年金生活で住宅ローンが残るときの選択肢と対処法

年金生活で住宅ローンが残るときの選択肢と対処法

年金生活に入ってから、住宅ローンの返済が思ったより重く感じる。そう気づいて不安になる方は少なくありません。けれど、ローンが残っていること自体は、そのまま家を失うことを意味するわけではありません。

この記事では、住み替えのトビラが、年金生活で住宅ローンが残るときの家計と残債の見える化から、払い続ける・借り換える・資金を作る・手放すという選択肢までを、マンションを持つ方の視点も交えながら順を追って解説します。

自分が亡くなったあとのローンと家の行方まで含めて、慌てて動かずに済む判断の材料をそろえていきます。

年金生活で住宅ローンが残るのは珍しくない|まず現状を落ち着いて把握する

年金生活で住宅ローンが残っていても、それだけで返済が行き詰まるわけではありません。

収入の柱が給与から年金に変わった時期に、この不安を感じる方は多くいます。マンションのローンを抱えたまま定年を迎える方も珍しくありません。大切なのは、慌てて家を手放す前に、いまの状況を正しくつかむことです。この先は、家計と残債の見える化から始め、選択肢を比べ、必要なら早めに相談する、という順で進めていきます。

定年後の収入減で返済がきつく感じる仕組み

返済額そのものは変わらなくても、収入が年金に切り替わると、家計に占めるローンの重さは増します。

現役時代の給与に比べて、年金の受取額は下がるのが一般的です。手元に使えるお金が減る一方で、毎月のローン返済額は契約時の金額のまま動きません。収入が細くなっても固定の支出は残る、この差が「返済がきつい」という実感の正体です。

さらに、年齢とともに医療費や介護に関わる支出が増えやすくなります。想定していなかった出費が重なると、削りにくい固定費であるローンが家計を強く圧迫します。収入と支出のバランスが崩れやすい構造そのものが、年金生活での返済負担を大きく感じさせる原因です。

「残っている」だけで破綻ではないと切り分ける

ローンが残っている状態と、返済を続けられない状態は、まったく別のものです。

いま注目すべきは、返済が滞っているかどうかです。年金と貯蓄で毎月の返済が回っているなら、それはまだ払えている段階であり、取れる手は多く残っています。反対に、すでに滞納が始まっている場合は、選べる選択肢が急に狭まります。

この違いが、動くタイミングの重要さにつながります。まだ払えているうちなら、返済条件の見直しや売却の準備を、時間をかけて有利に進められます。だからこそ、行き詰まる前の早い段階で自分の緊急度を見きわめることが、その後の選択肢を広く保つことになります。

年金生活の住宅ローンをまず「見える化」する|家計と残債の確認

対処法を選ぶ前に、自分の家計と残債、家の価値という前提の数字をそろえることが先です。

ここで確認するのは、毎月の収支、残債と完済予定、そして家の売却価格の目安の3点です。この3つが、これから選択肢を比べるときの判断の分母になります。感覚ではなく数字で見ることで、必要以上に不安がる状態からも、根拠なく楽観する状態からも抜け出せます。

年金と支出の毎月収支を書き出す

まずは年金収入から生活費とローン返済を引いて、毎月の収支が黒字か赤字かを確かめます。

年金の受取見込額は、毎年届く「ねんきん定期便」や、パソコン・スマートフォンから使える「ねんきんネット」で確認できます。ねんきんネットでは、条件を設定して将来受け取る年金の見込額を試算することもできます。

出典: ねんきんネット|日本年金機構

確認した年金額から、生活費と毎月のローン返済額を差し引きます。手取りベースで黒字なら、いまの返済は無理なく回っている状態です。赤字なら、その不足分を毎月いくら貯蓄から取り崩しているのかを見ます。貯蓄をあと何年で使い切る計算になるのか、という視点で見ると、動くべき時期の目安がつかめます。

実際の水準を統計で見てみます。総務省統計局の家計調査によると、2025年の1か月平均で、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は可処分所得221,544円に対して消費支出263,979円で、毎月42,435円が不足しています。65歳以上の単身無職世帯では可処分所得118,465円に対して消費支出148,445円で、毎月29,980円の不足です。この消費支出には住宅ローンの返済は含まれていません(ローンの返済は消費支出ではなく、家計調査では別の扱いになります)。

