「リフォームローン」で水回りや内装を直すか、それとも住み替えるか。同じ「お金を借りる」でも、リフォームローンと、住み替えで使う住宅ローン・住み替えローンは向きが正反対です。前者はいまの住まいを直すための借入、後者は住まいを移るための借入だからです。
だからこそ、どの借入が得かを考える前に順序があります。まず「いまのマンションを直して住み続ける総額」と「住み替える総額」を同じ土俵で比べること。借入の選択はそのあとです。
この記事は、分譲マンションに住みながら住み替えを考えている方に向けて、直す場合と住み替える場合の総額の見方、リフォームローンと住宅ローンの違い、直すか住み替えるかの分かれ目を整理します。直す対象は自分の専有部(水回り・内装・間取り)で、外壁やエレベーターなどの共用部・大規模修繕は管理組合が扱う別の話として切り分けます。
マンションを直して住み続けるか、住み替えるか(まず総額で比べる)
借入の種類を選ぶ前に、まず「直して住み続ける総額」と「住み替える総額」を並べて比べるのが先です。
直す側は工事費と借入の諸費用、住み替え側は売却と購入の諸費用が柱になり、費用の中身がまったく違います。ここではそれぞれの支出の全体像を押さえてから、最後に同じ表で並べて分かれ目を見ていきます。
リフォームして住み続ける場合にかかるお金の全体像
直して住み続ける場合は、リフォーム工事費に加えて借入の諸費用がかかり、住宅ローンの残債があればその返済と重なります。
工事費は、直す範囲でおおきく変わります。キッチンや浴室など水回りの入れ替え、壁紙や床の内装更新、間取りを変える工事では、かかる金額の桁が違ってきます。金額は工事の範囲や設備のグレードで動くため、概ねの目安として幅で捉えるのが妥当です(工事内容や住戸の広さにより異なります)。
工事費のほかに、借入をすると次のような支出が加わります。
- 事務手数料・保証料などの借入の諸費用
- 金利分の上乗せ(返済総額は借入額より増える)
- 火災保険や工事中の仮住まい費用(範囲による)
見落としやすいのが、住宅ローンの残債との併存です。購入時の住宅ローンをまだ返している段階でリフォームローンを組むと、毎月の返済が二本立てになります。直す側の総額は、工事費そのものよりも、この諸費用と既存の返済まで含めた合計で考える必要があります。
住み替える場合にかかるお金の全体像
住み替える場合は、いまのマンションを売るためにかかる費用と、住み替え先を買うための購入諸費用・新しい住宅ローンが、総額の柱になります。
売る側では、仲介手数料や、住宅ローンが残っていれば抵当権を外すための費用などがかかります。買う側では、物件価格のほかに登記費用や各種手数料、引っ越し費用などが乗ります。売却代金が残債を上回れば、その差額を住み替え先の頭金に回せますし、下回れば不足分をどう埋めるかが課題になります。
住み替えの費用は項目が多く、売却と購入で発生の仕方も違います。ここでは総額の柱がどこにあるかをつかめれば十分で、一つひとつの内訳は、売却と購入それぞれの資金計画としてまとめて把握しておくと安心です。
総額を並べて比較し、差がつく分かれ目を見る
直す総額と住み替える総額を並べると、どこで差がつくかが見えてきます。
| 主な支出・要素 | 直して住み続ける | 住み替える |
|---|---|---|
| 工事・購入の費用 | リフォーム工事費(範囲で変動) | 住み替え先の購入費用 |
| 主に使う借入 | リフォームローン | 住宅ローン(残債しだいで住み替えローン) |
| 諸費用 | 借入の手数料など・比較的小さい | 売却と購入の諸費用・比較的大きい |
| 既存の住宅ローン残債 | 返済が続く(工事分と併存) | 売却代金で清算する |
| 資産価値の変化 | 築年数は進む | 新しい住まいに更新 |
| 住み続けられる年数 | 建物の寿命まで | 住み替え先の分だけ延びる |
この表は費用の中身を並べたもので、金額そのものではありません。どちらの総額が小さくなるかは、あと何年住むか、建物の築年数、住宅ローンの残債があるかで入れ替わります。次の章から、借入の中身と判断の分かれ目を順に見ていきます。
リフォームローンとは:マンションの専有部を直す借入
リフォームローンは、住み替えを伴わずにいまの住まいを直すための借入で、住宅ローンとは向きが異なります。
無担保で借りるのが基本のため手軽な半面、借入額の上限や返済期間には住宅ローンと違う制約があります。ここでは、その仕組みと、マンションで直せる範囲を整理します。
