば仮住まいも2回目の引っ越しも避けられます。
ただし、実現のハードルは高めです。旧居の買主、新居の売主、双方の金融機関など、多くの関係者の日程を1日にそろえる必要があります。どこか一つでも都合が合わなければ日程は動き、思いどおりに進まないこともあります。関係者が多いほど調整が難しくなる進め方だと理解しておきましょう。
引き渡し猶予の特約で入居準備の時間を確保する
旧居の売買契約に「引き渡し猶予」の特約を付けると、決済後も一定期間そのまま住み続けられ、新居に入るまでの短い空白を埋められます。
決済で所有権は買主に移りますが、特約で定めた期間は売主がそのまま居住できる仕組みです。新居の入居準備にあと少しだけ時間が欲しい、というときに役立ちます。
ただし、この特約には限界があります。猶予として認められるのは長くて2週間程度が目安で、それ以上の期間は買主が受け入れにくくなります。そもそも買主の同意が前提であり、早く入居したい買主であれば断られることもあります。数日から2週間ほどの短い空白を埋める手段であって、数か月の空白を埋める方法ではない点をおさえておきましょう。
まとめ:住み替えの仮住まいに備えるなら、住み替えのトビラ
住み替えの仮住まいは、あなたの売却と購入のタイミングがずれるときに必要になります。まずは自分に空白期間が生まれるのかを見極めることが出発点です。
費用は家賃に加えて、引っ越しが2回になることや短期契約の割増で膨らみやすく、期間は売り先行なら数週間から数か月、建て替えなら半年から1年規模が目安です。選択肢は期間の長さと家族構成で向き不向きが分かれるため、この2軸で絞り込むと決めやすくなります。
仮住まいを避けたい場合は、買い先行・同時決済・引き渡し猶予といった手段があります。それぞれに条件と限界があるので、資金計画やスケジュールと照らし合わせて、無理のない進め方を選んでいきましょう。
住み替えを取り巻く状況は変わり続けます。住み替えのトビラは、そのときの最新の情報を正確に、わかりやすくお届けし続けます。
住み替えのトビラ 