マンションのAI査定が無料な理由|種類・分かる範囲・住み替え(買い替え)での使い方

マンションのAI査定が無料な理由|種類・分かる範囲・住み替えでの使い方

住み替え(買い替え)を考え始めると、まず知りたくなるのが「今のマンション、いくらで売れるのか」です。そこで目に入るのが「AI査定・無料・10秒」の文字ですが、正直なところ「本当に無料なのか」「名前や電話番号を入れさせられて、電話が鳴り続けるのでは」と身構えてしまいます。

先に答えを書きます。無料なのは本当です。ただし、無料の理由は不動産会社の集客にあり、AI査定は査定から媒介契約へ向かう営業の流れの、最初の1段に置かれています。この仕組みが分かれば、どの段階で連絡先を出すかを自分で決められます。

この記事では、AI査定が無料で使える理由、連絡先の要否で分かれる4つの型、無料で分かる範囲と分からない範囲、そして住み替えの検討でAI査定をどの順番で使えばいいかを、マンションからの住み替えを考えている方に向けて順に説明します。

マンションのAI査定が無料で使える理由

無料なのは本当で、隠れた請求もありません。会社が費用を負担してでも入口を広げたい事情があり、そもそも査定そのものに料金を取る仕組みが業界にないからです。会社の側の事情は、次の5つに整理できます。

  • 不動産会社にとって媒介契約への入口だから
  • 一括査定サイトやポータルは不動産会社から費用を得ているから
  • 公開データを自動で計算するため1件あたりの費用がほぼかからないから
  • 所有者の登録を集めて売る時期まで関係を保つため
  • 仲介の報酬は成約時の手数料に限られているため

順に見ていきます。

不動産会社にとって媒介契約への入口だから

不動産会社の売却の営業は、次の流れで進みます。

  1. AI査定
  2. 連絡先の取得
  3. 机上査定
  4. 訪問査定
  5. 媒介契約

AI査定は、この流れの最初の1段です。会社にとって、AI査定を使った人は「近いうちに売る可能性がある所有者」です。ここで名前や連絡先を得られれば、次の段階へ営業を進められます。だから会社は、入口をできるだけ広くするために、AI査定を無料で開放しています。

これは、お互いに得のある仕組みです。会社は入口に投資し、利用者は無料で価格を知る。ただ、入口の先に営業があると知っておけば、自分がどこまで進むかを決めやすくなります。

一括査定サイトやポータルは不動産会社から費用を得ているから

不動産会社が運営していないAI査定、たとえば一括査定サイトやポータルサイトのAI査定も無料です。こちらは、費用を利用者ではなく不動産会社が払っている仕組みです。

  • 一括査定サイト: 査定の申し込み1件ごとに、不動産会社から紹介料を受け取る
  • ポータルサイト: 不動産会社からの広告料や掲載料で運営する

AI査定は、その申し込みや広告につなげるための入口として置かれています。利用者から見れば無料でも、サイト全体としては会社がお金を払って成り立っています。

AI査定の結果画面の下に「詳しい査定はこちら」「不動産会社に相談する」というボタンが並ぶのは、この仕組みの表れです。

不動産売却の一括査定サイトおすすめ7選|選び方と組み合わせ方 不動産一括査定サイトのおすすめを「元・査定サイトの中の人」が徹底比較してみた

公開データを自動で計算するため1件あたりの費用がほぼかからないから

AI査定が無料にできるもう1つの理由は、原価がほとんどかからない点です。

AI査定の元データは、国が公表している取引価格や、ネット上に出ている売り出し価格などの公開情報です。これらを事前に取り込んで計算式を作っておけば、利用者が条件を入力するたびに、機械が自動で額を出します。

人が1件ずつ調べる机上査定と違い、1件あたりの人件費がほぼゼロです。だから、何万人が使っても運営側の負担は増えません。「無料なのに大丈夫なのか」という心配は要らず、無料で提供できる構造になっているだけです。

所有者の登録を集めて売る時期まで関係を保つため

大手不動産会社のAI査定には、「所有している物件を登録すると、毎週AI査定の価格が更新される」という型があります。電話番号は不要でも、氏名と物件の登録が要ります。

会社の狙いは、「近く売るかもしれない所有者の名簿」を作ることです。

登録した人に届くもの

毎週の価格通知、市況のニュース、売却の相談会の案内。

売る気になった瞬間に、一番身近な会社として選ばれるための仕組みです。

利用者にとっても、価格の推移を追える便利な仕組みです。ただ、登録した時点で会社との関係が始まると理解して使うのが前提になります。

仲介の報酬は成約時の手数料に限られているため

最後に、法律の面からの理由です。不動産会社(宅地建物取引業者)が売買の仲介で受け取れる報酬は、国土交通省の告示で上限が決まっていて、その報酬は売買が成立したときの仲介手数料です。

