今の住まいのローンを返したまま次の住まいのローンも組むと、返済が一時的に2本並びます。
組むかどうかは、審査に通るかどうかよりも、今の住まいが売れるまでのあいだ2本分の返済を続けられるかで決められます。
審査で問われる点から、売却が長引いたときの負担の積み上がり、別の資金の借り方までを5つの基準に沿って説明します。
そもそもダブルローン(二重ローン)とは?どんなときに発生するのか
この記事は、ダブルローンを組むべきか避けるべきかを、ご自身の状況で判断できるようになるための記事です。
判断に入る前に、ダブルローンとは何か、どんなときに発生するのかをここで最小限に押さえます。込み入った計算には立ち入らず、骨格だけを先に確認しておきましょう。
ダブルローンとは|旧居と新居の住宅ローンを一時的に二重で返済する状態
ダブルローンとは、旧居と新居の住宅ローンを一時的に二重で返済する状態を指す言葉です。
住み替えで旧居のマンションのローンを残したまま新居のローンを組むと、毎月2本分の返済が同時に発生します。返済が重なるのは住み替えが終わるまでの一時的な期間で、旧居が売れてローンを完済すれば1本に戻ります。
二重ローンやW住宅ローンと呼ばれることもありますが、いずれも同じ意味です。よく似た言葉に「ペアローン」がありますが、これは夫婦がそれぞれの名義で新居の住宅ローンを2本組む仕組みで、1つの住まいを2人で借りるものです。旧居と新居の2本を並行して返すダブルローンとは、そもそも別物として押さえておきましょう。
ダブルローンが発生する主なケース|旧居の売却前に新居を買う「買い先行」
ダブルローンが発生するのは、旧居を売る前に新居を買う「買い先行」の住み替えです。
住み替えには新居を先に買う買い先行と、旧居を売ってから新居を買う売り先行があります。このうち買い先行を選ぶと、旧居の売却が終わるまでのあいだ、旧居と新居のローンが同時にのしかかります。
買い先行の利点は、仮住まいを挟まず新居へ移れて引っ越しが1回で済む点です。旧居を空き家にしてから売り出せるので、住みながら売る場合より買い手に部屋を見てもらいやすくなります。
こうした使い勝手の良さがある一方で、2本分の返済が家計に重くのしかかるのも事実です。便利さと負担のどちらが勝つかは、ご自身の年収や旧居マンションの売れ方しだいで変わります。
【判定マップ】あなたはダブルローンを組める・耐えられるか(YES/NO早見チャート)
ダブルローンを組めるか、組めても耐えられるかを分けるのが、5つのチェックポイントです。
ここではその5つを先に一覧し、YES/NOで今の位置を確かめます。一つずつ答えるうちに、組める側か避けるべき側かが見えてきます。
ダブルローンの可否を分ける5つのチェックポイント
可否を左右するチェックポイントは大きく2つの層に分かれ、合わせて5つです。
ダブルローンの可否は、大きく2つの層で決まります。審査に通って2本を組めるか、組めても売却と家計が持ちこたえられるか、の順に見ていきます。
1つ目は、そもそも2本を組めるかを見る層です。2本合算の返済負担率が基準に収まるか、完済時の年齢・団信・旧居の借入先からの了承をクリアできるかが問われます。
2つ目は、組めても耐えられるかを見る層です。旧居の手取り見込み額が残債を上回る形で売れそうか、売却が長引いても家計が持つかを見ます。どこかでNOがつくなら、無理に組まず代替ルートへ切り替える判断も視野に入ります。
次の5項目を、YESかNOかで確かめてみてください。
- □ 2本合算の返済額が年収の基準内に収まる
- □ 完済時年齢・団信・借入先の了承をクリアできる
- □ 旧居の手取り見込み額(査定額−諸費用)がローン残債を上回る
- □ 売却が長引いても数ヶ月〜1年は家計が耐えられる
- □ 厳しいときに切り替える代替ルートを把握している
あなたはどのルートか|組める→進め方/厳しい→代替ルートへ
5つの答えがそろえば、このまま組んで進める側か、別の手を検討する側かが見えてきます。
下のチャートは、5つの問いを上から順にたどる作りです。前半で「組めるか」、後半で「組めても耐えられるか」を確かめ、すべてYESならそのまま組んで進めるルートに入ります。
flowchart TD
A[2本合算の返済負担率は基準内?] -->|YES| B[完済時年齢・団信・了承はOK?]
