住み替え費用シミュレーション|手取り額を自分で出す5ステップ

住み替え費用シミュレーション|手取り額を自分で出す5ステップ

住み替えの資金が足りるかどうかは、売って残るお金と次の住まいにかかるお金を突き合わせて分かります。

その差を出すには、売れる見込みの額から費用と税、残っている返済を順に引いていきます。

5つの段階に自分の数字を入れて、足りるのかギリギリなのか足りないのかまで出す手立てを説明します。

住み替え費用シミュレーションの全体像|手取りは「売却額−費用−税−残債」で出せる

売却額から諸費用・税金・住宅ローン残債を引いた「住み替え原資」が、住み替え計画の成否を分ける数字です。

この記事では5つのステップに沿って自分の数字を一つずつ入れるだけで、住み替え原資と新居費用の過不足を出せる構成にしています。

成約価格はそのまま残らない|手元に残る額を決める計算式

手元に残る額は「売却額 − 売却諸費用 − 住宅ローン残債 − 税金」で決まります。

仮に5,000万円でマンションが売れたとしても、仲介手数料・登記費用・印紙税などの諸費用が差し引かれ、住宅ローン残債があれば売却代金から一括返済されます。売却益(譲渡所得)が出た場合は所得税・住民税の課税対象にもなるため、成約価格がそのまま手元に残ることはありません。

住み替え原資の基本式

売却額 − 売却諸費用 − 住宅ローン残債 − 税金 = 住み替え原資 住み替え原資 − 新居の購入費用 = 過不足額

こうした費用をすべて差し引いた残額が「住み替え原資」で、新居の購入に充てられるお金です。原資と新居の費用を比べれば、追加資金が必要か余裕があるかを数字で判断できます。

住み替え費用シミュレーションは5ステップで進める

売却見込み額の仮置きから新居費用の算出まで、5つのステップを順に積み上げると過不足額が出せます。

STEP1で売却の見込み額を仮置きし、STEP2で売却諸費用、STEP3で住宅ローン残債、STEP4で税金を順に引いていきます。この4つで住み替え原資が確定したら、最後のSTEP5で新居の購入費用と諸費用を算出し、原資との差額が過不足の答えです。

ステップやること数字の動き
STEP1売却見込み額を仮置き出発点を設定
STEP2売却諸費用を引く額の決まる費目を積み上げて引く
STEP3住宅ローン残債を引く売却の手取りが確定
STEP4税金を引く住み替え原資が確定
STEP5新居費用を出す過不足額が確定

各ステップの末尾で通しケースの金額を更新するため、読み進めるたびに手取り額が段階的に見えてきます。概算で十分ですので、端数の正確さよりも収支の全体像をつかむことを優先しましょう。

上から順にご自身の数字を当てはめながら進めるとスムーズです。住宅ローンの残高証明書や購入時の売買契約書が手元にあれば、入力する見込み額の精度が上がります。

この記事で使う通しケースの設定(マンション売却→次の住まい購入・残債あり)

以降のすべてのステップで下記の通しケースを使い、各章の末尾で数字を更新していきます。今のマンションを売り、住宅ローン残債を清算したうえで次の住まいに移る想定です。

項目設定値
売却対象首都圏の中古マンション(築15年・専有70㎡程度)
売却見込み額5,000万円
住宅ローン残債2,000万円
新居の種類中古マンションまたは戸建て
新居の想定価格5,000万円

マンションは、一戸ごとの個別性が戸建てより小さく、同じ建物の別の住戸や近隣の同じような住戸がそのまま比較の対象になります。取引の事例も多く、首都圏の中古マンションの成約件数は2025年(暦年)で49,114件でした。このため、自分の物件がいくらで売れそうかを、実際の成約事例で確かめやすい住まいです。

