退職して収入が年金だけになっても、マンションの管理費と修繕積立金は毎月同じように引き落とされ、総会では値上げの議案が出ることもあります。
国の調査では、マンションの世帯主の4人に1人が70歳以上になり、管理費や修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションも3割にのぼります。大切なのは、年金の手取りと長期修繕計画を並べて、10年後、20年後も払えるかを今のうちに数字で確かめることです。
この記事では、国土交通省の調査とガイドラインをもとに、管理費・修繕積立金の相場と老後の総額、値上がりする理由、年金で払えるかの確かめ方、負担を抑える方法、払い続けるのが難しくなりそうなときの対処法を順に解説します。
老後のマンションの管理費・修繕積立金の相場
まずは、管理費と修繕積立金の全国平均と、老後に払い続ける総額をつかみます。
自分のマンションの金額が平均と比べて高いのか低いのかを知ることが、この先を考える出発点になります。
管理費と修繕積立金の全国平均
国土交通省の「マンション総合調査」(令和5年度)では、1戸あたりの月額の平均を、駐車場使用料などから回した分(充当額)を含む額と、除いた額の2通りで集計しています。
| 費目 | 充当額を含む平均 | 充当額を除く平均 |
|---|---|---|
| 管理費 | 17,103円 | 11,503円 |
| 修繕積立金 | 13,378円 | 13,054円 |
住民が毎月払う額に近いのは、充当額を除く平均です。よく紹介される「管理費は月約1万7,000円」は、駐車場使用料などで補っている分を含めた管理組合の収入の平均です。
管理費の2つの平均には月5,600円ほどの開きがあり、多くのマンションで管理費の会計が駐車場使用料などに支えられている様子が分かります。この点は、値上がりの理由の章で詳しく見ます。
2つの費用は、使い道が違います。国土交通省のマンション標準管理規約では、次のように定めています。
- 管理費: 管理員の人件費、共用設備の保守や運転の費用、清掃費、管理会社への委託業務費、共用部分の火災保険料など、通常の管理に使う
- 修繕積立金: 一定の年数ごとに計画的に行う修繕などのために積み立て、取り崩せる使い道は規約で決まっている
使い道が違うので、上がり方も違います。管理費は人件費や物価の影響を受け、修繕積立金は長期修繕計画の見直しや積立方式に沿って上がります。
出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」 出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第27条・第28条)
築年数や総戸数で変わる金額
全国平均は目安で、実際の金額は建物の規模や築年数で変わります。
同じ調査を総戸数別に見ると、充当額を含む管理費の平均は、20戸以下のマンションで月22,131円、151〜200戸のマンションで月13,932円です。管理員の人件費や設備の点検費を少ない戸数で分けるため、1戸あたりの負担が大きくなります。
修繕積立金は、新しいマンションほど低めです。平成27年以降に完成したマンションの修繕積立金の平均は、全体の平均を下回っています。新しいマンションほど、あとから段階的に上げていく積立方式の割合が高くなっています。この方式は次の章で解説します。
自分の金額を比べるときは、1戸あたりではなく1㎡あたりの単価で見ます。部屋の広さの違いを取り除けるからです。
修繕積立金の単価(1㎡あたり・月)= 毎月の修繕積立金 ÷ 専有面積
国土交通省の修繕積立金ガイドラインは、計画期間全体で集める修繕積立金の平均額の目安を、建物の階数と延床面積ごとに示しています。
| 建物の規模 | 平均値(1㎡あたり・月) | 事例の3分の2が収まる幅 |
|---|---|---|
| 20階未満・延床面積5,000㎡未満 | 335円 | 235円〜430円 |
| 20階未満・5,000㎡以上10,000㎡未満 | 252円 | 170円〜320円 |
| 20階未満・10,000㎡以上20,000㎡未満 | 271円 | 200円〜330円 |
| 20階未満・20,000㎡以上 | 255円 | 190円〜325円 |
| 20階以上 | 338円 | 240円〜410円 |
延床面積の小さいマンションと20階以上のマンションは、目安が高めです。20階以上のマンションは、外壁の修繕に特殊な足場が要ることなどから、工事費が大きくなる傾向があるとされています。
たとえば延床面積5,000㎡未満のマンションで70㎡の部屋なら、平均値で見ると335円×70㎡で月23,450円、幅で見ると月16,450円〜30,100円です。この目安は計画期間全体の平均なので、今の月額がこれを下回っていれば、これから上がる余地があると考えます。機械式駐車場がある場合は、目安に加算額が上乗せされます。
