60代で住まいを変えるのは遅いのではないかという迷いが先に立ちます。
住み替えるか住み続けるかは、体力とお金の見通しが立っている今のうちに決めておくと、選べる住まいが減らずに済みます。
健康・お金・借入の期限から今動くべきかを診断し、住み続ける道と比べる手順まで説明します。
60代の住み替え(買い替え)は遅くない 今動くべきかの全体診断
60代の住み替えは遅くなく、体力とお金の見通しがそろう今こそ動きやすい時期です。
物件を選ぶ前に確かめたいのは、自分が今動くべきかどうかです。健康・お金・時間の3つから現在地を整理すれば、踏み切るか保留するかの判断がつきます。
結論|60代の住み替えはむしろ今が好機
60代の住み替えは特別な選択ではなく、データの上でもこの年代での取得は広く見られます。
国土交通省の令和7年度 住宅市場動向調査の報告書は、「二次取得者は、注文住宅、分譲集合住宅、既存(中古)集合住宅では『60歳以上』が最も多い」と述べています。二次取得者の世帯主の平均年齢も、分譲マンション(分譲集合住宅)で61.7歳、中古マンション(既存集合住宅)で58.5歳です(一次取得者はそれぞれ39.7歳・42.2歳)。住まいを選び直す人の中心にこの年代が並ぶことから、60代で動くのが例外ではないとわかります。
なお、年齢の区分別の構成比(何%が60歳以上か)は報告書が図で示しており、数値として取り出せなかったため、ここでは割合を書いていません。
出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(令和8年7月・住宅局。調査対象は2024年4月〜2025年3月に住み替え等を行った世帯)
この年代に住み替えが集まる背景には、子どもの独立で使わない部屋が増え、定年を機にお金の見通しが立つという事情があります。住まいを見直す条件がそろう時期だからこそ、「遅い」のではなく機が熟したタイミングだといえます。
もう一つの理由は、体力にゆとりのある時期に住まいを選び直せることです。判断を先に延ばすほど選べる範囲は狭まり、動ける今のほうが無理のない住み替えにつながります。
元気なうちに住む場所を決められれば、これからの暮らしを自分の希望に沿って設計できます。「遅いのでは」という不安より、選択肢が残っている今をどう生かすかが大切です。
今動くべきか 住み替えを決める5つの診断ステップ
動くべきかどうかは、5つの問いに順番に答えていくと見えてきます。
住み替えの判断は、勢いや不安に任せるとぶれやすくなります。時間・住まいの現状・お金・方向性・進め方という順に整理すれば、自分の現在地を落ち着いて確かめられます。
- 残された時間:健康なうちに動ける年数はどれくらいか
- 住み替えか住み続けるか:今の家はリフォームで足りるか
- お金:売却見込みと退職金で資金は成り立つか
- 方向性:自分に合う住まいのタイプはどれか
- 進め方:後悔せず無理なく決める手順は何か
どれか一つでも答えに迷うなら、その問いが今のあなたの課題になります。順に確かめていけば、踏み切る人にも保留する人にも、自分に合った次の一歩が見つかります。
なぜ60代の今か 健康・お金・時間で測る決断の窓
60代が住み替えの分かれ目になるのは、健康・お金・時間の3つがちょうど見通せる時期だからです。
50代では早く、70代では選びにくいなか、60代は健康・資金・ローンの期限という3つを同時に見通せる時期です。その逆算から、なぜ今が動きどきなのかが確かめられます。
| 逆算の軸 | 60代の目安 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 健康寿命(令和4年) | 男性72.57歳・女性75.45歳 | 自分で住まいを選べる残り年数 |
| お金の見通し | 退職金・年金が定まる | 現実的な資金計画を組める時期 |
| ローンの期限 | 完済時年齢は「80歳未満」が最多(994機関中978機関が審査項目とし、うち716機関) | 借りるなら60代前半が現実的 |
動けるのはいつまでか 健康寿命から逆算する適齢
住み替えに動けるかどうかは、健康寿命から逆算すると見えてきます。
厚生労働省が公表している健康寿命の最新値は令和4年のもので、日常生活を制限なく送れる期間は男性が72.57歳、女性が75.45歳です。同じ令和4年の簡易生命表では、平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳です。差は男性で8.48年、女性で11.64年あり、人生の終盤には支援が必要になりやすい時期が控えていることを示します。健康寿命と平均寿命は基準年をそろえて比べてください。年が違う数字どうしを引くと、差が実際より広くも狭くもなります。
