分譲マンションという持ち家はあっても、年金と預貯金だけで老後の生活費を最後まで賄えるのか、不安を感じている方は少なくありません。マンションは老後の大きな資産ですが、現金と違ってそのままでは使えず、しかも住んでいる間は管理費や修繕積立金という固定費が毎月出ていきます。この家という資産を、どの順番でどう使うかで、手元に残るお金や暮らしの安心感は大きく変わります。この記事では、住み替えのトビラが、持ち家のマンションを老後資金に変える選択肢の全体像と、自分に合う選び方・使う順序を、順を追って解説します。
住宅資産の取り崩しとは?老後資金に変える3つの入り口
持ち家の現金化は大きく「借りる・売る・貸す」の3つに分かれ、どれを選ぶかで所有権・毎月の負担・相続への影響が変わります。
ここでは個々の手段の細かい条件には立ち入らず、まず全体像の地図を示します。手段を1つずつ比べる前に、家という資産を家計のどこにどう組み込むかという枠組みを持っておくと、後の判断がぶれません。
その前提として、老後に今のマンションをどうするかは、大きく3つの道に分けて眺めると迷いにくくなります。1つ目は、手すりや段差の解消といったリフォームをして今の家に住み続ける道です。2つ目は、別の住まいへ住み替える道です。そして3つ目が、この記事で扱う住宅資産の取り崩しです。取り崩しはさらに、住み続けながらお金に換える「借りる・貸す」と、住み替えながらお金に換える「売る」に分かれます。この記事は、この3つ目の取り崩しの部分を束ねて詳しく見ていきます。
借りる・売る・貸すで根本が変わる(所有権とお金の受け取り方)
持ち家を老後資金に変える方法は、根っこの仕組みで見ると「借りる」「売る」「貸す」の3種類に整理できます。
借りるは、リバースモーゲージのように自宅を担保にお金を借りる形です。所有権は自分に残り、家に住み続けたまま資金を得られます。売るは、住み替えのために売却する形と、売って同じ家に賃借で住み続けるリースバックの形があります。貸すは、自宅を賃貸に出して家賃を受け取る形です。
この3つは、次の3つの軸で性質が大きく分かれます。所有権が自分に残るか買主へ移るか、お金を一括で受け取るか毎月受け取るか、そして今の家に住み続けられるかどうかです。
| 入り口 | 所有権 | お金の受け取り方 | 住み続けられるか |
|---|---|---|---|
| 借りる(リバースモーゲージ) | 自分に残る | 一括または枠内で随時 | 住み続けられる |
| 売って住み替え | 買主へ移る | 売却代金を一括 | 別の住まいへ移る |
| 売って賃借(リースバック) | 買主へ移る | 売却代金を一括 | 家賃を払い住み続ける |
| 貸す | 自分に残る | 毎月の家賃 | 別に住まいを確保して貸す |
同じ「家を老後資金に変える」でも、家に住み続けたいのか、まとまったお金がすぐ要るのか、家族に家を残したいのかで、向く入り口は変わります。それぞれの中身は後の章で見ていきます。
手段選びより先に「使う順序」で考える理由
手段を1つずつ選ぶ前に、まず資産全体を「どの順番で使うか」という視点を持つことが、老後資金を長く持たせる鍵になります。
老後の生活費を支える資産には、性質の異なるものが混ざっています。預貯金や公的年金は、必要なときにすぐ使えて金額の調整もしやすい、流動性の高い資産です。一方で住宅資産は、住まいそのものを担保にしたり手放したりしないと現金にできず、いったん動かすと元に戻しにくい、性質の重い資産です。
同じ金額を取り崩すにも、どちらから先に使うかで後々の選択肢は変わってきます。流動性の高い資産と、手放しにくい住宅資産を、いつ・どの順で使うかという設計があるかないかで、老後資金の持ちは変わります。
つまり大切なのは、目についた手段に飛びつくことではなく、資産全体を見渡して使う順番を決める枠組みを先に持つことです。その順番を具体的にどう決めるかは、判断軸を整理したうえで、記事の後半で改めて示します。
住宅資産を取り崩す前に決める3つの判断軸
手段を選ぶ前に、住み続けの希望・必要な金額と時期・相続方針の3点を決めておくと、選ぶべき手段が自然に絞られます。
どの方法が良いかは人によって違い、正解も1つではありません。だからこそ、手段そのものを比べる前に、自分の側の条件をはっきりさせる判断フレームが役立ちます。ここでは3つの軸を順に見ていきます。