首都圏の中古マンションの成約価格は、2025年(暦年)の平均で5,200万円、成約㎡単価は82.98万円です。築年帯で見ると、築11〜15年の成約価格は平均7,335万円(成約専有面積の平均64.28㎡)、築26〜30年は4,286万円でした。同じ築年帯でもエリアで大きく開くため、通しケースの5,000万円は平均より低い水準に置いた一例です。ご自身のエリアの相場に合わせて数字を置き換えてください。

ここから先は各ステップの計算過程をすべて見せていきます。ご自身の数字を横に書きながら進めると、最終章で住み替えが資金面で成り立つかどうかを確認できます。

出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」(2026年1月20日公表)同 REINS TOPIC「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2025年)」(2026年2月25日公表)

STEP1|まず売却の見込み額を置く(試算を最も左右する数字)

5つの入力のうち、結果を最も大きく左右するのが売却見込み額です。ここが曖昧だと試算全体が空回りするため、まず仮の数字を置くところから始めましょう。

この章では通しケースの売却見込み額を入力し、あわせて精度を上げるための手段を確認します。

自分のマンションの売却見込み額を仮入力する

通しケースでは売却見込み額を5,000万円に設定し、ここを計算の出発点にします。

周辺の相場をなんとなく知っている方は、その金額を仮で入れてください。まったく見当がつかない方も、次の章で仮置きの方法を案内するのでまずは空欄のまま読み進めて問題ありません。

通しケース金額
売却見込み額(仮)5,000万円

見込み額の精度を上げる方法は査定しかない

仮置きの数字はあくまで概算であり、試算結果の精度は売却見込み額の正確さで決まります。マンションは一戸ごとの個別性が戸建てより小さく、比較できる成約事例も多いぶん、実際の成約事例で確かめやすい住まいですが、それでも自分の住戸の階数・向き・専有面積で価格は動きます。

たとえば見込み額が200万円ずれると、最終的な過不足額にもそのまま200万円の誤差が乗ります。シミュレーションの結果が「足りる」「足りない」の境界付近にあるほど、この誤差が判断を分けることになります。

見込み額の精度を上げる現実的な方法は、不動産会社に査定を依頼することです。複数社に一括で査定を出すと、各社の売却見込み額を比較できるため相場のレンジがつかめます。

この記事の試算を「使える数字」にするためにも、どこかのタイミングで査定を取っておくことをおすすめします。試算と並行して進めれば、最終結果の確度がぐっと高まります。

不動産売却の一括査定サイトおすすめ7選|選び方と組み合わせ方 不動産売却の一括査定サイトおすすめ7選|選び方と組み合わせ方

相場が分からないときの仮置きの仕方

相場がまったく分からない場合は、公的データで大まかなレンジをつかんでから仮の数字を入れましょう。

国土交通省の「土地総合情報システム」では、過去の不動産取引価格を地域・物件種別ごとに検索できます。自宅の近くで似た条件(面積・築年数)の成約事例を2〜3件見つければ、ざっくりとした相場感がつかめます。マンションであれば、同じ棟や近隣の同規模マンションの成約が見つかりやすい傾向があります。

不動産取引情報提供サイト(通称レインズ・マーケット・インフォメーション)でも、直近1年の成約価格を地域別に検索できます。2つのデータを見比べると仮置き額の精度がさらに上がりますが、この段階ではざっくりで十分ですので気負わずに入れてみてください。

通しケースの現在地

売却見込み額:5,000万円 ✓

出典: 国土交通省「土地総合情報システム 不動産取引価格情報検索」

出典: REINS Market Information

STEP2|売却の諸費用を引く(額が決まる費目を積み上げる)

売却額からまず差し引くのが売却の諸費用です。「売却諸費用が売却価格の何%になるか」を集計した公的統計・業界団体統計はありません。そこで、額が法令や実費で決まる4つの費目(仲介手数料・印紙税・抵当権抹消の登録免許税・同 司法書士報酬)を積み上げます。この積み上げでは、売却額1,000万円で42.05万円(4.21%)、3,000万円で108.55万円(3.62%)、5,000万円で174.55万円(3.49%)となり、売却額が上がるほど比率は下がります。仲介手数料に定額部分にあたる上乗せがあり、印紙税が階段状の定額であるためです。

