マンションを売って賃貸へ移ると心を決めても、引っ越してから「こんなはずでは」と後悔しないか、不安は残ります。 売って賃貸を選んだ人がつまずきやすいのは、売るかどうかの迷いではなく、決めたあとに待つ現実の見極めです。 生涯の家賃と売却資金の資金設計、高齢期の賃貸契約の壁、持ち家に戻れない可能性、売却と入居の段取りまで、実行前に確かめたい判断材料をそろえます。
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マンションを売って賃貸に移るメリットとデメリット
賃貸への移行は、所有の負担を手放す身軽さと引き換えに、生涯の家賃を背負う選択です。
良い面と手放す面を等身大で把握しておくことが、引っ越したあとの後悔を防ぎます。ここでは損得の全体像を、決めた人の視点で整理します。
維持費の負担が消え住み替えも柔軟になる
売って賃貸に移る利点は、維持にかかる固定費と管理の手間から解放され、住まいを身軽に変えられることです。
所有していると、管理費・修繕積立金・固定資産税といった費用が毎月・毎年かかり続けます。売って賃貸に移れば、こうした負担がなくなります。得られる利点を並べると、次のようになります。
- 管理費・修繕積立金・固定資産税などの継続費用がなくなる
- まとまった売却資金が手元に入る
- 加齢や暮らしの変化に合わせて広さ・立地を選び直せる
- 将来の空き家化や相続の負担を避けやすい
加齢とともに階段や駅までの距離が負担になっても、賃貸なら住み替えで対応しやすくなります。所有していた住まいをいずれ子に残す場合の管理や相続の手間も、現金にしておくことで整理しやすくなります。売却で得た資金をどう使うかは、老後の暮らし全体にかかわるため、あらためて詳しく考えます。
家賃が生涯続き資産が手元に残らない
一方で、賃貸は住み続ける限り家賃の支払いが終わらず、不動産という資産が手元に残りません。
持ち家のローンは完済すれば返済が終わり、その後は固定資産税や維持費が残るだけになります。賃貸は違います。80代でも90代でも、住んでいる限り毎月の家賃が発生します。
資産の面でも変化があります。売却でマンションは現金に変わります。現金は分けやすく、相続のときに子どもどうしで公平に配りやすくなります。反面、値上がりを期待できる不動産という資産は手元から離れます。
住まいの自由度も下がります。壁紙の張り替えや間取りの変更など、自分の判断でできる範囲は持ち家より狭まります。高齢になってからの借りにくさや、一度手放すと元の持ち家に戻りにくい点も、賃貸を選ぶうえで頭に入れておきたい現実です。
売却資金と家賃で考える老後の資金設計
売って賃貸で後悔するかどうかは、売却資金と年金で生涯の家賃を賄い切れるかで決まります。
家賃と手持ち資金の関係を、数字の考え方として順に整理します。資金が足りる場合はもちろん、足りないおそれがある場合の見極めまで、正直に扱います。
売却で得た現金は生涯の家賃の元手として考える
売却で受け取る現金は、老後の生活費とは別に、これから払い続ける家賃の元手として先に切り分けておきます。
気をつけたいのは、売却額がそのまま使える金額ではないことです。仲介手数料、登記の費用、引っ越し代などの諸費用と、売却益にかかる税金を差し引いた手取りが、実際に手元へ残ります。
税金の負担を抑える仕組みとして、居住用財産を売ったときの特例があります。自分が住んでいた家(または住まなくなって3年以内の家)を売った場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得(売却益)から最高3,000万円を控除できます。親子や夫婦など特別な関係のある人への売却では使えないなどの要件があり、適用を受けるには確定申告が必要です。要件や期限は変わることがあるため、実際に使えるかは最新の情報で確かめ、税理士に相談すると安心です。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例