家に住み続けたいか、手放してよいか
最初の分かれ道は、今の家に住み続けたいか、手放してもよいかです。
この問いは、資金の効率だけで割り切れるものではありません。長く暮らしたマンションへの愛着、近所付き合いや通い慣れた医療機関といった生活圏、駅やスーパーへの近さといった暮らしやすさなど、お金に換算しにくい要素も大切な判断材料になります。夫婦や家族で希望が食い違うことも多いため、早めに気持ちを話し合っておくと後の選択がスムーズです。
住み続けたいか、手放してもよいかで、向かう方向は大きく分かれます。住み続けたい人と手放してもよい人とで選べる手段は変わりますが、どの軸がどの手段に結びつくかは、後の統合の章でまとめて整理します。ここではまず、自分たち家族の本音がどちらに近いのかを見つめておくことが出発点になります。
いつ・いくら必要か(一括か毎月か)
次に決めておきたいのが、お金がまとまって一度に要るのか、毎月少しずつ要るのかという資金の型です。
必要になるお金には、性質の違う2つの型があります。1つは、施設への入居一時金や大がかりなリフォームのように、ある時点でまとまった金額が一度に要る一括型です。もう1つは、年金だけでは足りない生活費を毎月補うような、継続して少しずつ要る毎月型です。
この一括か毎月かという時間軸は、後の手段選びを大きく左右します。まとまった資金には売却やリースバックが向き、毎月の補填にはリバースモーゲージや家賃収入が向くというように、資金の型と手段の相性があるためです。
リフォームの規模感は、令和7年度の住宅市場動向調査で三大都市圏の実施世帯の平均170万円でした。このうち自己資金が平均143万円で、資金の84.2%を自己資金でまかなっています。年度で上下があり、令和3年度から令和7年度の平均は201万円→206万円→137万円→154万円→170万円と動いています。世帯主が50代以上に限った別の調査(住宅リフォーム推進協議会・n=601)では平均281.9万円です。
施設への入居一時金は、どの類型の施設かで大きく変わります。厚生労働省の検討会資料によれば、家賃の支払い方式はいずれの類型でも「全額月払い」が最も多く約8割で、前払金を徴収している施設は介護付き有料老人ホーム(特定施設)で31.0%、住宅型有料老人ホームで7.0%、サービス付き高齢者向け住宅で3.4%にとどまります。前払金を徴収している特定施設のうち、実額は「100〜500万円未満」の層が11.4%で最も多くなっています。まず「そもそも前払金があるか」を確かめるのが順序です。
出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」7.4.1/一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「2024年度住宅リフォームに関する消費者実態調査」/厚生労働省老健局「有料老人ホームの現状と課題・論点について」(検討会 第1回 資料3)p.52
いくら必要になるかは暮らし方や健康状態、住む地域によって幅があります。だからこそ、金額そのものより先に「一括か毎月か」という型を見極めておくことが、手段を絞る足がかりになります。
相続で家を残したいか、使い切ってよいか
3つ目の軸は、家を相続人に残したいか、自分たちの代で使い切ってよいかです。
家を残したいのか、現金化して使い切ってよいのかで、向く手段は変わります。家を残す前提なら、担保に借りるリバースモーゲージが選択肢になります。ノンリコース型であれば、亡くなった後に自宅を売って返済し、それでも残った債務を相続人が返す必要はありません。一方、家を残すことにこだわらないなら、売却して現金に換えておくと、相続人の間で分けやすくなります。
相続の方針は、自分たちだけで決めると後で家族の思いとすれ違うことがあります。誰が家を継ぐのか、あるいは誰も住まないのか、現金で分けた方が公平なのかは、家族で共有しておきたい論点です。相続税や遺産分割の詳しい扱いは個別性が高いため、方針が固まった段階で専門家に確認すると安心です。
住み続けながら取り崩す方法(借りる・貸す)
家を手放したくない人には、担保に借りる・売って賃借する・貸して住み替える形があり、それぞれ毎月の負担と長期のリスクが異なります。
