持っているマンションを売り、次の住まいを買う住み替えでは、売買契約書に「収入印紙を貼ってください」と言われて戸惑う方は少なくありません。自分の契約金額でいくら必要なのか、誰が払うのか、電子契約なら省けるのか。気になる点をひとつずつ整理します。この記事では、住み替えのトビラが、契約金額ごとの印紙税を国税庁の一覧にもとづいた確定額で、契約書に貼る前に確かめられるようわかりやすく解説します。
不動産の印紙税とは?売買契約書にかかる税金の基本
不動産の印紙税は、不動産売買契約書という決められた文書を作ったときにかかる国税です。
マンションや戸建てを売り買いするときに交わす契約書は、法律で税金の対象となる文書に定められています。分譲マンションを売って住み替える場合、印紙税が関わるのは主に売却時と購入時の売買契約書です。住宅ローンを組めば金銭消費貸借契約書にも別に印紙税がかかります。まずは何に対してかかる税金なのか、どう納めるのかという仕組みから見ていきます。
印紙税がかかるのは売買契約書などの「課税文書」
印紙税は取引そのものではなく、売買契約書などの決められた文書を作った事実に対してかかります。ここが理解の起点です。
税金の対象となる文書を、印紙税法では課税文書と呼びます。不動産の売買契約書は、このうち第1号文書(不動産の譲渡に関する契約書)にあたります。マンションや土地建物を「いくらで売り買いする」と紙に記して取り交わした時点で、その文書が課税の対象になるという考え方です。
住み替えの場面で出会う課税文書は、売買契約書だけではありません。住宅ローンを利用すれば金銭消費貸借契約書に、新築や建て替えを伴えば工事請負契約書にも、それぞれ別に印紙税がかかります。ただし、分譲マンションを売って別の住まいに移る多くの方が最初に向き合うのは、家を売る・買うときの売買契約書です。この記事でも、その売買契約書を中心に見ていきます。
出典: 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
住み替えでは売却・購入の2回、印紙税が関わる
マンションを売って次の住まいを買う住み替えでは、売却の売買契約書と購入の売買契約書の2回、印紙税がかかります。
住み替えは、いまのマンションを手放す売却と、次の家を手に入れる購入の2つの契約でできています。それぞれに別々の売買契約書があるため、印紙税もそれぞれにかかります。たとえば3,500万円で売り、4,000万円で買うなら、売却側の契約書と購入側の契約書の両方に、それぞれの金額に応じた収入印紙が必要です。1回分だけを見込んでいると、資金計画で二重の見落としが起きやすいところです。
金額そのものは後で見る一覧のとおりで、1件あたりは軽減後で1万円から3万円ほどが中心です。大きな額ではありませんが、売却と購入で2回発生する点は、住み替えならではの数え方として押さえておきたいところです。
収入印紙を契約書に貼って納める仕組み
印紙税は税務署に振り込むのではなく、収入印紙を契約書に貼り、消印して納めます。
収入印紙は、税金を納めた証しとなる証票です。契約書に必要な金額の印紙を貼り、その印紙と契約書にまたがる形で印鑑や署名で消印をすると、そこで納付が完了します。振込用紙や納付書は使いません。
つまり、契約金額に応じた額面の印紙を用意し、正しく貼って消すという一連の流れそのものが納税になります。いくら分の印紙が必要か、どこで買えるか、消し忘れるとどうなるかは、それぞれ後半で順に見ていきます。
【一覧表】不動産の印紙税はいくら?契約金額別の金額
不動産の印紙税額は契約金額の階級ごとに定額で決まり、いまは軽減措置で本則のおよそ半額になっています。
金額を決めるのは、契約書に記された契約金額です。実際の売買代金がいくらだったかではなく、契約書上の金額の帯によって印紙代が決まります。この軽減された金額には適用期限がある点も、あわせて押さえておきたいところです。
契約金額別の印紙税額一覧(本則と軽減後)
不動産売買契約書の印紙税は、契約金額の階級ごとに軽減後で200円から数十万円までの定額で決まります。
まず、自分の契約金額がどの帯に入るかを次の表で確かめてください。本則の額と、いま使える軽減後の額を並べています。
| 契約金額 | 本則 | 軽減後(現行) |