つまり、ローンが残っていない前提でもすでに毎月の収支は赤字で、そこへ返済が上乗せされる形になります。返済額の見当を付けるなら、たとえば残債1,000万円・残り10年・元利均等で、【フラット35】2026年8月適用の金利 年3.290%(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)なら毎月97,905円です。金利は毎月変わるため、実際の借入時の金利で確認してください。

夫婦のみの世帯でこの返済が乗ると、毎月の不足はおよそ14万円になります。貯蓄が500万円あれば単純計算で3年ほどです。年金額も生活費も世帯ごとに大きく違うため、他人の数字ではなく、自分の実額を書き出して同じ引き算をしてください。数字にして初めて、余裕があるのか、いつまでに手を打つべきなのかが見えてきます。

出典: 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」住宅金融支援機構【フラット35】借入金利

収支を見る物差しの一つに、年収に占める年間返済額の割合(総返済負担率)があります。フラット35が定める基準は、年収400万円未満で30%以下、年収400万円以上で35%以下です。これは融資の可否を判定する基準であり、生活のしやすさの目安として作られたものではありません。年金生活では収入が下がるぶんこの割合が上がりやすくなります。割合だけで慌てず、まずは自分の実額での収支を確かめることが先です。

残債と完済予定年齢を確認する

あと何年、いくら残っているのか、そして完済したとき自分が何歳になるのかを、返済予定表で確認します。

住宅ローンを借りたときに受け取った償還予定表や、金融機関のマイページ・アプリで、現在の残債と完済予定の年齢を確認できます。この2つがはっきりすると、返済がいつまで続く負担なのかが具体的になります。

国土交通省の令和7年度の調査では、994機関のうち978機関(98.4%)が完済時年齢を審査項目に挙げています。その978機関が挙げた具体的な年齢は「80歳未満」が716機関で最も多く、「85歳未満」が65機関、「75歳未満」が42機関、「70歳未満」が5機関、「なし」が2機関、「その他」が158機関でした(複数回答)。「その他」が158機関ある以上、80歳という単一の線で決まっているわけではありません。なお、この調査は金融機関が申告した審査項目の集計であり、実際に融資が実行された案件の完済時年齢の分布ではありません。完済予定の年齢が平均寿命に近い、あるいは超える場合は、返済が生活を圧迫し続けるリスクが高いと考えられます。この段階で、自分の健康状態や、団体信用生命保険(団信)に入っているかどうかも、あわせてメモしておくと後の判断に役立ちます。団信の中身については、この記事の後半であらためて整理します。

家がいくらで売れそうか(アンダーローンかオーバーローン|手取り見込み額で判定)

家がいくらで手元に残せそうかによって、取れる打ち手は大きく変わります。

ここで比べるのは、査定額そのものではなく「手取り見込み額」です。手取り見込み額とは、査定額から仲介手数料や抵当権抹消の費用などの諸費用を差し引いた、実際に手元に入るお金のことです。この手取り見込み額が残債を上回る状態を「アンダーローン」、下回る状態を「オーバーローン」と呼びます。査定額をそのまま残債と比べると、諸費用の分だけ実態より楽観的に見えてしまうため注意が必要です。

額が法令・告示で決まる費目(媒介報酬の上限、印紙税、抵当権抹消の登録免許税と司法書士報酬)だけを積み上げると、売却価格2,000万円で75.55万円(売却価格の3.78%)、3,000万円で108.55万円(3.62%)、5,000万円で174.55万円(3.49%)です。価格が上がるほど比率が下がるのは、媒介報酬に定額部分があり、印紙税が階段状の定額であるためです。

このうち抵当権抹消は、登録免許税が不動産1個につき1,000円(専有部分と敷地で2個なら2,000円)、司法書士報酬が全国平均17,470円で、合計の目安は約19,470円です。司法書士報酬は法定ではなく、日本司法書士会連合会のアンケートの平均です。不動産の個数は登記記録によって変わります。

この積み上げには、引越費用・ハウスクリーニング・測量費・譲渡所得税等・住宅ローン一括返済手数料を含んでいません。なお「売却諸費用が売却価格の何%になるか」を集計した公的統計・業界団体統計は存在しません。また、住み替え先を買う場合は、これとは別に購入側の諸費用(媒介報酬・印紙税・所有権移転登記と抵当権設定登記の司法書士報酬、さらに登録免許税と不動産取得税)がかかります。売却側と購入側では数えている費目が違うため、上の比率を購入側にそのまま当てることはできません。