出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(管理組合向け調査の集計・分析結果)」 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」 出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
老後に払い続ける総額の計算
老後に払う総額は、次の式で出せます。
老後に払う総額 = 毎月の管理費と修繕積立金 × 12か月 × 住み続ける年数
ここからは仮定の数字で計算します。管理費と修繕積立金の合計を全国平均に近い月3万円とし、65歳から90歳まで25年間払い続けると、3万円×12か月×25年で900万円です。
ここに値上げが加わります。仮に、最初の10年は月3万円、次の10年は月4万円、最後の5年は月5万円とすると、次のとおり総額は1,140万円になります。
- 最初の10年: 3万円×12か月×10年=360万円
- 次の10年: 4万円×12か月×10年=480万円
- 最後の5年: 5万円×12か月×5年=300万円
老後資金の計画では、管理費と修繕積立金が抜け落ちがちですが、合計すると大きな金額になります。自分のマンションの今の月額と、長期修繕計画に書かれた将来の月額、住み続けたい年数を当てはめて計算してみます。
管理費・修繕積立金が老後に値上がりする理由
管理費と修繕積立金は、マンションが古くなるほど上がりやすくなります。
理由は4つあり、それぞれ自分のマンションで起きそうかを見分ける手がかりがあります。
新築時に低く抑えた段階増額の計画
多くのマンションは、新築時の修繕積立金を低めに設定し、年数がたつにつれて段階的に上げていく計画になっています。これを段階増額積立方式と言います。令和5年度のマンション総合調査では、今の積立方式は段階増額積立方式が47.1%、均等積立方式が40.5%です。
国土交通省の修繕積立金ガイドラインは、分譲時に修繕積立金の当初の月額が著しく低く設定される例があると指摘し、将来にわたって安定して積み立てる観点から、均等積立方式が望ましいとしています。
段階増額積立方式については、築年数とともに必要な積立金が増えることや、区分所有者の高齢化で負担が難しくなることを踏まえ、早めに引き上げを終えるのが望ましいとしています。そのうえで、初めの額は基準額(均等積立方式とした場合の月額)の0.6倍以上、最後の額は基準額の1.1倍以内という目安を示しています。
ただ、計画どおりに上げられるかは別の問題です。段階増額積立方式の管理組合のうち、直近の増額で計画どおりの額まで上げられたのは59.4%で、26.4%は計画より少ない額での引き上げでした。上げきれなかった分は、積立金の不足として残ります。
見分ける手がかりは、長期修繕計画の積立方式の欄と、これからの引き上げの予定です。段階増額積立方式で値上げの段階が残っているなら、これからも上がる前提で家計を考えます。
出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定) 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(管理組合向け調査の集計・分析結果)」
工事費と人件費の上昇
修繕工事の費用は、工事を担う職人の賃金に左右されます。国土交通省が公共工事の積算に使う設計労務単価は、令和8年3月からの全国全職種の加重平均が25,834円になり、14年連続の引き上げです。
長期修繕計画は5年程度ごとに見直すことが前提とされ、見直しのたびに、その時点の工事費で計算し直します。工事費が上がっていれば、必要な積立金も増えます。修繕積立金ガイドラインも、工事費の高騰などを踏まえて計画を見直す際に、修繕積立金を大幅に引き上げることを妨げるものではないとしています。
管理費は、管理員や清掃員の人件費に左右されます。地域別最低賃金の全国加重平均は、令和7年度に66円上がって1,121円、令和8年度の答申では56円引き上げの1,177円です。
見分ける手がかりは2つあります。
- 長期修繕計画の最後の見直しの年
- 管理会社から管理委託費の値上げの申し入れがあるか
何年も見直されていない計画は、今の工事費で計算し直すと、必要な積立金が大きく増える可能性があります。
出典: 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」 出典: 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定) 出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定) 出典: 厚生労働省「令和7年度最低賃金額答申」 出典: 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年度)
