終の棲家とは?老後を最後まで暮らす住まいの選び方

終の棲家とは?老後を最後まで暮らす住まいの選び方

年を重ねたあとの住まいを考え始めると、最後まで暮らす家を一度で決めなければと身構えてしまうものです。

終の棲家は一度で選び切らなくてよく、体力やお金など今いちばん重んじる条件を1つ決めれば、候補は数えるほどに絞れます。

住み続ける・移る・介護のある住まいへ入るという3つの方向を比べ、今の住まいをどうするかまで説明します。

終の棲家とは?老後を最後まで暮らす住まい

終の棲家とは、人生の幕を下ろす場所ではなく、定年後の長い時間を自分らしく暮らすための住まいを指します。

一つの正解を探すより、いくつかの選択肢を見渡して自分に合う住まいへ絞り込む方が、終の棲家は考えやすくなります。まずは言葉の意味と、考え始めるのに適した時期から整理します。

終の棲家とは「老後を長く暮らす最後の住まい」

終の棲家とは、最期を迎えるための場所ではなく、老後の長い時間を最後まで暮らし続ける住まいを意味します。

「終」という字から、人生を終える場所という重い印象を持つ方もいます。実際に問われるのは、定年後に続く長い時間をどこで穏やかに暮らすかという点です。令和7年簡易生命表によると、65歳の平均余命は男19.68年、女24.52年です(平均寿命は男81.35年、女87.33年)。65歳で終の棲家を決めるなら、男性で約20年、女性で約25年をそこで過ごす見通しになります。

出典: 厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」主な年齢の平均余命

この長い時間のなかで、体力や健康は少しずつ変わっていきます。家族との関係や使えるお金も同じで、いまの状態がずっと続くわけではありません。元気なうちは気にならない段差や買い物の負担が、年齢とともに暮らしにくさへ変わることもあります。

終の棲家を考えるうえで大切なのは、いまの暮らしやすさに加えて、将来も無理なく住み続けられるかどうかです。この「最後まで暮らせるか」という視点が、住まいを選ぶ土台になります。マンションはワンフロアで段差が少なく、この視点と噛み合いやすい住まいですが、詳しくは後の章で見ていきます。

終の棲家は一度で完璧に決めなくてよい

終の棲家は一度で決め切る必要はなく、暮らしの変化に合わせて見直していけるものです。

「終」という言葉には、後戻りできない選択というイメージがつきまといます。けれど住まいは、健康や家族の状況が変われば、住み替えや改修であとから対応できます。いまのマンションを持ち続けるか手放すかも、その時々で選び直せる余地があります。

むしろ最初から完璧な答えを出そうとすると、決めきれずに先延ばしになりがちです。いまの自分に合う住まいをまず選び、必要になったときに次を考える方が、気持ちにも余裕が生まれます。

終の棲家を考え始めるのに適した時期

終の棲家は、体力や判断力に余裕のある50〜60代から考え始めると、落ち着いて選べます。

定年や子どもの独立は、住まいを見直す自然な節目になります。子世代が家を出れば、いまのマンションの広さや部屋数が、二人あるいは一人の暮らしと合わなくなることも少なくありません。使わない部屋の分まで管理費や固定資産税を払い続ける状態に気づくのも、この時期です。心身に余裕があるうちなら、情報を集めて比べる力も十分に残っています。

早めに方向性を決める利点は、選択肢をじっくり比べられる点にあります。介護が必要になってから慌てて探すと、条件や費用を十分に検討できないまま決めることになりかねません。

