今住んでいるマンションがいくらで売れるのかを知りたくて一括査定のページを開いたものの、「申し込むと不動産会社から電話が一斉にかかってくる」という話を見て、申込ボタンを押せずにいる。この記事は、そこで迷っている方に向けて書いています。
不動産会社に査定を頼む一括査定で、電話をゼロにすることはできません。ただし、何社に連絡先が渡るか、最初の連絡を電話で受けるかメールで受けるかは、申し込む前の選び方と書き方で決められます。そして、どこで区切りをつけるかは、査定書が届いた後に自分で決めます。
電話番号が必須になっている仕組みを先に押さえたうえで、売る意思をまだ誰にも伝えずに相場だけを知る道と、伝える相手を絞って会社に頼む道に分けて、それぞれで何ができて、どこまで決めてよいのかを説明します。
一括査定に電話番号は必須、電話をゼロにはできないが減らせる
不動産会社に査定を依頼する一括査定サイトでは、電話番号は必須の入力項目です。そのため、申し込んだ後の電話を完全にゼロにすることはできません。ただし、何社から電話が来て、それがいつまで続くかは、申し込む前にどのサイトを選び、何を書くかで変わります。減らす方法は「電話を避けたい人の選択肢」と「一括査定の電話を減らすコツ」で扱います。ここでは、電話番号が必須だという事実と、申し込んだ後にどれくらいの電話が来るのかを確かめます。
電話番号を入れずに申し込める一括査定はない
一括査定サイトの申込フォームでは、電話番号は必須の入力項目です。主要なサイトを調べた範囲では、空欄のまま申し込めるものは見当たりません。
電話番号を入れずに金額が出るサービスは実在します。ただしそれは匿名査定やAI査定と呼ばれるもので、不動産会社に査定を依頼する一括査定とは別の商品です。同じ会社が運営するサイトでも、一括査定では氏名・電話番号・メールアドレスを求め、匿名査定ではメールアドレスだけを求める、というように入力項目を分けています。一括査定は不動産会社に連絡先を渡すもの、匿名査定は渡さないもの、という違いです。
「電話なしで使える一括査定」として紹介されているページを開くと、中身が匿名査定やAI査定に入れ替わっていることがあります。申し込む前に確かめるのは、そのサービスが自分の連絡先を不動産会社へ渡すものかどうか、この1点です。渡すなら電話は来ます。渡さないなら、それは一括査定ではなく匿名査定です。
では、渡した電話番号に、どれくらいの電話がかかってくるのでしょうか。
申し込み後の電話は何社から・いつ・何回かかってくるか
依頼した会社の数だけ、少なくとも一度は連絡が来ると考えておきましょう。連絡が集まるのは申し込んだ直後の数日で、その後は査定書の前後と、返事をしないときの追いかけに分かれます。
まず社数です。一括査定は、選んだ会社すべてへ同じ依頼を渡します。6社を選べば6社が連絡先を受け取り、6社がそれぞれ連絡してきます。電話をかけてくる会社の数は、依頼した会社の数と同じです。
次に時期です。連絡が最も重なるのは、申し込んだ直後から数日のあいだです。日中に電話に出られない人は、この数日で、知らない番号からの不在着信が並ぶことになります。
その後は、査定額を出す前に物件について確かめる連絡と、査定書を送った後に反応を聞く連絡に分かれます。査定書を受け取ったまま返事をしないでいると、追いかけの連絡が続きます。
連絡はメールだけにしたいという希望は、珍しいものではありません。一括査定サイトも、申込フォームに要望欄や連絡方法を選ぶ欄を用意しているほどです。
一括査定の営業電話をしつこいと感じる場面を扱った記事では、電話の本数の内訳、同じ時間帯に着信が重なることの負担、申し込んでいない会社からの勧誘電話との見分け方を説明しています。
ここまでの電話の量は、担当者の熱心さや会社の姿勢で決まっているのではなく、一括査定という仕組みそのものから来ています。
電話なしで一括査定ができない理由
査定を申し込む段階の住み替え検討者は、まだ売ると決めていません。ところが、連絡してくる不動産会社は、売る前提で動いています。この段階のずれが、電話をしつこいと感じる正体です。
一括査定とは、不動産会社が有料で買う見込み客の一覧であり、電話番号はその一覧の品質を保証する項目です。利用者は、このサービスの客ではなく、売られている商品にあたります。この仕組みが分かると、備考欄に書いた希望がどこまで通り、どこから通らないかを自分で予測できるようになります。お金の流れ、売られているものの中身、情報の流れ、備考欄の効力の順に説明します。
