査定額がローン残高に届かず、このまま売って住み替え(買い替え)ができるのか不安になっていませんか。
売値がローン残高より少ない「オーバーローン」の状態でも、足りないお金を決済日までに用意できれば、マンションは売れます。
読み終えるころには、自分のマンションを売るのに足りないお金を、どう用意するかまで決められます。
マンションがオーバーローンでも売れる|まず不足額を計算する
オーバーローンのマンションも、決済日までにローンを返しきれば売れます。
決済日とは、買主から代金を受け取り、家を引き渡す日のことです。この日までにローンを返しきる必要があるのは、銀行が家に付けている「抵当権」を外さないと、買主に家を渡せないためです。
抵当権は、返済が止まったときに銀行が家を売ってお金を回収できる権利で、ローンを返しきると外せます。そこで最初に、いくら足りないか(不足額)を計算してみましょう。
不足額は、ローン残高から売ったときの手取りを引いて計算する
不足額は、ローン残高から、売ったときの手取りを引いた額です。
手取りとは、売値から売る費用を引いた額のことです。式にすると、次のとおりです。
不足額 = ローン残高 -(売値 - 売る費用)
売る費用には、不動産会社に払う仲介手数料、売買契約書に貼る印紙代(印紙税)、抵当権を外す手続きの費用などがあります。合わせて売値の4%前後と見ておくと、実際の額と大きくずれにくくなります。
仮の数字で計算してみます。ローン残高が3,000万円、売値が2,900万円なら、売る費用は約116万円です。
不足額は、3,000万円 -(2,900万円 - 116万円)で、約216万円になります。つまり、売値とローン残高の差の100万円だけを見ていると、用意するお金を半分以下に見積もってしまうのです。
今のローン残高は、返済予定表やネットバンキングで確かめられます。ただし実際に返すのは、決済日時点のローン残高です。
銀行によっては、一括で返すときの手数料もかかります。決済予定日を伝えて、その日に必要な額を銀行に聞いておきましょう。
では、売ったときの税金も不足額に足しておくべきでしょうか。
売って利益が出たときの税金(譲渡所得税)は、オーバーローンで売る場合、たいていゼロになります。買った値段より安く売ることが多く、利益が出ないためです。
出典: 法務局「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」
売値は、近くで実際に売れた値段に近い査定額で見込む
不足額の計算に使う売値は、いちばん高い査定額より、近くで実際に売れた値段(成約事例)に近い査定額にしておくのがおすすめです。
査定額は、不動産会社が「この値段なら売れそう」と考えた見込みの額です。その値段で売れると約束する額とは違います。
中には、売る仕事を任せてもらう契約(媒介契約)を取りたくて、高めの額を出す会社もあります。その額で計算すると、不足額を小さく見積もってしまいます。
高すぎる値段で売り出すと、値下げを重ねるたびに不足額が増えていきます。
マンションなら、同じ建物の別の部屋や近くの似た部屋が、実際にいくらで売れたかを比べられます。
査定は3社ほどに頼み、どの部屋の値段をもとにしたか、階数や向きの違いでいくら上げ下げしたかを聞き比べてみてください。根拠の弱い高値を見分けやすくなります。
近くで売れた値段は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、不動産取引の記録を公開している「レインズ・マーケット・インフォメーション」で、自分でも調べられます。
査定を頼む会社の探し方は、マンション一括査定サイトのおすすめで比べています。
不足額の埋め方は5つ|自分の状況に合うものを選ぶ
不足額の埋め方は、預貯金の額、次の家を買う予定、毎月の返済の状況によって変わります。
下の表から自分に近い状況を探すと、使える埋め方と、そのあと不足額がどうなるかが分かります。
| 今の状況 | 埋め方 | 不足額はどうなるか | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 預貯金や親の援助で払える | 預貯金などで払って売る | 売った日になくなる | 親の援助には贈与税がかかることがある |
| 払えないが、次の家を買う | 住み替えローンで次の家のローンにまとめる | 次の家のローンに移る | ・借りる額が増える ・上乗せ分は住宅ローン控除の対象外 |
| 払えず、次は賃貸などに住む | 不足額だけを無担保ローンで借りる | 別の借金として残る | 金利が高く、返す期間が短い |
| 急いで売る事情がない | 住み続けて返済を進める | 返済で少しずつ減る | 値下がりすると、減った分が帳消しになる |