アンダーローンなら、家を普通に売ればローンを完済でき、手元にお金も残せます。オーバーローンの場合は、売ってもローンが残るため、任意売却や自己資金の充当といった別の進め方が絡んできます。この分かれ目が、あとで選択肢を比べるときの判断の軸になります。まずは自分の家がどちらなのかを、目安でよいのでつかんでおくことが大切です。

売却の見込み額は、不動産会社の査定でおおよそを知ることができます。査定は無料で受けられるのが一般的で、複数の会社に依頼して結果を見比べると、より確からしい目安をつかみやすくなります。この点、マンションは戸建てに比べて相場の見当をつけやすい住まいです。同じ建物の別住戸や近隣の同じ種類の住戸が比較の対象になるため、一戸ごとの個別性が戸建てより小さく、比べやすいからです。取引事例も多く、首都圏の中古マンションは2025年(暦年)に49,114件が成約しています。ここで出る金額はあくまで目安であり、実際の売却価格を保証するものではない点は押さえておきましょう。

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年金生活で住宅ローンが残るときの選択肢|中立に比較する

年金生活で住宅ローンが残るときの対処には、大きく「払い続ける」「借り換える」「住み続けながら資金を作る」「売って手放す」の4つの方向があります。

この4つは、老後の住まいをめぐる大きな道筋とも重なります。払い続ける・借り換えるは「今の家に住み続ける」道、住み続けながら資金を作る(リバースモーゲージ・リースバック)は「住宅資産を取り崩して住み続ける(借りる・売って住み続ける)」道、売って手放すは「住宅資産を取り崩して住み替える(売る)」道にあたります。

どれが正解かは、前の章で確認した収支・残債・アンダーかオーバーか、そして住み続けたい気持ちや健康状態によって変わります。ここでは、どれか一つを勧めるのではなく、それぞれの向き不向きを対等に並べていきます。自分の状況に照らして読み進めてください。

このまま払い続ける(返済条件の変更・繰上げ・家計の再設計)

家計が黒字で、完済まで見通せるなら、無理に動かず払い続ける選択が、いちばん負担が軽いことも少なくありません。

毎月の返済が重いと感じても、家計全体では回っているなら、まず考えたいのは今の家に住み続ける道です。金融機関に相談すると、返済期間を延ばしたり、一時的に返済額を減らしたりする返済特例を利用できる場合があります。月々の負担を抑えられる余地がないかを、早めに相談してみる価値があります。

ただし、返済期間を延ばすと、その分だけ利息がかさみ、総支払額は増えます。目先の月々が軽くなる代わりに、支払い総額は膨らむという点は、正直に理解しておく必要があります。こうした条件変更に応じるかどうかは金融機関の判断であり、原則として個別の状況によって扱いが変わります。

貯蓄に余裕があれば、繰上げ返済で残債や利息を減らす方法もあります。あわせて、保険や通信費など家計全体を見直して固定費を抑えれば、返済を続けやすくなります。マンションの場合は、管理費や修繕積立金といった住宅ローン以外の固定費も続く点を家計に織り込んでおくと安心です。売らずに済む道を最初に検討することが、選択肢を落ち着いて比べる出発点になります。

借り換えで返済額を下げる

いまより低い金利に借り換えられれば、毎月と総額の返済負担を減らせますが、諸費用と年齢・健康による審査のハードルがあります。

借り換えの効果は、金利差と残りの返済期間の長さで決まります。金利差が大きく残期間が長いほど、減らせる利息は大きくなります。反対に、残りの期間が短いと、効果は限られます。

注意したいのは、借り換えには登記費用や事務手数料などの諸費用がかかる点です。せっかく金利を下げても、諸費用でその効果が相殺されてしまわないか、事前に見きわめる必要があります。費用は物件や金融機関によって幅が大きいため、具体的な金額は個別に確認しましょう。

さらに、シニア世代では、完済予定の年齢や団信への再加入の審査で、借り換えが通りにくい場合があります。新しくローンを組み直す形になるため、年齢や健康状態が審査に影響します。借り換えができるかどうかも含めて、金融機関に相談して確かめるのが安心です。

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住み続けながら資金を作る(リバースモーゲージ・リースバック)