築年数とともに増える大規模な工事
マンションの修繕工事は、築年数が進むほど設備の工事が加わります。
外壁の補修や屋上の防水などの大規模修繕は、12〜15年程度の周期で繰り返されます。国土交通省の実態調査では、大規模修繕の周期は1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年で、回数が増えるほど短くなる傾向です。
2回目、3回目のころになると、設備の大きな工事が加わります。長期修繕計画作成ガイドラインが示す修繕周期の例は次のとおりです。
| 工事 | 修繕周期の例 |
|---|---|
| 給水管・排水管の取替え | 30〜40年 |
| エレベーターの取替え | 26〜30年 |
| 機械式駐車場の取替え | 18〜22年 |
築30年前後から、給排水管やエレベーターの取替えの時期が重なってきます。修繕積立金ガイドラインも、既存のマンションでは年数とともに給排水管、エレベーター、機械式駐車場などの大がかりな工事が増えると指摘しています。
令和5年度のマンション総合調査では、実際の積立額が計画に比べて不足しているマンションが36.6%あり、そのうち不足が20%を超えるマンションが11.7%です。積立金が足りなければ、値上げや一時金の徴収、借入れで補うことになります。
見分ける手がかりは、長期修繕計画の工事の一覧です。これから10年の間に設備の取替えが予定されているか、その金額に対して積立金の残高が足りているかを確かめます。
出典: 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定) 出典: 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定) 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」
駐車場の空きや滞納による収入の減少
見落とされがちなのが、管理組合の収入が減ることによる値上げです。
令和5年度のマンション総合調査では、管理組合が駐車場を区分所有者や居住者に貸しているマンションが78.4%あります。最初の章で見たとおり、管理費の平均は駐車場使用料などからの充当を含めると月17,103円、除くと月11,503円で、その差の分を駐車場使用料などが支えています。
住民が高齢になって車を手放すと、駐車場に空きが出て、その分の収入が減ります。同じ調査では、世帯主が70歳以上の割合は25.9%(前回の平成30年度は22.2%)で、昭和59年以前に完成したマンションでは55.9%にのぼります。減った収入は、管理費や修繕積立金の値上げで補うことになります。
管理費や修繕積立金を払えない人が増えることも、収入の減少につながります。3か月以上の滞納住戸があるマンションは30.1%で、築年数の古いマンションほど割合が高く、昭和59年以前に完成したマンションでは4割を超えます。標準管理規約では、管理費等に不足が出たとき、管理組合は区分所有者にその都度必要な負担を求められると定めています。
見分ける手がかりは、管理組合の収支報告です。
- 駐車場の使用料がどの会計に入っているか
- 空き区画が増えていないか
- 滞納の額が増えていないか
住民の年齢が上がっているマンションほど、この3つを毎年の総会資料で見ておくと安心です。
出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(管理組合向け調査の集計・分析結果)」 出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第61条)
年金で管理費・修繕積立金を払えるかの確かめ方
老後も払い続けられるかは、感覚ではなく数字で確かめます。
比べるのは、年金の手取り、将来の積立金、そのほかの住まいの費用の3つです。
年金の手取りに占める割合を出す
年金と比べるときは、額面ではなく手取りを使います。65歳以上で年金額が年18万円以上の人などは、介護保険料、国民健康保険料または後期高齢者医療保険料、住民税(森林環境税を含む)が年金から差し引かれ(特別徴収)、所得税が源泉徴収されることもあるからです。
年金は原則として年6回、偶数月の15日に、前月までの2か月分がまとめて振り込まれます。手取りの額は年金振込通知書で確かめられるので、月額は振込額の半分で考えます。
割合は次の式で出します。
管理費等の割合 =(管理費 + 修繕積立金)÷ 年金の手取りの月額
参考として、厚生労働省が示す令和8年度の標準的な夫婦2人分の年金額は月237,279円です。これは男性が平均的な収入で40年間働いた場合の老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金を合わせた額面の金額で、ここから保険料や税が差し引かれます。
