老後の住まいはどう選ぶ?4つの選択肢と健康・資金・家族で絞る方法

老後の住まいはどう選ぶ?4つの選択肢と健康・資金・家族で絞る方法

年を重ねてから住まいを考え直すときは、今の家にとどまるのか離れるのかが最初の分かれ道です。

どこで暮らすかは、体の状態や使えるお金、近くに頼れる家族がいるかどうかなどを順に当てはめていくと絞り込めます。

住み続ける、一般の住宅へ移る、家族と暮らす、施設へ移るという4つの方向を、3つの絞り方とあわせて説明します。

【全体像】老後の住まいは「3つの道」で整理できる

老後の住まいの選択肢は数多くありますが、大きく「老後の3つの道」に整理できます。

3つの道とは、①今の家をリフォームして住み続ける、②住み替える、③住宅資産を取り崩す(借りる・貸す・売る)の3方向です。①はとどまる道、②は動く道、③は住まいをお金に換える手立てで、住み続けながら借りる・貸すか、住み替えながら売るかに分かれます。

よく語られる「住み続ける・一般住宅へ移る・家族と住む・施設へ移る」の4つの方向は、この3つの道が具体的な住まいの形になったものです。住み続けるは①、残る3つは②にあたり、その原資づくりが③という関係になります。

最初の分かれ道4つの方向どんな住まいか
今の家にとどまる住み続ける今の家で、または改修して暮らす
住み替える一般住宅へ移る利便性やコンパクトさを求めて動く
住み替える家族と住む子の近くや同じ家で支え合う
住み替える施設へ移る介護や見守りのある住まいへ移る

いまマンションを所有している人は、住まいを決めると同時に、今のマンションを売る・貸す・持ち続けるのどれにするかも決めることになります。なお本記事では、庭の手入れや建て替え、平屋化といった戸建て・土地だけに関わる話は、マンションから住み替える人には基本関係ないものとして仕分けて示します。

住み続ける・一般住宅・家族と住む・施設の4方向

老後の住まいは、住み続ける・一般住宅へ移る・家族と住む・施設へ移るの4方向に分けられます。3つの道でいえば、住み続けるが①、残りの3方向が②にあたります。

住み続けるは、今の家を離れずに暮らし続ける方向です。慣れた地域や人間関係を保てる一方、建物の古さや段差が後々の負担になることもあります。動かないという判断も、立派なひとつの選択です。

残る3つは、いずれも住まいを移す方向です。一般住宅へ移るは利便性やコンパクトな暮らしを求める動き、家族と住むは子との距離を縮める動きにあたります。施設へ移るは、介護や見守りのある住まいへ切り替える方向です。

どの方向が正解という話ではなく、健康状態や資金、家族との関係で向き不向きが変わります。まずは4つの入り口があると知ることが、自分に合う住まいを見極める出発点になります。

最初の分かれ道はとどまるか住み替えるか

4つの方向のうち、最初に決めたいのは今の家にとどまるか住み替えるかです。

とどまるなら、候補は住み続ける方向に絞られます。住み替えるなら、視野に入るのは一般住宅へ移る・家族と住む・施設へ移るの3方向です。

いきなり4択で考えると迷いやすいため、まずこの一点を決めると整理が進みます。とどまるか動くかが定まれば、見るべき選択肢はおのずと狭まります。

健康状態(自立/要支援/要介護)で候補が変わる

選べる住まいは、自立・要支援・要介護という健康状態の段階によって変わります。

介護保険制度には、心身の状態に応じた3つの区分があります。自立は支援なしで日常生活を送れる段階、要支援は家事などの一部に手助けがいる段階です。要介護になると、入浴や食事などで継続的な介護が必要になります。

出典:厚生労働省「要介護認定」

この段階は、選べる住まいの幅と強く結びついています。自立や要支援のうちは、住み続けるから施設まで4方向すべてが選べる範囲です。要介護が重くなるほど、介護の手厚い住まいへと候補が寄っていきます。

大切なのは、今の段階に加えて数年先の変化も見越しておくことです。状態は年々変わりうるため、先を見据えて候補を考えておくと住み替え直しを防げます。

今の家に住み続ける

住み慣れた環境を変えたくないなら、今の家に住み続ける選択肢があります。3つの道の①、リフォームして住み続ける方向です。

引っ越しを伴わない分、心身の負担は軽く、費用も抑えやすいのが特徴です。マンションはワンフロアで段差が少なく、共用部の管理を管理組合や管理会社に任せられるため、終の棲家として住み続けやすい面もあります。一方で建物の古さには手当てが必要なため、改修や資金を確保する方法も選択肢に入ります。