この時期にすべてを決め切る必要はありません。「どんな暮らしを続けたいか」という方向性だけでも持っておくと、住まいが必要になったときの判断が楽になります。

終の棲家になる住まいの選択肢を比較

終の棲家の選択肢は、大きく3つの方向に分かれます。今の家に住み続ける道、別の住まいに移る道、ケアの付いた住まいに入る道です。

どれが正解かを決める前に、3つの方向をひと通り見渡しておくと、自分の希望と照らし合わせやすくなります。費用や暮らしやすさの違いを、軸ごとに並べて確認します。

比較の軸住み続ける住み替えるケア付き
初期費用改修費のみ物件購入・敷金敷金〜入居一時金
毎月の負担低め(改修費のほかは今と同じ)物件による類型で分かれる(平均月額費用:サ高住〔特定施設の指定なし〕153,952円/住宅型有料老人ホーム118,020円/特定施設261,510円。いずれも介護・医療の自己負担分を除く)
バリアフリー・ケア工事で対応物件で差が出るはじめから手厚い
暮らしの自由度高い高い一定の制約
住み替えやすさ低い中くらい退去手続きが必要

費用を抑えたいなら住み続ける方向、将来の変化に備えたいならケア付きの方向が、おおまかな目安になります。ひとつ補っておきたいのは、マンションの場合、住み続けても住み替えても「毎月の負担」には管理費・修繕積立金がのり、毎年の固定資産税もかかり続けるという点です。この固定費は、住むかどうかにかかわらず所有している限り続きます。

今の家(マンション)に住み続ける(リフォーム含む)

今のマンションに住み続ける道は、住み慣れた環境を変えずに暮らせる点が大きな魅力です。

周辺の人間関係や生活リズムを保ちたい方には、住み替えよりも負担の少ない選び方になります。しかもマンションは、もともとワンフロアで段差が少なく、玄関から居室、浴室、トイレまでが同じ階でつながっています。この点だけを見れば、終の棲家に向く面を最初から備えている住まいだといえます。エントランスや共用廊下、エレベーターの日常的な管理を管理組合と管理会社に任せられるのも、年齢を重ねてからは負担の軽さにつながります。

改修で足りない部分を補うこともできます。手すりの設置や室内の段差の解消なら数十万円から、浴室や間取りの変更まで広げると費用は百万円単位に上がります。ただしマンションで手を入れられるのは、あくまで自分の専有部の範囲です。エントランスやエレベーター、共用廊下といった共用部は個人の一存では変えられません。専有部の工事も管理規約の制約を受け、水回りの位置や床材の遮音性能など、規約や届出の範囲内で進める必要があります。実際にどこまで手を入れられるかは、バリアフリー改修を扱う記事や管理組合への確認で具体化していくのが確実です。

ここで、戸建てとの違いを整理しておきます。「階段の上り下りがつらい」「広い庭の手入れが体力的にきつい」「敷地の防犯が心配」といった話は、戸建ての事情です。マンションから住み替え(買い替え)を考える人には基本的に関係ありません。ご自身の住まいで負担になりそうな点だけに絞って見ていく方が、判断は早くなります。

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別の住まいに住み替える(駅近マンション・平屋・賃貸)

別の住まいへ移る道は、暮らしの不便を一度にまとめて解消できる選び方です。

いまのマンションが駅から遠かったり、階数や間取りが暮らしに合わなくなっていたりする場合は、住み替えが現実的な選択肢になります。移り先の筆頭に挙がるのが、駅近のマンションです。ワンフロアで生活が完結し、買い物や通院が徒歩圏で済み、共用部の管理も引き続き任せられます。いまのマンション暮らしの利点を保ったまま、立地や設備だけを更新できる住み替えといえます。

移り先には平屋や賃貸もあります。平屋は段差の少なさが魅力ですが、戸建てである以上、庭や敷地の管理はついて回ります。この手入れの手間はマンションにはないものなので、いまの暮らしと比べる際は差し引いて考えておくと安心です。賃貸は初期費用を抑えられる代わりに、家賃を払い続ける前提で資金計画を立てることになります。

費用は、入るときに一度かかるお金と、毎月続くお金に分けて見ると整理できます。購入なら物件価格に諸費用が加わってまとまった資金が要り、毎月はローンに管理費・修繕積立金が重なります。賃貸なら初期費用は軽くなる代わりに、毎月の家賃が続きます。そしてもうひとつ欠かせないのが、その原資をどう用意するかです。新しい住まいの費用は、いまのマンションを売るか貸すかで組み立てるのが基本になります。この点は後半の「今のマンションをどうするか」で詳しく見ていきます。