ここでは、今の家に住み続けることを前提にした選択肢を、仕組みと注意点で比べていきます。いずれも住まいを維持しながら資金を得られる一方、長く続けるほど重くなるリスクの種類が違います。
リバースモーゲージ・リ・バース60で自宅を担保に借りる
リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借り、生きている間は利息のみを返し、元金は亡くなった後に自宅を売って一括返済する仕組みです。
家に住み続けたまま資金を得られるのが最大の利点です。毎月の負担は利息だけで済みます。2025年度に申請のあった案件の平均でみると、申込者の年齢が70.1歳、年収404万円、融資額1,561万円で、毎月の支払額は4.6万円でした。所要額の平均は3,066万円です。ただし金利や返済額は金融機関によって異なるため、これは全体の平均であって自分の額ではありません。
なお2025年度の実績は、申請1,293戸に対して実績1,225戸・195.9億円で、2025年度末までの累計は申請10,696戸、取扱金融機関は89機関です。「住宅又は住宅ローンを必要とする理由」で住替えを挙げた案件は10.4%でした。
公的な枠組みとしては、住宅金融支援機構と提携金融機関が扱う「リ・バース60」があります。申込みは満60歳以上が基本ですが、満50歳以上満60歳未満でも利用でき、この場合は融資限度額が変わります。
融資限度額は、満60歳以上なら担保評価額の50%または60%です。担保とする住宅が長期優良住宅で満60歳以上なら55%または65%、満50歳以上満60歳未満なら30%になります。いずれも「50〜60%」のような幅ではなく2択で、どちらが当たるかは金融機関と物件によります。融資上限額は1億2,000万円以下かつ所要資金以内です。
ノンリコース型を選べば、相続人は残った債務の返済義務を負いません。2025年度に申請のあった案件では、ノンリコース型が99.8%を占めています(2026年1〜3月は100.0%)。
ただし商品内容は金融機関ごとに違います。リリースの逐語では「ご利用いただけるお客さまのご年齢、資金の使いみち、融資限度額、ノンリコース型及びリコース型の取扱い、融資金利、金利タイプ、取扱可能エリア、取扱金融機関における商品名称その他の商品内容は、金融機関ごとに異なります」とされています。
出典: 住宅金融支援機構【リ・バース60】ご利用条件/同「【リ・バース60】の利用実績等について(2026年1月〜3月及び2025年度分)」(令和8年5月29日)
ここでマンションならではの注意点があります。リバースモーゲージは自宅を担保にする仕組みのため、担保としてどれだけの評価が出るかが、借りられる金額を左右します。マンションは土地の持分である敷地権と建物を合わせて評価されるため、土地の割合が大きい戸建てにくらべると担保評価が出にくく、対象外になるか、都市部の高く評価される物件に限られ、条件が厳しくなりがちです。利用できるかどうかや評価額は金融機関と物件によって大きく異なるため、複数の窓口で早めに確かめておくと安心です。
注意したいのは、長生きするほど借入枠を使い切りやすいこと、変動金利では返済負担が増える場合があること、地価が下がると担保割れが起きうることです。安心を得るための仕組みが、想定より早く上限に届くこともあるため、契約前に長期の見通しを立てておくことが欠かせません。
リースバックで売っても同じ家に住み続ける
リースバックは、自宅を売って現金に換えたうえで、その家の買主に家賃を払い、同じ家に住み続ける仕組みです。
所有権は買主へ移りますが、まとまった資金を一度に受け取れるのが特徴です。引っ越さずに暮らしを続けられるため、環境を変えたくない人には向いています。マンションでも利用でき、住み慣れた部屋にそのまま住み続けられます。
一方で、売った後は家賃という新たな負担が毎月続きます。将来買い戻せるかどうかや、住み続けられる契約期間に条件がつく場合もあります。
ここで押さえておきたいのは、リースバックの売却価格の決まり方です。買主は買った後にあなたへ貸して家賃を得るので、価格は「その家賃で何年分の利回りが取れるか」から逆算されます。仲介で売れる相場に何割かを掛けて決まるものではありません。だからこそ、売却価格と家賃はセットで見る必要があります。売却価格が高ければ家賃も高くなり、家賃を抑えれば売却価格は下がります。
条件は事業者によって差があります。複数の条件を比べたうえで、その家賃を長く払い続けられるかを見極めてください。