A -->|NO| Z[代替ルートを検討]
B -->|YES| C[旧居の手取り見込みは残債超え?]
B -->|NO| Z
C -->|YES| D[売却が長引いても家計は耐える?]
C -->|NO| Z
D -->|YES| E[組んで進めるルート]
D -->|NO| Z
途中で1つでもNOがつけば、無理に組まず代替ルートを検討する側へ進みます。特に売却見込みや家計余力でNOが出た人は、避ける判断が現実的な選択になりやすい場面です。
判定①|あなたの「2本分の返済負担率」は基準内に収まるか
ダブルローンの審査で見られるのは、新居単体ではなく旧居と新居を合わせた2本分の返済額です。
単独なら通る人でも、2本合算だと負担率が基準を超えることがあります。ここでは基準を押さえ、年収と残債を当てはめて計算し、超えそうなときの対処まで確かめます。
条件|2本合算の年間返済額が年収の何%までか(返済負担率の基準)
返済負担率とは、年間返済額が年収に占める割合のことです。
旧居と新居を合算するダブルローンだと、この割合が一気に高くなり、単独なら通る人でも基準を超えることがあります。フラット35の基準は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。
フラット35が定める総返済負担率の基準は、年収400万円未満で30%以下、年収400万円以上で35%以下です。ここでいう年収は税込です。民間の住宅ローンの基準値については、金融機関ごとの上限値を集計した一次情報を確認できていないため、「30〜35%が多い」と言い切ることはできません。なお、審査の上限と無理なく返せる水準は別物です。手取りを分母にして考えるなら、税込年収を分母にした審査基準の数字とは分母が違う点に注意してください。
自分で確かめる|旧居ローン+新居ローンで返済負担率を計算してみる
自分が基準内かは、旧居と新居の返済額を合算して年収に当てればすぐ分かります。
計算はシンプルで、旧居と新居それぞれの年間返済額を足し、年収で割って100を掛けるだけです。ボーナス返済や車のローンなど、ほかの借入があればそれも年間返済額に含めます。
例にするのは、年収600万円のケースです。旧居のローンが月9万円残っていて、新居で月12万円のローンを新たに組むとします。ほかに車のローンなどの借入はない前提です。
| 項目 | 月返済 | 年返済 |
|---|---|---|
| 旧居ローン | 9万円 | 108万円 |
| 新居ローン | 12万円 | 144万円 |
| 2本合算 | 21万円 | 252万円 |
返済負担率 = 252万円 ÷ 年収600万円 = 42%
合算の返済負担率は42%となり、フラット35の35%基準を大きく超えます。新居だけなら24%で収まる人でも、旧居の返済が乗れば水準は別物です。
月々にすると21万円を2本で返す計算で、手取りから見れば負担感はさらに重くなります。単独の審査では問題なかった人も、ダブルローンでは自分の数字が基準を超えていないか、まず確かめておきたいところです。
基準を超えそうなとき|頭金・残債圧縮・収入合算・新居予算の見直し
借入額を抑える打ち手はいくつかあり、組み合わせれば負担率を基準内へ近づけられます。
最も効くのは、新居の借入額そのものを下げることです。頭金を厚くする、あるいは新居の予算を一段下げると、新居側の返済が減って負担率が下がります。手元資金とのバランスは必要ですが、その効果は月々の返済にそのまま表れます。
旧居側の返済を軽くするのも、ダブルローンでは効果の大きい打ち手です。繰上返済で旧居の残債を圧縮すれば、負担率を押し上げている部分が直接小さくなります。
分母を増やすなら、配偶者などの収入合算で年収ベースを上げる手もあります。ただし合算で借入の上限が上がっても、返せる総額そのものが増えるわけではありません。基準内に収めること自体が目的にならないよう、無理なく返せる水準かどうかも合わせて見ておきたいところです。
判定②|完済時年齢・団信・金融機関の了承はクリアできるか
返済負担率を満たしても、完済時年齢・団信・旧居の借入先の了承という足切りを外すと、そもそもダブルローンを組めません。
これらは数字で測る条件と違い、満たすか満たさないかで結果が分かれる前提条件です。年齢・健康状態・借入先の事情を、それぞれ自分に当てはめて確かめます。
完済時年齢の上限|おおむね75〜80歳までに返し終わる計画か
多くの住宅ローンは完済時の年齢に上限があり、おおむね80歳(一部は75歳)までに返し終わる計画が前提です。
