マンションの評価額の調べ方|一物五価の違いと目的別(売却・相続・保有税)の見方

不動産の評価額とは?一物五価の違いと目的別の調べ方

自分のマンションの値段を調べてみたら、実勢価格・公示地価・路線価・固定資産税評価額と、いくつもの「価格」が出てきて、どれが本当の値段なのか分からず戸惑った。そんな経験はないでしょうか。不動産には目的ごとに異なる公的な価格があり、まとめて「一物五価」と呼ばれます。

この記事では、マンションを持つ人に向けて、5つの評価額が何を・誰が・何のために決めた値かを一枚で整理し、売却相場を知りたいのか、相続や贈与を見積もりたいのか、保有時の税金を確かめたいのか、といった目的に応じて、どの値を見てどこで調べればよいかまでを中立の立場で解説します。マンションならではの見方(敷地の持分や、令和6年から変わった相続税評価のルール)にも触れていきます。

マンションの評価額とは?1つの不動産に5つの価格が並ぶ理由

マンションの「評価額」は1種類ではなく、目的ごとに複数の公的な価格が存在します。一般に「一物五価」と呼ばれる状態です。

この章では、まず「評価額」という言葉がいくつもの値を指す点と、なぜ1つの不動産に複数の価格が並ぶのか、その背景を先に押さえます。個々の値の中身や調べ方は、次章以降で順に見ていきます。

「評価額」が指す値は目的で変わる(税務と取引で別物)

「評価額」という一つの言葉は、固定資産税・相続税・取引といった場面ごとに別々の値を指します。同じ言葉で違う数字に出会うため、混乱が起きやすい点です。

たとえば、毎年の固定資産税を計算するときの値と、相続でマンションを評価するときの値は別物です。さらに、実際にマンションを売り買いするときに意識する「いくらで売れるか」という値も、これらの税金の値とは異なります。

自分のマンションについて「評価額はいくら」と調べても、どの目的の値を指しているのかがはっきりしないと、話がかみ合いません。まずは「評価額には税務で使う値と、取引で意識する値があり、しかも税務の中でも税の種類で分かれる」という前提を持っておくと、以降の整理が分かりやすくなります。

評価主体と目的が違うから価格が分かれる(一物五価の理由)

同じ不動産に複数の価格が並ぶのは、「誰が・何のために評価するか」が値ごとに違うからです。

土地取引の目安を示すために国が公表する値があれば、それを補う形で都道府県が公表する値もあります。相続税や贈与税を課すために国税庁が定める値があり、毎年の固定資産税を課すために市町村が定める値もあります。評価する主体と狙いがそれぞれ違うので、同じ不動産でも導かれる金額の水準は変わってきます。

課税のための値は、納税者の負担が急に重くならないよう、取引で成立する価格より控えめに置かれる傾向があります。一方で、実際に市場で売買される価格は、その時々の需要や個別の事情で動きます。だからこそ、一つの不動産に性格の異なる金額がいくつも並ぶことになります。

とくにマンションは、土地(敷地)を多数の所有者で共有し、1戸あたりの持分はごく小さくなります。価値の大半は建物や立地、管理の状態で決まるため、土地そのものの地価指標よりも、マンションの取引事例のほうが売却相場に近いといえます。この点は、目的別の見方を扱う後の章であらためて整理します。

なお、代表的な公的価格を数えて「一物五価」と呼ぶのが一般的ですが、これに不動産鑑定による評価を加えて「六価」と整理する見方もあります。本記事では、公的に公表される代表的な5つを対象にします。

マンションに関わる5つの評価額の違い【一覧で比較】

5つの評価額は、評価主体・目的・時点・価格水準という切り口で性格が分かれます。

この章では、まず一覧表で5つを横並びに見て全体像をつかみ、そのうえで特に取り違えやすい値の見分け方を補います。

5つの評価額を一覧で見る(誰が・何のため・時点・水準)

5つの値は評価主体・目的・時点・水準で分かれ、まずは表で全体像をつかむのが近道です。

評価額誰が決めるか何のための値か公表・改定の時点価格水準の目安どこで調べるか
実勢価格市場(売主と買主)実際の売買取引の都度実際に成立する価格に最も近い不動産情報ライブラリ(取引価格)・レインズ
公示地価国(国土交通省)取引の指標毎年1月1日時点取引の目安となる標準的な水準不動産情報ライブラリ(地価公示)
基準地価都道府県公示地価を補う指標毎年7月1日時点公示地価と同じ水準を狙う不動産情報ライブラリ(地価調査)
相続税路線価国税庁相続税・贈与税の課税毎年1月1日時点取引の目安より低めに置かれる傾向国税庁「路線価図・評価倍率表」
固定資産税評価額市町村固定資産税などの課税3年ごとに評価替え取引の目安より低めに置かれる傾向課税明細書・市区町村

