住み替え(買い替え)の頭金をいくらにするか決まらないまま新居の広告を見ていると、どの価格帯を見ればよいのかも定まりません。
頭金の額は、世間で言われる割合から決めるものではありません。今の住まいを売って残るお金から、手元に置いておくお金を引くと出ます。
売却で受け取る額の見積もり方、購入の諸費用と生活予備費に残す金額、そこから頭金を出すまでを、計算例つきで説明します。
住み替えの頭金は引き算で決まる
住み替えの頭金は、用意できるお金から手元に残すお金を引いた残りが上限になります。
頭金の上限=(売却の受取額−住宅ローン残債+預貯金)−購入諸費用−生活予備費
式の1つ目にある売却の受取額は、査定額から売却の費用を引いた額です。住宅ローンの残債はここに含まれていないため、式の中で1回だけ引きます。
この式に入れる5つの数字は、どれも自分で調べられます。まず頭金と自己資金の違いを分けたうえで、数字の集め方を確認します。
頭金は購入代金、自己資金は手元の現金全体
頭金は新居の購入代金に充てる現金で、自己資金は諸費用や予備費まで含む手元の現金全体を指します。
| 用語 | 指すお金 |
|---|---|
| 頭金 | 新居の購入代金に充てる現金 |
| 自己資金 | 頭金+諸費用・引っ越し代・予備費(手元の現金全体) |
物件価格から頭金を引いた額が、住宅ローンの借入額になります。頭金は自己資金の一部でしかないため、この2つを同じものとして考えると、頭金に回せる額を多く見積もってしまいます。
頭金の額を出す5つの数字と調べ方
頭金を出すのに必要な数字は5つで、調べ先はそれぞれ決まっています。
| 使う数字 | 調べ方 |
|---|---|
| 売却の受取額(残債返済前) | 不動産会社の査定額から、媒介報酬などの売却費用を引く。残債はここでは引かない |
| 住宅ローン残債 | 返済予定表、残高証明書、金融機関のWebサイトで確認する |
| 預貯金 | 住み替えに使える口座の残高を合計する |
| 購入諸費用 | 物件が決まった段階で、不動産会社と金融機関から見積もりを取る |
| 生活予備費 | 今の生活費の半年分を目安に決める |
このうち住み替えの原資になるのは、今の家を売って得たお金と、これまでの預貯金の2つです。マンションからの住み替えでは、売却代金が原資の中心になります。
「物件価格の1〜2割」に決まりはない
頭金の割合を定めた決まりはなく、その割合を裏づける統計もありません。目安として使えるのは、公的な調査に表れた平均と、金利が変わる境目の2つです。
実際の平均は購入価額の16.4%
実態に近い数字は、フラット35で2025年度に中古マンションを買った人の手持金です。購入価額の平均3,601.7万円に対して手持金は591.3万円で、割合は16.4%でした。
3,000万円の住まいなら約490万円にあたります。ただしこれは平均で、分布は公表されていません。頭金を厚く用意せずに住宅ローンを組む人も一定数います。
平均を自分の目標にする必要はありません。手元に残す額を引いた残りのほうが、自分に合う額になります。
出典: 2025年度フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)p.24
借入額が物件価格の9割を超えると金利が上がる
頭金の額で条件が変わる境目が1つあります。フラット35では、借入額が物件価格の9割を超えると借入金利の区分が変わります。
2026年8月適用の金利は、借入期間21年以上35年以下・新機構団信付きで、融資率9割以下が年3.290%、9割超が年3.400%です(いずれも最も多い金利)。差は0.11ポイントでも、35年返し続ける間の利息として積み上がります。
この区分を避けたい場合は、物件価格の1割が頭金の比較点になります。1割に届かない額でも借りられますが、その場合は9割超の金利で返済額を見積もります。金利は毎月変わるため、実際の借入時の金利で確かめてください。
なお、フラット35は借入額の上限を物件価格の10割まで認めています。頭金を用意せずに住み替える選択も、制度のうえでは可能です。
出典: 融資率とは(フラット35)/住宅金融支援機構【フラット35】金利情報/融資率によって借入金利は異なりますか(フラット35)
頭金なしでも現金がゼロで済むわけではない
頭金をゼロにしても、手元の現金までゼロにはできません。売買契約のときに売主へ払う手付金は、住宅ローンのお金が出る引き渡しよりも前に必要になるため、自己資金で用意するのが原則です。