この特例で税負担が軽くなれば、手取りが増え、家賃の元手も厚くなります。手取りの具体額は、物件やローン残債、控除を使えるかどうかで人によって変わります。まずは「手取りでいくら残り、そのうちいくらを家賃の元手として確保するか」を決めておくことが、資金設計の出発点になります。
年金でどこまで家賃を賄えるか毎月の不足を出す
まず毎月の家賃を年金でどこまで賄えるかを見て、足りない分、つまり月々の不足額をはっきりさせます。
老後の毎月の収入は、多くの場合、年金が中心になります。はじめに自分の年金額を、ねんきん定期便や見込み額で確かめます。そこから、家賃をのぞいた生活費(食費・光熱費・医療費など)を引くと、家賃に回せる金額が見えてきます。
たとえば、夫婦二人で年金の手取りが月16万円、家賃をのぞいた生活費が月14万円だとします(いずれも目安で、地域や暮らし方で変わります)。この場合、家賃に回せるのは月2万円です。借りたい部屋の家賃が月12万円なら、毎月10万円が足りません。この足りない分が「月々の不足額」です。
大切なのは、この不足額を年金の範囲で無理に抑え込もうとしないことです。足りない分は、切り分けておいた売却資金から取り崩して補うという考え方に立ちます。自分の年金額と希望する家賃を当てはめれば、毎月どれくらい取り崩すことになるかが見えてきます。
家賃のほかに続く更新料・保証料・保険の負担
家賃だけを見て資金を組むと、更新料や保証料などの継続費用を見落としやすくなります。
賃貸には、毎月の家賃のほかにも、繰り返しかかる費用や、住み替えのたびにかかる費用があります。主なものは次のとおりです。
- 更新料(2年ごとなど契約更新のたび。家賃1か月分ほどが目安・地域や物件による)
- 家賃債務保証会社の保証料(初回に家賃0.5〜1か月分ほど、以降も年ごとの更新料が目安・会社による)
- 火災保険料(1〜2年ごと)
- 住み替え時の敷金・礼金・引っ越し費用
これらは家賃に上乗せで続く費用です。特に高齢になってからは住み替えの回数が増えることもあり、そのたびに敷金・礼金や引っ越し費用がかかります。金額は地域や物件、保証会社によって幅があるため、あくまで目安として押さえ、実際の物件で確かめます。こうした費用も、生涯の資金計画に組み込んでおきます。
住む年数から逆算して資金が尽きないか確かめる
住むと見込む年数に家賃と継続費用を掛け合わせ、予備資金を残して足りるかを逆算します。
月々の不足額が分かったら、それを生涯の総額へ広げます。たとえば月10万円の不足が25年続くとすると、家賃分だけで10万円×12か月×25年、およそ3,000万円になります(年数・金額とも目安)。ここに、更新料や保証料などの継続費用が上乗せされます。
さらに、家賃以外の備えも欠かせません。病気や介護でまとまったお金が要る場面、施設への住み替え、家電の買い替えなど、予備の資金を別に確保しておきます。生涯の家賃総額に予備費を足した金額を、切り分けた売却資金と取り崩せる貯蓄で賄えるかを見ます。
逆算してみて、資金が届かないおそれがある場合は、いったん立ち止まりたいところです。家賃の水準を下げる、家賃相場の低い地域を選ぶ、売却の時期を調整するといった見直しで収まるならよいのですが、それでも生涯の家賃を賄い切れない見込みなら、売って賃貸に移る計画そのものを慎重に見直す必要があります。売却資金が生活の支えになる分、使い切ってしまってからでは立て直しがきかないためです。
どこまでが安全圏かは、年金額・貯蓄・健康状態・望む暮らしで一人ひとり変わります。資金計画に不安が残るなら、老後の家計に詳しいファイナンシャルプランナーに、自分の数字で試算してもらうと見通しを立てやすくなります。
高齢になってから賃貸を借りるときの壁と備え
高齢での賃貸探しには、貸主が慎重になるという壁がありますが、備えと公的な仕組みで越えられます。
借りにくさの正体と、現実的な備えを順に見ます。「借りられない」で終わらせず、対処までそろえます。