出典: 健康寿命の令和4年値について(厚生労働省)、令和4年簡易生命表の概況(厚生労働省)
この数字から逆算すると、自分の意思で住まいを選び直せる時間は思うより短いとわかります。70歳を過ぎてからの引っ越しは、体力面でも手続き面でも負担が増えやすくなります。元気に動ける60代のうちなら、内見や片づけの負担を抑えつつ、希望に近い住まいを選べます。
まずは、自分が安心して動ける年数を「あと何年か」と数えてみることをおすすめします。残りの年数を具体的につかめば、先延ばしにせず今を生かす判断がしやすくなります。
退職金と年金が見える60代は資金計画ができる
60代は退職金と年金の見込みが定まり、初めて現実的な資金計画を立てられる年代です。
50代までは、退職金の額も受け取る年金も見込みの段階にとどまります。具体的な数字が定まらないため、資金計画も大まかにならざるを得ません。
60代に入ると、退職金の支給額や年金の受給見込みがほぼ固まります。これから使えるお金の全体像がつかめ、計画の土台ができます。
土台の数字が見えれば、見込みで動いていた頃と違い、確かな数字をもとに住み替えを判断できます。勢いではなく計画で進められるのが、この年代の強みです。
住宅ローンの完済年齢の壁 借りられるうちに動く
住宅ローンを使うなら、完済時年齢の上限が60代の動きどきを左右します。
国土交通省が毎年行っている民間住宅ローンの実態調査(令和7年度)では、融資審査で完済時年齢を審査項目としている機関が994機関中978機関(98.4%)ありました。その978機関が挙げた完済時年齢の内訳(複数回答)は、80歳未満が716機関、85歳未満が65機関、75歳未満が42機関、70歳未満が5機関、「なし」が2機関、「その他」が158機関です。最も多いのは「80歳未満」ですが、単一の線ではありません。なお「80歳未満」と「80歳まで」は1年ずれます。
この調査は金融機関が申告した審査項目の集計であり、実際に融資が実行された案件の分布ではありません。複数回答である点にもご注意ください。
フラット35の場合、借入期間の上限は「80歳−申込時の年齢(1年未満切上げ)」と35年のいずれか短いほうで、60歳なら20年になります。60歳で20年のローンを組むとして、借入1,000万円あたりの毎月返済額は56,923円です。前提にしている金利は【フラット35】2026年8月適用の金利 年3.290%(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)で、2026年8月時点のものです。金利は毎月変わるため、実際の借入時の金利で確認してください。
出典: 国土交通省住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月)/住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」/同「【フラット35】金利情報」(2026年8月資金受取分)
だからこそ、借入を前提にするなら60代前半が現実的な窓になります。手元の資金で買うか、短い期間で借りるかを早めに見極めておくと安心です。
住み替えか住み続けるか 60代の分かれ道を決める
どこに住むかの前に決めたいのは、そもそも動くのか、今の家に住み続けるのかです。
住み替えだけが正解ではありません。リフォームで住み続ける道と住み替える道を公平に並べ、自分にどちらが合うかを健康・資金・家の状態から判断します。
今の家に住み続ける選択 リフォームで解決できる範囲
今の家の不便は、リフォームやバリアフリー化である程度まで解決できます。
段差の解消や手すりの設置、浴室やトイレの改修は、加齢に伴う暮らしにくさをやわらげます。住み慣れた環境や近所付き合いを保てる点も、住み続ける大きな利点です。
一方で、リフォームでは補えない不便もあります。駅から遠い、家が広すぎて管理が重いといった立地や間取りの問題は、改修では変えられません。
費用の見極めも欠かせません。大規模なリフォームは数百万円に達することもあり、その額を住み替えの頭金と比べてから判断すると、後悔を避けやすくなります。
住み替える選択 不便の解消と資産の組み替え
住み替えは、今の家では変えられない不便をまとめて解消できる選択です。
駅近のマンションに移れば、移動の負担が軽くなり、広すぎる家の管理からも解放されます。暮らしの動線が短くなることで、これからの生活がぐっと楽になります。
もう一つの利点は、資産の組み替えです。今の家を売って得た資金を、コンパクトな住まいと老後資金に振り分けられます。住まいに眠っていた価値を、暮らしと将来の備えに動かせるのが住み替えの強みです。