返済の側にも影響が出ます。頭金を入れない分だけ借入額が増え、返済総額はその利息分だけ膨らみます。審査でも、返済を続けられるかをより慎重に見られます。
頭金なしのまま進められるかどうかは、住宅ローンの残債、契約と引き渡しで動かす現金、返済負担率といった個別の条件で決まります。成立する条件と、頭金をゼロにしても必要になる現金の内訳は、こちらの記事にまとめています。
頭金の原資になる売却の受取額を見積もる
頭金の原資は、今のマンションの売却の受取額から住宅ローンの残債を返した残りです。査定額がそのまま使えるわけではありません。
受取額の計算、売却額の確かめ方、代金が手に入る時期、残債を返しきれないときの補い方の順に見積もります。
受取額は査定額から売却の費用を引いて出す
売却の受取額は、査定額から売却でかかる費用を引いた額です。住宅ローンの残債はこの後で引くため、ここでは差し引きません。
売却では、媒介報酬(仲介手数料)、売買契約書の印紙税、住宅ローンの担保を外す抵当権抹消の登録免許税と司法書士報酬がかかります。
このうち媒介報酬の上限と印紙税、登録免許税は法令・告示で決まります。司法書士報酬は事務所ごとに違うため、下の合計では全国平均で見込んでいます。売却価格が分かれば、4つを合わせた額を概算できます。
| 売却価格 | 4費目の合計(概算) | 対売却価格比率 |
|---|---|---|
| 2,000万円 | 75.55万円 | 3.78% |
| 3,000万円 | 108.55万円 | 3.62% |
| 5,000万円 | 174.55万円 | 3.49% |
価格が上がるほど比率が下がるのは、媒介報酬に定額部分があり、印紙税が階段状の定額であるためです。引越費用、ハウスクリーニング、譲渡所得税等、住宅ローンの一括返済手数料はこの合計に含みません。
査定額が3,000万円なら、受取額は約2,891万円です。ここから残債700万円を返すと、頭金の原資は約2,191万円になります。
残債の額は、返済予定表、残高証明書、金融機関のWebサイトで確かめておくと、計算がぶれません。
売却額は複数社の査定と成約事例で確かめる
受取額のもとになる売却額は、不動産会社の査定でつかめます。1社だけで判断せず、複数の会社に査定を頼んで見比べると、会社ごとの差が見えて相場をつかみやすくなります。
自分でも裏取りできます。不動産取引情報提供サイト(通称レインズ・マーケット・インフォメーション)や、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で近隣の成約価格を調べられます。
マンションは同じ建物の別住戸や近隣の似た住戸が比較の対象になるため、価格の見当を早い段階で付けられます。首都圏の中古マンションは2025年(暦年)に49,114件が成約しています。
ただし、査定額がそのまま成約価格になるわけではありません。売り出しから成約までに価格が下がることもあるため、資金計画は売却額を低めに見込んで組んでおきます。
早く確実に売りたい場合は買取という選択肢もあります。業界で語られる目安は仲介で売れる相場のおおむね6〜8割ですが、買取価格を業者横断で集計・公表している公的機関・業界団体はなく、この目安に出典はありません。価格と確実性のどちらを取るかの判断になります。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」
売り先行なら受取額を確かめてから頭金を決められる
今の家を売ってから新居を買う売り先行なら、手元に売却代金が入った状態で頭金の額を決められます。
新居を先に買う買い先行では、売却代金が入る前に購入の支払いが来ます。この時期の資金は、つなぎ融資などで一時的に立て替える方法があります。
どちらで進めるにしても、頭金に回せる額は今のマンションの売却価格しだいです。早めに売却の見込みを把握しておくと、頭金の計画が立てやすくなります。
受取額が残債に届かないときは借入で補う
売却の受取額で残債を返しきれない状態はオーバーローンと呼ばれ、この場合は頭金に回せるお金が残りません。
不足分は、預貯金で補うか、返しきれない残債を新しいローンに上乗せする住み替えローンで対処します。上乗せした分は新居の担保で守られないため、金利は通常より高めになることがあり、審査も慎重になりやすい借入です。
売却前から新居のローンを組むダブルローンという方法もあります。使えるかどうかと条件は金融機関ごとに違うため、個別に確認してください。
手元に残す自己資金を先に確保する