大半を占めるのは仲介手数料で、マンションは測量費や解体費が通常かからないぶん、戸建てや土地の売却より抑えられやすい傾向があります。各費用の制度的な背景には深入りせず、ここでは概算で数字を出して手取りに近づけることに集中します。

通しケースの売却額から諸費用を引き、数字を一段更新します。

仲介手数料を速算式で出して引く

売却諸費用のうち最も大きいのが仲介手数料で、上限額は宅建業法の報酬告示で決まっています。

売却額が400万円を超える場合、速算式「売却額×3%+6万円+消費税」で上限額が出せます。通しケースに当てはめると次のようになります。

通しケースの仲介手数料

(5,000万円 × 3% + 6万円)× 1.1(税込) = 156万円 × 1.1 = 171.6万円

ご自身の見込み額でも同じ式で計算できるので、電卓で出してみてください。仲介手数料は上限額であり、交渉によってこれより低くなる場合もありますが、試算の段階では上限で見積もっておくのが安全です。

住み替えの仲介手数料はいくら?早見表と「実質手取り」で選ぶ 住み替えの仲介手数料はいくら?早見表と「実質手取り」で選ぶ

マンションならではの費用を計上漏れなく足す

仲介手数料以外にも売却側で発生する費用があり、見落とすと資金計画に穴が開きます。マンション特有の項目もあるため、順に確認します。

住宅ローンが残っている場合は、完済のための一括繰上返済手数料と、抵当権を抹消する登記費用がかかります。抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円と定められた定額です。金額が変わるのは単価ではなく「不動産の個数」のほうなので、登記事項証明書で自分の物件が何個で登記されているかを数えて掛けます。専有部分1個と敷地1個で2個なら2,000円です。司法書士報酬は抵当権抹消登記で全国平均17,470円ですが、これは法定の金額ではありません(司法書士の報酬基準は平成15年に撤廃されており、日本司法書士会連合会のアンケート〔令和6年3月実施・有効回答1,090〕の平均値です)。一括繰上返済手数料は、金融機関によって有無も額も違い、水準を集計した公的統計・業界団体統計はありません。借入先の商品説明書で確認して自分の数字を入れてください。

売買契約書に貼る印紙税も忘れやすい項目です。売却額が1,000万円超〜5,000万円以下の場合、軽減税率の適用で1万円になります(2027年3月31日まで)。下記の表で漏れがないか確認しておきましょう。

費目通しケースの金額(売却額5,000万円)備考
仲介手数料(税込)171.6万円告示の区分計算による上限額
印紙税1万円軽減後(令和9年3月31日まで)
抵当権抹消の登録免許税0.2万円不動産1個1,000円 × 2個
抵当権抹消の司法書士報酬1.75万円全国平均(法定額ではない)
合計174.55万円(売却額の3.49%)

この表に入れていない費目が3つあります。ローンの一括繰上返済手数料(統計がないため各自の借入先で確認)、引っ越し・ハウスクリーニング(後述のその他費用)、そして管理費・修繕積立金の日割り精算です。管理費と修繕積立金は前払いが一般的なため、引き渡し日より後の分は買主から売主へ支払われます。つまりこれは費用ではなく、売主が受け取る側の精算です(滞納があるときだけ売主の持ち出しになります)。なお、購入時に払った修繕積立基金や一時金は管理組合の資産となり、売却しても戻りません。測量費・境界確定・解体費や古家付き土地の費用は戸建てや土地を売る場合の話で、マンションから住み替える人には通常発生しません。