賃貸の側は数字で押さえられます。三大都市圏で民間賃貸住宅に入居した世帯の月額家賃は平均83,381円(中央値74,000円)、共益費は平均4,837円です。入居時の初期費用は、敷金1か月・礼金1か月・媒介報酬1.1か月・前家賃1か月を積むと家賃の4.1か月分になります。ただし敷金があった世帯は51.9%、礼金があった世帯は43.1%にとどまり、どちらもない契約なら1.55〜2.1か月分まで下がります。

購入の側も、売買価格から額の見当がつく費目があります。媒介報酬・印紙税・所有権移転登記と抵当権設定登記の司法書士報酬の4つで、積み上げると売買価格1,000万円で50.04万円(5.00%)、2,000万円で83.54万円(4.18%)、3,000万円で116.54万円(3.88%)になります。価格が上がるほど比率は下がります(媒介報酬に定額部分があり、印紙税が階段状の定額で、司法書士報酬が定額のためです)。このほかに登録免許税と不動産取得税がかかりますが、これらは固定資産税評価額を課税標準とするため売買価格からは確定しません。課税明細書か固定資産評価証明書で自分の評価額を確認してください。

賃貸側と購入側では数えている費目が違います。購入側には登記と税金が入り、賃貸側には入りません。金額の大小だけで比べず、何を数えた金額かを見てください。

出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」6.4.2

どの住まいも、契約の前にバリアフリーの程度や周辺の医療環境を確かめておくことが大切です。住み替え先で長く暮らせるかどうかは、建物の設備に加えて立地にも左右されます。

老後の住まいはどう選ぶ?4つの選択肢と健康・資金・家族で絞る方法 老後の住まいはどう選ぶ?4つの選択肢と健康・資金・家族で絞る方法

ケア付きの住まいに移る(サ高住・施設)

ケア付きの住まいへ移る道は、介護や見守りを前提に安心して暮らせる選び方です。

一人暮らしの不安や、将来の介護に早めに備えたい方に向いています。代表的なのは、自宅に近い感覚で暮らせるサービス付き高齢者向け住宅と、生活支援や介護を受けられる有料老人ホームです。

まず、「サ高住」を一つの類型として語ることはできません。サ高住のうち特定施設入居者生活介護等の指定を受けている住宅は10.0%で、9割は指定を受けていません。受けられる介護の中身が違います。

月額費用は類型によってはっきり分かれます。厚生労働省の検討会資料(2024年の調査)による平均月額費用と、最も多い費用帯は次のとおりです。この月額費用は家賃・共益費・基本サービス費・食費・光熱水費の合計で、介護や医療のサービスの自己負担分は含みません。

類型平均月額費用最も多い費用帯
サービス付き高齢者向け住宅(特定施設の指定なし)153,952円12〜14万円未満(24.3%)
住宅型有料老人ホーム118,020円10万円未満(33.4%)
特定施設(介護付き有料老人ホーム)261,510円30万円以上(34.4%)

資料の逐語では「月額費用は幅広いが、最多は、介護付き『30万円以上』、住宅型は『10万円未満』、サ高住(非特定)は『12〜14万円』であり、2014年と2024年の比較においてもいずれの類型も変化なし。」とされています。

入居一時金については、「幅がいくらか」より先に「そもそも発生するか」を押さえてください。家賃の支払い方式は、いずれの類型も「全額月払い」が最も多く約8割です。前払金を徴収している施設の割合は、特定施設で31.0%、住宅型で7.0%、サ高住で3.4%にとどまります。

そのうえで実額を見ると、前払金を徴収している特定施設では「100〜500万円未満」の層が11.4%で最多でした。

出典: 厚生労働省老健局「有料老人ホームの現状と課題・論点について」(検討会 第1回 資料3)p.104・p.52/サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(一般社団法人高齢者住宅協会)