自宅を貸して家賃を得る(マイホーム借上げ制度など)
自宅を貸して家賃収入を得る方法は、自分は別の住まいに移り、空いた家を賃貸に出して毎月の家賃を受け取る形です。
前の2つと違い、自分は今の家に住み続けない点に注意が必要です。住み替え先を別に確保したうえで、元の家を人に貸して収入を得る仕組みだと考えると分かりやすいでしょう。
一般の賃貸では空室のリスクがつきまといますが、これを和らげる公的な選択肢として、移住・住みかえ支援機構(JTI)のマイホーム借上げ制度があります。50歳以上が対象で、JTIが自宅を借り上げて転貸するため、所有者は入居者と直接やりとりしません。最初の入居者が決まった後は、空室が生じても規定の賃料が支払われます。借上げは原則として本人と同居者が亡くなるまで続く終身型で、転貸は原則3年の定期借家契約で行われるため、戻りたくなった場合は最長3年待てば家を取り戻せます。
気になるのは受け取れる家賃の水準ですが、保証賃料が市場家賃の何割になるかを示した公表値は見当たりません。JTIが公表しているのは実績の側で、10年以上利用した人の平均総手取家賃が1,000万円を超えること、対象となった住宅は築30年以上が6割を占めること、地域では首都圏が48%を占めることです。自分の家でいくらになるかは、JTIまたは協賛事業者に査定を依頼して確かめてください。
出典: 移住・住みかえ支援機構(JTI)マイホーム借上げ制度
マンションを貸す場合、駅に近いなど立地が良ければ、戸建てより借り手がつきやすい傾向があります。ただし気をつけたいのは、人に貸している間も、管理費や修繕積立金は所有者であるあなたが払い続ける点です。家賃がそのまま手元に残るわけではなく、これらの固定費や、必要なときの修繕費を差し引いて、いくら残るかで考えることが大切です。
また、貸し出すには自分たちの住まいを別に用意する必要があり、退去時の原状回復や設備の傷みへの対応も生じます。家を手元に残しつつ収入を得られる利点と、二重に住まいを持つ負担を、あわせて考えておきたい選択肢です。
家を手放して取り崩す方法(コンパクトな住まいへ住み替え)
手放してよいなら、売却して小さな住まいに移ると、差額を老後資金に回せて維持費も下げられます。
ここでは、家を売って住み替える場合の資金面の要点を見ていきます。得られる資金に加えて、売却益にかかる税金の扱いまで押さえておくと、手元にいくら残るかを見通しやすくなります。
売却でまとまった資金を得て小さな住まいに移る
家を売って得た資金と、次の住まいにかかる費用の差額が、そのまま老後資金の上乗せになります。
たとえば、今のマンションを売り、より小さなマンションや利便性の高い立地、あるいは賃貸へ移ると、住まいの規模を下げた分だけ費用を抑えられ、その差額が手元に残ります。
ただし管理費・修繕積立金が下がる保証はありません。令和5年度のマンション総合調査で管理費(使用料等からの充当額を除く)を総戸数規模別に見ると、20戸以下が14,282円で、全体平均の11,503円より高くなっています。形態別では20階建以上が14,415円です。小規模なマンションやタワーマンションへ移ると、部屋が狭くなっても月々の固定費は上がる場合があります。住み替え先の管理費・修繕積立金の実額は、物件ごとに必ず確かめてください。
出典: 国土交通省「令和5年度 マンション総合調査結果」データ編 27⑥
この住み替えを語るとき、よく「広い戸建てを売って小さな家に移る」という例が引き合いに出されます。ただ、それは土地が資産の中心を占める戸建ての話で、マンションから住み替える人には少し事情が違います。マンションでは土地よりも、部屋の広さや築年数、そして何より立地が売却価格を左右します。そのため、より小さな部屋や、駅に近く管理の行き届いた物件へ移り替える形が、住み替えの中心になります。
もっとも、家がいくらで売れるかは、立地や築年数、売る時期の相場によって変わり、あらかじめ金額を保証できるものではありません。売却価格はあくまで目安として捉え、複数の査定を取りながら、住み替え後の暮らしが成り立つ資金計画を組むことが大切です。査定や売却の具体的な進め方は、専門の宅地建物取引士に相談しながら進めると安心です。
売却益にかかる税金と3000万円特別控除の要点