高齢者が賃貸で敬遠されやすい理由
貸主が高齢の入居者に慎重になるのは、家賃の支払いと、万一のときの負担を心配するためです。
貸主の立場からは、いくつかの気がかりがあります。定年後は収入が年金中心になり、現役のころより支払い能力を不安視されやすいことがあります。連帯保証人を頼める親族が、年齢とともに減っていくこともあります。
もうひとつは、室内での事故や、一人暮らしでの孤独死といった懸念です。こうしたことが起きると、貸主には原状回復や次の入居付けの負担がかかります。これらは高齢者を責める話ではなく、貸主側の事情として理解しておくと、備えの打ち手が見えてきます。
保証会社や保証人で入居審査に備える
保証人がいなくても、家賃債務保証会社の利用や支払い能力の証明で、入居審査は通しやすくなります。
近年は、連帯保証人を立てる代わりに家賃債務保証会社を使う契約が一般的になっています。保証人を頼める親族がいなくても、保証会社の審査を通れば契約できる物件が増えています。
あわせて、支払い能力を示す資料をそろえておきます。年金の受給額が分かる書類や、預貯金の残高が分かるものを用意すると、貸主の不安をやわらげやすくなります。ただし、保証会社を使えるかどうかや審査の基準は、物件や会社によって異なります。原則として保証会社の利用が前提になりますが、詳しい条件は申し込み先で確かめます。
住宅セーフティネット制度やURなど公的な選択肢
保証人を立てにくい場合は、公的な住まいの仕組みが受け皿になります。
高齢者を含め、住まいの確保に配慮が必要な人(住宅確保要配慮者)を支える制度が用意されています。代表的なものが、住宅セーフティネット制度です。高齢者・低額所得者・障害者・子育て世帯などの入居を断らない賃貸住宅が、セーフティネット住宅として登録され、専用のシステムで探せます。
入居のときの相談や見守りなどを支えるのが、居住支援法人です。都道府県が指定した法人で、賃貸住宅への入居に関する情報提供や相談、家賃債務保証、入居後の見守りといった生活支援を行います。保証人や身元を頼れる人が近くにいない場合の相談先になります。
保証人なしで申し込める選択肢として、UR賃貸住宅もあります。UR賃貸住宅は独立行政法人都市再生機構が運営し、契約に連帯保証人も家賃債務保証会社も必要ありません。礼金・仲介手数料・更新料もかからず、入居時に必要なのは敷金と日割り家賃などです。
出典: UR賃貸住宅 メリット・特徴
このほか、見守りや生活支援のついたサービス付き高齢者向け住宅もありますが、ここでは一般の賃貸への移行を主に考えます。公的な仕組みは要件や運用が変わることがあるため、利用を考えるときは各窓口で最新の内容を確かめます。
マンションを売ると持ち家に戻りにくい
売却は取り消せず、同じ持ち家へ戻るのは価格とローンの両面で難しくなります。
引っ越したあとで「やはり持ち家がよかった」と思っても引き返しにくい、この不可逆性を理解したうえで進みます。
売却後に同じ持ち家へ戻るのが難しい理由
一度売った家は同じ条件では戻らず、賃貸が合わなくても持ち家へ戻るハードルは高くなります。
売った物件を、あとから同じ条件で買い戻せる保証はありません。同じマンションの別の部屋が売りに出るとは限らず、出ても価格が上がっていることがあります。
再び持ち家を買うには、ローンの壁もあります。高齢になってからの住宅ローンは、借入期間や年齢の条件で審査が厳しくなりがちです。賃貸暮らしが想定と違ったときに、持ち家へ戻るという選択肢が細くなります。資産の大半が自宅で、現金の余力が薄い人ほど、この後戻りのしにくさは重く受け止めておきたいところです。
住みながら売るリースバックとの違い
「住みながら売る」リースバックは、売って引っ越す今回の選択とは別のものとして区別しておきます。
リースバックは、自宅を売却したあとも、その家に賃貸で住み続ける仕組みです。買主に所有権は移りますが、引っ越さずに同じ家に住めます。売って別の賃貸へ移る場合と違い、住み慣れた家や地域を離れずに済むのが特徴です。
