リバースモーゲージとリースバックの違いを比較

リバースモーゲージとリースバックの違いを比較

自宅を活かして老後の資金をつくりたい。そう考えて調べ始めると、リバースモーゲージとリースバックという似た名前の二つにたどり着きます。名前が近いので混同しがちですが、片方は「借りる」、もう片方は「売る」という、根っこの違う仕組みです。

この記事では、住み替えのトビラがリバースモーゲージとリースバックの違いを所有権・お金の性質・毎月の負担・相続への影響で見比べます。そのうえで、いまマンションを持っている方に向けて、いちばん大事な論点を正面から扱います。それは「この制度は、あなたのマンションで使えるのか」という点です。担保評価の仕組みの都合で、二つはマンションでの使いやすさが大きく分かれます。

普通に売って住み替えるという三つ目の道まで含めて、どれがご自身に近いのか、次に何を確かめればよいのかを、読者の代わりに仕分けながら整理していきます。

リバースモーゲージとリースバックの違いをひと目で理解する

二つは「自宅でお金をつくる」点は同じでも、「借りる」か「売る」かで根本から異なる別物です。

名前が似ているため取り違えられやすいのですが、見分ける手がかりは二つに絞れます。ひとつは、自宅の所有権が本人に残るのか、相手へ移るのか。もうひとつは、受け取るお金が借入なのか、売却したお金なのか。この二点をおさえれば、あとの違いはそこからつながって理解できます。それぞれの中身は、次の比較表で項目ごとに見ていきます。

リバースモーゲージは「自宅を担保に借りる」仕組み

リバースモーゲージは、自宅を担保に入れて融資を受ける仕組みで、所有権は本人に残ります。

住み慣れた家に住み続けたまま、その家を担保としてお金を借りる形です。生きているあいだの毎月の負担は利息のみで、借りた元金は契約者が亡くなったときなどに、担保にした自宅を売って一括で返すのが一般的な流れです。つまり、家に住みながら少しずつお金を受け取り、返済の大部分は後ろへ回す仕組みだと考えると分かりやすくなります。

いくら借りられるか、金利がどの程度かは、取り扱う金融機関や商品によって異なります。比べる物差しとして、住宅ローンの実勢を置いておきます。【フラット35】2026年8月適用の金利は年3.290%です(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き。2026年8月時点)。

金利は毎月変わるため、実際の借入時の金利で確認してください。リバースモーゲージの金利がこの水準より高いか低いかは商品ごとに違い、業者横断で集計・公表しているところはありません。ここでは「所有権は本人に残る」「毎月は利息のみ」という骨格をおさえておけば十分です。

リースバックは「自宅を売って住み続ける」仕組み

リースバックは、自宅を売って所有権を運営会社へ移し、そのあとは家賃を払って同じ家に住み続ける仕組みです。

契約は「売買契約」と「賃貸借契約」の二段構えです。売却によってまとまったお金を一度に受け取れる一方、売ったあとの自分の立場は、その家を借りて住む賃借人へと変わります。家は同じでも、持ち主ではなくなり、毎月の家賃が発生する点が大きな特徴です。

いくらで売れるか、家賃がどの程度になるかは、契約する相手や条件によって変わります。リースバックの売却価格は、家賃の利回りから逆算して決まる取引です。「市場相場の何割」という比率で説明できる性質のものではなく、比率を集計・公表している公的機関や業界団体もありません。まとまった額を受け取ろうと売却価格を高くすると、その分だけ毎月の家賃も上がる関係にあります。この点は、あとのリスクの章でくわしく見ていきます。

出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブックを作成しました」

【比較表】リバースモーゲージとリースバックの違いを項目別に比較

同じ「自宅で資金をつくる」でも、お金の性質が違えば、そこから相続への影響やマンションでの使いやすさまで、違いが連なっていきます。

主な項目を横並びにしたのが次の表です。いちばん下の「マンション適性」は、マンションを持つ方にとって最も大事な行なので、章をあらためてくわしく扱います。名前が紛らわしいリ・バース60は、リバースモーゲージの仲間として後の章で整理します。