ここからは仮定の数字で計算します。年金の手取りが月20万円、管理費と修繕積立金が月3万円なら、3万円÷20万円で割合は15%です。同じ手取りのまま管理費等が月4万円に上がれば20%、月5万円なら25%になります。
この割合が高いほど、食費や医療費に回せるお金が減ります。長期修繕計画に書かれた将来の月額でも、同じ式で割合を出しておきます。
出典: 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」 出典: 日本年金機構「年金からの介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、住民税および森林環境税の特別徴収」 出典: 日本年金機構「社会保険料が年金から特別徴収されている方の所得税額は、どのように計算されるのですか。」 出典: 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
長期修繕計画で10年後・20年後の積立金を確かめる
将来の修繕積立金は、長期修繕計画に書かれています。標準管理規約では、理事長が長期修繕計画書を保管し、区分所有者が理由を付けた書面で請求すれば閲覧させると定めています。理事会や管理会社に申し出れば見せてもらえます。
見るのは次の5つです。
- 計画期間: 30年以上で、大規模修繕が2回含まれる期間になっているか
- 積立方式: 均等積立か、段階増額積立か
- 計画上の積立金の推移: 何年後にいくらになるか
- 計画上の残高と実際の残高: 実際の残高が計画を下回っていないか
- 最後の見直しの年: 5年以内に見直されているか
長期修繕計画作成ガイドラインは、計画期間を30年以上で大規模修繕が2回含まれる期間以上とし、5年程度ごとに見直すとしています。令和5年度のマンション総合調査では、計画期間が30年以上の計画は72.7%、5年ごとを目安に定期的に見直しているマンションは63.2%です。
計画上の積立金の推移から、10年後と20年後の月額を拾い、先ほどの式に当てはめます。
計画が何年も見直されていない場合は、書かれている金額より実際の値上げが大きくなる可能性があります。あわせて総会の議事録を読み、値上げや一時金の話し合いが出ているかも確かめます。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第64条) 出典: 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定) 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」
固定資産税や部屋の設備の交換費用も見込む
住まいの費用は、管理費と修繕積立金のほかにもあります。
- 固定資産税と都市計画税
- 部屋の設備の交換: 給湯器、ユニットバス、キッチン、エアコンなど
- 火災保険と地震保険
- 駐車場の使用料
管理組合が管理するのは、廊下や外壁などの共用部分です。部屋の中の設備は、自分のお金で直します。給湯器などの設備は、使い続けるうちに交換の時期が来ます。交換の時期と費用は機種や設置の状況で変わるので、取り付けた年を確かめ、見積もりで目安をつかんでおきます。
固定資産税と都市計画税は、納税通知書に書かれた年額を12で割って月額に直し、管理費等に足します。
これらを合わせた住まいの費用を、年金の手取りと比べます。毎月の収支が赤字になるなら、貯蓄からいくら取り崩すことになるかも計算しておきます。
老後の管理費・修繕積立金の負担を抑える方法
負担を抑えるときに、修繕積立金を下げるのは逆効果です。積立金が足りなくなると、一時金の徴収や工事の先送りにつながり、マンションの価値に響くからです。
総会で値上げ案の根拠を確かめて意思を示す
管理費や修繕積立金の額は、管理組合の総会で決まります。国土交通省の標準管理規約では、管理費等の額は総会の決議事項で、議決権総数の過半数を持つ組合員が出席し、出席した組合員の議決権の過半数で決める普通決議です。定足数は、令和7年の改正で「議決権総数の半数以上」から「過半数」に改められました。長期修繕計画の作成や変更も、総会の決議事項です。
実際の決め方は自分のマンションの管理規約で確かめますが、普通決議であれば、総会に出るかどうか、どう意思を示すかで結果が変わります。
値上げの議案が出たら、次の点を確かめます。
- 値上げの根拠になった長期修繕計画の見直しの内容
- 工事の見積もりの取り方(複数社から取ったか)
- 工事の時期や内容を見直す余地があるか
総会に出られない場合は、議決権行使書と委任状の違いを押さえておきます。標準管理規約のコメントでは、議決権行使書は議案ごとに賛否を書いて自ら意思を決める方法、委任状は賛否の判断を代理人に任せる方法とし、出席できないときは議決権行使書で自ら賛否を示すことが望ましいとしています。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第46条関係コメント・第47条・第48条)