そのまま住むかリフォームして住み続ける

今の家に住み続ける形には、手を加えずそのまま暮らす道と、改修して安全性を高める道があります。

そのまま住み続けるのは、費用をかけずに今の暮らしを保つ選び方です。ローンを完済していれば、固定資産税と維持費だけで暮らせます。ただし築年数が進むほど、段差や冬の寒さが負担になりやすい点に注意が必要です。

改修にかかる費用は、工事の内容によって幅があります。小さな工事から始め、必要に応じて段階的に広げる進め方もできます。

工事内容ごとの費用を集計した公的統計・業界団体統計はありません。住宅全体のリフォームであれば、令和7年度住宅市場動向調査(三大都市圏)でリフォーム資金の平均は170万円で、このうち自己資金が143万円(自己資金比率84.2%)です。金額は年度で動いていて、令和3年度から順に201万円→206万円→137万円→154万円→170万円と推移しています。バリアフリー改修も工事の範囲で大きく変わるため、金額は複数社の見積もりで確かめてください。

出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」

マンションで気をつけたいのは、リフォームできる範囲です。自分の判断で直せるのは専有部にあたる室内だけで、エントランスや共用廊下、エレベーターといった共用部は管理組合の総会決議が必要になります。共用部の工事費は修繕積立金からまかなわれ、個人の希望だけでは動かせません。

一定の要件を満たせば、公的な支援で負担をさらに抑えられます。要支援・要介護の認定を受けた人なら、介護保険の住宅改修が使えます。支給限度基準額は20万円で、これは工事費の上限であって給付額の上限ではありません。この20万円に給付率を掛けた額が給付の上限です。給付率は原則9割(自己負担1割)で、65歳以上の第1号被保険者のうち一定以上の所得がある人は8割または7割(自己負担2割または3割)になります。1割負担なら給付は最大18万円、2割なら16万円、3割なら14万円です。40〜64歳の第2号被保険者は2割・3割の区分に入りません。なお市町村は条例で20万円より高い額を定めることができます。マンションでは専有部の工事が対象で、共用部は対象外となる点も押さえておきましょう。

出典:厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」

→こういう人向け:費用を抑え、住み慣れた家にできるだけそのまま住み続けたい人。

リフォーム・建て替え・売却、どれが良い?あと何年・誰が住むかで決める3択 リフォーム・建て替え・売却、どれが良い?あと何年・誰が住むかで決める3択

自宅を現金化して住み続ける(リバースモーゲージ・リースバック)

家を手放さずにまとまった資金が要るなら、住宅資産を取り崩す3つ目の道があります。住み続けながらお金に換える方法には、借りるリバースモーゲージと、売ってから借りて住み続けるリースバックがあります。

リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借り、契約者が亡くなった後に自宅を売って返す方法です。毎月の支払いは利息だけで済むことが多く、年金中心の暮らしでも使いやすい点が魅力です。

ただし利用には条件があり、年齢はおおむね60歳以上、対象エリアや物件の評価額にも制限があります。子と同居していると使えない場合や、相続人の同意を求められる場合もあるため、家族との相談が欠かせません。加えてリバースモーゲージは担保評価を土地中心に見る仕組みのため、土地の持分が小さいマンションは対象外になるか、都市部で高く評価される物件に限られ、条件が厳しくなりやすい点にも注意が必要です。

一方リースバックは、自宅をいったん売り、その後は家賃を払いながら同じ家に住み続ける方法です。売る仕組みのため担保評価の下限という壁がなく、分譲マンションでも扱う事業者が多く、比較的使いやすいのが特徴です。ただし所有権は手放すことになり、管理費や修繕積立金の負担は家賃に織り込まれるのが実態です。

これらは、引っ越したくない、あるいは引っ越しにくい人に向く選択肢です。住み替えてもよいなら、通常の売却で住み替えるほうが手元に残るお金は多くなりやすいため、現金化の前に住み続ける必要があるかを確かめておくと選びやすくなります。

→こういう人向け:自宅に住み続けながら、老後の生活資金や介護費用を確保したい人。

一般住宅へ住み替える(自立して暮らせる前提)