比べる点リバースモーゲージリースバック
所有権自分に残る運営会社へ移る(手放す)
資金の性質借入(利息が付く。リ・バース60は使途が住宅関連に限定)売却代金(返済不要・使途は原則自由)
毎月の負担利息のみ家賃
最終的に家は死亡時などに売却して精算(原則残らない)。生前は住み続けられる運営会社のもの(相続では残せない)
年齢条件おおむね60歳以上原則なし(物件審査が中心)
マンション適性マンションは対象外か、都市部の高評価物件に限られ厳しい分譲マンションでも使いやすい

所有権・資金の性質・毎月の負担で比べる

所有権が残るか移るか、受け取るお金が借入か売却代金か、毎月払うのが利息か家賃か。この三点が、二つのいちばん大きな分かれ目です。

三点はばらばらの違いではなく、一本の線でつながっています。リバースモーゲージは「借りる」ので、担保に入れても所有権は手元に残り、受け取るのは返す前提の借入金です。返す約束がある以上、毎月は利息を払う形になります。一方でリースバックは「売る」ので、所有権は運営会社へ渡り、手にするのは返す必要のない売却代金です。ただし家はもう自分のものではないため、住み続けるには家賃を払うことになります。

金利や家賃が具体的にいくらになるかは、商品や契約によって変わる目安です。金額そのものより、「借りたお金には利息、売った家に住むには家賃」という負担のかたちの違いを先につかんでおくと、後の判断がぶれにくくなります。

最終的に家はどうなるか・年齢条件・相続への影響で比べる

契約者が亡くなったあと自宅がどうなるか、利用できる年齢の目安、相続への影響も、選ぶ前に押さえておきたい違いです。

年齢については、リバースモーゲージはおおむね満60歳以上が対象です。リースバックは売買が土台のため年齢の条件は原則なく、物件が売れるかどうかの審査が中心になります。

相続への影響は、仕組みの違いがそのまま表れます。リバースモーゲージは、契約者が亡くなったときに担保の自宅を売って元金を精算するのが一般的で、家そのものは原則として手元に残りません。リースバックはすでに自宅を売っているため、遺される財産は現金や新たな住まいへと形を変えます。どちらも自宅という大きな財産の行き先に関わるため、相続人が複数いる場合の分け方や名義の扱いは、司法書士や、資金計画を含めて相談できるFP(ファイナンシャルプランナー)に早めに確かめておくと安心です。

マンション所有者の決定的な差は「マンションで使えるか」そのもの

ここまでは二つを一般的に比べてきました。ただ、いまマンションを持っている方にとって最初に効いてくるのは、性能の優劣よりも「そもそも自分のマンションで使えるのか」という一点です。

結論から言うと、リースバックは分譲マンションでも使える事業者が多いのに対し、リバースモーゲージはマンションだと対象外か、都市部の高く評価される物件に限られ、条件が厳しくなりがちです。理由は担保評価の仕組みにあります。リバースモーゲージは土地の価値を中心に担保を評価するため、土地の資産価値が残る戸建てが優位です。マンションは土地を区分所有者みんなで共有し、一戸あたりの持分が小さいため、担保としての評価が出にくいのです。

リバースモーゲージはマンションだと対象外か、都市部の高評価物件に限られる

リバースモーゲージには大きく三つの種類があり、それぞれマンションの扱いが違いますが、いずれもマンションには厳しめです。

一つ目は、社会福祉協議会が扱う不動産担保型生活資金です。これは公的な低所得高齢者向けの貸付で、そもそもマンション(集合住宅)は対象外です。土地の評価額がおおむね1,500万円以上の戸建てが条件とされ、マンションに住む方は入り口で外れます。