※価格水準の割合(路線価は公示のおよそ何割、など)は広く目安として使われますが、何に対する割合かで意味が変わります。詳しくは記事後半の注意点で扱います。

大きくつかむと、この5つは3つの系統に分けられます。取引の目安を示す「指標系」が公示地価と基準地価、課税のために置かれる「課税系」が相続税路線価と固定資産税評価額、そして実際に市場で成立する「実勢価格」です。

このうち、マンションを売りたいときにいちばん近い値は実勢価格です。売却相場を考える出発点になるのはこの値で、指標系や課税系は目的が別にある点を押さえておくと、次に見る「どれを見ればいいか」の判断がスムーズになります。

混同しやすい値の見分け方(指標か実勢か/課税用か取引用か)

取り違えが起きやすいのは、「指標と実際の成約」「課税用と取引用」という2つの組み合わせです。

まず、公示地価や基準地価は「指標」であって、実際の成約額そのものではありません。これらは選ばれた地点(標準地・基準地)を不動産鑑定士が評価し、取引の目安として示す値です。周辺で実際に売買された金額とは一致しないため、公示地価をそのまま「この土地の売値」と受け取ると読み違えます。

次に、相続税路線価や固定資産税評価額は「課税のための値」であって、取引で成立する価格とは狙いが違います。前に触れたとおり、課税用の値は取引の目安より控えめに置かれる傾向があるため、これを売却相場と取り違えると、実際より低く見積もってしまいます。

見分けの軸はシンプルです。その値が「取引の目安を示すためのものか、税金をかけるためのものか、実際に売買された結果なのか」を意識すれば、どの場面で使うべき値かを取り違えにくくなります。

マンションの場合は、もう一段はっきり仕分けられます。公示地価・基準地価は土地取引の指標で、敷地の持分がごく小さいマンションの売却相場を直接表す値ではありません。マンションで売却相場を知りたいなら、地価指標をたどるより、条件の近い取引事例(実勢価格)を見るほうが近道です。

目的別|マンションでどの評価額を見ればいいか

見るべき評価額は、「何のために値を知りたいか」で決まります。マンションの評価額は複数ありますが、目的がはっきりすれば、見る値は自然に絞られます。

この章では、売却相場・相続税や贈与税・保有時の税金という目的ごとに、マンションでどの値を見ればよいかを整理します。それぞれの値を実際に調べる手順は、次章で公的サイト・書類別に案内します。

売却相場を知りたいとき|実勢価格を軸に査定で確かめる

売りたい・相場を知りたいなら、実際に成立している実勢価格(取引事例)を軸にし、最終的には査定で確かめるのが基本です。

マンションは同一棟や近隣に、面積帯・築年・階などの条件が近い成約事例が比較的豊富で、実勢の見当をつけやすい傾向があります。戸建てや土地は立地や形状などの個別性が高く、条件の近い事例が揃いにくいのとは対照的です。

一方、公示地価や路線価は取引の指標や課税のために置かれた値で、売却相場そのものではありません。とくに課税用の値は取引の目安より低めに置かれる傾向があり、これを売値と思い込むと、相場を実際より安く見てしまうおそれがあります。

公的な取引事例で分かるのは、条件の近い物件がいくらで取引されたかであって、あなたの部屋そのものの価格ではありません。同じ建物でも階や向き、室内の状態、管理のされ方で金額は動くため、最後はAI査定・机上査定・訪問査定で実額に近づけるのが安全です。

不動産一括査定とは?仕組み・メリット・デメリット・賢い使い方まで解説 マンションの一括査定とは?仕組み・査定額の見方から住み替えでの賢い使い方まで解説

相続税・贈与税を見積もりたいとき|マンションの相続税評価の考え方

相続税や贈与税でマンション一室を評価するときは、建物部分と敷地部分を分けて考えるのが、従来からの骨格です。

この従来の考え方では、マンション一室の相続税評価額を次の2つの合算で求めてきました。

  • 建物部分(区分所有権)=家屋の固定資産税評価額
  • 敷地部分(敷地利用権)=路線価を基とした1平方メートルあたりの価額 × 地積 × 敷地権の割合(持分)

