住み替え(買い替え)を考え始めると、まず気になるのが「今のマンションは、いくらで売れるのか」です。ただ、まだ売ると決めたわけでもない段階で名前と電話番号を渡し、営業を受けるのは避けたいところです。家族や近所に知られたくない、という気持ちもあります。
先に答えを書きます。名前も電話番号も出さないまま、住み替えの資金計画に使える精度の相場は掴めます。国が公開している成約価格、マンション名で引けるAI査定、いま出ている売り出し価格。この3種を組み合わせると、下限と上限のある「幅」として自分の部屋の相場が見えてきます。
この記事では、匿名で相場を調べる手段、匿名で出た額が実際の売却価格とずれる理由、その額を住宅ローンの残債や次の家の予算に当てる手順、そして名前を出して会社に査定を頼む時期までを、住み替えの視点で順に説明します。
匿名でマンションの相場を調べる方法
匿名で相場を掴むコツは、1つのサイトの額を信じるのではなく、性質の違う手段を組み合わせることです。ここで挙げる手段は、いずれも会員登録も個人情報の入力もなしで使えます。この章では、次の5つを順に見ていきます。
- 不動産情報ライブラリで成約価格を調べる
- レインズマーケットインフォメーションで成約事例を絞り込む
- マンション名で検索できるAI査定を使う
- ポータルサイトで同じ棟と近隣の売り出し価格を確認する
- 複数の手段で調べて価格を幅で持つ
不動産情報ライブラリで成約価格を調べる
不動産情報ライブラリは、国土交通省が運営する無料のサイトです。2024年4月に運用が始まり、実際に取引された価格を、地区・築年・面積などの条件で検索できます。会員登録も個人情報の入力もなしで使えます。
ここで見られるのは「実際にいくらで売れたか」という取引の記録です。売り出し中の価格とは違い、相場の土台として一番あてになります。
マンション名や詳しい住所は伏せる加工がされているため、分かるのは自分の棟そのものではなく、周辺で成立した取引です。その代わり、同じ町名・同じ築年帯・同じ面積帯の取引がずらりと並びます。
使い方は簡単です。
- 地図か住所で地区を選ぶ
- 「中古マンション等」を選ぶ
- 築年数と面積を、自分のマンションに近い範囲で絞る
直近1〜2年の取引を10件ほど並べ、平米単価の中央あたりを自分の専有面積に掛けます。これが、地域としての目安になります。
レインズマーケットインフォメーションで成約事例を絞り込む
不動産会社が査定の根拠にしているのは、業者専用のデータベース「レインズ」に登録された成約事例です。そのレインズの成約データを一般向けに公開しているのがレインズマーケットインフォメーションで、こちらも登録なし・無料で使えます。
強みは、絞り込みの細かさです。地域や沿線・最寄り駅に加えて、専有面積・築年数・間取り・成約時期でも絞り込めます。
会社が「近隣の成約事例では」と言うとき、見ているのはほぼ同じ性質のデータです。ここで自分のマンションに近い条件の成約を並べておけば、あとで会社の査定書を受け取ったときに、根拠になっている事例が妥当かを自分の目で確かめられます。
不動産情報ライブラリと同じ地区で数字が近ければ、地域の相場としてはかなり固いと考えてよいでしょう。
マンション名で検索できるAI査定を使う
前の2つで分かるのは地域の相場です。自分の棟に近づけるには、マンション名で検索するタイプのAI査定を使います。
マンション名を入れ、専有面積・階数・向きを選ぶと、その棟や近隣の過去事例から想定の売買価格が出ます。棟が特定できる分、地域の平均より自分の部屋に近い額になります。
多くのサービスは、名前も電話番号もなしで結果まで進めます。ただし、詳しい結果を見る段階で、メールアドレスや電話番号の入力を求める画面に切り替わるサービスもあります。
連絡先の入力画面が出たら、そこで止めて大丈夫です。
目安の額は、その前の画面で十分に掴めます。
気をつけたいのは、サービスごとに元にしているデータと計算方法が違い、同じ部屋でも額が割れる点です。理由は次の章で説明しますが、AI査定は2〜3つ試して、幅で受け取るのが前提になります。
ポータルサイトで同じ棟と近隣の売り出し価格を確認する
大手の物件情報サイトで自分のマンション名や近隣のマンションを検索すると、今売りに出ている部屋の価格が分かります。「今、買い手はこの価格帯を見ている」という現在の空気を掴むのに向いています。