いずれも地域や施設で幅があるため、あくまで目安として押さえておいてください。細かい費用の内訳や選び方は、サービス付き高齢者向け住宅を扱う専用記事に譲ります。

ここで見落としがちなのが、ケア付きの住まいの多くは家賃が毎月続く賃貸型だという点です。この毎月の費用をどう賄うかを考えると、いまのマンションの扱いが関わってきます。売って入居資金と当面の生活費にあてるか、貸して家賃収入で施設の費用を相殺するか。ケア付きの住まいを検討するときも、原資は持ち家のマンションの始末から組み立てることになります。

元気なうちに入れる住まいと、介護が重くなってから移る施設では、選ぶ基準が変わります。今の健康状態に加えて、将来どこまでのケアを受けたいかを見据えて選ぶと、住み替えを繰り返さずに済みます。

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終の棲家は「最後まで暮らせるか」で選ぶ

終の棲家は、どの選択肢を選ぶかよりも、老後の長い時間を最後まで暮らし切れるかどうかで考えると見極めやすくなります。

元気な時期から介護が必要な時期、その先までを一つの流れとしてとらえ、住まいがどこまで支えてくれるかを確かめます。ここがこのテーマならではの判断の軸になります。

時期暮らしの変化住まいに求めること
元気な時期自立した生活利便性・快適さ
体力が落ちる時期段差や移動が負担バリアフリー
介護が必要な時期見守りや介護が要る医療・介護の近さ
最期看取りの場希望の場所で過ごせるか

体力が落ちても暮らし続けられるか

体力が落ちたときに暮らしやすいかどうかは、毎日の動作のしやすさで決まります。

この点で、マンションはワンフロアという構造が味方になります。寝室から浴室、トイレへの動線が同じ階で短くまとまっていれば、足腰が弱ってからも移動の負担は小さく済みます。逆にいえば、玄関の大きな段差や室内の階段、広い庭の手入れといった負担は、戸建てに固有のものです。マンションから住み替えを考える人には基本的に当てはまらないので、そこは切り分けて考えて構いません。見るべきは、いまのマンションの動線や室内の段差が、これから先も無理のない範囲におさまっているかどうかです。

夫婦で暮らしていても、いずれどちらかが一人になる時期は訪れます。一人でも管理しきれる広さか、戸締まりや掃除に無理がないかを早めに考えておくと安心です。使わない部屋が増えたまま広い住戸を維持するより、暮らしに合った広さへ整える方が、日々の負担も固定費も軽くなります。

広さや見栄えよりも、年齢を重ねた自分が無理なく動けるかどうかを基準にします。この視点で住まいを見直すと、必要な改修や住み替えの優先順位が見えてきます。

医療や介護を受けやすい場所か

医療や介護の受けやすさは、住まいの立地で大きく変わります。

持病があれば、通いやすい距離に病院があるかどうかが日々の安心につながります。在宅での療養を望む場合は、往診や訪問介護に対応する事業者が周辺にあるかも確かめておきたい点です。駅近のマンションは、こうした通院や往診の便に恵まれやすい立地にあることが多く、車の運転をやめたあとの暮らしやすさにも関わってきます。

国は、住み慣れた地域で医療や介護を受けられる体制づくりを進めています。とはいえ対応できる範囲は地域によって差があり、引っ越し先で同じ環境が整うとは限りません。

出典: 在宅医療の提供体制の整備について(厚生労働省)

介護が必要になったとき、家族が無理なく通える場所かどうかも見落とせません。本人の希望と家族の負担の両方を、立地を選ぶ段階で擦り合わせておくと後悔が減ります。

最期を迎える場所まで考えているか

終の棲家を考えるなら、最期をどこで迎えたいかまで視野に入れておくと選択がぶれません。

どこで最期を過ごしたいかは人によって違いますが、住み慣れた自宅を望む声は根強くあります。厚生労働省の調査でも、自宅で最期を迎えたいと考える人が最も多い結果が示されています。

