マンションの売り時を調べると、「今が売り時」と背中を押す記事と「まだ待つほうがよい」という記事が入り混じり、かえって迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。 売り時は、外の市況だけで決まるものではありません。自分の物件の状態と、暮らしの事情を重ねて、はじめて見えてきます。 この記事では、市況・物件(築年数と修繕)・自分(暮らしと税金)という3つの層から、あなたの物件に当てはめて売り時を見極める材料を整理します。
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マンションの売り時は「市況・物件・自分」で決まる
マンションに、すべての人・すべての物件へ当てはまる「今が売り時」という一律の答えはありません。売り時は、市況という外の環境、築年数と修繕という物件の状態、暮らしの変化と税金という自分の事情、この3つが重なる点で決まります。
この後の章では、その3つの層を順番に掘り下げていきます。市況の読み方から入り、資産価値と保有コストが動く物件の節目、暮らしと税金という自分側の事情、そして「今は売らない・待つ・貸す」という道までを、判断の材料として一つずつ広げます。「2026年は売り時」といった市況をひとくくりにする言葉は、そのまま鵜呑みにせず、自分の物件へ当てはめる出発点として受け止めるくらいが、ちょうどよいはずです。
市況と金利から見るマンションの売り時
外の市況は売り時を左右する要素の一つですが、将来の値動きは誰にも言い切れないため、今の状況をつかんで判断材料の一つに使うものと考えるのが現実的です。
ここでは、金利や需給といった市況の読み方と、一年のうちいつ動くとよいかという季節の目安を整理します。
相場・金利・需給の動きと、その読み方
市況は「これから上がるか下がるか」を当てにいくものではなく、今どうなっているかをつかんで判断の材料にするものです。
2026年時点では、住宅ローンの金利がゆるやかに動く局面が続き、中古マンションの価格や取引の動きも地域や立地によって差が大きい状況にあります。金利が上がると、買い手が借りられる金額に影響し、需要の強さが変わります。中古マンションの在庫が増えているのか減っているのか、成約までの期間が延びているのか、といった需給のバランスも、値動きを読むうえでの手がかりになります。
ただし、こうした指標から「この先いくらになる」と先を言い切ることはできません。市況はあくまで数ある判断軸の一つであり、上がる・下がるという予測に賭けるための材料ではないと考えておくのが安全です。今の相場観をつかんだうえで、後の章で扱う物件の状態や自分の事情と組み合わせて判断します。なお、地域ごとの価格帯や具体的な下落の幅といった相場そのものの数字は、次の相場の記事で扱っています。
季節と年間スケジュールから見るタイミング
一年の中でも、買い手の動きが活発になりやすい時期があり、そこから逆算して準備を始めると動きやすくなります。
分譲マンションの購入需要は、新年度に向けて住まいを探す人が増える1〜3月ごろに高まりやすい傾向があります。進学や転勤、家族構成の変化に合わせて住み替える人が動く時期だからです。売り手にとっては、こうした需要の山に売り出しのタイミングを合わせる考え方があります。
もう一つ意識したいのが、売り出しから成約、引き渡しまでにかかる時間です。査定や媒介契約、内覧の受け入れ、価格交渉を経て引き渡しに至るまでには、数か月単位の期間がかかることも珍しくありません。「この時期に売りたい」という目標があるなら、そこから逆算して、余裕をもって準備に入るのが現実的です。ただし、季節性はあくまで有利になりやすい傾向にすぎず、いつ売れるかを保証するものではないため、目安として受け止めてください。
築年数と修繕の節目で見るマンションの売り時
物件側の売り時は、「資産価値が下がっていくカーブ」と、「大規模修繕や修繕積立金といった保有コストが上がる節目」の2つを重ねて見ると判断しやすくなります。
マンションは、時間の経過とともに価値が下がる一方で、建物を維持するための負担はむしろ増えていきます。この相反する2つの動きが、物件ごとの売り時を考えるうえでの中心になります。ここでは、価値の下がり方、大規模修繕の周期、修繕積立金の値上げという順に見たうえで、最後に自分の物件でどう天秤にかけるかを整理します。