ただし、ここに出ているのは売り出し価格です。売り出し価格には売主の希望が入っていて、交渉で数%下がってから成約するのが一般的です。同じ棟の部屋が5,000万円で出ていても、その額で売れるかどうかは別の話になります。
見方のコツは2つあります。
- 成約価格の目安より高く出ているのが普通で、差が大きいほど「値下げ待ちの物件が多いエリア」と読める
- 長く掲載されている物件が多いなら、その価格帯では買い手がつきにくい状態と読める
売り出し価格は「上限の目安」として使うのが、一番安全な扱い方です。
複数の手段で調べて価格を幅で持つ
ここまでの手段で出た額は、それぞれ元データも計算方法も違います。ある不動産会社が同じ物件を5つの匿名査定サービスで試した比較では、最高値と最低値に約3,100万円の差が出ています。1つの額を「相場」と決めてしまうと、この差がまるごと計画の狂いになります。
おすすめは、次の3つを1枚のメモに並べる方法です。
- 成約価格から出した地域の目安
- AI査定の額を2〜3つ
- 同じ棟や近隣の売り出し価格
そのうえで、下限と上限の2つの数字を書き出し、幅として持ちます。幅が狭ければ相場は固く、広ければ棟の事例が少ないか、部屋ごとの差が大きい棟だと分かります。
この幅が、あとの章で住み替えの資金計画を立てるときの土台になります。まずは幅を作るところまでを、匿名のまま済ませます。
匿名で調べた相場が実際の売却価格とずれる理由
匿名で出た額は、棟や地域の「平均」です。自分の部屋の額とは最初から別物だと押さえておくと、額のずれに振り回されずに済みます。ずれる理由は、大きく5つに整理できます。
- 成約事例が少ない棟では元データが薄い(上にも下にもずれる)
- 室内の状態や眺望など部屋ごとの条件が反映されない(部屋の状態しだい)
- 管理状態と修繕積立金が反映されない(管理の良し悪ししだい)
- 売り出し価格と成約価格が混ざる(高めに出る)
- サービスごとに計算方法と元データが違う(サービスしだい)
成約事例が少ない棟では元データが薄い
AI査定や成約価格の検索は、過去の取引データを土台に計算しています。データが多い棟、つまり総戸数が多く売買が頻繁な大規模マンションほど、推定は自分の部屋に近づきます。
逆に、総戸数が少ない棟、築浅で取引がまだ少ない棟、市場そのものが小さい地域では、手元に残る自分の棟の事例が数件どまりになります。
この場合、サービスは近隣の別の棟や数年前の事例で穴を埋めて計算します。すると、出てくる額は「近くの似たマンションの平均」に近くなり、自分の棟の実力から外れやすくなります。
自分の棟の成約が直近2年で何件あるかを、レインズマーケットインフォメーションやAI査定の事例一覧で確かめます。件数が少なければ、匿名の額は幅を広めに見ておくのが安全です。
室内の状態や眺望など部屋ごとの条件が反映されない
同じ棟でも、部屋によって価格は変わります。
- 水回りを交換したか
- 床や壁を張り替えたか
- 角部屋か
- 眺望が抜けているか、日当たりはどうか
こうした条件は、匿名の査定ではほとんど入力できません。階数と向きを選べるサービスはありますが、それでも評価の幅は小さめです。
不動産会社が訪問査定で見ているのは、まさにこの部分です。リフォーム済みで内装がきれいなら平均より上に、設備が古く傷みが目立つなら下に、数十万円から数百万円の単位で調整が入ります。
つまり、匿名の額は「自分の部屋の状態が棟の平均並みだった場合」の額です。自分の部屋が平均より良いと思うなら上寄り、手を入れていないなら下寄りに見ておくと、実際の査定との差が小さくなります。
管理状態と修繕積立金が反映されない
マンションの価格は、部屋の状態に加えて、建物全体の管理でも動きます。
- 修繕積立金が十分に貯まっているか
- 滞納が多くないか
- 大規模修繕が計画どおり実施されているか
- 管理費が周辺と比べて高すぎないか
買い手はここを気にしますし、会社の査定でも数百万円単位で影響します。
ところが、匿名の査定にこれらを入力する欄は、まず見当たりません。管理組合の総会資料や長期修繕計画は外から見えないので、統計データに含めようがないからです。
管理状態が良いマンションなら、匿名の額より高く売れる余地があります。逆に積立金が不足していて、近く値上げや一時金の話が出ている棟なら、匿名の額より下がる要因になります。自分の棟の総会資料を一度見返しておくと、額のずれの方向が読めます。
売り出し価格と成約価格が混ざる