一括査定サイトの収入は、不動産会社が払う紹介料
一括査定サイトは、利用者から料金を取りません。収入は、査定を依頼した人の情報を不動産会社へ渡したときに、その会社から受け取る紹介料です。
一括査定サイトを運営する会社は、この仕組みを自社で公表しています。不動産会社へ売主の情報を渡した時点で報酬が発生する、成功報酬型だという説明です。利用者が無料で使えるのは、費用を不動産会社が負担しているからです。
無料なのに、なぜこれほど連絡が来るのか。その答えはここにあります。サイトの収入は、依頼した人の情報が不動産会社へ渡ることで生まれます。料金を払っているのは不動産会社なので、サービスは不動産会社の求めに合わせて作られています。
では、不動産会社は何に対してその紹介料を払っているのでしょうか。
不動産会社が買っているのは「電話がつながる見込み客」
不動産会社が紹介料を払って買っているのは、査定の依頼そのものではなく、連絡が取れる見込み客です。電話番号は、その連絡が取れることを担保する項目です。
メールアドレスだけでは、送った査定書に返事が来るかどうか分かりません。電話番号があれば、返事がなくても会社から接触できます。だから電話番号は必須項目から外れません。
不動産会社が払った紹介料を回収できるのは、媒介契約(売却を任せる契約)を結び、売却が成立したときです。連絡が取れないままの依頼は、会社にとって、払った紹介料が戻らない状態です。電話は、かけたいからかけているのではなく、かけないと商売として成立しない構造になっています。
このことから、「電話番号だけ空欄にする」「後で番号を消してもらう」という発想が通らない理由が分かります。電話番号は依頼に付いてくる付属の情報ではなく、取引されている中身そのものだからです。
その見込み客の情報が、1社ではなく複数の会社へ同時に渡ると、何が起きるのでしょうか。
同じ査定依頼が複数社へ同時に届き、電話が集中する
一括査定は、1回の入力を、選んだ会社すべてへ同時に渡します。同じ連絡先が、その場で会社の数だけ複製されます。だから連絡が短い期間に重なります。
入力するのは1回でも、渡るのは選んだ会社の数だけです。物件の情報と連絡先が同じ内容のまま、同時に複数の会社の手元へ届きます。1社が受け取ってから次の会社へ回るのではなく、全社に同時に届きます。
各社は、自分のところに依頼が来たと受け取り、それぞれの都合で連絡を始めます。会社どうしが連絡の時間を調整することはありません。同じ日の同じ時間帯に着信が並ぶのは、この同時性から来ています。同時に届く以上、先に話せた会社ほど有利になるため、申し込んだ直後に連絡が集まりやすくなります。
電話が重なるのは、入力の仕方が悪かったからではありません。そして、連絡先が複製される先の数は、依頼する会社を選ぶ時点で自分が決めています。紹介料の回収や会社どうしの競争など、会社がそこまで急ぐ事情は、一括査定のデメリットを扱った記事で説明しています。
備考欄の「電話不要」に、不動産会社が従う義務はない
備考欄に「電話は不要です」と書いても、不動産会社がそれに従う義務はありません。書いた希望が通るかどうかは、会社によって分かれます。
理由は2つあります。1つ目は、査定の依頼は媒介契約ではないことです。査定を頼んだ段階では、まだ会社と契約を結んでいません。契約がなければ、連絡の方法について会社が守るべき契約上の義務も生じません。
2つ目は、法律が勧誘の停止を求めている場面と、備考欄の記載とが同じとは限らないことです。宅地建物取引業法の施行規則が、勧誘をやめるよう求めているのは、「契約を締結しない」という意思や、「勧誘を引き続き受けることを希望しない」という意思を相手が示した場合です。備考欄の「電話は不要」は、連絡の手段についての希望であって、査定の依頼そのものは続けています。この2つが同じ意思の表示だとは限らないため、備考欄に書いたことを根拠に勧誘の停止を求められるとは言えません。
ただし、断ると伝えた後も勧誘が続く場合は、別の話になります。宅地建物取引業法47条の2第3項と、同法施行規則16条の11第1号は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘(不動産の取引に関わる契約を結ぶよう勧めること)について、断る意思を伝えた後に勧誘を続けること、会社名や担当者名を名乗らずに勧誘すること、迷惑を覚えさせるような時間に電話することを禁じています。禁止の対象は契約を結ぶよう勧める行為なので、査定の後にかかってくる電話がすべてここに当たるとは限りません。断った後に続く電話の扱いは、「一括査定の電話を減らすコツ」の最後で触れます。