国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」によれば、審査で完済時の年齢を考慮する金融機関は98.4%にのぼり、ほぼすべての機関が条件に含めています。借入時の年齢が高いほど、完済時80歳までに返し終えるための返済期間は短くなります。期間が短いほど毎月の返済が重くなり、合算の負担率にも響きます。
子が独立した後にマンションから住み替える50代の世代は、借入時の年齢がすでに高めになりがちです。返済期間を長く取りにくいぶん、新居の借入を抑える、頭金を厚くするといった備えが効いてきます。新居のローンを何年で組むつもりか、完済時に自分が何歳になるかを、計画の形で先に確かめておきたいところです。
団信に入れる健康状態か|年齢経過で通らなくなるリスク
多くの住宅ローンは団信への加入が前提で、健康状態によっては組めないことがあります。
団信はローンの契約者に万一のことがあったときの備えとなる保険です。これが組めないと融資そのものを受けられず、健康状態は年齢と並ぶ通過条件になっています。
出典: 【フラット35】新機構団信 ご加入の手続・ご注意点(住宅金融支援機構)
持病が増えやすい年代になると、団信の審査は通りにくくなりがちです。加入できなければ選べるローンが狭まり、持病があっても入りやすいワイド団信などを探すことになります。
健康状態は後から良くするのが難しく、年齢が上がるほど選択肢は狭まります。組めるうちに動けるか、今の自分の状態で団信に通るかを、早めに確かめておきたいところです。
旧居ローンの金融機関から「ダブルローンの了承」を得られるか
住宅ローンは原則1世帯1本のため、旧居の借入先からダブルローンの了承を得られるかが前提になります。
住宅ローンは本人が住む家のための融資で、1世帯につき1本が原則です。旧居のローンを残して2本目を組むなら、旧居の借入先に事情を伝え、了承を得ておく必要があります。
銀行から見ても、ダブルローンは住み替えが終わるまでの一時的なものです。旧居が売れて完済できる見通しが立っていれば、了承は得やすくなります。
なお、旧居を賃貸に出して返済を補う方法は、住宅ローンが本人居住を前提とするため原則として認められません。金融機関に相談すれば例外的に扱われる場合もありますが、自己判断で貸し出すのは避けるべきです。
判定③|旧居の「売却見込み」はしっかり立っているか(最大の分かれ目)
ダブルローンの成否を最も大きく分けるのは、旧居がいつ・いくらで売れるかです。
審査に通っても、旧居が売れなければ2本の返済はいつまでも続きます。ここでは残債と手取り見込みを比べて立ち位置を測り、査定で額と期間の当たりを取るところまで確かめます。
条件|旧居の想定手取り額がローン残債を上回るか(アンダー/オーバーローン判定)
最初の分かれ目は、旧居の手取り見込み額がローン残債を上回るかどうかです。
ここで大切なのは、査定額そのままではなく、そこから諸費用を引いた手取りで比べることです。売却には仲介手数料や抵当権の抹消費用などがかかるため、実際に残債の返済へ回せるのは査定額から諸費用を引いた金額になります。この手取り見込みが残債を上回って完済できる状態をアンダーローン、手取りでも残債が残る状態をオーバーローンと呼びます。
ダブルローンが安全に回るのは、基本的にアンダーローンの側です。売却の手取りでローンを清算しやすく、二重返済の出口も見えやすくなります。
一方でオーバーローンだと、売却代金だけではローンを完済しきれません。差額を自己資金で埋めるか、住み替えローンなどでまとめて処理する必要が出てきます。オーバーローンに近いほど、組む前に売却の見通しを固めておくことが欠かせません。
残債の額は、金融機関の残高証明書や返済予定表、各行のWebサイトなどで確認できます。まず自分がどちらの側にいるかを、手取り見込みと残債の両方の数字でつかんでおきましょう。
自分で確かめる|査定で「売却額」と「売れるまでの期間」の感覚をつかむ
手取りの元になる売却額も、売れるまでの期間も、机上の予想では当たりません。査定を受けて当たりを取るのが確実です。
査定を受けると、いまの相場でいくらで売れそうか、どのくらいの期間で買い手がつきそうかが見えてきます。1社だけで決めず複数社に依頼すれば、提示額の幅と、各社の売り方の違いもつかめます。
