高すぎる不動産査定額の「からくり」とは。見抜く3つ方法も解説

高すぎる不動産査定額の「からくり」とは。見抜く3つ方法も解説

複数の会社へ査定を頼むと、1社だけ額が飛び抜けて高いことがあります。

その額を信じてよいかは、なぜその値になるのかを説明してもらい、近くで実際に売れた事例と突き合わせると分かります。

高い額が出る仕組みと、信じたときに何が起きるか、自分で裏を取る3つの確かめ方までを説明します。

高い査定額が出る「からくり」|その数字は誰のためか

突出して高い査定額に抱いた違和感は、正しい感覚です。

査定額は、売れる値段の約束ではありません。会社が過去の事例などから出した予測の意見にすぎず、その額での売却を保証するものではないのです。1社だけ高い数字が出る裏側を、意図・ミス・正当という3つの事情に分けて見ていきます。

契約欲しさに、あえて高く出す

高い査定額が出る最も多い理由は、媒介契約を取りたい会社が、あえて高い数字を見せる営業手法にあります。

媒介契約は、売却を1社に任せる約束です。会社にとっては仲介手数料につながる入口のため、他社より高い数字を出して選ばれようとする動機が働きます。

このとき使われるのが、相場より高い金額で期待を持たせ、まず契約を結ぶやり方です。売り出しても買い手はつかず、しばらくすると「価格を下げましょう」と値下げを促されます。高い査定額は、売るための数字ではなく、選ばれるための数字だったわけです。

高値査定が値下げに変わるまで

相場より高い査定で期待を持たせる

→ 媒介契約を締結

→ 売り出すが反応が薄い

→ 値下げを提案される

→ 結局は相場前後で成約

この構図は、自社で買主を抱え込む「囲い込み」や、一括査定で各社が高値を競い合う流れともつながっています。売主に高い額を見せて契約を取り、その後は自社の都合で売却を進める、という同じ根から生まれています。

2025年(令和7年)1月1日から、宅地建物取引業者には、レインズへ物件の取引状況を登録することが義務づけられました(令和6年6月の宅地建物取引業法施行規則の改正によるものです)。あわせて2025年1月4日からは、レインズに物件を登録した際に業者から売主へ渡される「登録証明書」に2次元コードが記載され、売主専用画面から自分の物件の取引状況を確認しやすくなっています。

国土交通省は、囲い込みを「早期の成約可能性を狭め、売主や買主の利益を損なう可能性があり、市場の公正を害するもの」と説明しています。売主が取引状況を確認して業者に問い合わせれば、誤った登録が是正され、他社からの問い合わせが可能になります。

出典: 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」(令和6年12月24日)

出典: 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」

担当者の相場の読み違いで、結果的に高くなる

高い査定額のすべてが計算ずくとは限りません。担当者の見立て違いで、結果的に上振れすることもあります。

査定は、過去の似た取引や周辺の売り出し事例をもとに価格を見積もる作業です。担当者の経験が浅かったり、地域の相場観がずれていたりすると、悪意がなくても高めの数字が出てしまいます。

この場合は、会社の戦略ではなく見積もりの精度そのものの問題です。だからこそ、その金額の根拠を尋ねたときの答え方に、信頼できるかどうかが表れます。

からくりではなく、本当に高く売れるケースもある

高い査定額が、からくりではなく妥当な数字である場合もあります。

立地の良さや供給の少ない間取りなど、その物件にしかない強みがあれば、相場より高く売れることは実際にあります。再開発や金利の動きで地域全体の価格が上がっている時期も同じです。

つまり、高い数字のすべてを疑えばよいわけではありません。大切なのは、その高さに納得できる理由があるかどうかを見分けることです。マンションなら、その見分けを売主自身が付けやすくなります。くわしくは、このあとの章で見ていきます。

なぜ「高い査定額」を信じると損をするのか

高い査定額は、得につながるとは限りません。信じて売り出すと、かえって損を招くことがあります。

高すぎる数字をそのまま売り出し価格にすると、何が起きるのか。金銭の損、時間の損、そして安すぎる査定の危うさという3点から見ていきます。

売れ残って値下げ、結局「相場以下」で手放すことになる

高すぎる価格で売り出すと、買い手がつかないまま値下げを重ね、最後は相場を下回る価格で手放すことになりがちです。

相場とかけ離れた価格は、買い手の検討候補から早々に外されます。似た条件でより安い住戸があれば、わざわざ高いほうを選ぶ理由がないからです。

問い合わせも内覧も入らないまま時間がすぎると、会社は値下げを提案してきます。一度下げても反応がなければ、さらに下げる流れに入ります。当初の高値を起点に、価格だけが少しずつ削られていきます。

売り出しから時間がたった物件は、買い手から「売れ残り」と見られます。なぜ長く残っているのかと警戒され、値引き交渉の口実にも使われます。こうして最初の高値とは逆に、相場を下回る価格で成約してしまうのです。