備考欄は、意味がないから書かなくてよいものではなく、通る会社と通らない会社に分かれる前提で書くものです。この前提があると、書いた希望が通らなかったときに、自分の書き方を責めずに次の対応へ進めます。仕組みの上で電話をゼロにはできないと分かったうえで、電話を避けたい人がどんな方法を取れるかを、次に整理します。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」
電話を避けたい人の選択肢
電話を避ける方法は、大きく2つに分かれます。売る意思をまだ誰にも伝えないか、伝える相手を絞るか、です。この後の5つのうち、上の2つが前者、下の3つが後者にあたります。自分が今、売る意思を誰かに伝える段階にいるのか、まだ伝えたくない段階なのかを決めれば、読む項目が絞れます。
なお、「電話なし」で探すと出てくる匿名のAI査定は、一括査定とは別の商品です。不動産会社に依頼を出さずに、過去の取引データから数字を出すものであって、一括査定から電話だけを取り除いたものではありません。連絡先を渡さずに済む代わりに、出てくる数字で決めてよいことにも限りがあります。
相場を知るだけなら、匿名のAI査定(入力は物件情報だけ)
相場のおおよその数字だけが欲しいなら、匿名のAI査定を使います。入力するのは物件の情報だけで、不動産会社に連絡先は渡りません。
仕組みは、過去の取引データから、同じ条件の物件がいくらで取引されたかをもとに価格を推定するものです。人が部屋を見に来ることはありません。
派生として、不動産会社に個人情報を渡さないまま、会社が出した査定額をサイトの専用画面で受け取る形もあります。この場合、サイトに登録するのはメールアドレスだけで、氏名と電話番号は渡しません。相談したい会社が見つかったときに、自分から連絡先を送ります。
この2つは、金額を出しているのが機械か人かで別物です。「匿名査定の限界」で扱うのは、機械が推定する型のほうです。メール登録型は不動産会社が値付けするため、同じ限界がそのまま当てはまるわけではありません。
「今すぐ売るわけではないが、資産としていくらくらいか知りたい」という段階なら、ここで足ります。ただし、出た数字で決めてよいことには限りがあり、それがどこまでかは「匿名査定の限界」で説明します。匿名査定の2つの型がどう違い、どの時点で連絡先を渡すことになるのかは、匿名査定と一括査定を比べた記事で詳しく扱っています。
自分で調べるなら、同じマンションの成約事例と売出価格
どのサービスにも登録せずに調べる方法もあります。公的なデータで成約価格(実際に売買が成立した価格)を見て、ポータルサイトで今出ている売出価格を見ます。この2つを分けて見るのが要点です。
まず、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、地域と物件の条件から不動産価格(取引価格・成約価格)の情報を調べます。同じサイトで、地価公示や都市計画の情報も見られます。
成約価格は、不動産流通機構の「レインズ マーケット インフォメーション」にも載っています。地域・間取り・築年数などの条件で、成約価格を調べられます。
次に、ポータルサイトで、同じマンションや近隣で今売りに出ている部屋の価格を見ます。ここで見えるのは売出価格です。売出価格は売り出すときの希望価格で、値引きの交渉を経て成約に至ることがあります。成約価格とは別物として見ます。
自分のマンションで最近どれくらい売買があったかも、ここで分かります。事例が少なければ、匿名査定の数字のぶれも大きくなります。この点は「匿名査定の限界」で改めて扱います。成約価格と売出価格のほかにも、相場を確かめる方法はあります。その全体は、相場の調べ方をまとめた記事が扱っています。
本気で売るなら、依頼先を自分で選べる一括査定で3社まで
実際に売る前提で、複数の会社の査定額と担当者を比べたいなら、一括査定を使います。そのときは、依頼先を自分で選べるサイトを使い、依頼は3社までにとどめます。
依頼先を自分で選べるサイトを使う理由は、送り先が自動で決まるサイトでは、依頼する会社の数と顔ぶれを自分で決められないからです。会社を選択する画面があるサイトなら、連絡先が複製される先の数を自分で決められます。
3社までにする理由は、査定額を比べるには複数の会社が必要である一方、依頼した社数がそのまま連絡してくる会社の数になるからです。この3社は、電話を抑えたい場合の上限の目安です。比べることを優先するなら適切な数は変わるので、一般に何社がよいかという話ではありません。