|---|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
| 10万円超〜50万円以下 | 400円 | 200円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
| 100万円超〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
| 5億円超〜10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
| 10億円超〜50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
| 50億円超 | 60万円 | 48万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 | 200円 |
契約金額が1万円未満のものは非課税です。1万円以上10万円以下の帯は本則200円で、この帯は軽減の対象外のため軽減後も200円のまま変わりません。売買代金を記さず契約金額の記載がない契約書も200円です。
住み替えでマンションを売り買いする場合、契約金額は多くが1,000万円超〜5,000万円以下か、5,000万円超〜1億円以下のどちらかに収まります。前者なら軽減後1万円、後者なら軽減後3万円が印紙代の目安です。たとえば3,500万円で成約した売買契約書なら1万円、8,000万円なら3万円の収入印紙を貼る計算になります。中古マンションの多くはこの範囲に入るため、まずは自分の想定成約価格でどちらの帯かを見ておくとよいでしょう。
出典: 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
出典: 国税庁 No.7108 不動産の譲渡に関する契約書の印紙税の軽減措置
軽減措置は令和9年3月末まで(期限に注意)
この軽減後の金額が使えるのは、令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書に限られます。
軽減措置の対象は、土地建物の売買契約書など不動産の譲渡に関する契約書で、契約金額が10万円を超えるものです。10万円以下の契約書は軽減の対象にならず、本則の額がそのままかかります。
対象期間は、平成26年(2014年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書です。この軽減措置は過去にも期限が延長されてきた経緯がありますが、次の延長があると決まっているわけではありません。契約を結ぶ時点で、国税庁で最新の期限を確かめておくと安心です。
出典: 国税庁 No.7108 不動産の譲渡に関する契約書の印紙税の軽減措置
契約書が2通あるとき・建て替えの請負契約書があるとき
印紙税は契約書1通ごとにかかるため、売主と買主が原本を1通ずつ持てば、それぞれの原本に印紙が必要です。
マンションの売買では、同じ内容の契約書を2通作り、売主と買主が1通ずつ原本を保管する進め方が一般的です。この場合、印紙税は原本の数だけかかるため、2通分の収入印紙が要ります。一方、原本をコピーしただけの写しには印紙税はかかりません。あくまで原本として作られた課税文書の数で数えます。誰がどちらの印紙代を負担するかは、売主と買主の取り決めで決まります。負担のしかたを集計した統計はありません。契約前に、自分がどの原本の印紙代を持つのかを仲介会社に確かめてください。
なお、工事請負契約書(第2号文書)にも印紙税がかかりますが、これは新築や建て替えといった建物の建築を発注するときの契約書です。分譲マンションを売って別の住まいに住み替える場合、通常は売買契約書だけで、工事請負契約書までは関わりません。関係するのは注文住宅を建てる場合などに限られるため、マンションからの住み替えでは基本的に気にしなくてよい費目です。買った住まいを別途リフォームする場合に限り、そのリフォーム工事の請負契約書に印紙が要る点だけ覚えておけば十分です。
出典: 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
印紙税は売主・買主どちらが負担する?