元気なうちに利便性やコンパクトな暮らしを求めて動くなら、一般住宅への住み替え(買い替え)が選択肢になります。3つの道でいえば②の住み替えで、その原資は今のマンションを売って用意するのが基本になります。

マンションは同じ建物や近隣で似た条件の成約が積み重なるため相場が読みやすく、住み替えの原資を見積もりやすいのが強みです。ここで押さえたいのは、手元に残るのは査定額そのものではなく、そこから仲介手数料や抵当権抹消などの諸費用を差し引いた手取りだという点です。この手取りを基準に、住み替え先の候補を考えていきます。

持ち家か賃貸か

一般住宅への住み替えで、まず分かれるのが買って持つか借りて住むかです。

持ち家は、支払いを終えれば資産として手元に残り、売却や子への相続にもつなげられます。ただし固定資産税や修繕費は、住み続けるかぎり自分で負担し続けます。

賃貸は資産として残らない代わりに、固定資産税や大きな修繕費の負担がありません。暮らしの変化に合わせて住み替えやすく、身軽に動けるのも利点です。一方で高齢になると貸し手から敬遠されやすく、国の調査でも大家の一定割合が高齢者の入居に拒否感を示しています。

出典:国土交通省「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等」

近年は住宅セーフティネット法の改正で、高齢者の入居を支える仕組みも整ってきました。資産を手元に残したいか身軽さを優先するかが、判断の出発点になります。

→こういう人向け:資産を手元に残したい人は持ち家、暮らしの変化に合わせて身軽に動きたい人は賃貸。

マンションか戸建てか

住まいの種類は、管理の手間と資産の残り方で選ぶとわかりやすくなります。

マンションは、管理や修繕を組合に任せられる分、日々の手間が少なく済みます。その代わり管理費と修繕積立金がかかります。令和5年度マンション総合調査では、駐車場などの使用料からの充当額を除いた1戸あたり月額の平均が、管理費11,503円・修繕積立金13,054円で、合わせて24,557円です。使用料からの充当額を含む集計では管理費17,103円・修繕積立金13,378円となり、合わせて30,481円と月3万円台になります。どちらの集計かで1万円近く変わるため、他の資料と比べるときは系統を確かめてください。

出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

戸建ては、土地が資産として残りやすく、建て替えやリフォームも自由にできます。ただし庭や外壁の手入れ、将来の建て替えなどを自分で担うことになります。いまマンションに住み、その管理の手間から解放されたい人にとっては、あえて戸建てへ移る利点は小さくなりがちです。

→こういう人向け:手間をかけたくない人はマンション、土地を残し自由に住みたい人は戸建て。

住み替えるならマンションと戸建てはどっち?今の住まいで変わる判断軸 住み替え(買い替え)でマンションと戸建てはどっち?今の住まいで変わる判断軸

都市部か郊外か(+ダウンサイジング)

立地は、暮らしの便利さと費用や広さのバランスで決めることになります。

都市部は、駅や病院などが近く、車がなくても暮らしやすいのが強みです。その分、家賃や物件価格は高く、同じ予算なら住まいは狭くなりがちです。

郊外は、価格が抑えめで広い住まいを選びやすく、静かな環境も得られます。ただし車に頼る生活になりやすく、運転をやめた後の移動手段が課題になります。

立地と合わせて考えたいのが、住まいをコンパクトにするダウンサイジングです。部屋数を減らせば掃除や光熱費の負担が軽くなり、暮らしの管理もしやすくなります。シニア向け設備のある住まいに移り、安心を得る選び方もあります。

→こういう人向け:利便性や医療アクセスを優先するなら都市部、広さや静けさと費用を優先するなら郊外。

家族と近くで・一緒に住む

家族との距離をどう取るかで考えるとき、選択肢は近居・同居・二世帯の3つです。いずれも住み替える②の道にあたり、その原資には今のマンションの売却がつながることもあります。

距離の近い順に3つの形があり、支え合いやすさと費用、相続のしやすさが変わります。配偶者や子と希望が分かれやすいため、早めの話し合いが欠かせません。

子の近くに住む(近居)

近居は、同じ家には住まず、すぐ行き来できる距離に別々で暮らす選び方です。

互いの生活に踏み込みすぎず、必要なときだけ支え合えるのが近居の強みです。急な体調不良や子育ての手助けにも動きやすく、ほどよい距離感を保てます。

新たに家を買うか借りるため費用はかかりますが、住まいを別に持つ分、生活リズムの違いでもめにくいのが利点です。一部の自治体には近居や同居を後押しする補助制度もあるため、住む地域の支援を調べておくと安心です。