サイトを選ぶときは、もう1つ、査定結果の知らせ方をメールか電話かで選べる欄があるかを見ます。そうした欄を持つサイトがあります。依頼先を自分で選べて、連絡方法も選べる欄があるサイトを選んでおけば、連絡先が渡る先の数と、最初の連絡の手段の両方を自分で決められます。欄や備考欄に何をどう書くかは、「一括査定の電話を減らすコツ」で扱います。
使い捨ての電話番号を入れる方法は勧めません。つながらない番号を入れると、査定の依頼として成立せず、査定書が届かないうえ、こちらが確かめたいことも聞けなくなります。
一括査定を使うと決めた後、申し込み方で電話を減らす手順は「一括査定の電話を減らすコツ」にあります。
1社で足りるなら、大手1社の直接査定
比べる必要がなく、1社に任せる前提が固まっているなら、大手の不動産会社1社へ直接申し込みます。連絡してくるのは、その1社だけになります。
一括査定サイトを通さないので、連絡先が渡るのは申し込んだ会社だけです。複製は起きません。
すでに相談したい会社が決まっている、同じマンションで売却実績のある会社を知っている、といった場合に選べる方法です。
引き換えに失うものもあります。査定額を他社と比べられないため、出てきた金額が高いのか低いのかを判断する材料がなくなります。電話は減りますが、価格の妥当性を自分で確かめる手段も減る、という交換です。一括査定と1社への直接依頼のどちらが自分に合うかは、両方を並べて比べた記事で確かめられます。
住み替え先の相談をしている会社に、売却の査定もまとめて頼む
次の住まいをすでに不動産会社へ相談しているなら、その会社に今のマンションの査定も頼みます。新しく連絡先を渡す相手が増えないため、知らない番号からの着信は増えません。
すでにやり取りしている相手なので、連絡は今連絡を取っている1社の中で続きます。訪問の日程や確認事項で、その1社からの連絡は発生します。連絡そのものがなくなるわけではなく、知らない相手からの電話が増えない、という方法です。
これは住み替え検討者だけが使える方法です。売却と購入の予定を同じ担当者が把握するため、売ってから買うか、買ってから売るかの相談も、同じ場でできます。
この方法でも、査定額を他社と比べることはできません。査定額が相場と離れていないかは、不動産情報ライブラリの成約価格とポータルサイトの売出価格で、自分で確かめます。
連絡先を渡さない方法を選ぶなら、その数字で何を決めてよいかを先に知っておく必要があります。
匿名査定の限界
匿名査定は、市場の平均を出す道具です。自分の部屋の価格も、売れる価格も出しません。この章で確かめるのは、匿名査定の数字で決めてよいことがどこまでか、です。
ここでいう匿名査定は、過去の取引データから機械が推定して出す型を指します。不動産会社が匿名のまま金額を出すメール登録型は、人が値付けするため、ここから説明する限界がそのまま当てはまるわけではありません。2つの型の違いは、匿名査定と一括査定の違いを扱った別の記事にまとめています。
連絡先を渡さずに出した数字のまま、新居の予算やローンを決めてしまわないように、限界を4つに分けて説明します。
匿名査定は同じ条件の平均価格で、自分の部屋の査定額ではない
匿名査定が出すのは、同じマンションや似た条件の部屋がいくらで取引されたかの、平均に近い数字です。自分の部屋を見て出した金額ではありません。
出しているのは過去の取引データの集計であって、査定ではありません。誰も部屋を見ていません。
だから、同じマンションの同じ間取りなら、5階の角部屋も1階の北向きも、近い数字になりやすくなります。
匿名査定の数字は、「このマンションはこのくらいの値段帯だ」を知るための数字です。「うちの部屋はいくらで売れる」を知るための数字ではありません。平均に含まれていない差は、自分で書き出しておく必要があります。
室内の状態・リフォーム・眺望・管理組合の財政は反映されない
匿名査定の数字には、実際に見ないと分からない差が入っていません。入っていない4項目は、いずれも自分で把握できるものです。
- 室内の状態(水回りの傷み、壁や床の状態)
- リフォーム歴(いつ、どこを、いくらかけたか)
- 眺望・向き・階数・角部屋かどうか(同じ間取りでも買い手の評価が分かれる部分)
- 管理組合の財政(修繕積立金の積み立て状況、大規模修繕の実施履歴と今後の予定、滞納の有無)
4つ目の管理組合の財政は、戸建てにはない項目です。