売買契約書の印紙税は、法律上は売主と買主の双方が納税義務を負いますが、実際の負担は当事者の取り決めで決まります。
法律の建前と取引の慣行は別のものです。どちらが払うかが一方に固定されているわけではなく、話し合いで変えられる余地があります。ここでは、その建前と慣行を分けて見ていきます。
契約書1通ごとにかかり、誰が負担するかは取り決めで決まる
原本を2通作り各自が1通ずつ持つ場合、どちらがどの原本の印紙代を負担するかは、法律で固定されておらず、売主と買主の取り決めで決まります。
印紙税法では、課税文書を作成した人が納税義務を負います。売買契約書は売主と買主が共同で作る文書のため、双方が連帯して納税義務を負うのが建前です。つまり、どちらか一方だけに支払い義務が押し付けられているわけではありません。
実際にどう分けるかは、当事者の取り決めで決まります。どういう分け方が何割を占めるかを集計した統計はありません。仲介会社が示す進め方に沿うのが通例ですが、それは慣行であって法律上の決まりではないため、取り決めで分け方を変えることもできます。住み替えでは、売るときと買うときで2通の契約書に関わることになるので、それぞれについて自分の負担がいくらになるかを事前に確かめてください。
出典: 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
印紙税を抑える・つまずかないための注意点
印紙税は電子契約なら不要にでき、その一方で貼り忘れや消印忘れには割高な過怠税がかかります。
節税につながる一手と、避けたい失敗の両面があります。まず印紙代そのものを省ける電子契約から見て、続いて収入印紙の買い方、貼り忘れたときのペナルティを順に確かめます。
電子契約(電子データ)なら印紙税がかからない
契約書を紙で作らず電子データで取り交わす電子契約では、課税文書の作成に当たらないとされ、印紙税がかかりません。
印紙税は、契約内容を紙に記して相手に交付したときに、その紙の文書へかかる税金です。電子契約では紙の現物を作らず、契約データを電子メールなどで送るだけのため、国税庁の見解では課税文書の作成に当たらず、印紙税の対象にならないと整理されています。不動産の売買で電子契約がどれくらい使われているかを集計した公的統計・業界団体統計は確認できていませんが、使えれば印紙代を丸ごと省けます。まず仲介を頼む不動産会社が電子契約に対応しているかを尋ねてください。
売買代金が数千万円になれば、印紙代は軽減後でも1万円から3万円ほどです。住み替えで売却と購入の2回とも電子契約にできれば、この分をそのまま抑えられます。ただし、個別の取引で電子契約が使えるか、印紙税がかからないかは、契約の進め方や相手方の運用によって変わります。仲介会社が電子契約に対応しているかも取引ごとに異なります。判断に迷う場合は、所轄の税務署で確かめておくと安心です。
出典: 国税庁 質疑応答事例 電磁的記録に係る印紙税の取扱い
収入印紙はどこで買える?(郵便局・法務局・コンビニ)
収入印紙は郵便局や法務局で買え、コンビニでも手に入りますが、置いてある額面が限られます。
高い額面まで幅広くそろえたいときは、郵便局や法務局が使いやすい買い先です。窓口で額面を伝えれば、住み替えで必要な1万円や3万円といった印紙も用意できます。
コンビニでも収入印紙を扱う店はありますが、多くは200円など少額の印紙が中心で、高額のものは置いていないことが一般的です。マンションの売買契約書に必要な1万円・3万円といった額面は、郵便局などで前もって用意しておくと当日あわてずに済みます。取り扱いは店舗によって異なるため、間違いなく手に入れたい場合は郵便局や法務局を選ぶと安心です。
貼り忘れ・消印忘れのペナルティ(過怠税)
収入印紙を貼り忘れると本来の印紙税額の3倍、消印を忘れると印紙の額面と同じ額の過怠税がかかります。
印紙を貼らず納めなかった場合、本来納めるべき印紙税額と、その2倍の金額を合わせた額が徴収されます。合計すると当初の印紙税額の3倍です。ただし、税務調査で指摘される前に自分から申し出た場合は、本来の印紙税額の1.1倍に軽くなります。