通しケースの現在地

売却見込み額 5,000万円 − 諸費用 174.55万円 = 約4,825万円

出典: 国税庁「印紙税の軽減措置」

STEP3|住宅ローン残債を引いて売却の手取りを出す

諸費用を引いた額からさらに住宅ローン残債を返済すると、「売却だけで手元に残る額」が一旦確定します。ここでプラスかマイナスかによって、その後の選択肢が分かれます。

通しケースの数字から残債を引き、売却の手取りを確定させます。

残債を差し引いて「売却で手元に残る額」を確定する

STEP2で出した約4,825万円から住宅ローン残債2,000万円を引くと、売却の手取りは約2,825万円です。

手元に残る金額がプラスであれば、この先のSTEP4・STEP5へそのまま進めます。ローンの残高は毎月変わるので、直近の残高証明書や返済予定表で正確な数字を確認しておくとより精度が上がります。

通しケースの現在地

約4,825万円 − 残債 2,000万円 = 約2,825万円(売却の手取り)

残債が売却額を上回る(オーバーローン)ときの進め方

売却額よりローン残債の方が大きい場合、手取りがマイナスになります。この状態をオーバーローンといいます。マンションの売却では、残っているローンを一括で完済し抵当権を抹消するのが前提のため、残債と売却見込み額の関係が住み替えの進め方を左右します。

オーバーローンでも住み替え自体ができないわけではありません。たとえば「住み替えローン」を使うと、現在のローン残債と新居の購入費用をまとめて借りられるため、自己資金が足りない場合の選択肢になります。ただし審査や金利の条件は金融機関や個人の状況によって変わるため、利用できるかどうかは個別の確認が必要です。つなぎ融資を使って売却と購入のタイミングをずらす方法もあります。

一方で、数年待ってローンの返済を進め、残債が売却見込み額を下回ったタイミングで住み替える判断もあり得ます。いずれの場合も、売却見込み額の正確さが判断の土台になるため、まずは査定で数字を固めることが大切です。

通しケースの現在地

売却の手取り:約2,825万円(プラスのためそのまま次へ)

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STEP4|税金を引く(売却益が出る人だけ・特例で変わる)

税金がかかるのは「売却益(譲渡所得)が出た人」だけです。さらに、マイホームの売却に使える3,000万円特別控除が適用できれば、税負担が大幅に軽くなるか、ゼロになるケースも少なくありません。

この章では売却益が出るかどうかを確認し、特例の適用を判定して住み替え原資を確定させます。

売却益(譲渡所得)が出るかを確かめる

譲渡所得は「売却額 − 取得費 − 譲渡費用」で計算し、これがプラスなら売却益が出ています。

取得費とは、家を買ったときの購入代金から建物の減価償却分を差し引いた額です。マイホーム(非業務用)の償却率は、法定耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の率を使います。鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅は法定47年の1.5倍で耐用年数70年、これに対応する償却率は0.015です(木造は法定22年の1.5倍で33年、償却率0.031)。償却費相当額は「建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」で出し、経過年数の6か月以上の端数は1年に、6か月未満は切り捨てます。控除できるのは建物の取得価額の95%までです。譲渡費用は売却時に払った仲介手数料や印紙税など、売却に直接かかった費用です。

建物と土地(敷地権)の金額の分け方は、物件ごとに違います。一律に「半分ずつ」と決まっているわけではなく、売買契約書に建物価格が書かれていればその額を、書かれていなければ契約書の消費税額からの逆算や固定資産税評価額の比などで分けます。減価償却するのは建物部分だけです。まず購入時の売買契約書を見てください。

通しケースで計算すると次のようになります。

通しケースの譲渡所得 前提:購入時4,800万円、売買契約書に建物価格2,400万円と記載されていた場合 取得費:2,400万円 × 0.9 × 0.015 × 15年 ≒ 約490万円を償却し、4,800万円 − 490万円 = 約4,310万円 譲渡費用:仲介手数料 171.6万円 + 印紙税 1万円 = 172.6万円 譲渡所得:5,000万円 − 4,310万円 − 172.6万円 = 約517万円

通しケースでは約517万円の売却益が出ました。ただし、ここから3,000万円特別控除を使えるかどうかで、税金がかかるか否かが変わります。取得費や減価償却の正確な計算は条件によって変わるため、実際の申告前には国税庁または税理士(税務署)で確認してください。