この4つを、匿名査定の数字と一緒に書き出しておきましょう。後で不動産会社の査定を受けたとき、数字の差がどこから来たのかを自分で説明できるようになります。
不動産会社の査定額との差は、事例が少ないマンションほど広がる
匿名査定と不動産会社の査定額は、離れることがあります。離れ方が大きくなりやすいのは、同じマンションで最近の売買が少ない場合です。
匿名査定は過去の取引データから推定するため、参照できる事例が少ないほど、推定のぶれは大きくなります。マンションは同じ棟・同じ間取りの取引が比較対象になるため、戸建てや土地より数字が安定しやすい面はあります。
差が出たとき、その全部が匿名査定の誤差とは限りません。不動産会社の査定額は、媒介契約を結んでもらうために、高めに出ることがあります。差の一部は、匿名査定の誤差ではなく、会社が高めに出した分であることがあります。そこですることは、どちらが正しいかを当てることではなく、高い査定額を出した会社に、その根拠を尋ねることです。どの成約事例を使い、自分の部屋との違いをどう補正したのかを聞きます。
補足が2つあります。1つ目は、複数のサービスで数字を出して、その幅の下限を自分の数字として持つことです。サービスによって数字は割れますが、どれが自分の部屋に近いかを、この段階で確かめる手立てはありません。低いほうを基準にしておけば、後で不動産会社の査定額を見たときに、そこからどれだけ上に離れているかを一つの物差しで測れます。2つ目は、データの時点が現在より遅れることです。相場が動いている時期は、特に差が出やすくなります。
「匿名査定が低かったから売れない」でも、「会社の査定が高かったから高く売れる」でもありません。差の理由を確かめる相手と方法がある、ということです。AI査定の数字をどこまで信じてよいのかという精度の話は、AI査定そのものを扱った記事にあります。
匿名査定で決めてよい判断は新居の予算感まで、売出価格とローンは決めない
匿名査定の数字で決めてよいのは、次の住まいをどのくらいの価格帯で探し始めるか、という見当までです。売り出す価格と、住み替えの資金計画は、不動産会社の査定を受けてから決めます。
決めてよいことは3つあります。住み替え先の価格帯のあたりをつけること。今のマンションを売った場合に、住宅ローンの残債(残りの借入額)が残りそうかを大まかに見ること。売却を進めるかどうかを考え始めること。
決めてはいけないことも3つあります。売出価格を決めること。住み替え後の返済額を決めること。新居の購入を申し込むこと。
起こり得る場面を2つ挙げます。匿名査定の数字を上限として新居を探し始めると、実際の売却額がそれを下回ったときに、購入の予算を組み直すことになります。物件を決めた後であれば、売ってから買うのか、買ってから売るのかという住み替えの順番そのものを変えることになります。
逆に、匿名査定が低めに出て売却をあきらめかけた場合でも、不動産会社の査定で数字が上がることがあります。管理状態や室内の手入れが、匿名査定の数字に入っていなかった場合です。低い数字を見た時点で結論を出さないことです。
金融機関によっては、住み替えのローンの審査で、今の住まいがいくらで売れる見込みかを示す資料を求められることがあります。匿名査定の画面は、その資料になりません。買い替えの条件(今のマンションが売れなければ新居の購入を白紙に戻せる取り決め)を売買契約に入れる場合も、不動産会社の査定を受けたうえで話を進めることになります。何が求められるかは、金融機関や進め方によって異なります。
売却額、残債、新居の借入をどう組むかは条件で変わるため、住み替えの資金計画はFP(ファイナンシャルプランナー)に相談すると良いでしょう。
一括査定を使うと決めたなら、電話は申し込み方で減らせます。
一括査定の電話を減らすコツ
電話は、売る気持ちが固まっている依頼に集まります。だから、申し込むときに、まだ決めていないという状態を正直に示し、査定書はメールで受け取り、判断した後に1回だけ断ります。これが電話を減らす原理です。
この後の5つは時系列で並んでいます。1〜3が申し込むとき、4が電話が来たとき、5が査定書が届いた後です。依頼する会社の数とサイトの選び方は「電話を避けたい人の選択肢」で扱ったので、ここでは繰り返しません。
売却時期は「未定」と正直に入れる
申込フォームの売却予定時期は、「未定」を選びます。住み替えを考え始めた段階なら、それが事実です。
