「マンション名を入れるだけで価格が分かるサービスがあるらしい」と聞いて、試す前に手が止まっている方は多いはずです。本当に名前だけで分かるのか、部屋番号や連絡先まで求められるのか、そもそも自分の棟が検索に出てくるのか、が気になるからです。
先に答えを書きます。マンション名だけで分かるのは「棟の値段」です。自分の部屋の額に近づけるには面積・階数・向きを足せばよく、名前も部屋番号も連絡先も出さずに済みます。
この記事では、マンション名だけで査定ができる仕組み、名前だけで分かる範囲、そこから自分の部屋の額に近づける手順、名前で検索しても棟が出てこないときの対処法を、マンションからの住み替え(買い替え)を考えている方に向けて順に説明します。
マンション名だけで査定ができる仕組み
なぜ棟名だけで価格が出るのか。仕組みは5つに分けられます。
- 中古マンションの取引データが棟ごとに蓄積されているため
- 棟名が分かれば築年や総戸数や立地が決まるため
- 部屋番号がなくても面積と階数で按分できるため
- 住所からでも棟を特定できるため
- 登録なしの型なら検索の記録が会社に渡らないため
順に見ていきます。
中古マンションの取引データが棟ごとに蓄積されているため
中古マンションの取引データは、「棟」を単位に蓄積されています。同じ棟の中で、過去に何階の何平米がいくらで売買されたか、という記録が何件も残っているので、棟名が分かればその棟の価格帯を引き出せます。
これは、マンションならではの仕組みです。
戸建てや土地は1つ1つ条件が違い、過去の売買の記録は1件ずつ別の物件のものとして散らばります。
だから「建物名だけで査定」というサービスは、マンションにだけあります。
総戸数が多い棟ほど売買の記録が多く、棟名だけで出る価格帯は自分の部屋に近くなります。逆に小規模な棟は記録が少なく、名前を入れても近隣の棟の事例で補われることがあります。
棟名が分かれば築年や総戸数や立地が決まるため
査定に必要な条件の大半は、実は棟名の中に含まれています。棟名が分かれば、次の情報がすべて自動的に決まります。
- 築年、総戸数、階建て、構造
- 最寄り駅からの距離
- 分譲した会社、管理会社
これらは、不動産会社が査定書に書く基本項目とほぼ同じです。つまり、マンション名を入力した時点で、査定の土台になる情報はほとんど揃っています。
残っているのは「その棟のどの部屋か」だけです。この部分を次の項目で説明します。
部屋番号がなくても面積と階数で按分できるため
部屋番号を入れなくても価格が出るのは、部屋番号が「階数と向きを一意にするための情報」にすぎないからです。
サービスは、棟の平米単価を土台に、階数が上がるほど少し高く、向きが南なら少し高く、という係数を掛けて額を出します。だから、専有面積と階数と向きを直接入力すれば、部屋番号がなくても同じ計算ができます。
部屋番号を求めるサービスもありますが、それは階数と向きを入力の手間なく特定するためです。部屋番号を出したくないなら、面積・階数・向きを自分で入れれば、同じ精度の結果が得られます。
住所からでも棟を特定できるため
マンション名を覚えていない、または正式名称が分からない場合でも、住所から棟を特定できます。多くのサービスは、住所と棟名の対応表を持っていて、住所を入力すると該当する棟の候補が出ます。
地図から棟をタップして選ぶ型のサービスもあります。自分のマンションの場所を地図で探して選べば、名前を打ち込まずに棟の情報にたどり着けます。
「住所だけ」「場所だけ」で始めても、行き着く先は同じ棟のデータです。入口が違うだけで、見られる情報は同じです。
登録なしの型なら検索の記録が会社に渡らないため
「マンション名を入れたら、売ろうとしていることが会社に伝わるのでは」と心配する方がいます。登録なしで使える型のサービスなら、売る意思が会社に伝わるのは、その先で連絡先を登録した場合だけです。
名前を入れて結果を見るだけの画面では、サービス側のアクセス記録は残りますが、それは個人と切り離されたままです。不動産会社へ渡るのは、あなたが自分で連絡先を登録した後の情報だけです。
営業が始まるのは、その先の画面で氏名と連絡先を登録した場合だけです。
名前だけで見られる画面の先には連絡先を求める画面が用意されていますが、そこで止めれば、記録は個人と結びつかないまま終わります。
サービスにとって棟名の検索は集客の入口です。この構造を知っておけば、どこで止まればいいかが分かります。