二つ目は、民間の金融機関が扱うリバースモーゲージです。こちらはマンションも対象になり得ますが、事実上は都市部の高く評価されるマンションに限られます。各行が公式に示す条件の例を挙げると、東京スター銀行はマンションの担保評価額3,000万円以上、みずほ銀行は対象エリアを首都圏などに限ったうえでマンションは総額5,000万円以上、三井住友銀行は自宅の評価額6,000万円以上といった水準です(2026年8月時点の各行の公表条件。条件は随時改定されます。この3行が民間商品の代表というわけではありません)。地方や築古、評価の低いマンションは対象外になりやすいことが分かります。

三つ目は、住宅金融支援機構の保険が付いたリ・バース60です。マンションも対象になり得ますが、借入額は担保評価額の50%または60%が上限で、土地持分の評価が小さいマンションでは、借りられる枠そのものが小さくなりがちです。リ・バース60のくわしい中身は、後の章であらためて整理します。

つまり、多くのマンション所有者にとってリバースモーゲージは、使えるかどうかがまず担保評価の下限を超えるかにかかっており、超えなければ土俵に乗らない制度だといえます。

出典: 住宅金融支援機構「リ・バース60」国土交通省「自宅の売却トラブルにご注意ください」

リースバックは分譲マンションでも使える事業者が多い

一方のリースバックは、分譲マンションでも取り扱う運営会社が多く、マンションでも土俵に乗りやすい制度です。

売買が土台なので、居住用の分譲マンションであれば対象になるのが一般的です。ただし、投資用のワンルーム、極端な築古、地方の低価格帯など、運営会社が再販しにくいと判断する物件は断られることもあります。この点はリバースモーゲージと同じで物件しだいですが、都市部の分譲マンションが土俵に乗りやすいという方向は変わりません。

マンションならではの注意点もあります。所有権が運営会社へ移るため、固定資産税や管理費・修繕積立金の名義上の負担はなくなります。ただし、これらの費用は実際には家賃に織り込まれるのが実態です。管理費や修繕積立金が高いマンションほど、その分だけ家賃が上乗せされ、住み続けるコストが割高になりやすい傾向があります。毎月の負担を見るときは、この点も合わせて確かめておきたいところです。

まず「担保評価の下限を超えるか」を確かめると、選択肢が絞れる

ここまでを踏まえると、自宅を担保にお金をつくることを考えるマンション所有者が最初にすべきことは、はっきりしています。自分のマンションが、リバースモーゲージの担保評価の下限を超えられそうかを確かめることです。

もし超えられそうなら、リバースモーゲージも含めて比べる価値があります。逆に、下限に届かないと見込まれる場合は、選択肢は事実上「リースバック」か「通常売却をして住み替える」かの二つに絞られます。ここを最初に仕分けておくと、使えない制度を長く調べて時間を使う遠回りを避けられます。都市部の高評価マンションでない限り、多くの方はこの二択から考え始めるのが現実的です。

そもそも引っ越すなら「普通に売る」方が素直|2制度は住み続けたい人の選択肢

もう一つ、二つを比べる前に押さえておきたい前提があります。リバースモーゲージもリースバックも、どちらも「今の家に住み続けながら資金をつくる」ための制度だという点です。

裏を返すと、引っ越してもかまわないのであれば、この二つはどちらも回り道になりがちです。自宅を普通に市場で売れば、住み続けを前提とした取引より高く売れる可能性があり、手取りも多くなりやすいからです。リースバックの家賃も、リバースモーゲージの利息も抱え込まずに済みます。

マンションは戸建てと違い、土地に縛られません。住み替え先の選択肢が広く、コンパクトな住まいや利便性の高い立地へ移りやすいという特性があります。だからこそ、「この立地・この部屋にどうしても住み続けたい」という強い理由がないマンション所有者にとっては、通常売却をして住み替える方が、手取りも多く負担も見通しやすい場合が多いのです。