管理委託費の見直しを理事会に提案する
管理費の使い道の一つが、管理会社に払う委託業務費です。
契約の内容と金額が今の建物に合っているかは、複数の管理会社から見積もりを取って比べると分かります。
見直しの対象になりやすいのは、次のような項目です。
- 管理員の勤務時間や日数
- 清掃の回数
- 設備の点検の内容と回数
ただ、安さだけで選ぶと、管理の質が下がることがあります。点検や清掃の回数を減らす場合は、建物の状態に響かないかを確かめます。
見直しは、理事会に提案して進めます。理事を引き受けると、管理組合の情報が手に入りやすくなります。
使わなくなった駐車場やトランクルームを解約する
個人ですぐにできるのが、使わなくなった設備の解約です。
車を手放したのに駐車場の契約が残っていたり、使っていないトランクルームや自転車置き場の料金を払い続けていたりすることがあります。解約すれば、その分の毎月の支払いが止まります。
解約の手続きは、管理会社か理事会に申し出ます。
ただし、先に書いたとおり、駐車場の使用料が管理組合の収入になっているマンションでは、解約が増えると収入が減り、将来の値上げにつながることがあります。自分の負担を減らすことと、マンション全体の収支は、分けて考えます。
空き区画が増えている場合は、外部の人に貸すなどの対策を、管理組合として話し合うこともできます。令和5年度のマンション総合調査では、区分所有者や居住者のほか、それ以外の人にも駐車場を貸しているマンションが3.5%あります。
出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(管理組合向け調査の集計・分析結果)」
管理費・修繕積立金を払い続けるのが難しいときの対処法
払い続けるのが難しくなりそうなときは、払えなくなる前に動くことが大切です。
滞納してから動くと、選べる手が少なくなります。ここでは、滞納の流れと、その前に取れる3つの手を紹介します。
滞納を続けた場合に起きる流れ
管理費や修繕積立金を滞納すると、標準管理規約と区分所有法に沿って、次のように進みます。
- 管理組合からの督促
- 遅延損害金と、違約金としての弁護士費用や督促・徴収の費用の請求
- 理事長が理事会の決議にもとづいて行う訴訟などの法的措置
- 判決などにもとづく強制執行や、先取特権にもとづく競売
管理組合は、滞納された管理費等について、区分所有権や建物に備え付けた動産の上に先取特権を持ちます。また、滞納分はマンションを売っても消えず、買った人にも請求できます。売却を考えるなら、滞納分の精算も含めて段取りを考えます。
令和5年度のマンション総合調査で、管理組合が滞納者に行ったことのある措置は、文書などによる催促が65.2%、支払請求などの訴訟が5.9%、少額訴訟が3.8%、競売が3.1%、強制執行が1.1%です。
なお、区分所有法59条の競売の請求は、共同の利益に反する行為で共同生活上の障害が著しく、ほかの方法では解消が難しいときに、集会の決議と裁判を経て行う手続きです。
競売になると、売る時期や価格を自分で選べなくなります。そうなる前に、次の手を考えます。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第26条・第60条) 出典: e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(第7条・第8条・第59条) 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(管理組合向け調査の集計・分析結果)」
払えなくなる前に管理組合へ分割払いを相談する
払うのが難しくなりそうなら、まず管理組合に相談します。
管理組合にとっても、滞納が長引いて法的な手続きに進むのは、手間も費用もかかります。早めに相談すれば、分割払いや支払い時期の調整に応じてもらえる場合があります。
相談の前に、次の3つを整理しておきます。
- 今の収入と支出
- いつから、いくらなら払えるか
- 払うのが難しくなった理由
分割払いに応じるかは、管理組合の判断です。応じてもらえたら、合意した内容を書面に残しておきます。
大規模修繕で一時金を求められた場合は、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)」も選択肢になります。総会で決議された一時金を負担する満60歳以上の区分所有者で、そのマンションに自ら住んでいる人が対象です。毎月の支払いは利息のみで、元金は借りた人全員が亡くなったときに、相続人が住宅の売却などで一括して返します。月々の負担は軽くなる一方、元金が減らないので、総返済額は一般的な返済方法より多くなります。