マイホームを売って利益が出ると譲渡所得税がかかりますが、居住用財産の3,000万円特別控除を使うと、利益から最大3,000万円を差し引けます。利益が3,000万円以下なら課税される所得はゼロになります。なお、どれだけの売却で実際に課税がゼロになっているかを示す統計は公表されていません。
この控除は、売った利益から最大3000万円を差し引ける仕組みです。適用を受けるには、現に自分が住んでいる家であること、または以前に住んでいた家なら、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。配偶者や親子など特別の関係がある人への売却は対象外となります。控除によって税額がゼロになる場合でも、確定申告は欠かせません。
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
さらに、売った年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていれば、軽減税率の特例を3,000万円特別控除に重ねて使えます。3,000万円を差し引いた後の課税長期譲渡所得のうち、6,000万円以下の部分にかかる所得税の税率が10%になります(6,000万円を超える部分は「(課税長期譲渡所得−6,000万円)×15%+600万円」です)。通常の長期譲渡所得の所得税率は15%なので、6,000万円以下の部分については税率が5ポイント下がります。
たとえば3,000万円特別控除を差し引いた後の課税長期譲渡所得が1,000万円なら、所得税は通常150万円のところ100万円になります。
税率は所得税・復興特別所得税・住民税の3つを合わせたものです。区分ごとに次のようになります。
| 区分 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得(売った年の1月1日現在で所有期間5年超) | 15% | 所得税額の2.1% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得(同 5年以下) | 30% | 所得税額の2.1% | 9% | 39.63% |
| 軽減税率の特例(マイホーム・所有期間10年超)のうち課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分 | 10% | 所得税額の2.1% | 4% | 14.21% |
| 同 6,000万円を超える部分 | 15% | 所得税額の2.1% | 5% | 20.315% |
合計の20.315%・39.63%・14.21%は、この3つを足し合わせた数字です。法令や国税庁がこの数字をそのまま掲げているわけではありません。「およそ20%」と丸めると復興特別所得税の分が落ちるため、この記事では丸めずに書いています。
所有期間は「売った年の1月1日現在」で数えます。取得日から売却日までの実際の日数ではないため、年末に売るか年明けに売るかで区分が変わることがあります。復興特別所得税は令和19年分まで、所得税額に対して2.1%がかかります。税率は毎年度の税制改正で変わり得るので、申告の時点で国税庁のページを確かめてください。
出典: 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
譲渡所得の計算や確定申告の具体的な手順は、取得費や譲渡費用の扱いによって結果が変わるため、税理士に確認しながら進めると手続きを滞りなく終えられます。
自分に合う取り崩し戦略の組み立て方
正解は1つではなく、住み続けの希望と資金の要り方から手段を絞り、それを資産を使う順序に組み込むと、自分の戦略が決めやすくなります。
ここまで見てきた判断軸と手段を掛け合わせ、自分の状況に落とし込みます。手段を並べるだけでは決められませんが、軸で絞り、順序に組み込むという2段階で考えると、方針が定まります。
判断軸から手段を絞る(住み続けるか×資金の要り方)
住み続けたいかどうかと、資金が一括で要るか毎月要るかを掛け合わせると、向く手段が絞られます。
先に整理した判断軸を、手段に結びつけると次のように整理できます。
| 住まいの希望 | 資金の要り方 | 向きやすい手段 |
|---|---|---|
| 住み続けたい | 毎月の補填 | リバースモーゲージ/自宅を貸す |
