マンションの売り時は築年数で変わる|節目と維持費で測る

マンションの売り時は築年数で変わる|節目と維持費で測る

売り時は築年数だけで決まりません。ただし築年数の節目は、何を測るかで答えが変わります。横断面の㎡単価で見ると下落が加速するのは築21〜25年を過ぎてからで、底は築36〜40年。売れやすさ(対新規登録成約率)で見るとピークは築11〜15年。同じ物件を買ったときと売ったときの損益で見ると、反転するのは築25年超です。加えて旧耐震と新耐震の境目である1981年が、買い手の条件を変えます。自分の家の値下がりの進み具合と、これから膨らむ維持コスト。この2本の線が交わる手前が、住み替えとして無理のない売り時の目安です。

「築何年で手放すのが得か」は、相場表の数字を眺めても答えは出ません。同じ築年数でも、管理の状態や住宅ローンの通りやすさで売れ方は変わるからです。ここでは築年数の節目ごとに売りやすさと買い手の条件がどう動くかを早見表で一望し、そのうえで維持費と資産価値の下がり方が交わる「自分にとっての売り時」の測り方を整理します。数字はいずれも目安であり、市況や地域、物件の管理状態で動く前提で読んでください。

築年数で変わるマンションの売り時【早見表】

築年数帯ごとに「価格の下がり方」「売りやすさ」「買い手の条件」は段階的に変わり、いま自分の家がどの帯にいるかで住み替えの動かし方が変わってきます。

まずは全体像を一望できるよう、帯ごとの実数を1枚の表にまとめました。首都圏の中古マンションの2025年(暦年)の集計です。

築年帯成約㎡単価築0〜5年を100としたときの水準対新規登録成約率(売れやすさ)
築0〜5年143.64万円/㎡100.033.4%
築6〜10年131.94万円/㎡91.937.4%
築11〜15年114.11万円/㎡79.440.9%(ピーク)
築16〜20年99.13万円/㎡69.032.8%
築21〜25年86.10万円/㎡59.932.1%
築26〜30年64.45万円/㎡44.926.2%
築31〜35年44.14万円/㎡30.719.6%
築36〜40年40.40万円/㎡28.1(底)17.4%
築41年〜47.50万円/㎡33.120.9%

下がり方が最も速いのは築21〜25年から築31〜35年にかけてです。築21〜25年(59.9)→築26〜30年(44.9)で15ポイント、築26〜30年→築31〜35年(30.7)でさらに14ポイント落ちます。「築20〜25年で下げ止まる」わけではなく、むしろこの帯を過ぎてから下落が加速します。底は築36〜40年(28.1)で、築41年〜(33.1)は持ち直します。

ただしこれは別々の物件を築年帯ごとに並べた横断面で、同じ物件が何割になったかを示す表ではありません。成約専有面積も築0〜5年60.33㎡→築21〜25年70.56㎡→築41年〜56.88㎡とU字を描くため、価格(総額)と㎡単価は分けて読んでください。

買い手側の条件も、築年数で変わります。登記簿上1981年12月31日以前に建築された物件は、買い手の住宅ローン控除が原則として対象外です(耐震基準適合証明などがあれば対象になります)。この判定のしかたは、記事の後半で詳しく見ます。

東日本不動産流通機構の集計では、2025年に成約した首都圏の中古マンションの平均築年数は26.58年でした。新規登録された物件の平均築年数は30.08年で、築20年超の物件が構成比の60.3%を占めます。つまり売買の中心は築20年台半ばから後半にあります。

ただし「売買の中心=売りやすい」ではありません。売れやすさは、新規登録された物件のうちどれだけが成約したかで測れます。同じ集計の対新規登録成約率(2025年)は、築0〜5年33.4%、築6〜10年37.4%、築11〜15年40.9%、築16〜20年32.8%、築21〜25年32.1%、築26〜30年26.2%、築31〜35年19.6%、築36〜40年17.4%、築41年〜20.9%で、ピークは築11〜15年です。

出典: 東日本不動産流通機構(REINS)不動産市場動向・統計ライブラリー

この表はあくまで全体像をつかむための目安です。各帯で「なぜそう下がるのか、なぜ売れるのか」という中身と、自分の住み替えにどう当てはめるかは、次の章から順に見ていきます。