築年数と資産価値の下落カーブ(価値が下がる節目)
マンションは築年数が上がるほど資産価値が下がる傾向があり、その下がり方には勢いの変わる節目があります。
一般に、新築から数年、築10年前後、そして築20〜25年前後といったあたりで、価値の下がるペースが変わりやすいとされています。新築のプレミアムがなくなる初期、設備や内装に古さが出てくる時期、そして建物や配管などの大きな更新が意識され始める時期です。ただし、こうした具体的な下落率や築年数ごとの平均価格は、民間の集計によって数字が異なり、公的に一つの正解が定まっているわけではありません。あくまで「目安」として捉え、実際の価値は地域・立地・管理状態によって大きく変わることを前提にしてください。
自分の物件が今どの位置にあるのかを知るには、築年数だけで判断せず、近隣の似た条件の物件がどのくらいで取引されているかを見ることが役立ちます。詳しい相場観や価格帯については、相場の記事で扱っています。
大規模修繕の周期と、修繕前・修繕後どちらで売るか
大規模修繕は数十年にわたって計画的に繰り返されるもので、その前に売るか後に売るかで、買い手から見た印象や積立金の状況が変わります。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、令和6年6月の改定で、長期修繕計画の計画期間を30年以上とし、その中に大規模修繕工事を2回含めることを標準としています。大規模修繕そのものの周期は、以前は12年程度が一つの目安とされてきましたが、改定では建物の状況に応じて一定の幅をもたせる考え方が示されています。おおむね12〜15年ほどの間隔で計画されることが多い、という目安で捉えておくとよいでしょう。
出典: 国土交通省 住宅:マンション管理(長期修繕計画作成ガイドライン等)
この周期を踏まえると、「大規模修繕の前に売るか、終えてから売るか」は一つの判断軸になります。修繕を終えた直後は外観や共用部がきれいになり、買い手に好印象を与えやすい一方で、その費用は積立金や一時金として負担済みです。逆に修繕前は、買い手が「これから大きな出費がある」と身構えることもあります。どちらが有利と一概には言えないため、自分のマンションの計画がいまどの段階にあるかを確かめたうえで考えるのが現実的です。
修繕積立金の値上げ・段階増額という節目
修繕積立金は、時間とともに段階的に上がっていく仕組みが一般的で、最初の大規模修繕へ向けて負担が重くなりやすい点が、売り時を考える一材料になります。
多くのマンションは、当初の積立金を低めに設定し、年数の経過に合わせて引き上げていく「段階増額積立方式」を採っています。この方式は、初期の負担が軽い反面、後になるほど毎月の支払いが増えていく点に注意が必要です。国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドラインは、令和6年6月の改定で、段階的に引き上げる場合の目安を示しました。均等に積み立てた場合の月あたりの金額を基準額とすると、計画の初期額はその0.6倍以上、最終額は1.1倍以内におさめる、という考え方です。
出典: 国土交通省 報道発表資料(段階増額積立方式における適切な引上げの考え方)
つまり、初回の大規模修繕を迎える築12〜15年前後は、積立金の引き上げが重なりやすい時期でもあります。毎月の負担が上がる節目が近いことは、持ち続けるコストを見直すきっかけになり、売り時を考える一つの材料になります。自分のマンションの積立金がこの先どう変わる予定かは、長期修繕計画で確かめておくとよいでしょう。
持ち続ける費用と売る価値を天秤にかける
ここまでの事実を重ねると、マンションは「持ち続ければ資産価値は下がる方向、保有コストは上がる方向」に進むため、その両方を自分の物件で見比べて判断することになります。
大切なのは、特定の築年数を「ここが売り時」と決めつけないことです。価値の下がり方も積立金の上がり方も、マンションごとに事情が違います。だからこそ、一般論ではなく自分の物件の数字で見比べる必要があります。
判断のために手元で確かめたいのは、次のような点です。
- 自分のマンションの長期修繕計画(次の大規模修繕の時期)