ただし、慣れた土地を離れる心細さや、新しい環境になじむ負担もあります。利点と負担の両方を見たうえで、自分にとっての価値が上回るかを確かめることが大切です。
どちらを選ぶべきか 住み替えと住み続けるの判断基準
住み替えと住み続けるのどちらが合うかは、3つの基準で見分けられます。
判断の軸は、健康、資金、今の家の状態です。立地の不便が体にこたえ、売却で資金を組み替えられ、家の傷みも進んでいるなら住み替えが向いています。
反対に、今の不便がリフォームで収まり、住み慣れた環境を手放したくないなら、住み続ける道が穏当です。迷うときは、両方にかかる費用とこれから得たい暮らしを書き出して比べてみてください。
60代の住み替え資金は足りるか 売却と退職金で考える
住み替えが成り立つかは、資金が足りるかどうかで決まります。
高く売る一般論ではなく、自分のケースで足りるかが出発点です。売却見込み・退職金・貯蓄をどう組み立て、老後資金をどこまで守るかを考えます。
住み替え資金の全体像 売却・退職金・貯蓄の組み立て
住み替えの資金は、売却見込み・退職金・貯蓄の3つを組み合わせて考えます。
出発点は、今の家を売って手元に残る金額です。その売却資金に、退職金や貯蓄のうち住まいに充てられる分を足すと、自己資金の総額が見えてきます。
次に、新しい住まいにかかる総額を見積もります。物件価格に加え、引っ越し費用や登記の費用、仲介手数料などの諸経費も含めて考えます。自己資金で総額をまかなえるなら、借入に頼らない無理のない住み替えになります。
自己資金だけで足りない場合は、不足分だけを短い期間で借りる方法もあります。借入を最小限に抑えれば、毎月の返済が老後の家計を圧迫しにくくなります。
今の家がいくらで売れるか 資金計画の出発点
資金計画の出発点は、今の家がいくらで売れそうかを知ることです。
売却見込み額が分かると、住み替えに使える自己資金の上限が定まります。土台の数字があいまいなままでは、予算も住まい選びも宙に浮いてしまいます。
おおよその相場は、複数の不動産会社に査定を依頼すると把握できます。一度の依頼で複数社の見積もりをまとめて比べられる一括査定を使うと、手間を抑えられます。
退職金を使い切らない 老後資金を守る予算の決め方
住み替えでは、退職金を使い切らず、老後資金として残す線を決めておくことが大切です。
退職金を住まいに振り向けすぎると、その後の生活費や医療・介護の備えが細くなります。まとまったお金が入ると気が大きくなりやすいので、はじめに「残す額」を決めておくと安心です。
目安として、退職金のうち住まいに使う分と、生活の備えとして手をつけない分を分けて考えます。年金で日々の生活がどこまで賄えるかを確かめ、不足を補う蓄えを先に取り分けておきます。残す額を守ったうえで住まいに回せる範囲で予算を組むと、暮らしの安心を保てます。
退職金の額は勤め先や勤続年数で大きく異なります。自分の受取額を早めに確かめ、住まいと老後の備えへの配分を具体的に描いておくことをおすすめします。
あなたに合う60代の住み替え先はどのタイプか
動くと決めたら、次に考えるのは自分に合う住まいの方向です。
ここでは物件を細かく比べるのではなく、便利さ・老後の安心・資金という優先軸で方向を2〜3に絞ります。自分の軸が定まれば、その先の比較に進みやすくなります。
| 優先する軸 | 合う方向 |
|---|---|
| 便利さ・移動の負担 | 駅近のコンパクトマンション |
| 老後の安心 | シニア向け住宅、サービス付き高齢者向け住宅 |
| 資金・身軽さ | 売る・住み替える・貸すの組み替え |
便利さと移動の負担で選ぶ 駅近マンション
移動の負担を軽くしたい人には、駅近のコンパクトマンションが合います。
駅やスーパーが近い住まいは、車に頼らない暮らしを支えます。生活動線がワンフロアにまとまったマンションなら、日々の移動の負担が軽くなります。
広さよりも動きやすさを優先するなら、この方向が安心です。間取りや管理のしやすさはタイプごとに差が出るため、候補を絞ったうえで見比べると失敗しにくくなります。
老後の安心で選ぶ シニア向け住宅やサ高住
将来の見守りや介護の備えを重視する人には、シニア向け住宅やサービス付き高齢者向け住宅が合います。
これらの住まいは、安否確認や生活相談などの支援を受けながら暮らせる点に強みがあります。元気なうちに入居しておけば、体調が変わっても住まいを移さずに過ごしやすくなります。
一方で、費用やサービスの中身は施設ごとに大きく違います。自立して暮らせる時期をどう過ごしたいかを軸に、支援の手厚さと費用のバランスを見比べると選びやすくなります。
持ち家か賃貸か 手放す・住み替える・貸す