路線価が定められていない地域では、路線価方式の代わりに倍率方式を用い、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて敷地部分を評価します。

ここでは「マンションの相続税評価は建物と敷地に分けて考える」という骨格をつかめれば十分です。実際の評価では、小規模宅地等の特例など金額を大きく左右する要素がからみ、適用の可否は個別の事情で判断が分かれます。具体的な評価や申告は、税理士に相談すると安心です。

令和6年1月から変わったマンションの相続税評価(区分所有補正率)

マンションは、相続税評価額と時価(市場で売買される価格)との乖離が大きいケースがあり、とくに高層・高階の物件で乖離が大きいとされて問題になっていました。これを受けて、国税庁が新しい通達「居住用の区分所有財産の評価について」を定めました。

この新しい評価は、令和6年(2024年)1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した居住用の区分所有財産(分譲マンション)から適用されます。

仕組みは、従来の評価額に「区分所有補正率」という率を乗じて補正するというものです。市場価格との乖離が大きい物件(タワーマンションなど)では、評価額が従来より上がる場合があります。逆に、乖離が小さい物件では下がる場合もあります。

具体的な補正率は、国税庁が用意している「区分所有補正率の計算明細書」で計算できます。

なお、この新しい評価の対象にならないマンションもあります。代表的には、地階を除く総階数が2以下の低層のものや、専有部分が3つ以下で全戸を区分所有者やその親族が住む二世帯タイプなどです。自分の物件が対象外にあたるかどうかは、登記の内容や専門家に確認してください。

評価額が上がるかどうかや、その程度は物件ごとに異なります。正確な評価額・適用の可否・具体的な計算は、税理士に相談してください。

出典: No.4667 居住用の区分所有財産の評価(国税庁)

固定資産税など保有時の税金を知りたいとき|固定資産税評価額

固定資産税や都市計画税など、マンションを持っている間にかかる税金は、固定資産税評価額が基礎になります。

この値は保有中の税金だけでなく、名義を変えるときの登録免許税や、取得したときの不動産取得税を計算する際の基礎にもなります。どの場面でどの税がかかるかを整理すると、次のとおりです。

  • 固定資産税・都市計画税(保有中に毎年かかる)
  • 登録免許税(登記のときにかかる)
  • 不動産取得税(取得したときにかかる)

マンションで見るときの特徴は、固定資産税評価額が土地(敷地)と家屋(専有部分)に分かれる点です。土地は敷地全体の評価額を敷地権の割合(持分)で按分した額になり、戸建てのように土地1筆をまるごと持つのとは異なります。

高さ60メートルを超え、複数の階に住戸があるタワーマンションでは、平成29年度の税制改正で階層別の補正が導入されました。平成30年度分以後の一定の新築を対象に、同じ建物のなかで高層階ほど高く、低層階ほど低くなるように税額が配分されます。

これらはいずれも固定資産税評価額をもとに税額が計算されます。ここでは「保有・取得・登記まわりの税金はマンションの固定資産税評価額が基礎になり、土地と家屋に分かれて持分で按分される」という点を押さえれば十分です。評価額を実際に調べる手順は、次章で書類別に案内します。

住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つで自分に関係する税がわかる 住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つで自分に関係する税がわかる

マンションの評価額の調べ方【公的サイト・書類別】

マンションに関わる5つの値は、いずれも公的な無料の窓口で自分で調べられます。

この章では、値ごとに「どこで・何を見れば分かるか」を出所つきで案内します。実勢価格と公示地価・基準地価は同じ不動産情報ライブラリで調べられるため、続けて見ていきます。

実勢価格の調べ方|不動産情報ライブラリ(マンションの取引価格)+レインズ

実勢価格に近い値は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」で、実際に取引された価格を検索して把握できます。マンションの中古取引もこのサイトで調べられます。

このサイトでは、実際に行われた不動産取引の価格情報が地域ごとに公開されています。手順は次のとおりです。

  • 不動産情報ライブラリのトップから「不動産価格(取引価格・成約価格)情報」を選ぶ
  • 地図から地域を絞り込むか、都道府県・市区町村・地区を指定する
  • 種類で「マンション(中古マンション等)」を選び、取引時期で条件をしぼる
  • 表示された取引事例で、面積あたりの価格や取引時期を確認する