いまの家に住み続けたい場合、自宅を活用して資金を作る方法がありますが、仕組みも向き不向きも大きく異なります。

代表的なのが、リバースモーゲージとリースバックの2つです。どちらも住み慣れた家に住み続けられる点は共通しますが、家の所有権を手放すかどうか、借入が増えるかどうかで性格が分かれます。まずはそれぞれの仕組みを見ていきます。

リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りる仕組みです。存命中は毎月の支払いを利息だけにとどめ、元金は契約者が亡くなったときに、自宅の売却などで一括返済します。住宅金融支援機構が金融機関と提携して扱う「リ・バース60」は、住宅ローンの借り換えにも使えます。融資限度額は担保評価額(住宅および土地)の50%または60%で、1億2,000万円以下、かつ必要な資金の範囲内です。担保とする住宅が長期優良住宅で年齢が満60歳以上のときは55%または65%、年齢が満50歳以上満60歳未満のときは30%になります。50%から60%の間で決まるのではなく、どちらかの割合が当てはまる形です。

なお、利用できる年齢・資金の使いみち・融資限度額・ノンリコース型とリコース型の取扱い・金利・取扱可能エリア・商品名称などの商品内容は、取り扱う金融機関ごとに異なります。

リ・バース60には、相続人が残った債務を返済する必要のない「ノンリコース型」を選べる特徴があります。契約者の死後、自宅を売却しても債務が残った場合に、相続人がその残りを返済しなくてよい仕組みです。2025年度に申請のあった案件では99.8%がこの型で、2026年1〜3月は100.0%でした。

ここでマンションを持つ方が押さえておきたいのが、リバースモーゲージは担保評価を土地の価値を中心に見る仕組みだという点です。そのため、土地の持分が小さいマンションは対象外になったり、都市部で評価が高い物件に限られたりしやすく、利用できても借りられる枠が小さくなりがちです。リバースモーゲージは、どちらかといえば土地の評価が出やすい戸建て向きの仕組みだと理解しておくとよいでしょう。

出典: リ・バース60|住宅金融支援機構(JHF)

リースバックは、自宅をいったん売却し、その後は賃貸として家賃を払いながら同じ家に住み続ける仕組みです。まとまった資金を得られる一方で、家の所有権は手放し、毎月の家賃が新たに発生します。こちらは「売る」仕組みのため、担保評価の下限といった壁がなく、分譲マンションでも扱う事業者が多く、比較的使いやすいのが特徴です。ただし、管理費や修繕積立金の負担は家賃に織り込まれるのが実態で、これらが高いマンションほど家賃が割高になりやすい点は確認しておきましょう。

2つの向き不向きを、住み続け方と所有権、返済や家賃、相続への影響で整理します。

項目リバースモーゲージリースバック
住み続け方自宅を担保に借りて住み続ける自宅を売って賃貸で住み続ける
所有権手元に残る手放す
毎月の負担存命中は利息が中心家賃が発生
相続への影響ノンリコース型なら残債の返済は不要所有権がないため家は相続対象外
マンション適性担保が土地中心のため厳しめ売る仕組みで使いやすい

住み続けたいが、借入は増やしたくないならリースバック、家を手放したくなければリバースモーゲージ、というように向きが分かれます。どちらも扱う事業者や金融機関ごとに条件が違うため、複数を比べて、自分の希望に合う方を選ぶことが大切です。

なお、この2つは「引っ越したくない、あるいは引っ越せない」方のための選択肢です。住み替えても構わないのであれば、通常の売却のほうが手元に残るお金は多くなるのが一般的です。マンションは土地に縛られず住み替え先の選択肢も広いため、住み替えを含めて手取りを比べてみる価値があります。

売って住み替える・手放す(アンダー/オーバーで進め方が変わる)

家計が続かない場合や、住み替えた方が老後の暮らしに合う場合は売却を考えますが、アンダーローンかオーバーローンかで進め方が変わります。

見える化の章で確認したアンダーかオーバーかによって、売却後の流れは大きく分かれます。アンダーローンなら、通常の仲介売却で家を売ってローンを完済し、残ったお金を住み替え先の頭金や、賃貸に移る資金に充てられます。売却と住み替えを組み立てやすい状態です。