一方で、売却後は家賃が発生します。買い戻しの条件や契約の期間など、確かめておきたい点もあります。今回の「売って賃貸へ引っ越す」選択とは仕組みが異なるため、混同しないように整理しておくと、自分がどちらを考えているのかを見分けやすくなります。
マンション売却と賃貸入居のタイミングと段取り
売却と入居の順序をまちがえると、二重払いや仮住まいが生じるため、段取りが後悔を左右します。
いつ・どの順で動くか、実行の勘所を順に見ます。住宅ローンの残債がある場合の進め方まで扱います。
二重払いと仮住まいを避けるスケジュールの組み方
賃貸の申し込みは、売買契約を結んで引き渡し日が定まってから動かすと、二重払いと仮住まいを避けやすくなります。
先に新しい賃貸へ引っ越してしまうと、マンションが売れるまでの間、住宅ローンの返済と新居の家賃が重なります。これが二重払いです。逆に、賃貸を決める前にマンションの引き渡しが済んでしまうと、次の家が決まるまで仮住まいが必要になります。
マンションの売却は、買主が現れて初めて進むため、いつ売れるかは読みにくいものです。だからこそ、売買契約を結んで引き渡し日が決まってから賃貸を申し込む順序にすると、二つの住まいの費用が重なる期間を短く抑えやすくなります。とはいえ引き渡しと入居の日をぴったり合わせるのは難しいため、多少の重なりや短い仮住まいは見込んでおくと安心です。
売る前に賃貸を借りられるか見通しを立てる
高齢での賃貸探しは時間がかかるため、売却を決める前に、借りられる見通しを立てておきます。
売却が完了しないと、賃貸の本申し込みは進めにくいのが実際です。一方で、高齢だと審査に時間がかかったり、希望する物件が見つかりにくかったりします。この二つが重なると、売ったあとに住まいが決まらない事態にもなりかねません。
そこで、売る前の下調べが役立ちます。希望するエリアの家賃相場、保証会社を使えそうか、条件に合う物件がどれくらいあるかを、あらかじめ調べておきます。借りられる見通しが立ってから売却を本格化させると、住まいが決まらない不安を減らせます。
住宅ローンの残債があるときの進め方
住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済できるかを先に確かめます。
マンションを売るには、住宅ローンを完済して抵当権を外す必要があります。売却額がローン残債を上回るか下回るかで、進め方が変わります。売却額が残債を上回る状態をアンダーローン、下回る状態をオーバーローンと呼びます。
アンダーローンなら、売却代金でローンを完済し、残りを次の賃貸の資金に回せます。オーバーローンの場合は、足りない分を自己資金で補うか、金融機関に相談して返済の方法を調整する必要があります。引き渡しのときには、完済と同時に抵当権を抹消する手続きを行います。
ローン残債は、次の賃貸の審査にも影響することがあります。返済中の借入がある状態は、貸主や保証会社が支払い能力を見るときの材料になります。ローンの扱いは金融機関によって原則や対応が異なるため、残債がある場合は早めに借入先へ相談しておくと進めやすくなります。
まとめ:マンションを売って賃貸に移る前に確かめること
マンションを売って賃貸へ移る選択は、所有の負担を手放す身軽さと、生涯続く家賃とのトレードオフです。後悔を防ぐ鍵は、売却資金と年金で生涯の家賃を賄えるかを、月々の不足額から総額まで逆算して確かめることにあります。
あわせて、高齢期の賃貸契約の壁には保証会社や住宅セーフティネット制度・URといった備えがあること、一度売ると持ち家に戻りにくいこと、売却と入居の順序を誤ると二重払いが生じることも、実行前に押さえておきたい現実です。
税制や公的制度、費用の相場は少しずつ変わっていきます。住み替えのトビラは、こうした変わり続ける情報を最新の形で届け、あなたの住み替えの判断に役立つ材料をそろえていきます。
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