物件情報サイトの価格を相場だと思ってしまうと、高く見積もりがちです。売り出し価格は「売主がこの額で売りたい」という希望で、そこから買い手との交渉で下がって成約するのが普通だからです。
さらに、AI査定の中にも、成約価格ではなく売り出し価格のデータを元に計算しているサービスがあります。この場合、出てくる額は売り出し価格寄りになり、実際に売れる額より高めに出ます。
見分け方は、サービスの説明文です。
「成約事例」と書いてあれば、実際に売れた価格が元データです。
「売出事例」「掲載事例」と書いてあれば、売主の希望価格が元データです。
成約価格の元データとしては、不動産情報ライブラリとレインズマーケットインフォメーションの2つが基準になります。この2つと大きく離れた額が出たら、売り出し価格が混ざっている可能性を考えます。
サービスごとに計算方法と元データが違う
匿名査定のサービスは、それぞれ違うデータと違う計算式で額を出しています。成約価格を元にするもの、売り出し価格を元にするもの、賃料から利回りで逆算するもの。同じ部屋でも額が割れるのは、この違いが理由です。
前の章で触れた比較でも、同じ物件で5つのサービスの最高値と最低値に約3,100万円の差が出ています。どれが正しいというより、どれも「その計算方法での目安」だと考えるのが実態に合います。
もう1つ、知っておくと落ち着ける話があります。不動産会社の査定額との関係です。
会社の査定額には、媒介契約を取りたいという営業上の理由で上乗せが入る場合があります。匿名の額には、その上乗せが入りません。会社の額より匿名の額が低く見えるのは自然で、匿名の方が実際の成約に近いことも珍しくありません。
匿名で調べた相場を住み替えの判断に使う方法
匿名で幅が掴めたら、それを住み替えの資金計画に当てはめます。ここで使うのは、幅の「下限」です。下限で計画を立てておけば、あとで会社の査定が下振れしても計画が持ちこたえます。上限で立てると、次の家の予算を削る羽目になります。計算は、次の5つの順で進めます。
- 価格の幅の下限で売却の手取りを計算する
- 住宅ローンの残債を返せるか確かめる
- 次の住まいの購入予算に回せる自己資金を試算する
- 売り先行か買い先行かの目安を立てる
- 相場の推移を見て売る時期を考える
価格の幅の下限で売却の手取りを計算する
売却額がそのまま手元に残ると考えるのは、よくある思い違いです。売却にかかる費用を引いた「手取り」で考えます。
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税(売却価格が400万円を超える場合の上限) |
| 売買契約書の印紙税 | 数千円から数万円 |
| 抵当権抹消の費用 | 数万円 |
仲介手数料の上限は、国土交通省の告示で決まっています。売買の媒介では、価格のうち200万円以下の部分に5%、200万円を超え400万円以下の部分に4%、400万円を超える部分に3%(いずれも消費税別)が上限で、400万円を超える取引は、これをまとめた「3%+6万円」の速算式で計算できます。
住んでいた家を売る場合は、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特別控除があり、これを使うと譲渡所得税が出ない方が多くなります。適用には、住まなくなってから3年目の年末までに売ること、親子や夫婦など特別な関係にある人へ売らないことなどの条件があります。
ここから先は仮の例です。実際の額は、自分の幅の下限と残債に置き換えて計算します。
仮の例(幅の下限を4,000万円と置いた場合)
仲介手数料: 4,000万円 × 3% + 6万円 = 126万円、消費税を加えて 138.6万円
印紙税と抵当権抹消の費用: 合わせて約5万円と仮に置く
手取り: 4,000万円 − 138.6万円 − 5万円 = 約3,856万円
自分の数字に置き換えるときは、「幅の下限 −(幅の下限×3%+6万円)×1.1 − 諸費用」の順で計算します。印紙税の実額は契約書に記載する金額で決まり、抵当権抹消の費用は司法書士へ頼むかどうかで変わるため、正確な額は契約前に不動産会社と司法書士に確かめます。
この手取りの額を、次の計算に使います。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
住宅ローンの残債を返せるか確かめる
住み替えで最初に確かめたいのは、「売ったらローンが消えるか」です。金融機関の返済予定表かネットバンキングで、現在の残債を確認します。