ここでマンションには、戸建てにない強みがあります。ひとつは、一戸ごとの個別性が戸建てより小さいことです。同じマンションの別住戸や近隣の同じような住戸が比べる相手になるため、自分の住戸がどのあたりの水準にあるかを見当づけやすくなります。もうひとつは取引事例の多さです。首都圏の中古マンションは2025年(暦年)に49,114件が成約しています。売り出す前に相場の当たりを取りやすいことは、返済が2本重なる期間をあらかじめ見積もるうえで効いてきます。自分でもレインズ・マーケット・インフォメーションや国土交通省の不動産情報ライブラリで近い条件の成約を無料で調べられ、同じマンションの別室が最近いくらで売れたかが最も確かな手がかりになります。
市場全体の水準も手がかりになります。首都圏の中古マンションは、2025年(暦年)の成約価格の平均が5,200万円、成約㎡単価が82.98万円で、いずれも13年連続の上昇です。成約件数は49,114件で3年連続で前年を上回りました。売却額と期間の見通しを立てやすいこと自体が、ダブルローンを判断するうえでのマンション所有者の強みです。
出典: 季報Market Watchサマリーレポート2026年1〜3月期(東日本不動産流通機構)
ただし注意もあります。売り出してすぐ売れるとは限りません。首都圏の中古マンションは2025年(暦年)に新規登録が185,762件、成約が49,114件で、売り出された物件のうち成約に至るのは一部です。レインズ登録から成約までは平均82.5日(2025年)かかります。そして査定額は成約価格そのものではなく、実際の成約は査定より下がることもあります。資金計画は売却額を低めに見込んで組んでおくと安全です。
それでも、自分のマンションで額と期間の当たりを取れれば、ダブルローンを組めるか、何ヶ月耐えればよいかまで具体的に見通せます。査定は一度きりの相場調べではなく、二重返済を負えるかを決める最初の一手になります。
売却見込みが読めないとき|売り先行への切替も選択肢に入れる
売却の見通しがどうしても読めないなら、ダブルローンは無理に組まないのが安全です。
マンションは相場が読みやすい部類とはいえ、築古や特殊な条件で査定でも当たりがつかめない物件は、売却が長引くリスクが高いといえます。その状態で2本目を組むと、いつ終わるか分からない返済を長く抱え込むことになります。
そんなときは、買い先行をやめて売り先行へ切り替えるのが現実的な選択肢です。旧居を先に売れば、2本の返済が重なる期間そのものが生まれません。
判定④|売却が長引いても「何ヶ月」耐えられる家計余力があるか
ダブルローンで本当に問われるのは、家計が2本の返済を何ヶ月支えられるかです。
売却が長引くほど、2本分の負担は積み上がっていきます。ここでは期間別に累積負担を見て、貯蓄が尽きる前にどう動くかまで確かめます。さきほど見たように、マンションは売れるまでの期間の見通しを立てやすいため、「何ヶ月耐えればよいか」をより現実的な数字で置ける側にいます。
期間別シミュレーション|売却3ヶ月/6ヶ月/12ヶ月で累積負担はいくらか
売却が長引くほど、旧居を抱える上乗せ負担が積み上がり、家計を圧迫していきます。
例にするのは、年収600万円で旧居ローンが月9万円残っている人です。新居のローンを3,000万円・35年で組むとすると、毎月返済額は約12.0万円です。前提にしている金利は次のとおりです。
【フラット35】2026年8月適用の金利 年3.290%(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)
金利は毎月変わるため、実際の借入時の金利で確認してください。借入1,000万円あたりの毎月返済額は、35年で40,122円、30年で43,740円、25年で48,943円、20年で56,923円です。自分の借入額に合わせて掛け算してください。
旧居の維持費のうち管理費と修繕積立金は、令和5年度マンション総合調査では月/戸あたりの平均が管理費11,503円・修繕積立金13,054円(いずれも使用料等からの充当額を除く系統)で、合計24,557円です。ここに固定資産税が加わります。上の例では維持費を月2.5万円と置き、旧居を持ち続ける上乗せ負担を月11.5万円ほどとして計算します。
出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」データ編
| 売却までの期間 | 上乗せ負担の累積 |
|---|---|
| 3ヶ月 | 約34.5万円 |
| 6ヶ月 | 約69万円 |
| 12ヶ月 | 約138万円 |