税率は合計だけを見ないでください。20.315%・39.63%という数字は、所得税・復興特別所得税・住民税を足した計算値であり、法令や国税庁がその数字をそのまま掲げているわけではありません。内訳は次のとおりです。

区分所有期間(譲渡した年の1月1日現在)所得税復興特別所得税住民税合計
長期譲渡所得5年超15%基準所得税額の2.1%5%20.315%
短期譲渡所得5年以下30%基準所得税額の2.1%9%39.63%
軽減税率の特例(マイホーム・所有期間10年超)/課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分10年超10%基準所得税額の2.1%4%14.21%
同/6,000万円を超える部分10年超15%基準所得税額の2.1%5%20.315%

押さえておきたい点が3つあります。第一に、所有期間は「譲渡した年の1月1日現在」で判定します。取得日から譲渡日までの実際の日数ではないので、年末に売るか年明けに売るかで区分が変わることがあります。第二に、復興特別所得税は所得税額に対して2.1%を課すもので、譲渡所得の金額に対する率ではありません(適用は令和19年分まで)。第三に、「およそ20%」「およそ39%」と丸めないでください。復興特別所得税の分(0.315ポイント・0.63ポイント)が落ちます。

なお、軽減税率の特例は3,000万円特別控除と併せて使えます。3,000万円を差し引いた後の課税長期譲渡所得に、上の軽減税率がかかる順序です。ただしこの記事の通しケースのように控除で課税譲渡所得がゼロになる方が多いため、税率の話に入る前に、まず控除でゼロになるかを確かめてください。税率は毎年度の税制改正で変わり得るため、申告の時点で国税庁のページで確認することもお願いします。

出典: 国税庁 No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁 No.3252「取得費となるもの」

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3,000万円特別控除を自分は使えるか判定する

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除を使えれば、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます。

通しケースの譲渡所得は約517万円なので、この控除が適用できれば課税される所得はゼロとなり、税金は発生しません。多くの住み替えケースでは、売却益が3,000万円を超えない限り、この特例だけで非課税になり得ます。

適用を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。主なものを確認しておきましょう。

3,000万円特別控除の主な要件

・自分が住んでいた家(居住用財産)の売却であること

・住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

・売った年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと

・売り手と買い手が親子や夫婦などの特別な関係にないこと

・確定申告が必要(課税所得がゼロでも申告しないと適用されない)

注意したいのは、3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できないことです。制限がかかる範囲は、新居に入居した年とその前2年、その後3年の計6年間です。この6年のあいだに3,000万円特別控除などの譲渡所得の特例を受けていると、住宅ローン控除は使えません。新居で住宅ローンを組む予定がある場合、どちらを使うほうが有利かはケースごとに変わるため、税理士やFPに相談することをおすすめします。

また、一定の要件を満たすマイホームの買い換えでは、特定居住用財産の買換え特例を使って売却益への課税を新居の売却時まで繰り延べる方法もあります。この特例が使えるのは令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です(令和8年度税制改正で、令和7年12月31日までだった期限が2年延長されました)。ただしこの特例は3,000万円特別控除とは二者択一で、非課税ではなく課税を先送りする仕組みである点に注意が必要です。どちらが有利かは条件によって変わるため、正確な要件は国税庁または税理士(税務署)で確認してください。

通しケースの税金

譲渡所得 約517万円 − 3,000万円控除 = 0円(非課税)

出典: 国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」

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取得費が分からないときの扱い

購入時の売買契約書が見つからないなど取得費が分からない場合、売却額の5%を取得費とみなす「概算取得費」が使えます。

ただし概算取得費を使うと取得費は売却額の5%=250万円にとどまり、課税対象が大きく膨らみます。通しケースで仮に概算取得費を使うと、譲渡所得は5,000万円−250万円−譲渡費用約173万円=約4,577万円です。3,000万円控除を適用しても約1,577万円が課税対象となり、長期譲渡の税率20.315%でおよそ320万円の税金が発生します。実額の取得費が分かるケースより税負担が重くなりやすいため、まずは購入時の契約書や領収書を探すのが基本です。