あわせて、家族や自治体の相談窓口にも早めに相談します。生活全体の見直しが必要になる場合もあるからです。
出典: 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)」
管理費の安いマンションや賃貸に住み替える
払い続けるのが難しい場合は、住み替えも選択肢になります。
標準管理規約では、管理費等の額は共用部分の共有持分に応じて決め、区分所有法では、共有持分は専有部分の床面積の割合によるとしています。小さな部屋に移れば、毎月の負担は下がります。総戸数が少なすぎるマンションは、1戸あたりの管理費が高くなりやすい点も比べる材料になります。
売却して賃貸に移れば、管理費、修繕積立金、固定資産税の支払いがなくなり、代わりに家賃を払います。ただし、高齢になると賃貸の入居で苦労することがあります。国土交通省の資料では、賃貸人の約7割が高齢者の入居に拒否感を持ち、その理由の約9割が居室内での死亡事故などへの不安です。早めに動くほど選べる物件が多くなり、高齢者などの入居を拒まない「セーフティネット住宅」を探す方法もあります。
住み替えるなら、修繕積立金の値上げや大規模修繕の前後で、買い手の見方が変わることも知っておきます。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第25条) 出典: e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(第14条) 出典: 国土交通省住宅局「住宅セーフティネット制度の見直しについて」(令和6年3月)
リースバックで住み続けながら負担をなくす
今の家に住み続けたい場合は、リースバックという方法もあります。
リースバックは、家を事業者などに売り、その事業者と賃貸借契約を結んで、そのまま住み続ける仕組みです。管理費と修繕積立金は区分所有者が管理組合に納めるものなので、売却後は新しい持ち主が払います。国土交通省のガイドブックは、固定資産税などの税金や修繕費などは契約条件によって支払いが不要になる一方、家賃はそうした貸主が負担する費用も踏まえて設定されるとしています。
気をつけたいのは、家賃と契約の期間です。ガイドブックは、住み続ける期間にわたって家賃を払えるかを一度計算するよう勧め、家賃の合計が数年で売却価格を超えることに後から気づいた事例も紹介しています。定期借家契約の場合は、期間が満了すると契約が終わり、再契約には貸主と借主の合意が要ります。貸主が再契約を拒めば退去することになります。
| リースバック | リバースモーゲージ | |
|---|---|---|
| 家の持ち主 | 事業者などの買主に変わる | 自分のまま |
| 管理費・修繕積立金 | 新しい持ち主が払い、家賃に織り込まれる | 自分で払い続ける |
| 毎月の支払い | 家賃 | 利息(商品による) |
似た名前のリバースモーゲージは、家を担保にお金を借りる方法です。家は自分のもので区分所有者のままなので、管理費や修繕積立金は払い続けます。たとえば住宅金融支援機構と提携する金融機関の「リ・バース60」は、毎月の支払いが利息のみで、元金は亡くなったときに相続人の一括返済か家の売却で返します。使いみちは住宅の建設・購入、リフォーム、住宅ローンの借換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などに限られます。
管理費の負担を軽くしたいなら、この違いを知っておくと選び間違えを防げます。
出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」 出典: 住宅金融支援機構「【リ・バース60】」 出典: 国土交通省「マンション標準管理規約」(第25条)
まとめ:年金の手取りと長期修繕計画を並べて、今のうちに払えるかを確かめる
老後のマンションの管理費と修繕積立金は、段階増額の計画、工事費や人件費の上昇、設備の取替え、住民の高齢化による収入の減少で、これからも上がる前提で考えます。大切なのは、年金の手取りに占める割合を、今の月額に加えて10年後と20年後の月額でも出しておくことです。
次の一歩は、管理組合に長期修繕計画書の閲覧を申し出て、計画期間、積立方式、将来の月額、最後の見直しの年を確かめることです。ここを飛ばすと、値上げや一時金の議案が出てから慌てることになり、分割払いの相談や住み替えなど、選べる手が少なくなります。
計画を確かめたら、総会の議事録と収支報告で駐車場の収入や滞納の様子も見て、自分の家計と並べてみましょう。住み替えのトビラでは、老後のマンションの管理費・修繕積立金と年金の家計も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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