- 修繕積立金の今後の値上げ予定
- 積立金の残高が計画に対して足りているか
- 近隣の似た条件の物件のおおよその取引価格
これらは、管理組合の総会資料や、管理会社から受け取る長期修繕計画で確かめられます。数字がそろわない、読み解きに自信がないという場合は、管理組合や管理会社に問い合わせて、自分の物件の現状を把握することから始めてください。価値が下がる速さと、費用が上がる速さ。この2つを並べて見ることで、「もう少し持つ」「そろそろ動く」という自分なりの見当がつけやすくなります。
自分の事情と税金から考えるマンションの売り時
市況や物件の状態に加えて、自分側の事情が売り時を最終的に決めることも多くあります。
ここでは、暮らしの変化というきっかけと、所有期間による税金の節目という2つの観点から、自分の事情に引き寄せて売り時を考えます。
暮らしの変化・住み替えの動機から見る売り時
売り時は、市況の「今」よりも、自分の暮らしが変わるタイミングのほうが優先されることが少なくありません。
マンションの売却を考えるきっかけは、人によってさまざまです。子どもが独立して部屋が余るようになった、老後を見据えて駅に近い住まいや管理の楽な家に移りたい、住宅ローンや維持費の負担を軽くしたい、転勤や親の介護で住む場所を変える必要が出てきた、といった変化が入り口になります。
こうした暮らしの変化は、市況の良し悪しとは別のタイミングで訪れます。相場が上向くのを待つあいだにも、生活の都合は待ってくれないことがあります。だからこそ、「市場が良いから売る」よりも「自分の暮らしが変わるから、その節目に合わせて売る」という考え方が、無理のない売り時につながりやすいのです。とくに介護や相続がからむ場面では、気持ちの整理と手続きが同時に進み、負担が重なりやすくなります。焦って結論を出さず、家族とも相談しながら、暮らしの区切りに合わせて進めることを大切にしてください。住み替えや買い替えの具体的な進め方は、それぞれの記事で扱っています。
所有期間5年・10年という税金の節目
マンションを売って利益が出た場合、所有していた期間の長さによって税金の重さが大きく変わるため、5年と10年という節目を知っておくことが役立ちます。
譲渡所得にかかる税金は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下か、5年を超えるかで区分が分かれます。5年以下の「短期譲渡所得」は所得税30パーセント・住民税9パーセント、5年を超える「長期譲渡所得」は所得税15パーセント・住民税5パーセントで、長期のほうが税率は低くなります(いずれも復興特別所得税が別途加算されます)。所有期間は引き渡し日ではなく、売った年の1月1日で数える点に注意が必要です。
さらに、自分が住んでいたマイホームであれば、所有期間が売った年の1月1日で10年を超える場合に、税率が軽くなる特例があります。この軽減税率では、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について所得税が10パーセントになります。加えて、マイホームを売ったときは、所有期間の長短を問わず譲渡所得から最高3,000万円まで差し引ける特別控除もあり、これらの条件に当てはまるかどうかで、手元に残る金額は大きく変わります。
出典: 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除)
こうした特例には、それぞれ細かな適用の条件があります。とくに5年・10年の節目が近いなら、あと少し待つことで税負担が変わる場合もあります。具体的な税額の計算や、自分のケースで特例が使えるかどうかは、税理士に相談して確かめるのが安心です。
マンションを売らない・待つ判断もある
売り時とは「売るべき時」だけを指す言葉ではなく、「今は売らない・待つ・貸す」も含めた判断です。
売却を前提に考えると見落としがちですが、動かないという選択にも合理性があります。ここでは、「待てば上がる」という前提の危うさと、賃貸や保有し続けるという選択肢を整理します。
「待てば上がる」を安易に前提にしない
「もう少し待てば高く売れる」という期待は、必ずしも当てにできるものではありません。