成約ベースの事例をさらに見たいときは、指定流通機構が運営する「不動産取引情報提供サイト(通称レインズ・マーケット・インフォメーション)」も使えます。指定流通機構は国土交通大臣から指定を受けた法人で、全国に4つあり、「レインズ」はこの4機構の通称です。ここではマンションの成約価格を、面積帯・築年・成約時期といった条件で無料で検索でき、条件の近い事例を確認できます。

いずれのサイトで分かるのも、あくまで似た条件の物件がいくらで取引されたかという事例です。あなたの部屋そのものの金額ではありません。階や向き、室内の状態、管理状況で価格は動くため、事例で相場観をつかんだうえで、実際に売れる金額は最後に査定で確かめましょう。

出典: 不動産情報ライブラリ(国土交通省)

公示地価・基準地価の調べ方|不動産情報ライブラリ

公示地価と基準地価は、同じ不動産情報ライブラリの地価公示・地価調査の検索で調べられます。地図上で調べたい場所を表示し、標準地(公示地価)・基準地(基準地価)の地点をクリックすると、その地点の価格や1平方メートルあたりの単価、過去の推移を確認できます。

ただし、公示地価・基準地価は土地取引の指標で、マンションの売却相場を直接表す値ではありません。価値の大半が建物・立地・管理で決まり、敷地の持分も小さいマンションから住み替える人は、これらは参考程度に留めて構いません。売却相場は、前述の取引事例(実勢価格)で見るのが近道です。

出典: 不動産情報ライブラリ 地価公示・都道府県地価調査(国土交通省)

相続税路線価の調べ方|国税庁 路線価図・評価倍率表

相続税路線価は、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、対象地の前面道路の路線価を調べられます。手順は次のとおりです。

  • 国税庁「路線価図・評価倍率表」のページを開く
  • 調べたい年分と都道府県を選ぶ
  • 「路線価図」を選び、市区町村・地区を絞り込んで地図を表示する
  • 対象の土地が面する道路に書かれた数字(1平方メートルあたり千円単位)を読む

路線価が設定されていない地域では、路線価図の代わりに「評価倍率表」を使います。路線価を調べる手順そのものは、令和6年以降も変わりません。

ただし、令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得したマンション(居住用の区分所有財産)には、区分所有補正率という調整が入ります。そのため、従来どおり路線価に持分を掛けて単純計算した額は、実際の相続税評価とずれることがあります。

補正の考え方はこうです。まず、築年数・総階数・所在階・敷地持分の狭さの4つから「評価乖離率」を求めます。次にその逆数(1 ÷ 評価乖離率)を「評価水準」とします。評価水準が0.6未満なら「評価乖離率 × 0.6」、0.6以上1以下なら補正なし、1を超えるなら「評価乖離率」が区分所有補正率になります。評価額が時価から離れているほど、評価額を引き上げる方向に働く仕組みです。

実際の乖離率の計算には物件ごとの数値が要り、適用の可否にも例外があります。具体的な補正率は国税庁の「区分所有補正率の計算明細書」で計算でき、正確な評価額と計算は税理士に相談してください。

出典: 国税庁 No.4667 居住用の区分所有財産の評価

出典: 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(国税庁)

固定資産税評価額の調べ方|課税明細書・評価証明書・縦覧

固定資産税評価額は、毎年の納税通知書に付く「課税明細書」で最も手軽に確認でき、手元にない場合は市区町村の窓口で分かります。入手のルートは、大きく次の3つです。

  • 課税明細書:固定資産税・都市計画税の納税通知書に同封され、土地・家屋別に評価額が記載されている
  • 固定資産評価証明書:市区町村(東京23区は都税事務所)の窓口で申請すると発行され、手数料がかかる
  • 縦覧・課税台帳の閲覧:自分の評価額を市区町村内の他の物件と比べられる制度など

いちばん手軽なのは、手元に届く課税明細書です。明細のなかの「価格」または「評価額」の欄が、固定資産税評価額にあたります。納税通知書の送付時期や縦覧の期間は例年おおむね春ごろですが、自治体によって異なるため、詳しくは自分の市区町村で確認してください。

マンションで見るときの注意点は、課税明細書に土地(敷地)と家屋(専有部分)が分かれて載ることです。戸建てのように土地を1筆まるごと持つのと違い、マンションの敷地は所有者全員の共有で、自分は持分(敷地権割合)に応じた分を負担します。

そのため、土地欄の面積や評価額が、敷地全体の値なのか持分で按分したあとの値なのかは、自治体の様式によって異なります。自分の持分(敷地権割合)は、不動産登記簿(登記事項証明書)の「敷地権の割合」で確認するのが確実です。