購入時の契約書やローンの書類があれば取得費を証明できるので、税額に大きく関わる書類です。見つからない場合は、登記簿謄本や金融機関の記録から購入額を推定できることもあるため、早めに税理士に相談してみてください。

通しケースの現在地

売却の手取り 2,820万円 − 税金 0円 = 住み替え原資 2,820万円 ✓

出典: 国税庁 No.3258「取得費が分からないとき」

STEP5|新居にいくらかかるかを出す(額が決まる費目と、評価額で決まる費目を分ける)

STEP4までで確定した住み替え原資 約2,825万円を使い、ここからは新居側にいくらかかるかを出します。

ここで大切なのは、購入側は売却側と数えている費目が違うことです。売却側で積み上げた4費目は、仲介手数料・印紙税・抵当権抹消の登録免許税・同 司法書士報酬でした。購入側で額が売買価格から決まるのは、仲介手数料・印紙税・所有権移転登記の司法書士報酬・抵当権設定登記の司法書士報酬の4つです。数えているものが違うので、売却の3.49%と購入の%を並べて比べないでください。2つを足して「総額◯%」とまとめることもできません。

原資(入ってくる側)と新居費用(出ていく側)が揃えば、最終章で過不足を判定できます。

新居の購入費用と諸費用を概算で出す

購入諸費用が物件価格の何%になるかを集計した公的統計・業界団体統計はありません。「6〜9%」は業界で語られる一般論であり、出典を示せる数字ではないため使いません。額が決まる4費目を積み上げると、次のようになります。

売買価格額が決まる4費目の合計対売買価格比率
1,000万円50.04万円5.00%
2,000万円83.54万円4.18%
3,000万円116.54万円3.88%
4,000万円149.54万円3.74%
5,000万円(通しケース)182.54万円3.65%

売却側と同じく、価格が上がるほど比率は下がります。分子のうち価格に比例するのは仲介手数料の3.3%分だけで、仲介手数料の定額部分・印紙税・司法書士報酬はどれも定額だからです。なお司法書士報酬の2つ(所有権移転56,678円・抵当権設定42,699円)は日本司法書士会連合会のアンケートの全国平均で、固定資産評価額の合計1,000万円・債権額1,000万円という設例に対する額です。法定額ではなく、売買価格に比例して増えるものでもありません。

この182.54万円には、登録免許税と不動産取得税を含めていません。この2つは課税の元になる金額(課税標準)が固定資産税評価額で、売買価格からは決まらないためです。自分の物件で出すには、次の算式に自分の評価額を当てはめます。

費目算式軽減の期限
登録免許税(土地・所有権移転)土地の評価額 × 1.5%(本則2.0%)令和11年3月31日まで
登録免許税(建物・所有権移転)建物の評価額 × 0.3%(本則2.0%・住宅用家屋。取得後1年以内の登記に限る)令和9年3月31日まで
登録免許税(抵当権設定)借入額 × 0.1%(本則0.4%・住宅用家屋)令和9年3月31日まで
不動産取得税(建物)(建物の評価額 − 控除額)× 3%(本則4%)税率の特例は令和9年3月31日まで
不動産取得税(土地)土地の評価額 × 1/2 × 3% − 住宅用地の減額同上

不動産取得税の控除額は、中古住宅では住宅の新築時期によって変わります(最高1,200万円)。区分ごとの額は各都道府県が公表しているので、自分の物件の新築年月に当たる額を見てください。土地には、150万円か「床面積の2倍(200㎡限度)に相当する土地の価格」のどちらか大きい額に税率を掛けた額を差し引く減額もあります。また、評価額が土地16万円・既存住宅の売買による家屋34万円に満たない場合は課税されません(免税点)。不動産取得税は都道府県税で、軽減を受けるための申告の要否や期限は都道府県ごとに定めがあります。