消印を忘れた場合は、消されていない印紙の額面と同じ額の過怠税がかかります。なお、印紙を貼り忘れても契約そのものが無効になるわけではありません。納税の義務と契約の効力は別の話です。とはいえ、印紙税の本体が数万円でも、貼り忘れの過怠税はその何倍にもなり得ます。契約書ができたら、正しい額面を貼り、忘れず消印するところまでを済ませておきたいところです。多くの場合は仲介会社が用意と貼付を案内してくれますが、最終的に納税義務を負うのは当事者である点は変わりません。
住み替え費用全体で見る印紙税の役割
印紙税は住み替え費用の中では小さめの部類ですが、仲介手数料・登記費用・譲渡所得税と合わせ、全体で把握しておきたい費目です。
住み替えでかかるお金のうち、印紙税は軽減後で1件あたり1万円から3万円ほどが中心で、売却と購入で2回でも数万円にとどまります。これに対し、マンション売却時の仲介手数料(告示の上限額・税込)は、売却額3,000万円で105.6万円、5,000万円で171.6万円です。額が法令や実費で決まる4費目(仲介手数料・印紙税・抵当権抹消の登録免許税・同 司法書士報酬)を積み上げると、3,000万円で108.55万円(売却額の3.62%)、5,000万円で174.55万円(3.49%)になります。印紙税はこのうち1万円で、諸費用全体の1%前後にすぎません。登記の費用や、売却益が出たときの譲渡所得税も金額が大きくなりがちです。費用の重さという点では、印紙税は控えめな部類に入ります。
買う側も同じように積み上げられます。額が売買価格から決まるのは、仲介手数料・印紙税・所有権移転登記の司法書士報酬・抵当権設定登記の司法書士報酬の4つで、この4つの合計は売買価格3,000万円で116.54万円(売買価格の3.88%)、5,000万円で182.54万円(3.65%)です。この中でも印紙税は1万円で、やはり控えめな部類に入ります。
ここで気をつけたいのは、売る側と買う側では数えている費目が違うことです。売る側の4費目(仲介手数料・印紙税・抵当権抹消の登録免許税・同 司法書士報酬)と、買う側の4費目は同じではありません。2つの比率を足して「総額◯%」とまとめることもできません。また買う側にはこのほかに登録免許税と不動産取得税がかかりますが、この2つは課税の元になる金額が固定資産税評価額で、売買価格からは決まらないため上の積み上げには入っていません。
だからこそ、印紙税だけに神経を使いすぎず、資金計画は費用の全体像で立てるのが安心です。印紙代を電子契約で省く工夫は有効ですが、住み替えの総額を左右するのはより大きな費目です。それぞれの目安を早めに把握し、手元に残るお金を見通しておくと、住み替えの判断がしやすくなります。
まとめ:不動産の印紙税と軽減措置なら、住み替えのトビラ
不動産の印紙税は、売買契約書という課税文書を作ったときにかかる国税で、金額は契約書に記された契約金額の帯ごとに定額で決まります。いまは軽減措置により、住み替えで多い1,000万円超〜5,000万円以下なら1万円、5,000万円超〜1億円以下なら3万円が目安です。マンションを売って買う住み替えでは、この印紙税が売却と購入の2回関わります。軽減が使えるのは令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書で、期限は最新の情報を確かめておくと安心です。
負担は法律上は売主・買主の双方に義務がありますが、実際は各自が持つ原本1通分を負担する形が一般的で、取り決めで変えることもできます。契約書を電子データで取り交わす電子契約なら、課税文書の作成に当たらず印紙税がかかりません。個別に使えるかは所轄の税務署で確かめられます。
一方で、印紙の貼り忘れは本来の3倍、消印忘れは額面と同じ額の過怠税につながります。印紙税そのものは住み替え費用の中では小さめですが、あなたが仲介手数料や登記費用、譲渡所得税と合わせて全体で資金計画を立てられるよう、要点を整理しました。
住み替えを取り巻く状況は変わり続けます。住み替えのトビラは、そのときの最新の情報を正確に、わかりやすくお届けし続けます。
住み替えのトビラ 