登録なしで使えるサービスが無料で成り立っている仕組みは、別の記事でまとめています。
マンション名だけで分かる範囲
名前だけで分かるのは、棟の値段・履歴・推移・賃料・周辺との比較です。自分の棟の実力を知るには、これで十分です。
| 分かる情報 | 住み替えでの使いどころ |
|---|---|
| 棟全体の価格帯と平米単価 | 棟の値段の感覚を掴む |
| 過去の売り出し履歴と売れるまでの期間 | 売り出し価格と売却期間の見通し |
| 新築時からの価格の推移と騰落率 | 売る時期の判断 |
| 賃料の目安と表面利回り | 売るか貸すかの比較 |
| 同じエリアの他の棟との比較 | 担当者の言葉の検証 |
サービスによって見られる項目は違うので、機能の種類として次の順に説明します。
- 棟全体の価格帯と平米単価
- 過去の売り出し履歴と売れるまでの期間
- 新築時からの価格の推移と騰落率
- 賃料の目安と表面利回り
- 同じエリアの他の棟との比較
棟全体の価格帯と平米単価
一番基本になるのが、その棟の価格帯と平米単価です。「この棟は〇〇万円〜〇〇万円で取引されている」「平米あたり〇〇万円」という形で表示されます。
サービスによっては、面積帯別(60平米台・70平米台など)や階数帯別に分けて出してくれます。自分の部屋の面積帯を見れば、棟の平均より少し自分の部屋に寄った額が分かります。
この時点で分かるのは、あくまで棟の代表値です。「うちの棟はこのくらいの値段の棟だ」という感覚を掴む段階だと考えておきます。
過去の売り出し履歴と売れるまでの期間
同じ棟で、過去に何階の何平米がいくらで売りに出て、何か月で掲載が消えたか、という履歴を見られるサービスがあります。
この履歴は、自分の部屋を売るときの参考になります。似た階数・面積の部屋がいくらで出ていたかは、売り出し価格を考える材料になります。掲載が消えるまでの期間は、その棟が「出せばすぐ売れる棟」か「時間がかかる棟」かを教えてくれます。
住み替えでは、売れるまでの期間が資金計画に直結します。売り先行なら次の家を探す時間の見通しに、買い先行なら二重ローンの期間の見通しになります。
新築時からの価格の推移と騰落率
新築時の分譲価格から今までの価格の推移と、その騰落率をグラフで見せてくれるサービスがあります。
自分の棟が新築時より上がっているか、下がっているか、そして周辺の棟と比べてどうか。これが分かると、「この棟は資産として強いのか」が客観的に見えます。
住み替えの判断では、今の価格と同じくらい、これからの動きが気になります。直近数年の推移を見て、上がり続けているのか頭打ちなのかを掴んでおくと、売る時期を考える材料になります。
賃料の目安と表面利回り
売却価格と一緒に、その棟の賃料の目安と表面利回りを出すサービスもあります。
住み替えを考えるとき、「今のマンションを売る」以外に「貸して次の家を買う」という選択肢があります。賃料の目安が分かれば、住宅ローンの返済額と比べて、貸した場合に収支が合うかを大まかに見られます。
この比較を名前だけの段階でできるのは、意外と大きな利点です。売るか貸すかを決める前に会社に相談すると、会社は売却の方向に話を進めがちです。先に自分で両方の数字を見ておけば、判断を自分の手に残せます。
同じエリアの他の棟との比較
同じ駅や同じエリアの棟をランキングや偏差値の形で並べ、自分の棟の位置を見せてくれるサービスもあります。住民の口コミ(管理の良し悪し、騒音、共用部の使い勝手)が載っているサービスもあります。
口コミは買い手が見る情報ですが、売主にとっても役に立ちます。自分の棟がどう見られているか、弱点はどこかを知っておけば、売り出すときの説明や価格の考え方に活かせます。
住み替え経験者の視点で1つ。
名前だけでこれらを見ておくと、あとで担当者が「この棟は人気があります」「この棟は少し弱いです」と言ったときに、自分で検証できます。
担当者の言葉をそのまま受け取らずに済むのは、交渉の場で大きな差になります。
マンション名だけの査定から自分の部屋の額に近づける手順
棟の値段が分かったら、次は自分の部屋の額に近づけます。部屋番号も連絡先も出さずに、5段で寄せられます。
- 専有面積と階数と向きを入力して絞る
- 同じ棟の過去の事例で階数と向きの差を読む
- 2〜3サービスで同じ条件を入れて幅を作る
- 公開データの成約価格と突き合わせて補正する
- 室内の状態は幅の中で自分で上下に置く