無担保が基本という特徴と、有担保型との違い
リフォームローンは担保を入れない無担保型が基本で、少額・短期・金利高めが標準です。
担保を入れない代わりに審査が比較的早く、手続きが軽いのが使いやすさにつながっています。半面、貸す側はリスクを取るため、借りられる上限は低め、返済期間も短めに設定されます。金利が住宅ローンより高くなりやすいのも同じ理由です。金額の目安は金融機関や商品でかなり幅があるため、概ねの水準として捉え、具体的な条件は申し込み先で調べるのが安全です。
担保を入れる有担保型のリフォームローンもあります。無担保型とは、次のような向きの違いがあります。
- 無担保型:手続きが軽い・上限は低め・期間は短め・金利は高め
- 有担保型:上限は大きめ・期間は長め・金利は低め・手続きは重い
有担保型は借りられる上限が大きく返済期間も長く取れる代わりに、抵当権の設定など手続きが重くなります。また、中古住宅の購入とリフォームをまとめて長期・低めの金利で借りられる公的な仕組みも例外的にあります。
なお、工事の内容によっては補助金や減税で自己負担を抑えられる場合があります。制度ごとに要件が細かいため、借入の検討とは分けて調べておくと計画が立てやすくなります。
対象は専有部の工事、共用部・大規模修繕は管理組合の話
リフォームローンで直せるのは自分の専有部(水回り・内装・間取り)で、共用部や大規模修繕は管理組合が修繕積立金で行う別の話です。
個人が組むリフォームローンで直せるのは、自分の所有する専有部です。分譲マンションでいえば、キッチンや浴室などの水回り、壁紙や床の内装、間取りの変更といった住戸内の工事が対象になります。
一方、建物の外壁やエレベーター、共用廊下、屋上防水などの共用部は、個人が勝手に工事できる部分ではありません。これらは管理組合が修繕積立金を使い、大規模修繕として計画的に直していきます。毎月納めている修繕積立金は、この共用部の工事にあてられるお金です。
つまり、リフォームローンで検討するのは住戸内の工事に絞られます。共用部の老朽化が気になる場合は、管理組合の長期修繕計画や積立金の状況を見て判断する話になります。自分で直せる範囲と、組合が担う範囲を分けて考えることが、費用を見積もる出発点です。
住み替えるなら:住宅ローン・住み替えローンとの違い
住み替える道を選ぶと、使う借入は住宅ローンが中心になり、売っても残債が残る場合には住み替えローンという選択肢が加わります。これらはリフォームローンとは向きが真逆の借入です。
有担保・長期・高額・低金利という住宅ローンの姿は、無担保・少額・短期・金利高めのリフォームローンと対照的です。ここでは住み替え側の借入と、条件の違いが返済にどう響くかを見ます。
住み替え時に使う借入(住宅ローンと住み替えローン)
住み替えでは新居の購入に住宅ローンを使い、売っても残債が残る場合は住み替えローンで新旧をまとめる選択肢があります。
住み替え先を買うときの中心になるのは住宅ローンです。購入する住まいそのものを担保に入れるため、数千万円規模の高額を長期にわたって低めの金利で借りられます。返済期間を長く取れる分、毎月の負担をならしやすいのが特徴です。
課題になりやすいのが、いまのマンションを売っても住宅ローンの残債が残るケースです。この場合、新居の住宅ローンに旧居の残債を上乗せしてまとめて借りる「住み替えローン」という選択肢があります。借入額が大きくなり審査も厳しくなるため、誰でも使えるわけではありませんが、売却代金で残債を消しきれないときの受け皿になります。
中古のマンションを買ってリフォームもして住み替える場合には、公的な選択肢もあります。住宅金融支援機構の【フラット35】リノベは、一定の要件を満たすリフォームを行う中古住宅の取得で、一定期間の借入金利が引き下げられる仕組みです。民間のローンと合わせて、住み替え先の資金計画の候補に入れておくとよいでしょう。
リフォームローンと住宅ローンの条件の違い
リフォームローンと住宅ローン・住み替えローンは、担保・金利・限度額・期間・審査のどれをとっても方向が逆です。
| 比べる項目 | リフォームローン(無担保) | 住宅ローン・住み替えローン(有担保) |
|---|---|---|
| 担保 | 入れないのが基本 | 住まいを担保に入れる |
| 金利水準 | 高めが目安 | 低めが目安 |
| 借入限度額 | 小さめ | 大きい |
| 返済期間 | 短め | 長め |
| 審査 | 比較的軽く早い | 重く時間がかかる |