査定そのものに料金を取る仕組みは、業界にありません。だから、AI査定に加えて、人が行う机上査定も訪問査定も無料です。会社は、成約したときの手数料で査定の費用を回収しています。

種類費用使う場面
AI査定・机上査定・訪問査定(不動産会社)無料売却の目安を知る
鑑定評価(不動産鑑定士)有料相続・裁判・税務申告で公的な証明が要る

AI査定は鑑定ではなく、あくまで売却の目安を出す査定です。売却を頼まなければ、AI査定を何回使っても費用は発生しません。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)

無料で使えるマンションのAI査定の種類

無料のAI査定は、「連絡先を入力するかどうか」で4つの型に分かれます。どの型も「無料」と書いてありますが、その後に何が来るかが違います。この章では、次の5つを順に見ていきます。

  • 登録なしでマンション名から調べる型
  • メールアドレスの登録で結果を受け取る型
  • 不動産会社に所有者として登録する型
  • 一括査定サイトに併設された型
  • どの型でも共通して入力する項目

登録なしでマンション名から調べる型

一番手軽なのが、マンション名を入力するだけで価格が出る型です。マンション情報サイトやポータルサイトが運営していて、名前も連絡先も要りません。

マンション名を検索し、専有面積・階数・向きを選ぶと、その棟の過去の事例から想定の売買価格が表示されます。同じ棟の過去の売り出し事例や、価格の推移グラフが見られるサービスもあります。

住み替えを考え始めたばかりで、まだ誰にも知られずに価格を知りたい段階なら、この型から始めるのが一番安全です。何も残らないので、気軽に複数のサービスを試せます。

メールアドレスの登録で結果を受け取る型

査定の結果や詳しいレポートを、メールで送る型です。名前や電話番号は不要ですが、メールアドレスの登録が要ります。

この型の特徴は、結果を受け取った後もメールが続く点です。市況のレポートや、価格が動いたときの通知、売却の相談の案内などが定期的に届きます。電話は来ない代わりに、メールの営業は続くと考えておきます。

メールなら受信を止めるのも簡単なので、負担は小さめです。普段使いのアドレスを登録すると受信箱が賑やかになるので、査定用に別のアドレスを使う方もいます。

不動産会社に所有者として登録する型

大手の不動産会社が自社で運営しているAI査定です。電話番号は不要でも、氏名と所有している物件の登録が必要で、多くは「物件の所有者限定」「その会社の営業エリア内限定」という条件が付きます。

登録すると、その場でAI査定の価格が出て、以後は毎週価格が更新されます。売却に加えて、賃貸に出した場合の賃料の目安が出るサービスもあり、住み替えで「売るか貸すか」を迷っている段階では役に立ちます。

一方で、登録した時点でその会社の見込み客になります。売却相談の案内や担当者からの連絡が来る前提で使う型です。まだ誰にも知られたくない段階には、時期が早すぎます。

一括査定サイトに併設された型

一括査定サイトが、申し込み前の入口として置いているAI査定です。住所や面積など数項目を入れると、その場で概算の価格が表示されます。ここまでは連絡先なしで使えます。

注意したいのは、結果画面の先です。

「より正確な査定を複数社に依頼する」のボタンを押し、名前と電話番号を入力した時点で、一括査定の申し込みになります。

申し込んだ翌日から、複数の会社から電話がかかってきます。

AI査定の結果だけ見たいなら、結果画面で止めて構いません。この境目を知らずに進んで、「AI査定を使っただけなのに電話が来た」と驚く方が多いので、先に書いておきます。

一括査定は電話なしにできない|マンション売却で電話を減らす方法 一括査定は電話なしにできない|マンション売却で電話を減らす方法 匿名査定と一括査定の違い|いつ連絡先を渡すかで決める進め方 匿名査定と一括査定の違い|いつ連絡先を渡すかで決める進め方

どの型でも共通して入力する項目

型によって連絡先の要否は違いますが、物件について入力する項目はほぼ共通です。

項目確認できる書類
マンション名(または所在地)登記簿・購入時の契約書
専有面積購入時のパンフレット・登記簿・固定資産税の通知書
階数・向き購入時の契約書・パンフレット
築年登記簿・パンフレット
間取りパンフレット・管理組合の書類