順に説明します。
専有面積と階数と向きを入力して絞る
最初の一歩は、サービスの入力欄に専有面積・階数・向きを入れることです。ここで棟の平均から、自分の部屋の位置に額が寄ります。
階数と向きは、そのままです。角部屋かどうかを選べるサービスなら、それも入れます。この段階で、「棟の値段」から「この条件の部屋の値段」に一段近づきます。
同じ棟の過去の事例で階数と向きの差を読む
次に、同じ棟の過去の売り出し履歴を見て、階数や向きでどのくらい差が付いているかを読みます。
仮の例(数字は説明のための仮定です)
同じ70平米台で、3階が4,200万円、12階が4,600万円で出ていた
→ この棟では階数が9階上がると400万円ほど高い、という癖が分かる
南向きと北向きで差があれば、それも読み取れます。この癖は棟ごとに違います。眺望が抜ける高層階に価値が集中する棟もあれば、階数でほとんど差が付かない棟もあります。
自分の棟の癖を掴んでおくと、サービスが出した額を「うちの棟なら妥当か」と自分で確かめられます。
2〜3サービスで同じ条件を入れて幅を作る
1つのサービスの額を信じず、2〜3のサービスに同じ条件(棟名・面積・階数・向き)を入れて、額を並べます。
サービスごとに元にしているデータと計算方法が違うので、額は割れるのが普通です。並べた額の一番低い値を下限、高い値を上限として、「下限〇〇万円〜上限〇〇万円」の幅で持ちます。
| 幅の様子 | 読み方 |
|---|---|
| 狭い | 棟の事例が厚く、どのサービスも同じ実勢を見ている |
| 広い | 事例が薄いか、部屋ごとの差が大きい棟 |
この幅が、住み替えの資金計画に使う土台になります。
幅が広く出たときに自分の棟の事例が厚いのか薄いのかは、別の記事で条件を挙げて説明しています。
公開データの成約価格と突き合わせて補正する
サービスの額の多くは、売り出し価格をもとにしています。売り出し価格は売主の希望で、実際の成約は交渉で数%下がるのが業界で言われる目安です。この分を補正するために、成約価格の公開データと突き合わせます。
- 国土交通省の不動産情報ライブラリ
- 不動産流通機構のレインズマーケットインフォメーション
どちらも登録不要で、地区・築年・面積帯で絞って成約価格を見られます。
自分の棟と同じ地区・築年帯・面積帯の成約価格を並べ、サービスの幅がそれより高めに出ていれば、その分を割り引いて受け取ります。成約価格の範囲に幅が収まっていれば、そのまま使えます。
公開データの見方をふくめた相場の調べ方は、別の記事で手順をまとめています。
室内の状態は幅の中で自分で上下に置く
最後に残るのが、室内の状態です。水回りを交換したか、内装はきれいか、設備は古くないか。これはどのサービスにも入力欄がなく、名前だけの査定では空欄のまま残ります。
ここは自分で置きます。手を入れてきれいに使っているなら幅の上寄り、設備が古いままなら下寄り、と自分で判断して幅の中に位置を取ります。額そのものは不動産会社の訪問査定で初めて出ますが、方向は自分で決められます。
ここまでの幅の下限で、住宅ローンの残債と比べれば、住み替えが成り立つかが分かります。手取りの計算方法は、匿名で相場を調べる記事で計算例つきで説明しています。
名前も部屋番号も連絡先も出さずに、ここまで判断できます。
マンション名で検索できないときの対処法
マンション名を入れても棟が出てこない、という場面があります。出ないときは、次の順で降りていけば、どこかで額にたどり着けます。
- 表記ゆれと号棟名で検索し直す
- 住所や地図から棟を特定する
- 近隣の似た棟で代用する
- 公開データで地区と築年と面積帯から目安を出す
- 住所と物件情報だけで机上査定を頼む
順に説明します。
表記ゆれと号棟名で検索し直す
一番多いのが、表記ゆれで見つからない場合です。
- 「〇〇マンション」と「〇〇レジデンス」
- 「ザ・〇〇」の「ザ・」の有無
- 「A棟」と「1号棟」
- 全角と半角、漢字とカタカナ
分譲時の名称と、管理組合が使っている名称が違う棟もあります。この場合は、登記簿(登記事項証明書)に書いてある建物名で検索し直します。登記簿の名称が、データベースに登録されている正式名称であることが多いからです。
登記事項証明書は、法務局の窓口・郵送・オンラインのいずれでも請求できます。手元に権利証や購入時の書類があれば、そこに書かれた建物の名称でも足ります。