不動産会社は、売る時期が近い依頼から先に動く傾向があります。「3か月以内」と入っている依頼には連絡が集まりやすく、「未定」であれば、急いで電話をかける理由が薄くなります。
住み替えを検討している段階では、時期は本当に決まっていません。嘘を書いて電話を減らすのではなく、事実を書いた結果として減ります。ここが、売る時期が決まっている人との違いです。
「未定」と書くと真剣に扱ってもらえないのではないか、という不安もあるかもしれません。査定額は物件の情報をもとに出すため、時期を未定にしても査定の中身は変わりません。
そのうえで、連絡の取り方を書いておきます。
備考欄に「連絡はメール希望」と電話に出られる時間帯を書く
備考欄には、連絡はメールを希望すること、電話をもらう場合に出られる時間帯を書きます。両方を書きます。
連絡方法を選ぶ欄があるサイトなら、まずそこで「メール」を選びます。選択欄は依頼の情報としてそのまま会社へ渡るため、文章より確かに伝わります。そのうえで、備考欄にも同じ希望を書きます。選択欄がないサイトなら、備考欄だけに書きます。
時間帯も書くのは、メール希望と書いても電話をかけてくる会社があるからです。出られる時間帯が書いてあれば、不在着信とかけ直しの往復が減ります。日中は電話に出られない人ほど、この一行が役に立ちます。
書く文は、たとえば「連絡はメールでお願いします。電話の場合は平日の18時以降にお願いします」のように短くて足ります。
正直に書くと、この希望に従う会社と従わない会社に分かれます。備考欄に従う義務は会社にないため、これは電話を止める方法ではなく、減らす方法です。通らなかった会社には、電話が来たときに直接伝え直します。
査定の方法も、やり取りの量に関わります。
査定方法は訪問査定ではなく机上査定を選ぶ
申し込むときに査定の方法を選べるなら、机上査定(部屋を見ずに、物件の情報と取引事例から出す査定)を選びます。
訪問査定(担当者が部屋を見に来る査定)は、日程を決めるところから連絡が始まります。都合の確認、変更、前日の確認と、1社につき何度かやり取りが発生します。机上査定なら、その日程調整が発生しない分、やり取りが短くなります。
机上査定でも査定額は出ます。訪問査定は無料で受けられるので、比べる会社を絞った後で受ければよいものです。
最初から訪問査定を頼まないでおくだけで、連絡の回数は減らせます。それでも電話は来るので、来たときの返し方を決めておきます。
電話が来たら「まだ決めていない、査定書はメールで」と一言で返す
電話が来たら、まだ決めていないこと、査定書はメールで送ってほしいこと、この2つだけを伝えて切ります。
理由を説明すると長引きます。なぜ迷っているのかを話すと、その迷いに答える会話が始まります。理由は言わず、今は決められないという事実だけを伝えます。
「他社に決めた」と言えば早く止まりますが、嘘なので勧めません。実際にはまだ比べている段階で、後で同じ会社に依頼する可能性も残っています。
査定書はメールで、と伝えると、次の連絡が電話からメールへ移ります。備考欄の希望が通らなかった会社には、ここで直接伝え直すことになります。
言い方は、「まだ決めていないので、査定書をメールで送っていただけますか」で足ります。通話を短く終える型が1つあれば、着信は怖くなくなります。
査定書が届いたら、最後にやることが1つあります。
査定書が届いたら断りの連絡を1回入れる
査定書がそろって依頼先を決めたら、依頼しない会社へ断りの連絡を1回入れます。これで電話は止まります。
放置すると、追いかけの電話が続きます。会社は、返事がない状態を「まだ検討中」と受け取るからです。返事をしないことは、電話を減らす方法になりません。断れば止まります。
断りはメールで足ります。今回は依頼しない、とだけ伝えます。理由は書かなくてよく、書くとそれに答える返信が来ます。
補足が3つあります。着信拒否や留守番電話に切り替える方法もありますが、査定書のやり取りが残っている間は避けます。断った後も連絡が続く会社があれば、一括査定サイトの運営窓口へ伝えます。複数の一括査定サイトを同時に使うと、同じ会社に重複して依頼が渡り、連絡が増えるので、同時には使いません。
これで、「いつ終わるか分からない」状態に区切りがつきます。断り方の文例や、断っても電話が止まらないときの対処は、査定後の営業電話を扱った記事にまとめています。
選んだ方法で相場や査定額のあたりがついたら、次に決めるのは住み替えの順番です。今のマンションを売ってから買うか、買ってから売るかで、資金の流れと、仮住まいが必要になるかどうかが変わります。
住み替えのトビラ 
