マンションからの住み替え(買い替え)でかかる引っ越し費用は、業者の料金より先に、引っ越しが1回で済むか2回になるかで決まります。
回数は売りと買いの順番で決まるため、料金を比べる前に、仮住まいを挟むかどうかを決めておきます。
回数が変わると総額がどれだけ動くのかを、1回あたりの水準まで含めて説明します。
マンションからの住み替えは引っ越しが1回か2回かで費用が変わる
引っ越し費用の総額を最も大きく左右するのは、料金の安さよりも、引っ越しが1回で済むか2回になるかです。
マンションからの住み替えでは、売却と購入をどう進めるかで引っ越しの回数が変わり、その回数が費用の全体像を分けます。まずは自分がどのパターンに当てはまるかを、下の表で押さえておきましょう。
| 住み替えパターン | 引っ越しの回数 | 引っ越し費用の目安 | 仮住まい費用 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 売り先行(仮住まいあり) | 2回 | 概ね2回分 | あり(別途) | 売却代金を購入に充てたい人 |
| 買い先行 | 1回 | 1回分 | なし | 先に購入できる資金余力がある人 |
| 同時決済(引渡し猶予) | 1回 | 1回分 | なし | 売却と購入の日程を合わせたい人 |
住み替え全体でいくら見ておくかという総額の話は別に整理が必要で、この記事では引っ越し(移動)にかかる費用に絞って見ていきます。
売り先行は「旧居→仮住まい→新居」で引っ越しが2回になる
売り先行は、旧居を売って引き渡したあとに住む場所がいったん無くなるため、間に仮住まいを挟んで引っ越しが2回になります。
売り先行とは、いまのマンションを先に売ってから新居を買う進め方です。売却代金を新居の購入資金に充てられるので、資金計画が立てやすい方法として選ばれます。
ただし、売買契約から引き渡しまでの間に新居の購入が間に合わないと、旧居を明け渡したあとに住む場所が空いてしまいます。そこで多くの場合、賃貸などの仮住まいをはさみます。
この結果、荷物の移動は「旧居から仮住まいへ」と「仮住まいから新居へ」の2回に分かれます。引っ越しそのものが2度発生する点が、売り先行の費用面での特徴です。
買い先行・同時決済なら引っ越しは1回で済む
買い先行や同時決済では、売却と購入のタイミングを合わせられるため仮住まいが要らず、引っ越しは1回で完結します。
買い先行は、新居を先に購入してから、いまのマンションを売る進め方です。新居が先に手に入るので、旧居から新居へそのまま1回で移れます。同時決済(引渡し猶予)は、売却の引き渡しと購入の決済をほぼ同じ時期にそろえ、旧居の明け渡しを少し待ってもらう段取りで、これも住む場所が途切れないため引っ越しは1回で済みます。
ただし買い先行は、旧居が売れる前に新居を買うため、一時的に両方のローンを抱えたり、つなぎ融資を使ったりといった資金の負担が生じることがあります。引っ越し費用とは別に、資金の手当ても合わせて考えておく必要があります。
自分がどちらの型になるかを見分ける
自分が1回型か2回型かは、購入資金を売却代金でまかなう必要があるかどうかで、おおよそ見分けられます。
- 売却代金を購入資金に充てないと新居を買えない → 売り先行になりやすく、2回型
- 自己資金や住宅ローンで先に購入できる余力がある → 買い先行・同時決済にでき、1回型
- 売却と購入の日程を合わせられる見込みがある → 同時決済で1回型
どちらになりやすいかは、手元の資金と売買の日程しだいです。まず1回で済むか2回になりそうかの見当をつけておくと、引っ越し費用の見積もりも立てやすくなります。
引っ越し1回あたりの費用相場(マンション住み替えの目安)
ここで示すのは引っ越し1回分の料金の目安です。引越運送料を集計した公的統計・業界団体統計は確認できていません。総務省の小売物価統計調査(動向編)の全国統一価格品目にも引越運送料に該当する品目がなく、距離帯別・繁忙期別の引越費用を集計した統計も見当たりませんでした。以下の金額は出所を示せる数字ではなく、業界で語られる相場観です。自分の条件での金額は、複数社の見積もりで確かめてください。
引っ越し料金は、荷物量・距離・時期の3つでおおよそ決まります。2回になる場合の追加分はこのあとに扱うとして、まずは1回分の水準をつかみましょう。
世帯人数(荷物量)別の費用の目安
引っ越し1回分の費用は、世帯人数(およその荷物量)が増えるほど上がり、単身で概ね5〜9万円、家族で12〜15万円台が目安とされます。
| 世帯人数(荷物量の目安) | 通常期 | 繁忙期 |
|---|---|---|
| 単身 | 概ね5〜7万円 | 概ね7〜9万円 |