リバースモーゲージとリースバックは、「引っ越したくない」あるいは「事情があって引っ越せない」という場合の選択肢だと考えると、位置づけがはっきりします。まずはご自身が本当に住み続けたいのか、それとも住み替えても構わないのかを、いちど整理してみてください。

目的別に見る、リバースモーゲージ・リースバックが向いている人

住み続けることを選ぶとして、どちらが良いかは、性能の優劣ではなく「何のためのお金か」という目的で決まります。

代表的な目的ごとに、向いている手段は変わります。ここでは仕組みの説明は繰り返さず、目的に照らした向き不向きだけを見ていきます。なお、リバースモーゲージが候補になる場合も、前の章で見たとおりマンションでは担保評価の条件を満たせないことが多い点は、頭の片隅に置いておいてください。

自宅に住み続けながら生活費や医療・介護費を補いたい人

住み続けることを最優先し、日々の生活費や医療・介護の費用を少しずつ補いたい方には、所有権を残せるリバースモーゲージが選択肢になりやすいです。

家を手放さずに済み、商品によっては使いみちの幅が比較的広いため、暮らしの費用にあてやすいのが理由です。ただし、想定より長生きした場合には、利息を払う期間が延びて負担が見通しにくくなったり、担保として見積もった自宅の評価額の影響を受けたりすることがあります。この点のくわしい注意は、このあとのリスクの章で見ていきます。

まとまった資金を一度に受け取りたい・住宅ローン残債を整理したい人

今まとまったお金が必要な方や、住宅ローンの残りをいったん整理したい方には、売却代金を一度に受け取れるリースバックが合う場面があります。

一度に資金化でき、引っ越さずに同じ家で暮らし続けられるのが利点です。一方で、売ったあとは家賃の負担が続きます。また、売却価格は家賃の利回りから逆算して決まるため、仲介で売ったときの価格とは決まり方そのものが違う点も、あわせて頭に入れておきたいところです。

リフォームや住み替え資金を自宅を担保に用意したい人

リフォーム費用や新しい住まいの費用を、自宅を担保にまかないたい方には、使いみちを住宅関連に絞った商品であるリ・バース60が候補になります。

生活費全般ではなく、あくまで住まいに関わる費用が対象です。リ・バース60そのものの中身は、名前が似ていて混同されやすいため、このあと別の章で整理します。ここでは「住宅費に絞った候補がある」とおさえておけば十分です。

見落としやすいデメリット・リスクと、そもそも使わない選択肢

メリットの裏側にあるリスクと、二つを使わない道まで見て、はじめて落ち着いて判断できます。

ここからは、それぞれの手段が契約後にどう影響してくるかという落とし穴と、比較記事があまり触れない三つ目の選択肢を見ていきます。前の章で「合う場面」を見たのに対し、ここでは「合わない場面・損なう条件」に角度を変えて掘り下げます。

リバースモーゲージの三大リスク(長生き・金利上昇・不動産価値の下落)

リバースモーゲージには、長生きリスク・金利上昇リスク・不動産価値下落リスクという三つの代表的なリスクがあり、加えて相続人の同意も欠かせません。

一つ目の長生きリスクは、想定より長く生きた場合に、存命中に融資枠を使い切ってしまう可能性です。老後資金として頼りきると、想定より長い人生になったときに、家という最後の資産の余力が細ることもあります。

二つ目の金利上昇リスクは、金利が変動するタイプで将来の金利が上がると、利息負担が増えて借入残高が膨らんでいく可能性です。三つ目の不動産価値下落リスクは、担保の自宅の評価が見直されて下がると、借りられる枠が縮んだり、借入残高が担保価値に近づいたりすることを指します。いずれも商品や契約によって扱いが異なるため断定はできませんが、起こりうる前提として押さえておきたい点です。

加えて、契約者が亡くなったあとは担保の自宅を売って元金を精算するのが一般的なため、自宅を残したい相続人がいる場合は事前の話し合いが欠かせません。金融機関によっては契約時に相続人の同意を求めることもあります。相続や名義に関わる部分は、司法書士に確かめておくと、あとの手続きがつまずきにくくなります。