築年数帯ごとの価格の下がり方と売りやすさ

帯ごとに「値下がりと売れ方の理由」と「住み替えとしての考え方」は変わります。早見表が数字の一望だったのに対し、ここでは各帯の中身と判断のしかたを見ていきます。

築浅〜築10年:新築プレミアムは落ちるが売りやすさは高い

この帯は高値で売りやすい一方、住み替えの事情がないのに築年数だけを理由に急いで手放す帯ではありません。

新築時に上乗せされていた付加価値は、入居してからの数年で落ち着きます。とはいえ設備は新しく、見た目のいたみも少ないため、買い手からの人気は高いままです。住宅ローンの審査でも築年数が理由で不利になることはほとんどなく、幅広い層が候補になります。

売りやすさが高いことと「いま売るべき」かどうかは別の話です。住み替えのはっきりした理由があるなら好条件で動かせる帯ですが、そうでなければ、値下がりを恐れて急ぐ必要は乏しいといえます。

築11〜20年:下落が緩み流動性が高い「バランス帯」

売れやすさ(対新規登録成約率)がこの帯でピークを迎えるため、住み替えを実行しやすい帯です。

1回目の大規模修繕の時期は、マンションごとの長期修繕計画で決まります。実施周期を集計・公表した統計がないため、「築◯年頃」という一般的な目安は示せません。 自分のマンションがいつ実施するかは、管理組合の長期修繕計画で確かめられます。修繕を終えた直後は外観や共用部が整い、買い手にとって安心の材料になりやすい点は追い風です。

価格の安定と買い手の付きやすさが重なるため、住み替えのタイミングを合わせやすい帯といえます。次の住まいの計画が具体的なら、この帯のうちに動かす選択は現実的です。

築21〜25年:下落が大きくなる手前の判断の分かれ目

この先の下がり方が強まる手前にあたり、住み替えを迷っているなら現実的な検討ラインになりやすい帯です。

前章で見たとおり、2025年に成約した首都圏の中古マンションの平均築年数は26.58年で、この帯は売買の中心の手前にあたります。買い手はまだ幅広く付きますが、ここを過ぎると㎡単価の水準は築26〜30年で15ポイント、築31〜35年でさらに14ポイントと大きく落ち、設備の古さも意識され始めます。2回目の大規模修繕や給排水管などの設備更新が視野に入るのもこの頃です。

「まだ売れる」うちに動くか、もう少し住んでからにするか。判断が分かれる帯だからこそ、次章で扱う維持コストの見通しと合わせて考えると、自分の売り時が見えやすくなります。

築26〜30年超:価格より「買い手と管理状態」で決まる

価格は築浅から大きく離れ、売れるかどうかは価格よりも買い手と管理の状態で決まる帯です。

築30年前後になると、給排水管の更新や設備の入れ替えといった大きな節目を迎えます。こうした更新の履歴や、管理組合の修繕計画がどこまで整っているかが、買い手の安心感を大きく左右します。設備の古さやリフォームの必要から、買い手は現金で購入してリノベーションを前提にする層に寄っていきます。ここで買い手が絞られる理由は、耐震基準そのものではなく、設備と管理の状態にあります。

なお、築年数ごとの相場の金額そのものは、地域差が大きく本記事の範囲を超えます。ここでは「価格より管理状態で売れ方が変わる」という帯の性質を押さえておけば十分です。

旧耐震(1981年以前)マンションの売り時の考え方

旧耐震の帯は、ほかの築年数帯と違い「買い手の資金調達」という構造的な制約が加わるため、独立して考える必要があります。前章の築古帯は設備と管理の状態で買い手が絞られましたが、こちらは耐震基準ゆえに住宅ローンが通りにくいという別の理由です。境界の見分け方、買い手が限られる理由、そのうえでの判断、の順に整理します。

新耐震と旧耐震の境目は1981年6月(建築確認日で見る)

新耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物が対象で、竣工した年ではなく建築確認を受けた日で判定します。

注意したいのは、見た目の築年数と耐震区分がずれることがある点です。建築確認から竣工までには時間がかかるため、1981〜1983年頃に完成したマンションは、確認申請が旧耐震の時期にかかっている場合があります。自分の家がどちらにあたるかは、確認済証や竣工年月だけで決めず、確認を受けた日で見ることが大切です。