| 2人 | 概ね9〜11万円 | 概ね11〜13万円 |
| 3〜4人以上 | 概ね12〜14万円 | 概ね14〜15万円台 |
※上の表の金額は一次情報にもとづくものではありません。
上の金額は近い距離での引っ越しを想定した目安で、荷物量・距離・時期によって上下します。家具や家電が多い世帯ほど上振れしやすく、荷物を減らせれば下がる余地があります。
距離と時期でどれだけ変わるか
同じ荷物量でも、距離が延びるほど、また2〜4月の繁忙期ほど費用は上がります。
- 距離:同一市区内などの近距離が最も安く、都道府県をまたぐ長距離ほど高くなる
- 時期:2〜4月の繁忙期は通常期より高くなりやすい(何割高いかを集計した統計はなく、割増の幅は業者と条件によって変わります)
- 曜日・時間帯:土日や午前中の便は埋まりやすく、割高になりやすい
引っ越し料金は、トラックと作業員をどれだけの時間おさえるかで決まります。距離が延びれば移動と拘束の時間が増え、繁忙期は依頼が集中して単価が上がる、という仕組みです。
マンションから運び出すときに増えやすい費用と手間
マンションからの引っ越しは、建物の構造や共用部のルールによって、一般の料金表に無い加算や段取りが生じやすい点に注意が要ります。
- エレベーターの有無・台数:無い、または1台しかない高層階では作業に時間がかかる
- 高層階・作業距離:玄関からエレベーター、駐車位置までが遠いと人手と時間が増える
- 大型トラックの寄り付き:建物前に停められないと、小型車への積み替えや横持ちが発生する
- 共用部の養生:エントランスや廊下、エレベーター内を傷つけないための保護作業
- 管理組合・管理会社への届出:搬出入日の連絡やエレベーターの利用予約が必要な場合がある
これらが費用に響くのは、引っ越し料金の多くが「人手×時間」で決まるからです。エレベーターが使えなかったり、トラックを建物の近くに停められなかったりすると、同じ荷物量でも運び出しに余計な時間と人手がかかります。
また、分譲マンションでは共用部の使い方に管理規約のルールがあり、作業日やエレベーターの使用を事前に管理組合・管理会社へ届け出る決まりのことがあります。引っ越し日が近づいてから慌てないよう、早めに管理規約を確認し、必要な予約や連絡を済ませておきましょう。
加算額は建物の造りや業者によって変わるため、金額はいちがいに言えません。訪問見積もりの際に、エレベーターの状況やトラックの停車位置まで伝えておくと、あとから追加になりにくくなります。
仮住まいを挟む「引っ越し2回」で余分にかかる費用
引っ越しが2回になる売り先行では、1回で済む場合に比べて引っ越し費用が余分にかかります。
この章は、回数が2回に決まった人に向けて、引っ越し(移動)にかかる追加分だけを扱います。仮住まいの家賃や敷金といった住居費は、ここでは対象にしません。
参考までに、家賃系の水準は公的な調査で確かめられます。三大都市圏の民間賃貸の月額家賃は平均83,381円・中央値74,000円、共益費は平均4,837円です。敷金・保証金があった世帯は51.9%、礼金があった世帯は43.1%で、いずれも「1ヶ月ちょうど」が最多です。この調査は2024年4月から2025年3月までに住み替え等を行った世帯の行動を捉えたものです。仮住まいの費用を見積もるときは、何か月借りるかと初期費用を含むかを必ず決めてから計算してください。
出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」6.4.2
引っ越し一式が丸ごともう一度かかる
2回型では、運搬に加えて引っ越しに付随する作業まで旧居→仮住まい、仮住まい→新居でもう一度発生するため、引っ越し費用は1回型の倍近くになりやすくなります。
1回の引っ越しには、荷物の運搬のほかにもさまざまな作業が含まれます。エアコンの取り外しと取り付け、ダンボールなどの荷造り資材、当日の立ち会いといった手間が、その一つひとつです。2回動くということは、これらがそれぞれ2回分かかることを意味します。
総額を見積もるときは、1回分の目安をおおよそ2倍にして見ておくと、大きく外れません。エアコンの脱着や資材の費用は移動のたびに積み上がるため、単純な2倍より少し多めに見ておくと安心です。
荷物の一時保管(トランクルームなど)が必要になることがある
仮住まいが手狭で荷物を全部持ち込めない場合は、トランクルームや業者の一時預かりを使い、保管費用が別にかかることがあります。
仮住まいには、いまのマンションより狭い賃貸を選ぶことが少なくありません。その場合、大型の家具や季節ものなど、当面使わない荷物を仮住まいに置ききれないことがあります。