前の項目で出した手取りと、その残債を比べます。
| 手取りと残債の関係 | 状態 | 住み替えの動かしやすさ |
|---|---|---|
| 手取り>残債 | アンダーローン | 売却代金で完済でき、動かしやすい |
| 手取り<残債 | オーバーローン | 不足分の手当てが先に要る |
幅の下限でもアンダーローンなら、かなり安心して計画を進められます。
オーバーローンなら、不足分を自己資金で埋めるか、不足分を次の家のローンに上乗せする住み替えローンを検討することになります。
この段階でオーバーローンだと分かれば、今すぐ売るのか、残債が減るまで待つのかという選択肢を、営業に急かされる前に自分で考えられます。匿名で調べる一番の価値は、ここにあります。
次の住まいの購入予算に回せる自己資金を試算する
手取りから残債を引いた額が、次の家に回せる自己資金です。
仮の例(続き・住宅ローン残債を2,500万円と置いた場合)
手取り 3,856万円 − 残債 2,500万円 = 自己資金 1,356万円
この自己資金に、預貯金のうち住み替えに使える額を足したものが、次の家の頭金と諸費用の原資になります。購入時にも仲介手数料や登記費用、ローンの事務手数料などで物件価格の数%がかかるので、その分は頭金から外して考えます。
頭金が決まれば、年収から借りられるローンの額と合わせて、次の家の予算帯が見えてきます。
ここまでを匿名の相場で計算しておけば、物件探しを始めるときに「自分が探せる価格帯」がはっきりします。相場を知らないまま物件を見始めると、予算が定まらないまま時間だけが過ぎがちです。
売り先行か買い先行かの目安を立てる
住み替えには、先に売ってから買う「売り先行」と、先に買ってから売る「買い先行」があります。匿名で作った幅は、この順番を決める材料になります。
| 幅の様子 | 向いている順番 | 理由 |
|---|---|---|
| 上限と下限の差が大きい | 売り先行 | 売却額が決まってから次を決めた方が安全 |
| 幅が狭く、下限でもアンダーローン | 買い先行も選べる | 次の家を先に確保でき、引っ越しが1回で済む |
売れる額が読めないまま買ってしまうと、資金が足りなくなる危険があります。幅が広いなら、売り先行が安全です。
買い先行を選ぶなら、仮住まいの費用がかからず引っ越しも1回で済む一方、売却が長引くと二重ローンの期間が延びます。その間の返済に耐えられるかは、先に確認しておきます。
相場の推移を見て売る時期を考える
不動産情報ライブラリの取引データや、AI査定サービスの推移グラフを見ると、自分の地域や棟の価格が直近で上がっているか、下がっているかが分かります。これは「急ぐか、少し待つか」の目安になります。
直近1〜2年で上がり続けているなら、今は売り手に有利な局面です。逆に頭打ちや下落が見えるなら、待つほど手取りが減る可能性があります。
ただ、正直に言うと、相場の先読みは専門家でも外します。これを主な判断材料にするのは避けた方が賢明です。
住み替えは、次の家が見つかったか、家族の事情に合うか、といった自分側の都合で時期が決まるのが本来です。相場の推移は、その時期を「少し前倒しするか、後ろにずらすか」を考える補助として使うくらいが、ちょうどよい距離の取り方です。
匿名で調べる限界と不動産会社に査定を頼む時期
匿名の相場は、住み替えの判断の「入口」です。出口は、会社の査定になります。この章では、匿名では届かない範囲と、どの時点で名前を出すかを、次の5つで説明します。
- 自分の部屋の個別条件までは評価されない
- 匿名の相場だけでは売却の手続きに進めない
- 住み替えが成り立つと見えた時点で机上査定に進む
- 匿名の相場を手元に置いて会社の査定額と比べる
- 連絡はメールのみと伝えて1〜2社に絞る
自分の部屋の個別条件までは評価されない
前の章で触れたとおり、室内の状態、眺望、管理状態は匿名の査定の外側にあります。これらは人が実際に部屋と建物を見て初めて評価できる条件で、会社の訪問査定でようやく額に反映されます。
その結果、匿名の額と会社の査定額に、数百万円の開きが出ることも珍しくありません。
差が出るのは、匿名の額が間違っているからというより、見ている条件の数が違うからです。
匿名で出した幅は「棟の平均並みの部屋ならこのくらい」という基準として持っておき、自分の部屋の条件が平均より上か下かを、会社の査定で確かめる。この順番で考えると、匿名の額の使いどころがはっきりします。