出典: 国土交通省 マンションの耐震性等についてのQ&A

旧耐震で買い手が限られる理由:住宅ローンと控除の制約

旧耐震は金融機関が住宅ローンに慎重で、住宅ローン控除も原則は使いにくいため、買い手が現金購入者や投資家に寄ります。

住宅ローン控除は、令和4年以降に入居する中古住宅の場合、登記簿上で1982年(昭和57年)1月1日以後に建てられた家屋であれば、新耐震とみなされて対象になります。これより前の建築でも、耐震基準に適合することを示す証明などがあれば控除の対象になりますが、証明の取得には手間と費用がかかります。床面積は登記簿上の専有面積で50平方メートル以上といった要件もあります。

ここで注意したいのは、耐震基準の区分と住宅ローン控除の判定は、基準日も見る書類も違うという点です。耐震基準の新旧は建築確認を受けた日(1981年6月1日以降が新耐震)で分かれます。一方、控除の判定は登記簿上の建築年月日で見ます。つまり「建築確認が旧耐震の時期にかかっていても、登記簿上1982年1月1日以後の建築なら住宅ローン控除は使える」という組み合わせがあり得ます。判定の順序は、まず登記簿上の建築年月日、それを満たさない場合に耐震基準適合証明などの書類、という順です。買い手にとってどちらが効くかは場面で違うので、この2つを一緒くたにしないでください。

出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

こうした制約から、旧耐震マンションは住宅ローンを前提にする一般の買い手が動きにくくなります。前章の築古帯も現金層に寄る話でしたが、旧耐震で買い手が絞られる理由は設備ではなく、耐震基準ゆえにローンが通りにくい点にあります。控除の要件は税制改正で変わることがあるため、実際の適用は税理士や国税庁の最新情報で確認してください。

旧耐震マンションの売り時は「焦って投げ売りしない」判断

買い手が限られるからこそ、築年数を理由に慌てて安売りするのが良いとは限りません。

買い手の不安は、情報の不足から生まれる面があります。耐震基準への適合を示す証明の取得、管理の状態や修繕の履歴を整えて示すことで、買い手の見通しを立てやすくできます。現金層や投資家に向けて、現況のまま売る方法や、不動産会社による買取といった選択肢もあります。それぞれ手取りやスピードが違うため、自分の住み替えの時期と照らして中立に比べることが大切です。

築年数が旧耐震だからといって、価値がないわけではありません。立地や管理の良さで評価される物件もあります。焦って値を下げる前に、まず自分の家の強みと弱みを整理することが、投げ売りを避ける第一歩です。

築年数だけで決めない:維持コストと資産価値の交点で売り時を測る

築年数は、売却額の目減りと維持費の増加という両方に影響します。手取りが減っていく一方で持ち続けるコストが増える構造を押さえると、自分の売り時が見えてきます。ここが本記事の核で、判断の物差しを箇条書きで示します。

修繕積立金・管理費は築年数とともに上がる

修繕積立金は段階的に増える方式が多く、築年が進むほど上がりやすく、大規模修繕の前後で一時金の徴収や増額が生じることもあります。

新築時の積立金は低めに設定され、その後の計画に沿って引き上げられていくケースが一般的です。金額の上がり方はマンションごとの長期修繕計画によって異なり、一律ではありません。自分のマンションの水準を測るなら、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)が目安になります。専有床面積1㎡あたりの月額で、20階未満・延床面積5,000㎡未満なら平均335円(事例の3分の2が入る幅は235〜430円)、5,000〜10,000㎡未満なら平均252円(幅170〜320円)、10,000〜20,000㎡未満なら平均271円(幅200〜330円)、20,000㎡以上なら平均255円(幅190〜325円)、20階以上なら平均338円(幅240〜410円)です。機械式駐車場があれば別途加算します。ガイドライン自身が「修繕積立金の額が、この幅に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断されることになるわけではありません」と断っているので、幅から外れているかを判定材料の一つとして使ってください。

なお実際の徴収額のほうは、国土交通省の令和5年度マンション総合調査で月/戸あたり平均13,054円でした。完成年次別に見ると平成7〜16年完成が14,317円で最も高く、平成27年以降が11,405円で最も低く、築古ほど高いという単純な形にはなっていません(新しい物件ほど段階増額積立方式の採用が多いためです)。

管理費と修繕積立金は毎月の固定的な支出です。築年が進むにつれてこの負担が重くなり、値上げをきっかけに住み替えを考え始める人も少なくありません。まずは自分のマンションで、今後の増額予定がどうなっているかを把握しておくことが出発点になります。