出典: 人生の最終段階における医療に関する意識調査(厚生労働省)

一方で、実際には病院で最期を迎える人が多いのが現実です。希望と現実が分かれるのは、自宅で療養を支える体制が間に合わないことも一因にあります。

自宅で過ごしたいのか、設備の充実した施設や病院が安心なのかで、選ぶべき住まいは変わってきます。いまのマンションで過ごしたいと望むなら、在宅医療を受けやすい立地や、介護する家族の負担まで含めて準備しておく必要があります。

最期の場所を今すぐ決める必要はありません。ただ「どう過ごしたいか」を意識しておくと、住まい選びの一つひとつの判断に芯が通ります。

老後資金とのバランスはとれているか

どれだけ理想の住まいでも、老後資金とのバランスが崩れては長く暮らせません。

年金収入が中心になる老後は、毎月の支出が収入を上回りやすくなります。総務省統計局の家計調査によると、2025年の1か月平均で、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は可処分所得221,544円に対して消費支出263,979円で、毎月42,435円が不足しています。65歳以上の単身無職世帯では可処分所得118,465円に対して消費支出148,445円で、毎月29,980円の不足です。この消費支出には住宅ローンの返済は含まれていません。ひとり暮らしになった場合の不足額も併せて見ておくと、備えの見積もりが現実に近づきます。

出典: 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」

ここに住居費や改修費、施設の費用が重なると、家計の余裕はさらに細ります。マンションの場合、ローンを払い終えていても、管理費・修繕積立金・固定資産税は住み続ける限りかかり続ける固定費です。住まいにかける金額は、この毎月の固定費も含めて、手元の資金で何年暮らせるかという視点で見ておくと安心です。

終の棲家を2〜3案に絞り込む

終の棲家を絞り込むコツは、すべての条件を満たそうとせず、自分が最も優先するものを一つ決めることです。

前の段階で見えた条件のうち、譲れない軸を起点にすると、候補は自然と2〜3案へ絞られていきます。優先するものごとに、現実的な落とし所を見ていきます。

優先したいこと絞り込まれる住まい
立地・利便性駅近マンション/利便地で住み続ける
健康・介護への備えサ高住/ケア付きの住まい
老後資金の余裕今の家に住み続ける/小さな住み替え

立地や生活の便利さを優先するなら

買い物や通院のしやすさを最優先するなら、生活が徒歩圏で完結する住まいが候補になります。

車の運転に不安が出てくる年代では、駅や商店の近さがそのまま暮らしやすさにつながります。いまのマンションが利便性の高い場所にあるなら、住み替えずに専有部を改修して住み続ける道も有力です。立地という替えのきかない条件を、すでに手にしているとも言えます。

より駅に近い場所へ移りたいなら、住み替え先もマンションが有力です。ワンフロアで生活が完結し、共用部の管理も引き続き任せられます。庭や階段の手入れといった手間はもともとマンションにはありませんが、より暮らしの手間を減らしたい方には、立地を絞った住み替えが選び方になります。

ただし利便性の高い物件は価格も高くなりがちです。譲れない条件を立地に絞り、広さや築年数は妥協する前提で探すと、候補が見つかりやすくなります。その購入資金を、いまのマンションの売却でどこまで賄えるかも、あわせて見ておきたい点です。

健康や介護への備えを優先するなら

将来の健康や介護に重きを置くなら、ケアを受けやすい住まいが現実的な候補になります。

持病があったり一人暮らしに不安があったりする場合は、見守りや支援のある住まいが安心につながります。サービス付き高齢者向け住宅なら、自宅に近い感覚を保ちながら、緊急時にも対応してもらえます。