こうしたときは、トランクルームを借りたり、引っ越し業者の一時預かりサービスを使ったりして、荷物を分けて保管します。費用は保管する荷物の量や期間によって変わるため、一概には言えません。
すべての人に必要になるわけではありません。仮住まいの広さと荷物量を見比べ、置ききれない分だけを預ける前提で考えておくと、余分な出費を防げます。
マンション住み替えの引っ越し費用を抑えるコツ
費用を最も大きく左右するのは料金の値切りよりも引っ越しの回数ですが、回数は売買の進め方で決まるため、ここでは回数以外に自分で動かせる抑えどころを扱います。
時期の選び方、複数社の見積もり比較、日程がずれたときの備えの3つが、自分の判断で費用や損失を抑えられるポイントです。
繁忙期(2〜4月)を避け、日取り・時間帯を柔軟にする
引っ越しの時期や日取りに融通をきかせられるほど、費用は下げやすくなります。
- 時期:割高になりやすい2〜4月を外し、通常期に回せると下がりやすい
- 日取り:土日や月末を避け、平日や月の半ばにする
- 時間帯:開始時間を業者に任せる「フリー便」にすると割引が受けやすい
引っ越し料金は、依頼が集中する時期・曜日・時間帯ほど高くなります。条件をこちらから細かく指定せず、業者の都合に合わせられる部分を増やすほど、値引きの余地が生まれます。
ただし住み替えでは、新居の引き渡し日に合わせて引っ越し日が決まりやすく、時期を自由に選べないこともあります。動かせる範囲で日取りや時間帯を調整する、という考え方が現実的です。
複数の引っ越し業者から見積もりを取って比べる
同じ条件で複数の業者から見積もりを取ると、相場感がつかめて、過不足のない金額で依頼しやすくなります。
見積もりを比べるときは、荷物量とサービス範囲をそろえるのがコツです。運んでもらう荷物、エアコンの脱着の有無、梱包をどこまで頼むかを各社に同じ条件で伝えると、金額の差が比べやすくなります。
正確な金額を出すには、訪問見積もりが役立ちます。担当者が実際に荷物の量や搬出経路を見て算出するため、当日になって追加料金が発生する事態を防げます。マンションの場合は、エレベーターの有無やトラックの停車位置も合わせて見てもらいましょう。
日程がずれやすい住み替えではキャンセル料の規定を知っておく
住み替えは売却と購入の日程がずれやすく、引っ越し日の変更やキャンセルが起こりがちなので、キャンセル料の決まりを知っておくと慌てずに済みます。
売却の引き渡しと購入の決済がかみ合わないと、予定していた引っ越し日を動かさざるを得ないことがあります。このとき気になるのが、いつからキャンセル料がかかるのかです。
国が定める標準引越運送約款(平成2年運輸省告示第577号。最終改正 平成31年国土交通省告示第321号)では、引っ越しを解約・延期したときに業者が請求できる手数料の上限が、第21条で次のように決められています。手数料の率は、平成30年(2018年)6月1日施行の改正で定められた水準です。
| 解約・延期を申し出た時期 | 手数料の上限 |
|---|---|
| 前々日 | 見積運賃等の20%以内 |
| 前日 | 見積運賃等の30%以内 |
| 当日 | 見積運賃等の50%以内 |
出典: 国土交通省「自動車:標準引越運送約款等の改正について」
ここでいう「見積運賃等」の料金部分は、積込み・取卸し・搬出・搬入・荷造り・開梱に要するものに限られます。
手数料を請求できるのは、解約・延期の原因が荷送人(依頼した側)の責任による場合に限られます。さらに、業者が見積書に記載した荷物の受取日の3日前までに、見積書の記載内容の変更の有無等を確認しなかった場合は、手数料を請求できません(第21条第1項ただし書)。前々日より前に申し出た場合も、手数料はかかりません。日程がずれそうだと分かった時点で早めに業者へ連絡するほど、負担を小さく抑えられます。多くの引っ越し業者はこの約款に沿って規定を定めていますが、契約前に各社の解約規定も確かめておきましょう。
まとめ:引っ越し費用を回数から読むなら、住み替えのトビラ
住み替えの引っ越し費用は、1回で済むか2回になるかを先に見きわめてから見積もります。回数が1回増えると、荷造りから運び出しまでの一式がまるごと乗るためです。
見きわめるには、仮住まいを挟むかどうかを、売りと買いの順番を決めるときに一緒に決めます。後から挟むことになると、荷造りと運び出しがもう一度必要になります。
業者を当たる前に、引っ越しが何回になるのかを見きわめてください。住み替えのトビラでは、荷物量や距離で変わる1回あたりの水準も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