前提:旧居ローン月9万円+維持費月2.5万円=月11.5万円
売却まで3ヶ月なら、上乗せ負担の累積は約34.5万円に収まります。この程度なら、多くの家庭が貯蓄でしのげる範囲です。
6ヶ月かかったときの累積は約69万円で、家計への重みがはっきりしてくる水準です。新居の頭金や諸費用で貯蓄が減っていれば、この時点で余力が心もとなくなる家庭も出てきます。
12ヶ月時点の累積は約138万円です。ここまでくると、貯蓄を取り崩しても底が見えはじめ、返済の延滞が現実味を帯びてきます。何ヶ月なら抱えられるかは、上乗せ負担の月額と、売却までに使える貯蓄の額で決まります。「◯ヶ月が限界」という一般的な線を示した統計はありません。
危険ライン|貯蓄が尽きる・延滞に向かうのはどの時点か
危険ラインの目安は、上乗せ負担の累積が使える貯蓄を食いつぶし始める時点です。
目安は単純で、売却までに使える貯蓄を月々の上乗せ負担で割れば、耐えられる月数が出ます。先ほどの月11.5万円なら、貯蓄115万円で約10ヶ月、230万円で約20ヶ月もつ計算です。
ただし、その貯蓄は新居の頭金や諸費用ですでに目減りしていることが多く、見かけほど余裕はありません。余力が残り数ヶ月分まで細ったら危険ラインで、そこから先は値下げや売り方の見直しを急ぐ局面です。
長引いたときの打ち手|値下げ・買取への切替・賃貸転用の判断タイミング
長引いてきたら、値下げ・買取・賃貸転用の順に退路を切り替える判断が必要です。
まず動かしやすいのは価格です。値下げの判断は日数ではなく反響で決めます。首都圏の中古マンションはレインズ登録から成約まで平均82.5日(2025年)で、この平均を大きく過ぎても問い合わせが動かないなら価格を見直す時期です。早めの小さな値下げほど、総額の傷は浅く済みます。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」
それでも売れないまま期限が近づくなら、買取への切り替えも選択肢です。買取なら不動産会社が直接買い取るため、価格は仲介で売れる相場より下がる一方、短期で確実に現金化して2本目の返済を止められます。ただし、買取価格を業者横断で集計・公表している公的機関や業界団体はありません。国土交通省の不動産系統計にもレインズの公表統計にも買取の区分は無く、業界で言われる「おおむね6〜8割」も出典を示せる数字ではないため、断定形では受け取らないでください。マンションは買い取りに対応する会社も多く、二重返済を早く解消する退路として使いやすい方法です。
賃貸に回して返済を補う方法は、住宅ローンが本人居住を前提とするため、ローン種別の変更や金融機関の承諾が要る最終手段です。自己判断で貸し出すと契約違反になりかねないので、動かす前に必ず借入先へ相談します。
判定NOだったあなたへ|ダブルローンを避ける代替ルート
ダブルローンが厳しい・避けたいときに選べるのは、住み替えローン・つなぎ融資・売り先行です。
それぞれ仕組みも向き不向きも違うため、まず違いを押さえます。そのうえで、あなたの状況ならどれを選ぶべきかまで踏み込みます。
ダブルローン・住み替えローン・つなぎ融資はどう違うか(比較表)
3つの違いは、旧居の残債をどう扱うかと、借りる期間の長さに表れます。
ダブルローンは旧居のローンを残したまま2本を並行返済し、住み替えローンは残債を新居のローンに上乗せして一本化します。つなぎ融資は売却代金が入るまでの不足分を短期で立て替え、入金後に一括返済する仕組みです。
| 項目 | ダブルローン | 住み替えローン | つなぎ融資 |
|---|---|---|---|
| 残債の扱い | 旧居ローンを残す | 新居ローンに上乗せ | 売却代金で完済 |
| 主なシーン | 買い先行 | 売却と購入を同時 | 入金前の立替 |
| 審査 | 厳しい(2本合算) | 厳しい(借入大) | 売却前提で短期 |
| 金利 | 通常の住宅ローン | やや高め | 高め |
| 向く人 | 年収に余力 | オーバーローン | 売却は堅く時期ずれ |
金利の面でも差があります。住み替えローンは、上乗せする残債分が新居の担保で十分に守られないことなどから、通常の住宅ローンより高めになることがあります。ダブルローンは旧居・新居とも通常の住宅ローン金利で組める一方、つなぎ融資は短期でも金利が高めです。
なお、この3つはいずれも旧居の残債と新居資金の借り方を分ける手段です。夫婦で新居のローンを2本組むペアローンや、配偶者の収入合算は、どのルートを選ぶ場合でも返済力を補うために併せて使える手段で、3つと対立するものではありません。