| 住み続けたい | まとまった一括 | リースバック |
| 手放してよい | まとまった一括 | 売却して小さな住まいへ住み替え |
この対応はあくまで出発点で、どれか1つに決め切る必要はありません。たとえば、まず預貯金で暮らしを支え、それでも足りなくなったら売却を検討するというように、複数を組み合わせたり、段階を踏んで使い分けたりする形もあります。大切なのは、自分の希望と資金の型に照らして、無理のない手段から検討することです。
預貯金・年金・住宅資産を使う順序を決める
老後資金は、まず預貯金と公的年金で生活を賄い、住宅資産の現金化は最後の備えとして順序の後ろに置くのが基本です。
多くの家庭では、日々の暮らしはすぐに使える預貯金と、毎月入る年金で支えられます。住宅資産を現金に換えるのは、これらだけでは足りなくなったときや、まとまった資金がどうしても要るときに初めて検討する、いわば最後のカードだと考えると、選択肢を長く手元に残せます。
ただし、マンションで見落としやすいのが、住宅ローンを払い終えても、管理費と修繕積立金という固定費が毎月出ていき続ける点です。令和5年度のマンション総合調査では、月/戸当たりの管理費が11,503円、修繕積立金が13,054円で、合わせて24,557円でした(使用料等からの充当額を除いた系統の値)。年金を中心とした暮らしでは、この固定費が家計をじわじわと圧迫します。
修繕積立金は、段階増額積立方式を採っている物件では計画にそって引き上げられていきます。ただし完成年次別に見ると平成7〜平成16年完成の14,317円が最も高く、平成27年以降完成は11,405円で最も低く、古いほど高いという形にはなっていません。自分のマンションが今後いくらになるかは、長期修繕計画で確かめてください。
預貯金の取り崩しが思ったより早く進むと感じたら、住宅資産の現金化を順序のどこで考え始めるか、早めに見取り図を持っておくと落ち着いて選べます。
焦って先に家を動かしてしまうと、後から状況が変わったときに打てる手が減ってしまいます。いったん売ってしまえば買い戻すのは難しく、担保に借り始めれば枠は徐々に減っていきます。だからこそ、住宅資産に手をつけるのは急がず、まず流動性の高い資産から使うのが、多くの人にとって無理のない順序です。
ただし、この順序が誰にでも当てはまるわけではありません。健康や介護の見通し次第では、施設入居の費用を早めに用意するために、住宅資産の現金化を前倒しした方がよい場合もあります。順序はあくまで一般的な考え方として、自分たちの暮らしと健康の見通しに合わせて調整することが、後悔の少ない選択につながります。
個別判断は専門家に相談して固める
住宅資産の取り崩しは、税金・ローン・相続が複雑に絡むため、自分の状況に合った判断は専門家と一緒に固めるのが安心です。
どの専門家に相談するかは、悩みの種類によって分かれます。
- 老後資金の設計や資金計画の全体像:FP(ファイナンシャルプランナー)
- 売却益にかかる税金や確定申告:税理士
- 家の売却や住み替えの進め方:宅地建物取引士
- 相続や名義の変更:司法書士
判断軸を自分なりに整理したうえで、こうした専門家に相談すると、話が具体的に進みます。制度の要件や金額は個別の事情で変わるため、最終的な意思決定の前に、資格を持つ専門家に自分のケースを確認しておくと安心です。
まとめ:住宅資産の取り崩しを考えるなら、住み替えのトビラ
持ち家のマンションを老後資金に変える方法は、大きく「借りる・売る・貸す」の3つに分かれ、所有権やお金の受け取り方、住み続けられるかで性質が変わります。
手段を並べて比べる前に、家に住み続けたいか、資金は一括か毎月か、家を相続で残すかという3つの軸で、あなた自身の条件を先に整理すれば、向く手段は自然と絞られます。マンションでは、担保評価や管理費・修繕積立金といった、戸建てとは違う事情も判断に効いてきます。
そのうえで、まず預貯金と年金で暮らしを支え、住宅資産の現金化は最後の備えとして順序の後ろに置くのが、多くの人にとって無理のない考え方です。健康や介護の見通しに応じて前倒しが要る場合もあるため、順序は自分たちの暮らしに合わせて調整し、個別の判断は専門家と固めていきましょう。
住み替えのトビラは、不動産仲介を持たない中立の立場です。『今は売らない』という選択肢も含めて、あなたにとって後悔のない判断をお手伝いします。
住み替えのトビラ 