→こういう人向け:同居までは望まないが、いざというとき支え合える距離で暮らしたい人。

子と同居する

同居は、親世帯と子世帯がひとつの住まいで一緒に暮らす選び方です。

毎日の生活が近いため、見守りや家事、孫の世話などで支え合いやすいのが同居の良さです。一つの世帯として暮らせば、光熱費や生活費をまとめやすく、家計の負担も抑えられます。

新築なら建築費、今ある家に同居するなら間取りを変える改修費がかかります。費用以上に課題になりやすいのが、生活リズムや価値観の違いから生まれる気疲れです。水回りや居室を分ける、生活時間に干渉しないなど、距離の取り方を最初に決めておくと安心です。

同居を続けるには、家事の分担やお金の管理を、始める前に家族で話し合うことが欠かせません。日常的に支え合いたい人や、家計をまとめたい家族に合う選び方です。

→こういう人向け:日常的に支え合い、家計や暮らしをひとつにまとめたい家族。

二世帯住宅にする

二世帯住宅は、ひとつの建物に親世帯と子世帯の生活空間を分けて設ける住まいです。

玄関や水回りをどこまで分けるかで、完全同居型・一部共有型・完全分離型に分かれます。共有部分が多いほど建築費は安く、分けるほどプライバシーは守りやすくなります。

二世帯住宅を型ごとに切り出した建築費の公的統計・業界団体統計はありません。土台になる数字としては、フラット35利用者調査の注文住宅の所要資金の平均が3,936万円(2024年度)、土地付注文住宅が5,007万円です。二世帯にすることで、ここからいくら増えるかを示せる統計は無いため、型ごとの金額は住宅メーカーの見積もりで比べてください。

出典: 住宅金融支援機構「2024年度【フラット35】利用者調査結果」

タイプ特徴
完全同居型玄関も水回りも共有
一部共有型玄関は共有、水回りは一部別
完全分離型玄関も設備もすべて別

二世帯住宅の隠れた利点が、相続税の軽減につながりやすい点です。親と同居していた子が土地を相続する場合、小規模宅地等の特例で評価額を330㎡まで8割下げられることがあります。

出典:国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」

ただし建物を区分所有として登記していると特例を使えない場合があり、登記の仕方には注意が必要です。適用の条件は細かく家族の状況で変わるため、税理士など専門家に早めに相談しておきましょう。

→こういう人向け:建築費をかけても、親と支え合いつつ各世帯の独立も保ちたい家族。

高齢者向けの住まい・施設へ移る

体調の変化や介護が視野に入ってきたら、高齢者向けの住まいや施設への移り住みを考える段階です。

適した移り先は、要介護度の軽重で変わります。自立に近い段階から手厚い介護が必要な段階まで施設は幅広く、最後に主な選択肢を一覧で比べられます。

自立〜軽度なら:シニア向け分譲マンション・サ高住・ケアハウス

まだ自立して暮らせるうちに、見守りや生活支援のある住まいへ移るのも選択肢です。

シニア向け分譲マンションは、バリアフリー設計や見守りを備えた、購入して所有する住まいになります。資産として手元に残り家族に引き継げる一方、購入型のため価格は物件ごとに大きく違い、全国の水準を集計した統計は確認できていません。介護が必要になれば、外部のサービスを利用しながら暮らす形になります。

サービス付き高齢者向け住宅、通称サ高住は、安否確認と生活相談が付いた賃貸の住まいです。特定施設の指定を受けていないサ高住の平均月額費用は153,952円で、最も多い費用帯は12〜14万円未満(24.3%)です。10万円未満が5.3%、20〜25万円未満が12.2%、30万円以上が1.1%で、幅はあります。この月額は家賃・共益費・基本サービス費・食費・光熱水費の合計で、介護・医療サービスの自己負担分は含みません。自立から軽い介護までの人が対象で、介護が重くなると住み替えが必要になることもあります。

サ高住には、介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けている住宅と、受けていない住宅があります。指定を受けているのは全体の10.0%で、9割は受けていません。上の平均月額費用は指定を受けていないサ高住の値です。全国の登録は8,312棟・290,803戸(令和8年6月末時点)で、入居契約の91.6%が賃貸借契約、専用部分の平均床面積は21.9㎡です。