ただし、どれを選ぶべきかは表の知識だけでは決まりません。実際の金利や条件は金融機関ごとに違うため、最後は自分の状況に当てて選ぶ必要があります。
あなたの状況別の選び方|オーバーローンなら/売却を急ぎたくないなら
どれを選ぶかは、残債の状況と売却を急げるかで2〜3案に絞れます。
手取りが残債に届かない人は、住み替えローンが軸になります。残債を新居のローンに上乗せして一本化できるので、自己資金が乏しくても住み替えを進められるのが強みです。
売却を焦りたくない人は、アンダーローンで年収に余力があればダブルローンも選べます。じっくり売って高値を狙える一方、2本を支える期間が前提です。
売却は堅いのに入金の時期だけずれる人には、つなぎ融資が橋渡しです。金利は高めで期間も短いため、売却代金での一括返済が確実に見えていることが条件になります。
整理すると、当てはめはこう考えられます。
- オーバーローンなら → 住み替えローンが軸
- アンダーローンで余力あり → ダブルローンも選べる
- 時期のずれだけなら → つなぎ融資で橋渡し
どれもしっくりこないなら、売り先行への切り替えが最も無理のない答えになりやすいところです。
そもそも「買い先行」をやめて「売り先行」に戻すべきケース
ときには、買い先行をやめて売り先行に戻すのが最も根本的な解決です。
オーバーローンで売却にも時間がかかりそうなら、無理にローンを重ねず、先に旧居を売り切るほうが安全です。売却代金で残債を清算してから新居を探せば、二重の返済も高金利も避けられます。
子の独立後で住む場所を急がなくてよいなら、売り先行に切り替える余地は大きいはずです。進め方は単純で、契約に動く前に立ち止まり、旧居の売却を先に始めます。
売り先行では新居が決まる前に旧居を手放すので、仮住まいが要る点には注意が必要です。それでも、いつ終わるか分からない二重返済を抱えるより、見通しの立つ道を選ぶ意味は大きいといえます。
補足|不動産会社に「ダブルローンで進めましょう」と言われたら
不動産会社にダブルローンを勧められたときも、判断の主導権は自分に置いておくのが安全です。
提案そのものが悪いわけではなく、誰の事情で出てくるかを知っておくと、冷静に受け止められます。背景を押さえたうえで、自分の数字に立ち返って確かめるべき点を整理します。
なぜ不動産会社は「買い先行(ダブルローン)」を勧めることがあるのか
仲介会社が買い先行を勧めるのは、取引が前に進みやすく、結果として成約につながりやすいからです。
仲介の報酬は売買が成立して初めて発生します。買い先行で新居の購入が先に決まれば、その分だけ取引が動きやすくなります。
これは特定の会社が不誠実だからではなく、仕組みの上でそうなりやすいだけです。買い先行が向くケースもあり、提案そのものが悪いわけではありません。
鵜呑みにする前に確認したいこと|売却の見込みと退路を自分の手で握る
提案を受けたら、いったん持ち帰り、自分の数字でもう一度確かめてから返事をしても遅くありません。
確かめ直したいのは、判断を支える4つの数字です。2本合算の返済負担率は基準内か、年齢や団信の条件は満たせるかが第一です。そのうえで、旧居の手取りが残債を上回って売れそうか、長引いても家計が耐えられるかを当て直します。
肝心なのは、売却の見込みと退路を、自分の手で握っておく点です。値下げや買取の判断ラインを先に決めておけば、提案に流されず自分のペースで進められます。
最後に、ダブルローンを組めるかどうかの最終判断は、金融機関やファイナンシャルプランナーへの相談が欠かせません。審査基準や金利は時期と金融機関で変わるため、最新の条件は必ず自分で確認してください。
まとめ:ダブルローンを支えきれるか数えるなら、住み替えのトビラ
ダブルローンは、売れる時期を自分では決められないまま、返済だけが確実に増える借り方です。売れる見込みが読めないなら、重ねないほうが安全です。
それでも重ねるなら、売れない状態が何か月続いても家計が持つのかを数えておきます。積み上がる分を数えずに次の住まいを押さえると、値下げに追い込まれます。
次の住まいを申し込む前に、何か月なら支えられるのかを確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、返済が2本重なる期間の支え方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