| 向く用途 | いまの住まいを直す | 住み替え先を買う |
表のとおり、両者はほぼすべての項目で逆を向いています。これは優劣ではなく、直すための借入と、住まいを移るための借入という、目的の違いがそのまま条件に表れているためです。
借入条件の違いが毎月・総返済額をどう左右するか
少額のリフォームローンでも、短期・金利高めのため毎月の返済は重くなりやすく、長期・低金利の住宅ローンとは総返済額の出方が違います。
借入額が小さくても、返済が軽いとは限りません。リフォームローンは返済期間が短いため、同じ金額でも一回あたりの返済額は大きくなりがちです。金利が高めであることも、毎月の負担を押し上げます。
一方、住宅ローンは長い期間に返済を分散できるため、月々の負担はならされます。ただし期間が長い分、金利のかかる時間も長くなり、返済総額は借入額よりもふくらみます。短くて金利高めのリフォームローンは総額が小さくても月々が重く、長くて金利低めの住宅ローンは月々が軽くても総額の管理が要る、という違いです。
大切なのは、借りる金額の大小だけで負担を判断しないことです。同じ金額を借りても、期間と金利で毎月の返済額も総返済額も変わります。毎月の返済額は、借入額・期間・金利を当てはめて試算し、家計に無理がない範囲かを見てから決めるのが安全です。
直すか住み替えるか、判断の分かれ目
直すか住み替えるかは、総額に加えて「あと何年住むか・築年数・残債・直したい範囲・資産価値」で決まります。
どちらか一方が正解というわけではなく、これらの条件の組み合わせで向き不向きが変わります。次に、直す側に傾く条件と、住み替え側に傾く条件を分けて見ていきます。
リフォームして住み続けるほうが向くケース
住み続ける年数が読め、直したい範囲が部分的で、残債が少ない・完済済みなら、直して住み続けるほうが総額で有利になりやすいです。
次のような条件がそろうほど、直して住み続ける選択が総額で有利になりやすくなります。
- これからも長く住む前提がある
- いまの立地や住環境に満足している
- 直したいのが水回りや内装など部分的な範囲にとどまる
- 住宅ローンを完済している、または残債が少ない
- 資産価値より、慣れた住まいでの住み心地を重視する
住む年数が長いほど、工事にかけたお金は一年あたりでならすと軽くなります。残債が少なければ返済の二本立ても起きにくく、工事費を中心に判断しやすくなります。直す範囲が部分的なら工事費も抑えられ、住み替えの諸費用をかけるより総額が小さく収まりやすいでしょう。
住み替えるほうが向くケース
築年数が進んで大きな工事が必要、間取りごと変えたい、資産価値や立地を見直したい、借入条件で住宅ローンのほうが総額を抑えられる。こうした場合は住み替えが向きます。
逆に、次のような条件では住み替えのほうが向きやすくなります。
- 築年数が進み、直すなら大がかりな工事になる
- 間取りそのものを変えたい、住まいの広さや部屋数を見直したい
- 立地や周辺環境を含めて住まいを更新したい
- 資産価値の維持や向上を重視する
- 借入条件を含めると、住宅ローンのほうが総額を抑えやすい
大きな工事が必要なほど、直す費用は住み替えの費用に近づきます。同じお金をかけるなら、古い建物が残るか、新しい住まいに変わるかという差が判断の決め手になります。間取りや立地まで見直したい場合は、部分的なリフォームでは望みに届きにくく、住み替えのほうが応えやすいでしょう。
直すか住み替えるか、さらに売却まで含めてどう決めるかは、住まいの古さへの悩みや、これから長く暮らすための備えとあわせて考えると整理しやすくなります。
まとめ:直すか住み替えるかは「総額」と「あと何年住むか」で決まる
直すか住み替えるかは、目先の工事費や物件価格ではなく、諸費用や既存の残債まで含めた総額と、これからあと何年住むかで決まります。まずは同じ土俵で総額を並べることが、借入選びより先の順序です。
リフォームローンと住宅ローン・住み替えローンは、担保も金利も期間も向きが逆で、直すための借入か、住み替えるための借入かという用途そのものが違います。額の大小に加えて、期間と金利まで見て、毎月と総額の負担を見きわめることが大切です。
住み替えのトビラは、マンションからの住み替えで迷う判断に役立つ情報を届けています。直すか住み替えるかで総額の見通しや資金計画に迷ったら、住宅ローンやライフプランに詳しいファイナンシャルプランナー(FP)に、家計の状況を添えて相談してみてください。
住み替えのトビラ 