下落カーブと維持コストが交わる手前が現実的な売り時

売却で手にできる金額は築年とともに目減りし、維持コストは増えていきます。この2本の線が交わる手前が、住み替えとして無理のない売り時の目安です。

考え方はシンプルです。持ち続けるほど、売って得られる手取りは減り、払い続ける維持費はかさみます。どこかで「売った方が家計にとって軽い」という地点を越えます。その手前で動くのが、金額の面では合理的な判断になります。判断のために見ておきたい物差しは次のとおりです。

  • 今後の維持コスト(積立金の増額予定・大規模修繕の時期)を管理組合の長期修繕計画や総会資料で確認する
  • 住宅ローンの残債と、売却して得られる見込み額との差(手取り)
  • 次に住み替えたい時期との兼ね合い
  • 築25年前後や旧耐震の境目など、節目の手前かどうか(その節目が何の節目かも合わせて確かめる)

節目については、何を測った節目かを分けて見てください。横断面の㎡単価で見ると下落が加速するのは築21〜25年を過ぎてから、底は築36〜40年です。売れやすさ(対新規登録成約率)のピークは築11〜15年です。同じ物件を買ったときと売ったときの損益で見ると、反転するのは築25年超で、不動産流通経営協会の消費者動向調査では、築25年超に売った買い換え世帯の平均売却差額は▲474.1万円、マイナスが出た世帯の割合は56.2%でした(ただし各帯のサンプル数は20〜73件と小さい値です)。他社の記事や統計を見るときも、その節目が何の節目かを確かめてください。

これらを一度に完璧にそろえる必要はありません。まずは管理組合の資料で維持コストの見通しを確認し、そこに売却見込みと残債、住み替えたい時期を重ねてみる。数字が多少ぶれても、2本の線の傾きがつかめれば、自分の売り時の見当はついてきます。

築年数以外の売り時(市況・税金・住み替え先)も合わせて見る

築年数は売り時を決める一つの要素で、市況や税金、住み替え先の都合と合わせて総合で判断します。

たとえば税金では、所有していた期間が5年を超えるかどうかで、売ったときの利益にかかる税率の区分が変わります。この所有期間は、譲渡した年の1月1日現在で数えます。 取得日から売却日までの実日数ではないので、年末に売るか年明けに売るかで区分が変わることがあります。税率の内訳は次のとおりです。

区分所得税復興特別所得税住民税合計
長期(5年超)15%所得税額の2.1%5%20.315%
短期(5年以下)30%所得税額の2.1%9%39.63%

合計の20.315%・39.63%は内訳を足し上げた計算値です。マイホームで所有期間10年超なら、課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分が合計14.21%になる軽減税率の特例もあります。ただし3,000万円特別控除で課税譲渡所得が0円になる方が多く、その場合は税率の出番がありません。 税率を気にする前に、控除で0になるかを先に確かめてください。

市況の良し悪しや、次の住まいの購入・賃貸のタイミングも、実際に動く時期を左右します。

築年数の節目は、あくまで判断の視野を広げるための一つの軸です。値下がりの節目や維持費の見通しを土台にしながら、市況・税金・住み替え先の条件を重ねて、無理のない時期を選んでいくとよいでしょう。

まとめ:築年数の節目と維持コストで自分の売り時を測る

マンションの売り時は、築年数だけで決まるものではありません。それでも築20年前後の売りやすさ、築25年前後の分かれ目、そして旧耐震(1981年以前)の買い手が絞られる制約という節目で、売れ方と買い手の条件は段階的に変わります。

判断の軸になるのは、資産価値の下落カーブと維持コストの増加が交わる手前という考え方です。管理組合の資料で今後の維持費の見通しを確認し、そこに売却見込みと残債、住み替えたい時期を重ねれば、自分にとっての現実的な売り時が見えてきます。築年数だけで焦らず、旧耐震だからと投げ売りもせず、市況・税金・住み替え先と合わせて総合で決める姿勢が大切です。

住み替えのトビラは、仲介を持たない立場から、「今はまだ売らない」という選択も含めて、後悔の少ない住み替えの判断に役立つ情報を届けています。売却の進め方は宅地建物取引士、譲渡所得の税金は税理士、資金計画や住み替え後の家計はファイナンシャルプランナーへ、個別の事情に応じて相談しながら進めてください。