出典: 固定資産税の概要(総務省)

固定資産税評価額の調べ方|書類・役所・ネットで確認する方法 固定資産税評価額の調べ方|書類・役所・ネットで確認する方法

マンションの評価額を調べるときの注意点

ここまで見てきた評価額は、どれも目的別に置かれた値です。混同したまま使うと、判断を誤ることがあります。

この章では、調べた値を実際に使うときに間違えやすい点を整理します。

税務用の値と売却相場は水準がずれる

相続税路線価や固定資産税評価額は課税のための値であり、実際に売れる価格(実勢価格)とは水準が異なります。マンションでも同じです。

課税用の値は、取引で成立する価格よりも控えめに置かれる傾向があります。そのため、届いた課税明細書の評価額や、調べた路線価をそのまま「これがうちのマンションの売値」と受け取ると、相場を実際より低く見積もってしまいます。逆に、その値だけを頼りに強気の値付けをしても、市場の実勢とかみ合わないことがあります。

マンションの売却相場を知りたいときは、課税用の値ではなく、実際の取引事例(実勢価格)を出発点にし、最後は査定で実額を確かめるのが基本です。税務用の値は、あくまでその税金を考えるための値だと切り分けて使いましょう。

割合の目安(8割・7割)はどこまで根拠があるか|宅地と家屋で話が違う

「路線価は公示価格の約8割」「固定資産税評価額は約7割」といった割合は、目安として広く使われます。このうち固定資産税評価額の7割は、宅地について「地価公示価格等の7割を目途に評価する」という総務省の説明があり、根拠のある数字です(平成6年度の評価替えから導入されました)。ただし、これは地価公示価格に対する目途であって、実際の売買価格に対する比率ではありません。

さらに、マンションの専有部分(家屋)は考え方そのものが違います。家屋の評価は「再建築価格及び経年減点補正率等に応じて」行うもので、同じ家屋をその場所に新築する場合の建築費を出発点にします。取引価格を基礎にしていないため、「売買価格の何割」という関係が成り立ちません。

固定資産税評価額が売買価格の何割になるかを集計・公表している統計は、総務省・国土交通省のいずれにも見当たりません。割合から逆算して自分の評価額を見積もるのではなく、課税明細書か固定資産評価証明書で実額を確かめてください。

出典: 総務省「地方税制度|固定資産税の概要」

たとえば「固定資産税評価額を0.7で割れば時価が分かる」といった計算は、当たりをつける程度にはなっても、正確な相場や税額を出す方法ではありません。マンションの売却相場を知りたいなら実勢価格と査定を、相続や贈与の評価額を知りたいなら相続税路線価そのものを見る、というように、目的に対応した値を直接調べるのが確かです。

まとめ:マンションの評価額と調べ方なら、住み替えのトビラ

マンションの評価額が1つでない理由は、「誰が・何のために決めた値か」が値ごとに違うからです。実勢価格・公示地価・基準地価・相続税路線価・固定資産税評価額は、それぞれ狙いが異なり、金額の水準も変わります。とくにマンションは、敷地を多くの所有者で分け合い1戸あたりの持分がごく小さいため、土地の地価指標より、マンションそのものの取引事例が売却相場に近いという特徴があります。

大切なのは、自分の目的から見る値を決めることです。売却相場を知りたいなら実勢価格を軸に最後は査定で確かめる、相続や贈与なら相続税路線価と建物の評価、保有時の税金なら固定資産税評価額、と目的に対応した値を選べば迷いにくくなります。マンションの相続税評価は令和6年1月から区分所有補正率による新しいルールが加わり、市場価格との乖離が大きい物件は評価額が従来より上がる場合があります。正確な評価額や適用の可否は税理士に相談すると安心です。

これらはいずれも、公的な無料の窓口で自分で調べられます。固定資産税評価額はマンションでは土地(敷地の持分)と家屋に分かれて課税明細書に載り、公示地価や基準地価は土地の指標であってマンションの売値そのものではありません。税務用の値と実際に売れる価格は水準がずれるため、売却相場を知りたいときは実勢価格を出発点にし、最終的に査定で実額を確かめられるよう、目的別の見方と調べ方を整理しました。

住み替えを取り巻く状況や制度は変わり続けます。住み替えのトビラは、不動産仲介を持たない中立の立場で、そのときの最新の情報を正確に、わかりやすくお届けし続けます。