複数棟あるマンションでは、棟名まで入れないと出ない場合と、棟名を入れると出ない場合の両方があります。棟名を付けたり外したりして試します。
出典: 法務局「登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方」
住所や地図から棟を特定する
名前で出ないなら、住所から探します。住所検索の機能があるサービスに、町名と番地を入れると、その住所にある棟の候補が出てきます。
地図から棟をタップして選ぶ型のサービスなら、地図で場所を選ぶだけで棟のデータに届きます。自分のマンションの場所を探して選べば、名前を打ち込む手間もかかりません。
住所で探して出てきた棟名が、自分の知っている名前と違うこともあります。その名前が、データベース上の正式名称です。以後の検索はその名前で行うと、他のサービスでも見つかりやすくなります。
近隣の似た棟で代用する
小規模な棟、築浅の棟、地方の棟は、そもそもデータベースに載っていないか、載っていても事例がほとんどないことがあります。この場合は、近隣の似た棟で代用します。
似ているかの基準は4つです。
- 築年
- 総戸数
- 最寄り駅からの距離
- 分譲した会社
同じ分譲会社の同じ時期の棟なら、仕様や間取りも近いことが多く、代用の精度が上がります。ただし、代用はあくまで代用です。この方法で出した額は、幅を広めに見ておきます。
公開データで地区と築年と面積帯から目安を出す
近隣の似た棟も見つからない場合は、公開データから直接、目安を出します。不動産情報ライブラリとレインズマーケットインフォメーションは、棟名ではなく地区・築年・面積帯で成約価格を絞り込めるので、棟がデータベースに載っていなくても使えます。
自分のマンションと同じ町名・同じ築年帯・同じ面積帯の直近1〜2年の成約を10件ほど並べ、平米単価の中央あたりに自分の専有面積を掛けます。これが、地域としての目安です。
棟の個性は入っていないので精度は落ちますが、住み替えが成り立つかの大まかな判断には使えます。
住所と物件情報だけで机上査定を頼む
ここまでの方法で額が出ない、または幅が広すぎて判断できない場合は、不動産会社に机上査定を頼みます。机上査定は、担当者が書類とデータで出す査定で、部屋を見に来る工程を省いて完結します。
会社は業者専用のレインズで、住所から同じ棟の成約事例を引けます。だから、サービスで名前が出ない棟でも、会社なら額が出ます。
| 頼むときに要るもの | 出さずに済むもの |
|---|---|
| 住所、専有面積、階数、築年、間取り | 部屋番号(「階数と向きで」と伝えれば足りる会社が多い) |
| 氏名、連絡先 | 電話番号(メール希望と書けば控える会社が多い) |
連絡先を出す段階からは営業が始まるので、申し込みの備考欄に一言添えます。
会社は1〜2社に絞り、一括査定サイトを使わない方が静かに進みます。名前だけで見られる範囲を使い切ってから会社に頼む、という順番なら、営業の量は最小で済みます。
一括査定サイトを使う場合に電話を減らす頼み方は、別の記事でまとめています。
まとめ:マンション名だけで分かるのは棟の値段、面積と階数と向きを足せば自分の部屋の額に近づく
マンション名だけで分かるのは、その棟の値段です。中古マンションの取引データが棟を単位に蓄積されているので、棟名さえ分かれば価格帯・履歴・推移・賃料・周辺との比較まで引き出せます。部屋番号は階数と向きを一意にするための情報にすぎないため、専有面積・階数・向きを自分で入れれば、部屋番号を出さなくても同じ計算になります。名前も部屋番号も連絡先も出さないまま、自分の部屋の額の見当まで付けられます。
次の一歩は、2〜3のサービスに同じ条件を入れて額の幅を作り、その下限を住宅ローンの残債と比べることです。1つのサービスの額だけで住み替えの計画を立てると、額が上振れしていた場合に、次の家の予算を組み直すところからやり直しになります。幅の下限で成り立つかを先に見ておけば、この手戻りを避けられます。
幅を作ったら、次に確かめるのは、その幅が公開データの成約価格と離れていないかどうかです。住み替えのトビラでは、マンション名だけで分かる範囲と自分の部屋の額への近づけ方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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