匿名の相場だけでは売却の手続きに進めない
匿名の相場でいくら精度を上げても、売却が動き出すのは会社と契約してからです。売り出すには、不動産会社と媒介契約を結び、会社が価格を提案し、レインズや物件情報サイトに掲載する、という流れをたどります。
匿名査定のサービス側も、最終的には「正式な査定は会社へ」という前提で作られています。匿名の額を持って売却の相談に行くのは有効ですが、会社は自社であらためて査定します。
だからこそ、匿名の段階でやることは「住み替えが成り立つかの判断」までです。売ると決めた後の価格決めは、会社の査定と自分の匿名相場を突き合わせる、次の段階の仕事になります。
住み替えが成り立つと見えた時点で机上査定に進む
名前を出して会社に査定を頼む時期は、次の3つのどれかに当てはまったときが目安です。
- 匿名の幅の下限で計算しても、住み替えが成り立つと分かったとき
- 次の家の候補エリアと予算が、ある程度決まったとき
- 匿名の幅が広すぎて、下限と上限で計画が変わってしまうとき
3つ目の場合は、会社の査定で幅を狭める作業が必要になります。
逆に、「まだ売るか迷っている」「次の家の見当もついていない」段階なら、名前を出すのは早すぎます。営業だけが始まって、判断の材料は増えずに終わります。
最初に頼むのは、部屋を見ずに書類とデータで出す机上査定で十分です。訪問査定は、机上の結果を比べて会社を絞ってからにします。
匿名の相場を手元に置いて会社の査定額と比べる
会社に査定を頼むときは、匿名で作った幅を手元に残しておきます。会社の査定額をそのまま受け取るのではなく、匿名の幅と比べて読むためです。
| 会社の査定額の位置 | 読み方 |
|---|---|
| 匿名の幅の中に入っている | 根拠は妥当と考えられる |
| 幅の上限を大きく超えている | 媒介契約を取るための高めの額を疑う |
| 幅の下限を大きく下回っている | 早く売って手数料を得たい事情を疑う |
上限を大きく超える額が出たら、喜ぶ前に理由を聞きます。高めの額で媒介契約を取り、売り出してから値下げを勧める、という営業の型があるからです。
差が大きい会社への聞き方
「根拠にした成約事例を見せていただけますか」
誠実な会社なら、事例を出してくれます。
匿名の幅は、会社の査定額が高すぎないか、安すぎないかを両面から確かめる物差しになります。
連絡はメールのみと伝えて1〜2社に絞る
名前を出した瞬間から、会社にとってあなたは営業の相手になります。営業の量を最小にする方法は、頼む会社の数と連絡の方法を、最初に決めておくことです。
一括査定サイトで6社にまとめて頼むと、申し込み直後に各社から電話が集中します。それより、匿名の段階で成約事例を多く扱っていそうな会社や、自分の棟の売却実績がある会社を1〜2社選び、その会社のサイトから直接机上査定を頼む方が静かに進みます。
住み替えで時期が決まっていないなら、「次の家が決まってから売る予定で、時期は未定です」と正直に伝えます。会社は「見込みはあるが今ではない」と分類し、頻繁な連絡を控えるようになります。
匿名で作った相場の幅と、この伝え方。この2つがあれば、営業に流されずに、住み替えの計画を自分の手で進められます。
まとめ:匿名で掴めるのは1つの額ではなく幅で、その下限で住み替えは判断できる
名前も電話番号も出さないまま、住み替えの資金計画に使える相場は掴めます。ただし匿名で手に入るのは、1つの正解の額ではなく、下限と上限のある幅です。不動産情報ライブラリとレインズマーケットインフォメーションで成約価格の土台を作り、マンション名で引けるAI査定で自分の棟に寄せ、物件情報サイトの売り出し価格で上限を確かめる。この3種を並べて幅にしたものが、匿名で得られる一番あてになる相場です。
次の一歩は、その幅の下限で手取りを出し、住宅ローンの残債と比べることです。売却額から仲介手数料と諸費用を引いた手取りは、額面より百万円単位で下がります。この一手間を飛ばすと、オーバーローンだと気づくのが会社に査定を頼んだ後になり、売る時期も次の家の予算も、営業のペースで決まっていきます。
幅ができたら、次に確かめるのは、自分の棟の成約事例が直近2年で何件あるかです。件数が少ないほど匿名の額は外れやすく、会社の査定で幅を狭める場面が出てきます。住み替えのトビラでは、匿名で調べたマンションの相場の使い方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