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売却が長期化し、住み替えなど次の計画が狂う

売却が長引くと、損はお金の面にとどまりません。住み替えの計画そのものを狂わせます。

多くの方は、今のマンションを売った資金で次の住まいを買おうとします。売却が決まらなければ、新居の購入も資金計画も止まってしまいます。

今の家を先に売る「売り先行」で進めていた場合は、仮住まいや二重ローンの負担がふくらみます。高い査定額にこだわった数か月が、暮らしの予定を後ろにずらすことになります。

比較項目高値査定を信じて売り出す根拠で選んで売り出す
成約価格値下げを重ね相場以下になりやすい相場に沿った価格に収まりやすい
売却期間長期化しやすい想定の範囲に収まりやすい
次の計画住み替えがずれ込む予定どおり進めやすい

逆に安すぎる査定額は「買い叩き」のサイン

疑うべきは、高すぎる数字だけではありません。安すぎる査定額にも、別の意図が隠れていることがあります。

相場より明らかに低い査定額には、安く買い取って転売する狙いが潜む場合があります。早く現金化したい売主の足元を見て、買い叩こうとするわけです。

高すぎる数字は契約を取るため、安すぎる数字は安く買い取るために出されることがあります。どちらも会社の都合で動くと知っておけば、突出した額に飛びつかずにすみます。

マンションは高値査定を「見抜きやすい側」にいる

ここまでは、不動産全般に共通するからくりの話でした。ここからは、いまマンションを持つ方に固有の強みを見ていきます。

結論から言うと、マンションの売主は、高すぎる査定額を見抜きやすい立場にいます。理由は、その相場を売主自身でも確かめられるためです。マンションは一戸ごとの個別性が戸建てより小さく、同じ建物の別の住戸や近隣の同じような住戸がそのまま比較の対象になります。取引の事例も多く、首都圏の中古マンションの成約件数は2025年(暦年)で49,114件でした。自分で成約事例に当たれるということです。順番に見ていきます。

取引事例比較法|査定の根拠は、売主自身が同じ事例で確かめられる

マンションの査定は、取引事例比較法という方法が中心です。同じ建物の別住戸や近隣の似たマンションが、実際にいくらで売れたかをもとに価格を出す方法です。

マンションは、この方法と相性がよい物件です。同じ棟や近隣に、条件のほぼ一致する成約事例が数多くあるためです。各社が同じような事例を見て査定できるという意味で、根拠をそろえやすい物件だといえます。

ただし、実際に各社の査定額がどれくらいの幅に収まるのかを集計した公的統計・業界団体統計はありません。マンションと戸建てでその幅がどう違うかも、集計されていません。ですから「マンションなら揃うはずだ」と決めてかからないでください。

大事なのは、揃うと信じることではなく、実際に並べて確かめることです。複数社に依頼し、出てきた額を並べる。そのうえで、周りとかけ離れた額があれば、その1社に根拠を尋ねる。この手順を踏めば、統計がなくても「浮いた数字」は自分で見つけられます。

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売主自身が相場を裏取りできる

高値かどうかを見抜く手がかりとして、マンションの売主は自分で相場を調べられます。会社の査定額を待つ前に、おおよその当たりを付けておけます。

使える手段は、主に次の3つです。

  • 不動産取引情報提供サイト(通称レインズ・マーケット・インフォメーション)で、同じエリア・近い条件の中古マンションの成約価格を調べる
  • 国土交通省の不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム)で、実際の取引価格を確認する
  • 同じマンションの別室が、最近いくらで売れたかを調べる

いずれも無料で使えます。とくに確かな手がかりになるのは、同じマンションの別室の直近の成約価格です。同じ建物なら、立地や管理状態といった条件がほぼ揃うため、自分の住戸の目安にしやすいからです。

この自前の相場観を持っておけば、会社から高い査定額が出ても、その数字が現実的かどうかを自分で判断しやすくなります。

出典: 指定流通機構 不動産取引情報提供サイト国土交通省 不動産情報ライブラリ(不動産価格・取引価格)

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戸建て・土地は見抜きにくい|これはマンションには基本関係ない

一方で、戸建てや土地の査定は、同じようには揃いません。ここは仕分けて押さえておくと、混乱せずに済みます。

土地は、面積や形、道路との接し方が一つずつ違い、再調達原価法など別の考え方も使われます。戸建ても、建物の個体差や境界の状況、再建築ができるかどうかで査定額がぶれやすくなります。似た事例が少ないぶん、高すぎる査定額が出ても「浮いた数字」だと気づきにくいのです。

ただし、これは戸建て・土地の査定の事情です。マンションから住み替える方には基本的に当てはまりません。自分のマンションの成約事例を数字で確かめられる、という強みのほうを覚えておけばじゅうぶんです。