「不動産取得税は物件価格の3%」とは考えないでください。課税標準は固定資産税評価額であり、売買価格に3%を掛けた額とは一致しません。「固定資産税評価額は売買価格の◯割」という換算もできません。その比率を集計した公的統計・業界団体統計は確認できていないからです。宅地は「地価公示価格等の7割を目途」に評価されますが、これは地価公示価格に対する目安であって売買価格に対する比率ではなく、マンションの専有部分(家屋)は再建築価格をもとに評価されるため、そもそも取引価格を基礎としていません。評価額は市町村が個別に決め、3年ごとに評価替えが行われます。

自分の評価額を調べる先は3つです。①毎年4〜6月に市町村から届く納税通知書に同封される固定資産税の課税明細書、②市町村の窓口で取れる固定資産評価証明書(売主から見せてもらう方法もあります)、③購入前で自分に明細がない段階なら、仲介する不動産会社に確認する(登記費用の見積りに必要なため、会社側が把握しています)。

項目通しケース(5,000万円の中古マンション)
新居の物件価格5,000万円
額が決まる4費目(仲介手数料・印紙税・司法書士報酬2件)182.54万円
登録免許税・不動産取得税自分の評価額で計算(上の算式)
火災保険料・住宅ローンの事務手数料・保証料見積書で確認(保険会社・金融機関ごとに違う)
小計(評価額基準の費目と保険・ローン関係を除く)5,182.54万円

4費目のうち最大の項目は仲介手数料で、通しケース(5,000万円)では告示の区分計算による上限額が171.6万円です。これに印紙税1万円と司法書士報酬2件(56,678円+42,699円)を足した額が182.54万円になります。

引っ越し・仮住まいなどその他費用を足す

購入費用とは別に、引っ越し代や仮住まいの家賃が発生する場合があります。

売り先行で住み替える場合、旧居の引き渡しから新居の入居までの間に仮住まいが必要になることがあります。仮住まいの費用は、家賃系の費用と引っ越し費用を分けて、何か月借りるかを決めてから出します。総額をひとつの幅で押さえようとすると、期間も初期費用の前提も見えなくなるためです。

家賃系の費用は、三大都市圏の民間賃貸の平均で月額家賃83,381円(中央値74,000円)・共益費4,837円です(令和7年度住宅市場動向調査)。この調査は2024年4月から2025年3月までに住み替えなどを行った世帯の実態を捉えたものです。入居時の初期費用は、敷金1か月+礼金1か月+媒介報酬1.1か月+前家賃1か月で家賃の4.1か月分が上限側の目安です。ただし、敷金があった世帯は51.9%、礼金があった世帯は43.1%にとどまり、どちらもない契約も相当数あります(敷金があった世帯のうち「1ヶ月ちょうど」が64.4%、礼金があった世帯のうち「1ヶ月ちょうど」が73.4%)。敷金・礼金なしなら媒介報酬0.55〜1.1か月+前家賃1か月で1.55〜2.1か月分です。

この前提で仮住まいを6か月とすると、初期費用341,862円+家賃6か月500,286円+共益費6か月29,022円で約87.1万円になります。この87.1万円に引っ越し費用は含みません。引っ越し運送料を集計した公的統計・業界団体統計は確認できておらず、目安として置ける値がありません。見積もりを取って自分の数字を足してください。

出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」6.4.2

通しケースの新居費用

物件価格 5,000万円 + 額が決まる4費目 182.54万円 + 仮住まい6か月の家賃系費用 約87.1万円 = 約5,270万円(登録免許税・不動産取得税・火災保険料・ローンの事務手数料と保証料・引っ越し費用は含みません)