頭金の額を決める前に、購入諸費用と生活予備費を手元へ確保します。一度頭金として支払ったお金は後から取り戻せないため、残す額を先に決めます。
購入諸費用は物件価格の何割では出せない
購入諸費用は、売買価格から概算できる費目と、固定資産税評価額で決まる費目に分かれます。物件価格の何割という当て方はできません。
売買価格が決まれば概算できるのは、媒介報酬(400万円超の部分は売買価格の3.3%+6.6万円が上限)、印紙税(1,000万円超5,000万円以下は10,000円)、所有権移転登記の司法書士報酬(全国平均56,678円)、抵当権設定登記の司法書士報酬(同42,699円)の4つです。
| 売買価格 | 4費目の合計(概算) | 対売買価格比率 |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 50.04万円 | 5.00% |
| 2,000万円 | 83.54万円 | 4.18% |
| 3,000万円 | 116.54万円 | 3.88% |
| 4,000万円 | 149.54万円 | 3.74% |
| 5,000万円 | 182.54万円 | 3.65% |
比率が価格とともに下がるのは、価格に比例するのが媒介報酬の3.3%分だけで、残りが定額または階段状の定額だからです。司法書士報酬の2つは日本司法書士会連合会のアンケートの全国平均で、法定額ではありません。
登記の登録免許税と不動産取得税は、売買価格ではなく固定資産税評価額をもとに計算します。評価額は売買価格から換算できないため、税額を知るには評価額そのものを確認します。
評価額の調べ方は3つあります。
- 固定資産税の課税明細書(毎年4月から6月に市町村から届く納税通知書に同封)
- 固定資産評価証明書(市町村の窓口で取得。売主から見せてもらう方法もあります)
- 仲介する不動産会社への確認(登記費用の見積りに必要なため、会社側が把握しています)
このほかに、住宅ローンの事務手数料・保証料、火災保険料・地震保険料、引越費用、リフォーム費用、修繕積立基金、管理費・修繕積立金の日割り精算がかかります。金融機関・保険会社・物件ごとに額が違うため、物件が決まった段階で不動産会社と金融機関から見積もりを取って合計してください。
日割り精算の額は引き渡しの時期で動きます。諸費用は少し余裕を見て確保しておくと、後から足りなくなりません。
出典: 国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」/日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」結果(令和6年3月実施)
生活予備費は生活費の半年分を残す
生活予備費は、住み替えた後の暮らしを支えるお金です。生活費の半年分ほどを目安に、収入が途切れても慌てずに済む額を残します。
手付金や引っ越し代、新生活が落ち着くまでの生活費は、契約から引き渡しの前後に現金で必要になります。購入諸費用を借入に含められる住宅ローンもありますが、対象の費目や上限は商品ごとに違うため、どこまで借入でまかなえるかは金融機関へ確認してください。
用意できる資金をすべて頭金に回すと、住み替えの直後に出費が重なったときに払うお金が残らなくなります。
この諸費用と予備費を先に取り分けたうえで、残ったお金が頭金に充てられる上限になります。
計算例で頭金の額を決める
5つの数字がそろえば、頭金の上限は計算で出ます。上限まで入れるかどうかは、毎月の返済額と手元の現金のどちらを重く見るかで決めます。
ここから示す金額は、計算の順序を確かめるためのモデルケースです。表に並べる査定額も残債も預貯金も仮に置いた数字で、平均や相場ではありません。モデルケースで計算の流れを見たあと、自分の金額を入れて上限を出します。
上限を出してから、入れる額を決める
3,000万円の中古マンションへ住み替えるモデルケースで計算します。表の金額はすべて仮の数字で、この額を目標にするためのものではありません。
| 項目 | モデルケースの金額(すべて仮の数字) |
|---|---|
| 今のマンションの査定額 | 3,000万円 |
| 売却でかかる費用 | −108.55万円 |
| 売却の受取額(残債返済前) | 2,891.45万円 |
| 住宅ローン残債 | −700万円 |
| 住み替えに使う預貯金 | +300万円 |
| 新居の購入諸費用(見積もり前の仮置き) | −250万円 |