今は元気でも、数年先に介護が必要になる可能性は誰にもあります。介護が重くなったときに移れる施設が近くにあるかまで見ておくと、住み替えの回数を減らせます。

一方で、手厚いケアを備えた住まいほど費用は上がります。今すぐ必要なケアと、将来に備えるケアを分けて考えると、過不足のない選び方ができます。毎月の家賃型の費用をどう賄うかは、いまのマンションを売るか貸すかとあわせて考えておくと、資金計画が現実的になります。

老後資金の余裕を優先するなら

家計の余裕を何より大切にするなら、住居費を抑えられる住まいが候補の中心になります。

いまのマンションを持ち続けて、最小限の改修で住み続けるのが、もっとも費用を抑えられる道です。売買にともなう諸費用も、引っ越しの費用もかかりません。ここが持ち家を持つ人の強みです。住み替える場合も、今より小さな住まいに移れば、いまのマンションを売った分の資金を手元に残せます。

ただし住み続ける場合も、マンションは管理費・修繕積立金・固定資産税という固定費が続く点は頭に入れておきたいところです。安さだけで選ぶと、後から改修費や住み替え費用がかさむこともあります。当面の出費と、長く住んだときの総額の両方で比べると、判断を誤りません。

夫婦で希望が分かれたときは

夫婦で希望が分かれたときは、どちらかに合わせるのではなく、共通の物差しを決めることが解決の近道です。

利便性を重んじる人もいれば、自然の近さや住み慣れた土地を離れたくない人もいます。価値観の違いそのものは、無理にそろえる必要はありません。

健康・資金・家族の支えやすさのうち、二人にとって何を最優先にするかを先に決めることが大切です。判断の土台がそろえば、立地や物件の好みの違いは調整しやすくなります。たとえば「介護が必要になっても困らないこと」を共通の軸に置けば、候補の絞り方が見えてきます。

いきなり物件から話し合うと、好みのぶつかり合いになりがちです。先に「どんな暮らしを続けたいか」を言葉にして共有すると、感情的な対立を避けられます。いまのマンションを売るのか持ち続けるのかも、この共通の物差しがあると話が進みます。

どうしても折り合わない部分は、段階的に見直す前提で残しておく手もあります。今すべてを決め切らず、変えられる余地を残すことが、二人が納得できる選択につながります。

終の棲家は段階的に選ぶ|まず今のマンションをどうするか決める

終の棲家は一度で決め切るのではなく、暮らしの変化に合わせて段階的に選び直していけます。

元気なうちは利便性を重視し、体力が落ちたらケアのある住まいへ移る、という段階的な選び方が現実的です。その前提に立つと、いまのマンションを「売る・貸す・持ち続ける」のどれにするかが、次の一手を決める出発点になります。行き先の費用も、この判断から生まれる資金で組み立てることになります。

終の棲家は段階的に見直してよい

終の棲家は、数年から十数年の単位で見直していける、変えられる選択です。

一度決めた住まいに、最期まで縛られる必要はありません。元気な時期に選んだ住まいを、体力や家族の状況が変わった段階で見直すのは自然なことです。

実際、2回目以降に住宅を買う二次取得者の年齢は高く、令和7年度の調査では分譲マンション(分譲集合住宅・三大都市圏)の二次取得者の平均年齢は61.7歳でした。報告書は「二次取得者は、注文住宅、分譲集合住宅、既存(中古)集合住宅では『60歳以上』が最も多い」と述べています。定年や子の独立を機に、暮らしに合った住まいへ移る動きが一定数あるということです。

出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」p.41(令和8年7月・住宅局。調査対象は2024年4月〜2025年3月に住み替え等を行った世帯)

だからこそ、最初の選択で完璧を目指す必要はありません。今の自分に合う住まいを選び、節目ごとに調整していく方が、結果として無理のない暮らしにつながります。

今のマンションを「売る・貸す・持ち続ける」で考える

どの住まいを選ぶにしても、いまのマンションをどうするかは避けて通れません。始末のしかたは、大きく「売る・貸す・持ち続ける」の3つに分かれます。それぞれの向き不向きを、ここで俯瞰しておきます。