リースバックのリスク(家賃負担・売却価格・住み続けられる期間・買戻し)

リースバックは、売却後も家賃の負担が続くこと、売却価格が相場より低めになりやすいこと、住み続けられる期間が契約次第で見通しにくいことがリスクです。

家賃負担は、資金を受け取ったあとずっと続きます。受け取った売却代金を取り崩しながら家賃を払っていくと、当初は潤沢に見えた資金が、思ったより早く目減りすることがあります。売却価格は、家賃の利回りから逆算して決まる取引です。「市場相場の何割」という比率で説明できる性質のものではなく、比率を集計・公表している公的機関や業界団体もありません。まとまった額を受け取ろうと売却価格を高くすると、その分だけ毎月の家賃も上がります。手にする金額と、その後払い続ける家賃の総額を、両にらみで見ておく必要があります。

住み続けられる期間は、結ぶ賃貸借契約の型によって変わります。契約の更新が前提となる普通借家なら住み続けやすい一方、あらかじめ期間を区切る定期借家だと、更新がなく期間満了で退去になることもあります。定期借家の契約期間の分布を集計した公的統計・業界団体統計はありません。期間は契約ごとに決まるので、契約書で必ず確かめてください。「ずっと住めると思っていたら期間が決まっていた」という食い違いを避けるため、期間と更新の条件を確かめることが欠かせません。将来また買い戻したい場合は、買戻し特約があるかも確認しておきます。買い戻せる場合でも、価格は売ったときより高くなるのが通常です。倍率を集計した統計はないため、具体的な数字は契約書の買戻し特約で確かめてください。

出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブックを作成しました」

どちらも使わず「普通に売って住み替える」方が合うケース

住み続けることへのこだわりがそれほど強くなければ、自宅を普通に売って、身の丈に合った住まいへ移る方が、負担も総額も見通しやすい場合があります。

これは、リバースモーゲージの利息や担保リスクも、リースバックの家賃負担も、どれも抱え込まずに済む道です。自宅を市場でそのまま売れば、住み続けを前提とした取引より高く売れる可能性があり、手にしたお金で新しい住まいの費用や老後資金にあてられます。売って移るぶん、あとに残る負担がシンプルになるのが持ち味です。

この道が合いやすいのは、たとえば次のような方です。

  • 住み慣れた家そのものへの強い執着がなく、住まいが変わることを受け入れられる
  • 子どもが独立して部屋が余り、広い家を持て余している
  • 駅から遠い、階段がつらいなど、今の立地や間取りを変えたい
  • 管理費・修繕積立金や固定資産税の負担を、暮らしに合わせて軽くしたい

たとえば、夫婦二人暮らしで3LDKのマンションを持て余しているご家庭を考えてみます(匿名の一般的な例です)。仮に自宅が2,000万円で売れて、1,300万円のコンパクトな住まいへ移るとします。差額は700万円ですが、ここから売却と購入の費用が出ていきます。

売却側で法定・実費で額が決まるものは、売却価格2,000万円なら媒介報酬の上限72.6万円、印紙税(軽減後)1万円、抵当権抹消の登録免許税(不動産2個)2,000円、抵当権抹消の司法書士報酬の全国平均1万7,470円で、合わせて75.55万円(売却価格の3.78%)です。引越費用は含みません。

売った後に住まいを買うなら、購入側にも費用がかかります。売買価格から額が決まる分(媒介報酬の上限・印紙税・所有権移転登記と抵当権設定登記の司法書士報酬)を積み上げると、売買価格2,000万円で83.54万円(4.18%)、3,000万円で116.54万円(3.88%)です。売却側と購入側では数えている費目が違うので、2つの比率を足して「総額◯%」とはしないでください。手元に残るのは700万円より小さくなります。