1つだけ注意があります。専有面積には「壁芯(へきしん)」と「内法(うちのり)」の2種類があり、パンフレットは壁芯、登記簿は内法で、内法の方が数平米小さく出ます。

AI査定は壁芯で入力するサービスが多いので、パンフレットや販売時の面積を使うと、他の事例と条件が揃います。

無料のAI査定で分かる範囲と分からない範囲

無料のAI査定で分かるのは、棟や地域の価格帯と推移までです。自分の部屋そのものの評価や、実際に売れる額は、会社の査定で初めて分かります。この範囲を先に押さえておくと、結果を過信も過小評価もせずに済みます。この章では、次の5つを順に見ていきます。

  • 分かるのは棟や地域の価格帯と平米単価
  • 分かるのは価格の推移と今の傾向
  • 分からないのは室内の状態や管理の評価
  • 分からないのは成約価格そのもの
  • 分からないのはその額で実際に売れるかどうか

分かるのは棟や地域の価格帯と平米単価

AI査定の結果として一番役に立つのは、自分のマンションの棟や地域の「価格帯」です。多くのサービスは「〇〇万円〜〇〇万円」と幅で出し、平米単価も表示します。

この幅は、同じ棟や近隣の過去の事例をもとに、面積・階数・築年で調整したものです。「自分のマンションは大体このくらいの価格帯なのか」という感覚を掴むには十分です。

さらに、同じ棟の過去の売り出し事例(何階の何平米がいくらで出たか)が見られるサービスもあります。自分の部屋と近い条件の事例が並んでいれば、幅の中のどのあたりに自分の部屋があるかも見当がつきます。

分かるのは価格の推移と今の傾向

AI査定は、過去数年の価格の推移をグラフで見せてくれるものが多く、「上がっているのか、下がっているのか」の傾向が分かります。

所有者登録型なら、毎週の更新で細かい動きも追えます。住み替えの時期を決めるときに、「今は売り手に有利な局面か」を判断する材料になります。

賃料の目安が出るサービスもあります。住み替えで「今のマンションを売るか、貸して次の家を買うか」を迷っているなら、売却価格と賃料を並べて考えられるのは、無料の範囲としてはありがたい情報です。

分からないのは室内の状態や管理の評価

AI査定には、部屋の中の状態を入力する欄がありません。

  • 水回りを交換したか
  • 内装をきれいに使ってきたか
  • 眺望が抜けているか
  • マンション全体の管理状態、修繕積立金の残高、大規模修繕の履歴

これらは不動産会社の担当者が実際に見て、書類を確認して、初めて額に反映される条件です。

つまり、AI査定の額は「自分の部屋が棟の平均並みだった場合」の額です。手を入れてきれいに使っているなら上寄り、設備が古いままなら下寄りに、実際の査定では動きます。

分からないのは成約価格そのもの

不動産会社が査定の根拠にしている「レインズ」の成約データには、使い道の決まりがあります。会員である不動産会社が、顧客への物件紹介や取引価格の根拠として示すなど、不動産取引を成立させる目的の外で使うことはできません。物件や個人が分からない形に集計・加工して外へ出す場合も、この制限に含まれます。そのため、一般に公開されているAI査定の多くは、売り出し価格やネット上の公開情報を元に計算しているとされています。

売り出し価格は売主の希望価格で、実際の成約は交渉で数%下がるのが普通です。売り出し価格を多く学習しているAI査定は、その分だけ高めに出やすい傾向があります。

AI査定の額を見て「こんなに高く売れるのか」と思ったら、少し割り引いて受け取るのが安全です。精度がどのくらいずれるかについては、別の記事で詳しく扱っています。

不動産AI査定の精度はどこまで信じていい?仕組みと使い方 マンションのAI査定は精度をどこまで信じていい?当たりやすい理由と限界・使い方

出典: 公益社団法人中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン」(令和7年1月1日改正版)

分からないのはその額で実際に売れるかどうか

AI査定の額は、統計上の目安です。「この額で売れる」という保証とも、会社が「この額で売ります」と約束したものとも、別物です。

実際に売れる額は、次の条件で変わります。

  • 売り出しの時期
  • 買い手がその時点で何人いるか
  • 競合する部屋が同じ棟に出ているか
  • 担当者の売り方

AI査定はこれらを見ていません。AI査定は「住み替えが成り立ちそうか」を判断する入口の道具で、売却の額を決める道具は会社の査定です。次の章で、この役割に沿った使い方を説明します。

住み替えで無料のAI査定を使う手順

無料だからといって、すべての型を一度に試す必要はありません。住み替えの段階に合わせて型を1つずつ使う方が、営業の総量が少なく、判断も速く進みます。この章では、次の5つの順で進めます。

  1. 登録なしの型で2〜3サービスの幅を作る
  2. 幅の下限で住宅ローンの残債と比べる
  3. 次の家の候補が見えたら所有者登録型で推移を追う
  4. 売る時期が決まったら不動産会社の机上査定で幅を狭める
  5. 連絡先を出すときは連絡方法と時期を伝える