住み替え費用シミュレーションの結果別|次にやるべきこと

ここまで積み上げた数字で「住み替え原資 − 新居費用 = 過不足額」が出ます。読者それぞれの固有解がこの章で確定し、結果に応じて次のアクションが変わります。

通しケースの最終結果を出したうえで、結果別の次の一手を整理します。

「住み替え原資−新居費用」で過不足を判定する

通しケースの新居費用は、物件価格5,000万円+額が決まる4費目182.54万円+仮住まい6か月の家賃系費用 約87.1万円=約5,270万円です。ここには登録免許税・不動産取得税(自分の評価額で計算するもの)、火災保険料・住宅ローンの事務手数料と保証料(見積書で確認するもの)、引っ越し費用(集計した統計がないもの)を含んでいません。

最終計算は、住み替え原資 約2,825万円 − 新居費用 約5,270万円 = 約−2,445万円です。

この約2,445万円は「下限側の不足額」です。上に挙げた3種類の費目を自分の数字で足すと、不足額はさらに大きくなります。まず登記費用と不動産取得税を評価額から、保険料と事務手数料を見積書から、引っ越し費用を相見積もりから出して、この2,445万円に足してください。不足分は住宅ローンを新たに組むか、自己資金で補填することになります。ご自身の数字でも同じように引き算をしてみてください。

通しケースの最終結果

住み替え原資 約2,825万円 − 新居費用 約5,270万円 = 約−2,445万円(不足・評価額基準の費目と保険/ローン関係、引っ越し費用は別途)

足りる・ギリギリ・足りない、結果別の次の一手

過不足額は「プラス(足りる)」「ほぼゼロ(ギリギリ)」「マイナス(足りない)」の3つに分かれ、それぞれ進め方が変わります。

原資が新居費用を上回った方は、余った分を引っ越し後の生活費や住宅ローンの繰上返済に回せます。新居の予算にも余裕があるため、物件選びの幅を広げやすい状態です。

ほぼゼロで着地した方は、試算の誤差が判断を左右しかねません。売却額が数十万円下振れするだけで赤字に転じます。ここで置くべきバッファの金額に、目安を示した統計はありません。代わりにバッファの出し方を使ってください。複数社の査定を取り、いちばん低い査定額でもう一度この5ステップを通すのです。その結果と、いま出した結果との差が、あなたが備えるべき幅です。

マイナスの方は、不足分の調達手段を検討します。もっとも一般的な方法は新居の住宅ローンで差額を借りることです。

不足額が大きい場合は、新居の予算を下げるか、住み替えローンの活用も選択肢に入ります。通しケースのように2,400万円台の不足であれば、一般的な住宅ローンの審査範囲に収まるケースが多いでしょう(実際の借入可能額は、完済時年齢・返済負担率・担保評価で決まります)。

結果次の一手
プラス(余裕あり)物件探しへ進む。余剰は生活費・繰上返済に
ほぼゼロ売却見込み額の精度を上げ、最低査定額で再計算した差額をバッファとして確保
マイナス(不足)住宅ローンで差額を調達、または新居予算を見直す

試算の精度を上げる第一歩は売却見込み額の確定

どの結果であっても、この試算は仮の売却見込み額をベースにしている点は同じです。

STEP1で仮置きした数字の精度が上がれば、ここで出した過不足額の信頼性も一気に高まります。とくにギリギリや軽度のマイナスで着地した方は、見込み額が数百万円変わるだけで結果が反転する可能性があるため、早めに売却見込み額を固めておくことが重要です。

売却見込み額を確定させるもっとも手軽な方法は、複数の不動産会社に一括で査定を依頼することです。各社が出す査定額のレンジが分かれば、試算の数字を現実的な幅の中に置き直せます。仮の数字で試算した今が、査定に動くちょうどよいタイミングです。

まとめ:住み替えの資金が足りるかを試すなら、住み替えのトビラ

住み替えの資金は、売れそうな額の大きさではなく、引き算の後に残る額で足りるかどうかが決まります。その額を次の住まいにかかる分と並べて、初めて過不足が見えます。

過不足を見るには、売れる見込みの額を根拠のない数字で置かないようにします。ここが大きくずれると、足りるという答えが足りないに変わります。

次の住まいの予算を決める前に、今の住まいがどのあたりで売れるのかを確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、住み替えにかかるお金の試し方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。