加えて、住み替え先を買うと不動産取得税がかかります。課税のもとになるのは売買価格ではなく固定資産税評価額です。税率は本則4%ですが、住宅と土地は3%の特例があります(令和9年3月31日まで)。建物は評価額から控除額を引いてから3%を掛け、控除額は中古住宅なら住宅の新築時期によって変わります(最高1,200万円)。土地は評価額を1/2にしてから3%を掛け、住宅用地の減額を引きます。評価額が土地16万円・家屋(その他)34万円に満たない取得には課税されません。自分の評価額は課税明細書か固定資産評価証明書で確認してください。

リースバックで住み続ける場合は、この購入側の費用と不動産取得税はかかりません。そのかわり家賃を払い続けます。もちろん売却価格も住み替え先の費用も目安にすぎず、実際の金額は物件や時期で動きます。それでも、こうした比べ方をしておくと、三つの道を同じ土俵に乗せて考えやすくなります。

だからこそ出発点になるのが、「今の自宅がいくらで売れそうか」を知ることです。売れそうな金額が分かって初めて、そのまま売って住み替えるのが得か、住み続けながら資金化する方が合うのかを、同じものさしで比べられます。まずは自宅の売却の見込み額を把握することが、三つのどれを選ぶにしても共通の土台になります。

不動産一括査定とは?仕組み・メリット・デメリット・賢い使い方まで解説 マンションの一括査定とは?仕組み・査定額の見方から住み替えでの賢い使い方まで解説

名前が紛らわしい「リ・バース60」との違いと整理

リ・バース60は、独立した第三の商品というより、リバースモーゲージの仲間として整理できます。

名前が似ていて混同されやすいので、ここでは違いを解くために必要な範囲だけ触れます。金利の細かな比べ方や取り扱い金融機関の一覧、申し込みの手順といった細部には踏み込みません。

リ・バース60は住宅費に使途を絞った高齢者向け住宅ローン

リ・バース60は、住宅金融支援機構の住宅融資保険を使い、資金の使いみちを住宅関連に絞った、満60歳以上向けの住宅ローンです。

使えるのは、住宅の建設・購入・リフォーム、住宅ローンの借換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などで、生活資金には使えません。毎月の支払いは利息のみで、元金は契約者が亡くなったときに、相続人が一括して返すか、担保にした住宅を売って返す仕組みです。残った債務を相続人が返さなくてよいノンリコース型を選べる点も特徴とされています。融資限度額は所要資金以内かつ1億2,000万円以下で、借入の上限は担保評価額の50%または60%です。「50〜60%」という幅ではなく、50%か60%かの2択です。長期優良住宅で満60歳以上なら55%または65%、満50歳以上満60歳未満で利用する場合は30%になります。なお、融資限度額を含む商品内容は金融機関ごとに異なります。

リ・バース60の利用の規模は、2025年度で申請戸数1,293戸・実績戸数1,225戸、実績金額195.9億円です。2025年度末までの累計申請戸数は10,696戸、取扱金融機関は89機関でした。申込者の平均年齢は70.1歳、平均年収404万円で、資金計画の平均は所要額3,066万円・融資額1,561万円・毎月の支払額4.6万円です。「住宅または住宅ローンを必要とする理由」で住替えを挙げたのは10.4%でした。ノンリコース型を選んだ案件は2025年度で99.8%、2026年1〜3月では100.0%です。なお、申請戸数と実績戸数は別の数字で、2024年度は申請1,484戸に対して実績1,298戸でした。

出典: 住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等について(2026年1月〜3月及び2025年度分)」(令和8年5月29日)

出典: 住宅金融支援機構「【リ・バース60】」

民間・リ・バース60・社協の3種類とマンションでの使いやすさ

リバースモーゲージには、民間金融機関の商品、リ・バース60、社会福祉協議会の不動産担保型生活資金という三つの種類があり、マンションでの使いやすさはそれぞれ違います。