出典: 厚生労働省老健局「有料老人ホームの現状と課題・論点について」 / 高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」

ケアハウスは、自立した低所得の高齢者を自治体の補助で支える住まいです。60歳以上で入居でき、費用はほかより抑えやすいのが利点です。ただし利用料は所得と施設によって決まり、全国の水準を集計した統計は確認できていません。数が限られ希望者も多く、入りやすさには地域差があります。

→こういう人向け:まだ元気なうちに、見守りや生活支援のある環境へ早めに移りたい人。

シニア向け分譲マンションは自分に合う?向く人・向かない人と判断軸 シニア向け分譲マンションは自分に合う?向く人・向かない人と判断軸

介護が必要なら:有料老人ホーム・グループホーム

日常的に介護が必要になったら、有料老人ホームやグループホームが候補になります。

住宅型有料老人ホームは、生活支援を受けつつ、介護は外部サービスを使う住まいです。使った分だけ介護費がかかるため、状態が軽いうちは費用を抑えやすくなります。平均月額費用は118,020円で、最も多い費用帯は10万円未満(33.4%)です。

介護付き有料老人ホームは、施設の職員が介護を担い、要介護度に応じた定額で利用できます。平均月額費用は261,510円で、最も多い費用帯は30万円以上(34.4%)です。入居一時金(前払金)は、まず徴収している施設が3割にとどまることを押さえてください。家賃の支払い方式はどの類型でも「全額月払い」が最も多く約8割で、前払金を徴収しているのは介護付きで31.0%、住宅型で7.0%、サ高住で3.4%です。介護付きで前払金を徴収している施設のうち、実額は100〜500万円未満の層が11.4%で最も多くなっています。

グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る、地域密着型の住まいです。その地域に住民票がある要支援2以上の人が対象で、なじみの環境で穏やかに暮らせます。

→こういう人向け:介護が日常的に必要になり、専門スタッフのケアを受けながら暮らしたい人。

要介護度が高いなら:特養・老健・介護医療院

重い介護や医療的なケアが必要なら、公的な介護保険施設が主な候補です。

特別養護老人ホーム、通称特養は、長く暮らすことを前提にした公的な介護施設です。入居は原則として要介護3以上で、入居一時金はかからず、月額も比較的抑えられています。住民税が非課税の世帯などには、食費や居住費を軽くする負担軽減の制度もあります。

出典:厚生労働省「介護保険施設における食費・居住費の負担軽減(補足給付)」

介護老人保健施設、通称老健は、リハビリを受けて在宅復帰を目指す施設です。要介護1以上が対象で、医師や看護師、リハビリ職員が配置されています。数か月での退去を前提とするため、終の住まいにはならない点に注意が必要です。

介護医療院は、長期の療養と介護を一体で受けられる、医療の手厚い施設です。日常的な医療処置が必要な要介護の人が対象で、看取りまで対応する施設もあります。

公的施設は費用を抑えやすい半面、希望者が多く、入居まで待つことも少なくありません。状態や医療の必要度に合わせて、ケアマネジャーと相談しながら選ぶのが現実的です。

→こういう人向け:在宅での生活が難しく、手厚い介護や医療を受けながら暮らしたい人。

ここまでの選択肢を横並びにすると次のとおりです。まず、全国の集計値で月額費用を確かめられるのは次の3類型です。

類型平均月額費用最も多い費用帯
サ高住(特定施設の指定なし)153,952円12〜14万円未満(24.3%)
住宅型有料老人ホーム118,020円10万円未満(33.4%)
介護付き有料老人ホーム(特定施設)261,510円30万円以上(34.4%)

この月額は家賃・共益費・基本サービス費・食費・光熱水費の合計で、介護・医療サービスの自己負担分は含みません。ケアハウス・グループホーム・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の月額を全国で集計した統計は確認できていないため、この表には載せていません。

選択肢主な条件対応する状態資産住み替えやすさ
今の家に住み続ける自宅を所有自立〜中度残る―
持ち家へ住み替え購入資金自立残る低い
賃貸へ住み替え入居審査自立残らない高い
近居・同居・二世帯家族の合意自立〜中度残る低い
シニア向け分譲マンション自立して入居自立〜軽度残る中程度
サ高住自立〜軽度自立〜軽度残らない高い
ケアハウス60歳以上・低所得自立〜軽度残らない中程度
住宅型有料老人ホーム自立〜要介護軽度〜中度残らない中程度
介護付き有料老人ホーム要支援〜要介護中度〜重度残らない低い
グループホーム認知症・地域在住認知症残らない低い
特別養護老人ホーム原則要介護3以上重度残らない低い
介護老人保健施設要介護1以上中度〜重度残らない一時的
介護医療院医療が必要な要介護重度残らない低い