資金や身軽さを重視する人には、持ち家を手放すか保つかという視点での選択が合います。
選び方は大きく3つあります。今の家を売って住み替える、賃貸に移って身軽になる、あるいは貸して家賃収入を得るという道です。
売れば老後資金にゆとりが生まれ、賃貸なら管理の手間が減り、貸せば資産を保ったまま収入を得られます。それぞれに利点と注意点があるため、手元に残したい資産と毎月の収支から選ぶと判断しやすくなります。
60代の住み替えで後悔しない 夫婦で決める進め方
60代の住み替えで後悔につながりやすいのは、物件選びより決め方です。
失敗例を並べるのではなく、踏み切る前に効く2点に絞ります。夫婦で希望が割れたときの合わせ方と、予算を膨らませないための歯止めです。
夫婦で希望が割れたときの合意のつくり方
夫婦で希望が割れたときは、優先順位をそろえることで合意に近づきます。
住み替えでは、利便性を重視する側と、静かな環境を重視する側で意見が分かれがちです。どちらも正しい願いなので、勝ち負けではなく、譲れない条件を出し合うことから始めます。
まず、お互いが住まいに求めるものを、ゆずれない条件とあきらめてもよい条件に分けて書き出します。重なる部分を土台にすれば、二人が納得できる方向が見えてきます。条件を言葉にする過程そのものが、相手の不安や本音を知るきっかけになります。
結論を急がず、いくつかの候補を一緒に見て回るのも有効です。同じ住まいを実際に体験すると、言葉だけでは埋まらなかった感覚の違いが近づきます。
予算オーバーで老後資金を減らさない歯止め
「最後の住まいだから」と予算を膨らませると、老後資金が細くなります。
終のすみかと考えると、設備やグレードをあれもこれもと足したくなります。その積み重ねが当初の予算を大きく超え、手元に残すはずだった資金を削ってしまいます。
歯止めになるのは、最初に決めた予算の上限と老後に残す額を紙に書き、見えるところに置くことです。迷ったときにその数字へ立ち返れば、勢いでの上乗せを抑えられます。
終の棲家は1回で決めなくていい 段階的に住み替える
終の棲家を一度で完璧に決める必要はありません。
住まいは後から見直せます。段階的に進める考え方とお試しの方法を知れば、踏み切る人にも保留する人にも、無理のない次の一歩が見つかります。
一度で決めず段階的に進める考え方
終の棲家は、一度で決めず、段階を踏んで近づけていく考え方が無理のない道です。
60代の住まいと、80代以降に必要な住まいは、求めるものが変わります。今の暮らしに合う住まいへまず移り、体や生活が変わった段階で次を考えれば、過度な気負いなく進められます。
一度で完璧を目指すと、起こるかどうか分からない将来に備えすぎて、今の暮らしやすさを後回しにしがちです。まずは目の前の不便を解消する住み替えを優先します。将来の住まいは、必要が見えてきたときに改めて選び直せます。
段階的に考えると、決断の重さがやわらぎます。完璧な一択を探すより、今いちばん良い選択を重ねるほうが、結果として満足できる住まいにたどり着きやすくなります。
お試し賃貸や移住で住み替え先を見極める
本決定の前にお試しで暮らしてみると、住み替え先の合う・合わないを確かめられます。
候補の地域に短期の賃貸で住んでみると、買ってからでは気づけない暮らしやすさが分かります。買い物や通院の便、近所の雰囲気は、数日の訪問より実際に暮らすほうが正確につかめます。
今の家を残したまま試せば、合わなかったときに元の暮らしへ戻れます。気に入れば本格的な住み替えへ、違えば別の候補へと、後戻りできる安心の中で見極められます。
まだ動かない人へ 住み替えに向けた次の一歩
今すぐ動かない人にとっての次の一歩は、今の家の価値を知ることです。
焦って決める必要はありません。まずは情報を集め、自分の家がいくらで売れそうかを把握しておくと、いざ動くときの判断がぐっと早くなります。
売却見込みが分かれば、住み替えの予算も、住み続ける場合との比較もしやすくなります。複数社の見積もりをまとめて確かめられる一括査定から始めると、全体像をつかみやすくなります。
まとめ:60代の住み替えに踏み切る時期なら、住み替えのトビラ
60代の住み替えは、遅いから諦めるものではありません。借りられる年数と体力が残っているうちに決めれば、住み続ける道も含めて自分で選べます。
自分で選ぶには、住み替えるのと今の家を直して住み続けるのを、同じ条件で並べます。片方だけを調べると、調べたほうへ理由なく寄ります。
どちらかに決める前に、住み続けた場合にかかる金額も出しておきましょう。住み替えのトビラでは、60代で住み続けたときにかかるお金も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