高い査定額の「からくり」を見抜く3つのチェック

マンションが見抜きやすい物件だとわかったら、次はその場で使える具体的なチェックです。

心構えではなく、すぐ実行できる方法を3つにまとめます。根拠を説明させる、成約事例で裏を取る、突出した1社を疑う。この3つで、高値の数字を見抜きやすくなります。

査定額の「根拠」を説明させて確かめる

最初のチェックは、その査定額になった理由を会社に説明させ、納得できる根拠があるかを確かめることです。

マンションの査定額なら、参照した成約事例がはっきりしているはずです。「同じ棟のどの住戸が」「近隣のどのマンションが」「いつ・いくらで売れたか」を挙げて説明できるかどうかが、見極めの軸になります。あいまいな答えや、質問をはぐらかす態度は、根拠の薄さを示します。

根拠を尋ねることは、遠慮のいる行為ではありません。宅地建物取引業法第34条の2第2項は、会社が媒介価格について意見を述べるとき、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。根拠を求めるのは売主の正当な権利であり、その応じ方そのものが会社選びの判断材料になります。

周辺の「成約事例」を出させて裏を取る

次のチェックは、近隣で実際に売れた価格を出させ、高値の裏を取ることです。

査定額の根拠として最も強いのは、周辺で成約した事例です。売り出し中の価格ではなく、実際に買い手がついた金額を見せてもらえば、その査定額が現実的かどうかを判断できます。

さらにマンションなら、前の章で触れたとおり、売主自身でも成約事例を調べられます。会社が出す数字と、自分で調べた相場がかけ離れていないかを照らし合わせれば、高値の妥当性が見えてきます。成約価格の水準は公的な統計としても公表されており、地域のおおよその相場は確認できます。

出典: 公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」

突出した1社を疑い、まとまった価格帯で現実値を読む

最後のチェックは、複数社の査定額を並べ、突出した数字を疑って、まとまった価格帯で現実値を読むことです。

複数社の数字を並べたとき、多くが同じくらいの額にまとまり、1社だけが大きく高ければ、その額は基準にしないほうが賢明です。ただし、「まとまった価格帯の真ん中が実際の成約価格になる」ことを示した統計はありません。中間の額を答えとして受け取るのではなく、まとまっている範囲を売り出し価格を考える出発点として使い、そのうえで各社の根拠を聞き比べてください。

なお、査定額が3社とも大きくばらつくこともあります。その場合は、どれが正しいかを選ぶのではなく、全社に「同じ棟・近隣のどの成約事例を見たか」を尋ねてください。参照した事例が違えば額が違うのは当然で、どの事例が自分の住戸に近いかは売主が判断できます。

高値査定を見抜く3つのチェック

☐ 査定額の根拠(参照した同一棟・近隣の成約事例)を説明させる

☐ 周辺の成約事例を出させ、自分でも調べた相場と照らす

☐ 突出した1社を疑い、まとまった価格帯で現実値を読む

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選ぶべきは高い査定額ではなく「根拠を説明できる会社」

最後に選ぶべきは、最も高い査定額を出した会社ではありません。その額の根拠を説明できる会社です。

見抜く目を持てたら、会社選びの基準も変わります。額の高さではなく根拠で比べる視点が、現実的な価格と信頼できる相手を同時に見せてくれます。

良い会社は「高く出す会社」ではなく「根拠を説明できる会社」

良い会社かどうかは、査定額の高さではなく、その額をきちんと説明できるかで決まります。

高い数字を出す会社が、高く売ってくれる会社とは限りません。大切なのは、なぜその価格なのかを、同じ棟や近隣の成約事例とともに語れるかどうかです。

根拠を説明できる会社は、売り出し後の価格戦略にも一貫性があります。最初の数字に説得力があれば、その後の提案も信頼して受け止められます。

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複数社を根拠で比べれば、現実的な額と信頼できる会社が同時に見える

複数社の査定を根拠で比べれば、現実的な価格と信頼できる会社が同時に見えてきます。

1社の数字だけでは、それが高いのか妥当なのか判断できません。複数社から査定を取り、額とその根拠を並べて比べることで、初めて現実的な水準がつかめます。マンションは一戸ごとの個別性が戸建てより小さく比べる相手を見つけやすいぶん、根拠まで並べると会社ごとの差がかえってはっきり見えてきます。

比べる目的は、高く売るためではなく、根拠で選ぶためです。まずは複数社の査定を取り寄せ、その説明を聞き比べるところから始めるとよいでしょう。

複数社の査定額を根拠で比べたいときは、住み替えのトビラの一括査定で各社の見立てをまとめて取り寄せられます。

まとめ:高すぎる査定額を根拠で見抜くなら、住み替えのトビラ

査定の額は、高いほど良い数字とは限りません。その値になる理由を説明できない会社に任せると、売れ残った末に相場より安く手放すことになります。

任せる先を選ぶには、飛び抜けた1社ではなく、他社が示した額の重なりを目安にします。いちばん高い数字を基準にすると、値下げの回数だけが増えます。

返事をする前に、近くで実際に売れた額を自分でも調べておきましょう。住み替えのトビラでは、査定額の高さの裏にある事情も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。