たしかに、近くで再開発が予定されている、新しい駅や商業施設ができるといった材料があれば、将来の値上がりを見込める場合はあります。一方で、そうした具体的な材料がないまま「待っていればいずれ上がるだろう」と考えるのは、あまり堅実とは言えません。将来の相場は誰にも言い切れず、待つあいだにも築年数は進み、修繕積立金の負担は増えていくからです。
大切なのは、「急いで売るべき」にも「待てば得をする」にも寄りすぎないことです。値上がりを期待できる根拠が具体的にあるのか、それとも漠然とした期待なのかを、冷静に切り分けてみてください。根拠があるなら待つのも一つの判断ですし、根拠が薄いなら、待つことで生じる保有コストの増加も含めて考える必要があります。
売却以外の選択肢(賃貸・保有し続ける)も含めて考える
無理に今売らず、「賃貸に出す」「そのまま住み続ける・保有し続ける」という道も、対等な選択肢です。
賃貸に出せば、家賃収入を得ながら物件を手放さずに済みます。転勤などで一時的に離れる場合や、将来また住む可能性がある場合に向いた選び方です。ただし、空室のあいだは収入が入らず、管理の手間や費用もかかります。一方、当面は住み続ける・保有し続けるという判断は、暮らしを変えずに済む安心感がある反面、資産価値の低下や保有コストの増加は続きます。
どちらが良いかは、家族の状況や資金計画によって変わります。この記事では選択肢の入り口を示すにとどめますが、貸すという道や、売って賃貸に住み替えるという道は、それぞれの記事で扱っています。売るか、貸すか、持ち続けるか。この3つを並べたうえで、自分にとって無理のない道を選んでください。
売り時を判断したあとの進め方(相場・査定・費用)
売り時の見当がついたら、次は自分の物件の「今の価値」と「売り方・費用」を具体化する段階に進みます。
ここでは、相場と査定で価値を確かめる方法と、売却方法や費用の全体像のつかみ方を整理します。
相場と査定で「今の価値」を確認する
自分の物件が今いくらで売れそうかは、近隣の取引事例を見て、複数の会社の査定を受けることでつかめます。
まず参考になるのが、同じマンションや近隣の似た条件の部屋が、最近いくらで成約したかという事例です。売り出し価格ではなく、実際に取引が成立した価格を見ると、より現実に近い価値が見えてきます。そのうえで、複数の不動産会社に査定を依頼すると、価格の幅や各社の見方の違いが分かります。査定額は会社によって差が出るのが普通なので、1社だけで決めず、いくつかを見比べて価値の目安をつかんでください。
相場の見方の詳しい手順や、査定の受け方については、それぞれの記事で扱っています。
売却方法と費用の全体像をつかんで動く
売却には仲介や買取といった方法があり、それぞれにかかる費用も異なるため、全体像をつかんでから動くと判断しやすくなります。
売り方は大きく分けて、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。仲介は市場で買い手を探すため価格が高くなりやすい一方、時間がかかることがあります。買取は早く現金化しやすい反面、価格は仲介より抑えられる傾向があります。急ぎかどうか、価格を優先するかどうかで、向く方法は変わります。
費用の面では、仲介手数料や登記にかかる費用、引っ越し代など、売却にはいくつかの出費がともないます。利益が出た場合の税金も、前の章で見たとおり全体像に含めて考える必要があります。こうした売却方法の選び方や費用の内訳については、それぞれの記事で扱っています。
まとめ:マンションの売り時を自分の物件で見極める
マンションの売り時に、万人へ当てはまる正解はありません。市況という外の環境、築年数と修繕という物件の状態、暮らしと税金という自分の事情、この3つが重なる点を自分の物件で探ることが、後悔の少ない判断につながります。
とくに、資産価値が下がる方向と、修繕積立金など保有コストが上がる方向は同時に進みます。長期修繕計画や積立金の予定、所有期間による税金の節目も合わせて、自分の物件のタイミングを測ってみてください。
売り時とは、必ずしも「売るべき時」を指すものではありません。今は待つ、貸すという道も対等な選択肢です。住み替えのトビラは、仲介を持たない立場から、「今は売らない」も含めた後悔のない判断に役立つ情報を届けていきます。焦らず、自分の物件と暮らしに合った答えを見つけていきましょう。
住み替えのトビラ