民間の商品は、生活資金にも使える型がある一方、前の章で見たとおりマンションは都市部の高評価物件に限られます。リ・バース60はマンションも対象になり得ますが、使途は住宅関連に限られ、借入枠も担保評価の50〜60%が上限のため、土地持分の小さいマンションでは枠が小さくなりがちです。社協の不動産担保型生活資金は公的な低所得高齢者向けで、そもそもマンションは対象外です。

三つに共通するのは、「借りる」側であり、所有権が本人に残り、元金は死亡時などに自宅を売って精算するという骨格です。所有権を手放す「売る」リースバックとは、ここが根本から異なります。マンションを持つ方が自宅を担保に借りることを考えるなら、まず自分のマンションがどの種類の土俵に乗れるのかを確かめるところから始めると、遠回りを避けられます。

リバースモーゲージ・リースバック・売却をどう選ぶか

決め方は、目的の整理と、マンションで土俵に乗るかの確認、そして自宅がいくらで売れそうかの把握から始めると、道筋が立てやすくなります。ここまで見てきた三つを、選ぶ順序に沿ってひとつの流れにまとめます。

目的・マンションで使えるか・売却見込み額の順で絞り込む手順

まず「何のためのお金か」を決め、次に自分のマンションで制度が使えるかを確かめ、最後に自宅がいくらで売れそうかを把握すると、三つのどれが現実的かが見えてきます。

はじめに、目的をはっきりさせます。日々の生活費や医療・介護費を補いたいのか、住宅ローンの残りを整理したいのか、リフォームや住み替えの費用が要るのか。そして、そもそも今の家に住み続けたいのか、住み替えても構わないのか。住み替えても構わないなら、通常売却が素直な選択肢になります。

住み続けたい場合は、次に「自分のマンションで使えるか」を確かめます。リバースモーゲージを考えるなら、担保評価の下限を超えられそうかがふるいになります。多くのマンションではここで対象外になりやすく、その場合の現実的な選択肢はリースバックか通常売却に絞られます。

そのうえで、自宅がいくらで売れそうかを把握します。この見込み額は、どの道を選ぶかを判断するときの分母になります。売れそうな金額が分かれば、そのまま売って住み替えた場合に手元に残る額と、リースバックで住み続けながら家賃を払う場合の負担とを、同じものさしで比べられます。個別の資金計画はFP、相続や名義の扱いは司法書士、売却で利益が出たときの税金は税理士へと、必要に応じて専門家に確かめていくと、判断の精度が上がります。

住み替え費用シミュレーション|手取り額を自分で出す5ステップ 住み替え費用シミュレーション|手取り額を自分で出す5ステップ

まとめ:リバースモーゲージとリースバックなら、住み替えのトビラ

リバースモーゲージとリースバックは、名前は似ていても「借りる」か「売る」かで根本が異なります。所有権が残るか移るか、負担が利息か家賃か、相続にどう影響するか。この違いが一本につながって、選択の分かれ目になります。

そして、マンションを持つ方にとっての決定的な差は「マンションで使えるか」そのものです。リバースモーゲージはマンションだと対象外か都市部の高評価物件に限られ、リースバックは分譲マンションでも使いやすい。多くの方はまず、自分のマンションが担保評価の下限を超えるかを確かめ、超えなければリースバックか通常売却へと考えを進めることになります。

忘れたくないのが、二つを使わず普通に売って住み替える三つ目の道です。二つはどちらも住み続けながら資金をつくる制度で、引っ越してもよいのなら通常売却の方が手取りは多くなりやすいからです。三者を同じ土俵で比べる土台は、自宅がいくらで売れそうかを知ることにあります。まずはその見込み額を把握し、資金計画や相続、税金は専門家に確かめれば、あなたはご自身に合う道を選んでいけます。

住み替えのトビラは、不動産仲介を持たない中立の立場です。『今は売らない』という選択肢も含めて、あなたにとって後悔のない判断をお手伝いします。