売るのは、まとまった資金を作って住み替えや施設入居の原資にする道です。マンションは一戸ごとの個別性が戸建てより小さく、同じ建物や近隣で似た条件の売買も積み重なるため、比較の相手を見つけやすい住まいです。個体差の大きい戸建てのような「比べる相手がいない」状態になりにくいのが強みです。ただし比較の相手が見つかることと、いくらで売れるかは別の話で、立地や築年数、市況によって結果は変わります。住宅ローンが残っている場合は、売却代金で残債を完済し、抵当権を抹消できることが前提になります。査定額と残債の関係によって進め方が変わるため、可否や税金の細かい部分は断定せず、売却や住み替えローンを扱う専用記事や専門家で確かめてください。売らずに資金だけ作りたい場合は、自宅を売って賃貸で住み続けるリースバックという方法もありますが、これも仕組みを理解したうえで専用記事で検討するのが安全です。

貸すのは、いまのマンションを手放さずに家賃収入を得て、ケア付き住宅の家賃や移り先の費用を相殺する道です。マンションは戸建てより賃貸の需要が読みやすく、建物の管理を管理会社に委ねやすいため、貸主の手離れが比較的よいと言われます。一方で、空室になれば収入は途切れ、退去時の原状回復費もかかります。自宅にかけている住宅ローンは、貸すと条件が変わることがあり、家賃収入には税金も生じます。こうした点は断定できないため、貸す前に金融機関や専門家へ確認しておくのが確実です。

持ち続けるのは、さらに2つに分かれます。ひとつは、いまのマンションに住み続ける道です。前半で見た「住み続ける」がこれにあたり、売買や引っ越しの費用がかからないぶん、もっとも住居費を抑えられます。もうひとつは、別の住まいへ移りながら、いまのマンションを空けたまま保有する道です。こちらは注意が要ります。住まない月も管理費・修繕積立金・固定資産税は変わらずかかり続けるため、移り先の住居費と二重になり、費用面ではもっとも重くなります。二拠点生活のように「あえて残して使う」明確な目的があるなら別ですが、決めきれずに空けたまま持ち続けるのは、費用の面ではおすすめしにくい選び方です。

このほか、自宅を担保にお金を借りるリバースモーゲージや、住宅金融支援機構と連携したリ・バース60といった方法もあります。持ち家を活かして資金を作る点では選択肢に入りますが、仕組みや条件が細かいため、ここでは名前を挙げるにとどめ、詳しくは制度を扱う専用記事に譲ります。

まずは今のマンションの価値を確認する

売る・貸す・持ち続けるのどれを選ぶにしても、まずは今のマンションの価値を知ることが最初の一歩になります。

住み替えるにも貸すにも、今のマンションがいくらで売れそう、いくらで貸せそうか分からなければ、計画は立てられません。価値が分かれば、次の住まいに使える予算や、手元に残せる老後資金の見通しが立ちます。残債があるなら、売却代金で返しきれるかどうかも見えてきます。

マンションの価値は、複数の不動産会社に査定を依頼して比べると相場感がつかめます。無料の一括査定を使えば、一度の入力で複数社の見積もりをまとめて受け取れます。同じ建物や近隣の成約が参考になりやすいマンションは、こうした査定で相場が絞り込みやすい住まいでもあります。

今すぐ売る必要はなく、選択の前提として知っておくだけでも十分に役立ちます。数字が見えてはじめて、終の棲家の話は具体的に動き出します。

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まとめ:終の棲家を体力の変化から選ぶなら、住み替えのトビラ

終の棲家は、今の暮らしやすさよりも、体力が落ちたあとも住み続けられるかどうかで選びます。すべての望みをかなえる住まいはないので、重んじる条件を1つに絞ります。

絞った条件を形にするには、今の住まいを手放したときにいくら残るのかを先に調べます。住み替え先だけを先に選ぶと、その費用をどこから出すのかが定まりません。

住み替え先を見に行く前に、今の住まいの値段を確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、介護が必要になったあとの住まいも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。