条件や住み替えやすさはいずれも目安で、地域や施設、所得により変わります。

自分に合う案を「健康・資金・家族」で絞り込む

ここまでの選択肢を健康・資金・家族の3つの軸に通すと、自分にありえる案が2〜3つに絞れるはずです。

3つの軸を順番に当てはめるほど、候補は自然と狭まります。下の表をたどると、自分に合う住まいの方向が見えてきます。

ステップ軸当てはめ方
1健康自立〜要支援なら全方向/要介護なら施設中心
2資金年金中心なら費用を抑える/資産を使えるなら購入も視野
3家族近くに支え手がいれば近居・同居/単身・遠方は見守り優先

健康状態で絞る(自立/要支援/要介護で候補が変わる)

3軸のうち、選べる住まいの幅を最も大きく決めるのが健康状態です。

自立から要支援のうちは、住み続ける・住み替える・家族と住む・施設まで、ほぼすべてが候補に入ります。ただし元気なうちでも、将来の介護を見据えておくと選び方が変わってきます。

介護が必要になると、候補は介護のある住まいへと寄っていきます。要介護度が重いほど公的な施設が中心になり、選べる幅は次第にしぼられていく段階です。

選べる幅が広いほど、迷いも生じやすくなります。残りの2軸で早めに絞っていくと、決め切れない不安を抑えやすくなります。

資金レンジで絞る(年金中心か資産を使えるか)

資金の軸では、年金中心の暮らしか資産を使えるかで現実的な候補が変わります。

年金収入が中心なら、入居一時金の少ない住まいや費用を抑えた公的施設が現実的です。毎月の負担が長く続くため、払い続けられるかを基準にすると安心できます。公的な支援や軽減の制度が使えないかも、あわせて確認しておきたいところです。

自宅の売却益や貯えを使えるなら、購入型の住まいや住み替えにも手が届きます。マンションの場合は相場が読みやすいため、売却でどれくらいの手取りが残るかを早めに把握しておくと、購入型の住まいや住み替えの現実味を判断しやすくなります。

数十年単位の暮らしを支える計画になるため、医療費や介護費の予備も別に見ておくと安心です。資金にゆとりがあれば、状態が変わったときの住み替え直しも選びやすくなります。

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家族関係で絞る(配偶者や子との関係と死別の可能性)

家族の軸では、近くに支え手がいるかどうかで候補の方向が変わります。

近くに頼れる家族がいれば、近居や同居といった支え合う住まい方が候補に入ります。単身や遠方の家族だけなら、見守りや生活支援のある住まいを優先すると安心です。

見落としやすいのが、配偶者と死別した後の暮らしです。一人になっても困らない住まいかどうかを、早めに考えておくと後悔を防げます。

住む形は、本人に加えて配偶者や子とも希望をすり合わせる必要があります。早めに話し合っておくほど、いざというとき動きやすくなるはずです。

早めの決め打ちか段階的な住み替えか

絞り込みができたら、早めに決め打つか段階的に動くかも考えておきましょう。

早く動けば希望の住まいを選びやすい一方、状態が変わると住み替え直す可能性もあります。段階的に動けば無駄は減りますが、その都度の手間や費用はかかります。

二度手間や二重の費用を避けるには、数年先の変化まで見据えて決めることが大切です。配偶者との死別や介護の始まりも織り込んでおくと、後悔の少ない選択につながります。

まとめ:老後の住まいを健康と資金で絞るなら、住み替えのトビラ

老後の住まいは、どれが良いかを比べる前に、住み続けるのか別の場所へ移るのかを先に選びます。ここで決めないままだと、施設も賃貸も持ち家もすべてが候補に残り続けます。

候補を絞るには、体が弱ったときに誰に頼れるのかを先に確かめます。頼り先の見当がつかないまま候補を狭めると、いざというときに移り直すことになります。

どれかに決める前に、住まいに毎月いくらまで出せるのかを確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、老後の住まいの絞り方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。