一方、オーバーローンの場合は、売っても残債が残るため、金融機関の合意を得て売る任意売却や、不足分への自己資金の充当が必要になります。手続きが複雑になりやすいので、早めに金融機関や専門家に相談しながら進めるのが安心です。

売却を考えるとき、マンションには相場の見当をつけやすいという利点があります。売り出し価格の当たりを早く付けられるぶん、住み替えの資金計画を立てやすくなります。なお、売却の情報を調べると、境界の確定・接道・再建築が可能かどうかといった話が出てくることがありますが、これらは土地と建物を一体で持つ戸建て特有の論点です。マンションから住み替える方には基本的に関係がないため、読み飛ばして構いません。

売却で共通して意識したいのは、急ぐほど買い叩かれやすいという点です。滞納前の余裕がある段階なら、時間をかけて相場に近い価格で売れる可能性が高まります。焦って安値で手放さずに済むことも、早めに動く利点の一つです。

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自分が亡くなったら住宅ローンと家はどうなる|団信と相続

団信に入っていれば、契約者が亡くなったときや高度障害になったときに、残った住宅ローンは保険で完済され、家族はローンのない家を相続できるのが基本です。

ただし、団信が使えないケースや、ローンが残ったまま相続する場合の注意点もあります。ここでは、自分が亡くなったあとに住宅ローンと家がどうなるのかを整理します。家計の話とは別に、家族に何を残せるのかという視点で確認してください。

団信でローンが完済されるケースと、されないケース

団信で保障される事由は死亡や高度障害などで、収入減や失業、生活が苦しいといった理由では完済されません。

団体信用生命保険(団信)に入っていれば、契約者が亡くなったり、高度障害の状態になったりしたときに、保険金でローンが完済されます。結果として、家族にはローンのない家が残ります。住宅ローンを組むとき団信への加入を求められることが多いのは、この保障のためです。

一方で、ローンが残ってしまう場合もあります。団信に加入していないケース、保障の対象外にあたるケース、そして夫婦などで連帯保証していて保証人側が亡くなったケースでは、ローンはそのまま残ります。まず、自分がどの状態にあたるのかを確認しておくことが大切です。

なお、保険金の請求には期限が設けられているのが通常ですが、その年数や細かな条件は、加入している商品や約款によって異なります。いざというときに家族が困らないよう、証券や契約書類の保管場所を家族と共有しておくと安心です。

ローンが残ったまま相続するときの注意

団信が使えずローンが残る場合は、家と一緒にローン、つまり借金も相続の対象になります。

相続では、家などのプラスの財産に加えて、住宅ローンの残債というマイナスの財産も引き継ぎます。相続人がそのまま返済を引き継ぐのが基本ですが、家の価値より残債の方が大きいなど、資産より債務が上回る場合は、相続放棄という選択肢もあります。

ただし、相続放棄をすると、ローンを引き継がずに済む代わりに、その家を含めた財産すべてを手放すことになります。家を残したいのか、債務を避けたいのかによって判断が変わるため、慎重に検討する必要があります。

相続税や債務控除の扱いは条件によって変わり、判断も専門的になります。ローンが残ったまま相続する見込みがある場合は、早めに司法書士や税理士に相談し、自分の家族の状況に合った進め方を確認しておくことをおすすめします。

まとめ:年金生活で住宅ローンが残るなら、住み替えのトビラ

年金生活で住宅ローンが残っていても、それだけで返済が行き詰まるわけではありません。まず動くべきは、家計と残債の見える化です。毎月の収支、残債と完済予定の年齢、そして家を売ったときの手取り見込み額の3点を、感覚ではなく数字でつかむことから始まります。

そのうえで、滞納が始まる前の早い段階で金融機関に相談し、払い続ける・借り換える・住み続けながら資金を作る・売って手放すという選択肢を、自分の状況に照らして比べていきます。相談先の目安は、次のとおりです。

  • 返済や資金計画:金融機関、FP
  • 売却:宅地建物取引士
  • 相続・名義:司法書士
  • 税金:税理士

不安が大きいときほど焦って家を手放したくなりますが、余裕のあるうちに数字を整え、順を追って選択肢を比べれば、納得のいく形で老後の住まいを決めていけます。まずは一つずつ、現状の確認から始めてみてください。

住み替えのトビラは、不動産仲介を持たない中立の立場です。『今は売らない』という選択肢も含めて、あなたにとって後悔のない判断をお手伝いします。