登録なしの型で2〜3サービスの幅を作る

最初に使うのは、連絡先が不要な「登録なしの型」です。1つのサービスの額を信じず、2〜3のサービスで同じ条件を入力し、出てきた額を並べます。

サービスごとに元データと計算方法が違うので、額は必ず割れます。

並べた額の一番低い値を下限、一番高い値を上限として、

「下限〇〇万円〜上限〇〇万円」の幅を作ります。

この幅が、住み替えの資金計画の土台になります。ここまでは名前も連絡先も出さずに、その日のうちに済みます。

幅の下限で住宅ローンの残債と比べる

幅ができたら、住宅ローンの残債と比べます。使うのは幅の「下限」です。下限で計画を立てておけば、後で会社の査定が下振れしても計画が崩れずに済みます。

手取りと残債の関係状態住み替えの動かしやすさ
下限の手取り>残債アンダーローン売却でローンを完済でき、動かしやすい
下限の手取り<残債オーバーローン不足分の手当てが先に要る

この段階でオーバーローンだと分かれば、今すぐ売るか、残債が減るまで待つかを、営業に急かされる前に自分で判断できます。手取りの計算方法は、匿名で相場を調べる記事で詳しく説明しています。

次の家の候補が見えたら所有者登録型で推移を追う

住み替えが成り立ちそうだと分かり、次の家の候補エリアや予算が見えてきたら、不動産会社の所有者登録型のAI査定に進んでもよい段階です。

毎週の価格更新で市況の動きを追えるうえ、賃料の目安も分かるので、「売るか貸すか」の比較もできます。この段階なら、会社と関係ができても困りません。むしろ、売る時期が来たときに相談先が1つできている状態になります。

ただし、登録する会社は1〜2社に絞ります。何社にも登録すると、それぞれから案内が来て、比べる手間ばかり増えます。自分のマンションのある地域で売却の実績が多い会社を選ぶのが目安です。

売る時期が決まったら不動産会社の机上査定で幅を狭める

売る時期が決まったら、AI査定の役目は終わりです。ここからは、不動産会社に机上査定を頼み、AI査定で作った幅を狭めていきます。

机上査定は、担当者が書類とデータをもとに出す査定で、部屋を見に来る工程は含みません。AI査定の幅と机上査定の額を比べます。

机上査定の額の位置読み方
AI査定の幅の中妥当と考えられる
幅の上限を大きく超える契約を取るための高めの額を疑う
幅の下限を大きく下回る早く売って手数料を得たい事情を疑う

会社の査定とAI査定がどう違うかは、別の記事で扱います。ここでは、AI査定の幅を手元に持ったまま会社の査定を受ける、という順番だけ押さえておきます。

連絡先を出すときは連絡方法と時期を伝える

所有者登録型でも机上査定でも、連絡先を出す場面では、備考欄や連絡方法の希望欄に一言書いておきます。

備考欄に書く二言

「連絡はメールでお願いします」

「住み替えのため、売却時期は購入先が決まってからになります」

この2つを書いておくと、会社は「見込みはあるが今ではない」と分類し、頻繁な電話を控えるようになります。時期をあいまいにするより、未定と正直に伝える方が、結果として営業は静かになります。

もう1つ。AI査定で作った幅は、メモに残しておきます。会社の査定額を受け取ったときに、「高すぎないか、安すぎないか」を確かめる物差しになります。

無料のAI査定の本当の価値は、この物差しを、誰にも知られずに手に入れられる点にあります。

まとめ:AI査定が無料なのは会社の集客の入口だからで、連絡先を出す段階は自分で決められる

マンションのAI査定が無料なのは本当で、隠れた請求もありません。理由は不動産会社の集客にあります。査定そのものに料金を取る仕組みが業界になく、会社は成約したときの仲介手数料で費用を回収するため、AI査定を媒介契約への入口として無料で開放しています。無料の型が連絡先の要否で4つに分かれるのも同じ理由で、どこで連絡先を出すかは、仕組みを知っていれば自分で決められます。

次の一歩は、連絡先が要らない「登録なしの型」を2〜3サービス使って額を並べ、下限と上限の幅を作り、その下限で住宅ローンの残債と比べることです。この一手間を飛ばして、いきなり一括査定サイトに併設された型で電話番号を入れてしまうと、判断の材料は増えないまま、翌日から複数社の電話だけが始まります。

幅ができたら、次に確かめるのは、自分の棟や近隣の事例が直近数年でどれだけあるかです。事例が少ない棟ほどAI査定の額は外れやすく、会社の机上査定で幅を狭める場面が早く来ます。住み替えのトビラでは、無料のAI査定の仕組みと使い方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。