| 生活予備費(月30万円の半年分) | −180万円 |
| 頭金に充てられる上限 | 2,061.45万円 |
このモデルケースの上限は約2,061万円です。この額をすべて頭金に入れる必要はありません。
金額を比べるときの目安が1つあります。フラット35で金利の高い区分を避けたい場合、借入額が物件価格の9割以下に収まる額が比較点です。3,000万円の物件なら、頭金300万円で借入は2,700万円となり、9割超の区分に入りません。
これは必要な最低額ではありません。300万円より少ない頭金でも、頭金なしでも住み替えはできます。その場合は9割超の金利で毎月の返済額を見積もり、払い続けられる額かを確かめます。
頭金の額は、上限の約2,061万円までの範囲で決めます。毎月の返済を軽くしたいなら多めに、手元の現金を厚くしたいなら少なめにします。
自分の金額を入れて上限を出す
モデルケースと同じ順番に自分の金額を当てはめると、頭金の上限が出ます。
頭金の上限=(査定額−売却でかかる費用−住宅ローン残債+預貯金)−購入諸費用−生活費6か月分
次の6つを紙かメモアプリに書き出してから、最後の行を計算します。
| 書き出す項目 | 自分の金額(記入欄) |
|---|---|
| 今のマンションの査定額 | [ ]万円 |
| 売却でかかる費用(引く) | [ ]万円 |
| 住宅ローン残債(引く) | [ ]万円 |
| 住み替えに使える預貯金(足す) | [ ]万円 |
| 新居の購入諸費用の見積もり額(引く) | [ ]万円 |
| 生活費6か月分(引く) | [ ]万円 |
| 頭金に充てられる上限 | [ ]万円 |
それぞれの調べ先は「頭金の額を出す5つの数字と調べ方」の表にまとめています。生活費だけは半年分という目安ではなく、家計の記録に残る1か月の支出を6倍した額を入れると、住み替え後の暮らしに合う予備費になります。
購入諸費用の250万円は、3,000万円の物件を想定したモデルケースで計算の手順をなぞるための仮置きです。物件価格が違えば額も変わるため、ほかの価格の物件や実際の資金計画へそのまま使わず、物件が決まった段階で不動産会社と金融機関から取った見積もりの額へ入れ替えて計算し直します。
出た額が、自分が頭金に回せる上限です。この額を超えて頭金に入れると、購入諸費用か住み替え後の生活費のどちらかが足りなくなります。
50代は返済期間の短さを頭金で補う
50代で住み替える人は、上限の範囲で頭金を厚めにしておくと、毎月の返済を抑えられます。
理由は返済期間です。住宅ローンは完済時の年齢に上限を設ける金融機関がほとんどで、上限として最も多いのは80歳未満です。50代からの借入は返済期間を長く取りにくく、期間が短いほど毎月の返済額は上がります。
毎月の返済額は返済負担率にも表れます。年収に占める年間返済額の割合のことで、フラット35の基準は年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。民間の金融機関は基準が分かれます。返済期間が短いほどこの割合に収めにくくなるため、借入額を下げて調整します。
ただし、定年後の生活費や、まだ教育費が残る場合の備えもあります。手元に残す予備費を削ってまで頭金を厚くはしません。実際に組める返済計画は状況によって変わるため、金融機関へ個別に確認することをおすすめします。
出典: 国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月・住宅局)/住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件(2026年4月1日現在)
まとめ:住み替えの頭金は、手元に残すお金で決まる
住み替えの頭金は、売却の受取額と預貯金から、住宅ローンの残債と購入諸費用、生活予備費を引いた残りが上限です。世間で言われる割合ではなく、この引き算で額が定まります。
次の一歩は、今のマンションの査定を複数の会社に頼み、受取額の見込みを出すことです。もとになる額が分からないまま新しい住まいを探すと、いくらまで借りられるのかも、いくら手元に残せるのかも決まりません。
新しい住まいを見に行く前に、手元へ残す金額を決めておきましょう。住み替えのトビラでは、頭金と手元資金の配分も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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