| 毎月の返済が続けられない | 任意売却(銀行の同意を得て売る方法)を銀行に相談する | 売ったあとも借金が残る | 返済が遅れた記録が残り、しばらくローンを組みにくい |
預貯金や親の援助で払えるなら、そのお金で返して売る
不足額を預貯金で払えるなら、決済日に売った代金と合わせてローンを返しきるのが、あとに借金を残さない方法です。
手元のお金は減るので、引っ越し代や次の家の頭金、生活のための蓄えが残るかを先に確かめておきましょう。
親から援助を受けるときは、贈与税(人からお金をもらったときにかかる税金)がかかる場合があります。
家を買うためにもらうお金には、税金がかからない特例があります。ただし対象は家を建てる・買う・増改築する代金で、今のローンの返済に使うお金は対象外です。
返済に使うためにもらったお金は、1年間にもらった合計が110万円を超えると、超えた分に贈与税がかかります。
親から借りる形にするなら、借用書を作り、返した記録を残しておきましょう。もらったお金ではなく借りたお金だと、あとから説明できます。
次の家の頭金にいくら残すかは、住み替えの頭金と自己資金で説明しています。
出典: 国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
次の家を買うなら、住み替えローンで次の家のローンにまとめる
預貯金が足りなくても次の家を買うなら、住み替えローンを使うのが一般的です。
住み替えローンは、不足額を次の家のローンに上乗せして借りられるローンです。ただし不足額は消えず、次の家のローンにそのまま移ります。
つまり次の家は、買った日から「ローン残高が家の値段より多い」状態で始まります。次に売るときも、不足額が出やすくなるでしょう。
預貯金で払える分は先に払い、上乗せする額を少なくしておくと、次の家で出る不足額を抑えられます。
住宅ローン控除(年末のローン残高に応じて所得税などが減る制度)の対象は、次の家を買うために借りた分です。
今のローンの返済に回した上乗せ分は対象外です。税金が減る額を見積もるときは、上乗せ分を除いて計算しておきましょう。
上乗せして借りられる額は、銀行が見積もる次の家の価値と、年収で決まります。不足額の一部しか借りられないこともあります。
また、今の家を売る決済と次の家を買う決済を、同じ日にすることが条件です。日程を早めに銀行と相談しておくと、決済の日をそろえやすくなります。
住み替えローンの審査や借りられる額は、住み替えローンの仕組みにまとめています。
出典: 国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
次は賃貸などに住むなら、不足額だけを借りる方法もある
次の家を買わないときは住み替えローンが使えないため、不足額だけを無担保ローン(家などを担保にしないローン)で借り、今のローンを返しきる方法があります。
まずは、今のローンを借りている銀行に、売るときの不足額を貸してくれるローンがあるかを聞いてみてください。
家を担保にしない分、金利は住宅ローンより高く、返す期間も短めになるのが一般的です。
家賃に加えてローンの返済も毎月続くため、月にいくらまでなら払えるかを先に決め、そこから借りる額を考えておきましょう。預貯金で一部を払えば、借りる額を減らせます。
急ぐ事情がないなら、住み続けて不足額が減るのを待つ
あと1〜2年返済を続ければ不足額がなくなりそうな人には、住み続けて待つ方法がおすすめです。
1年でローン残高がどれだけ減るかは、返済予定表で確かめられます。
借りて間もないころは、毎月の返済の多くが利息に回るため、ローン残高はゆっくり減ります。
たとえば、3,000万円を35年・金利1%で借り、毎月同じ額を返す場合(元利均等返済)を仮に考えます。最初の1年で減るローン残高は、約72万円にとどまります。
待つあいだにマンションの値段が下がると、ローン残高が減った分が帳消しになります。建物は古くなるほど値段が下がりやすく、住み続けるあいだに払う修繕積立金も上がっていく傾向があります。
そのため、待つ期間は「〇年まで」と先に区切っておくと、判断がぶれずに済みます。
反対に、早く手放そうとして不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」を選ぶと、買主を探して売る「仲介」より値段が下がり、不足額は増えます。
毎月の返済が続かないなら、任意売却を銀行に相談する
毎月の返済そのものが続けられないなら、住み替えより先に、返済をどう立て直すかを銀行に相談しましょう。
任意売却は、ローンを返しきれないまま、銀行の同意を得て家を売る方法です。返済が続いているうちは、銀行はこの売り方に同意しないのが一般的です。つまり、返済に行き詰まったときの手段です。
任意売却をすると、返済が遅れた記録が信用情報(ローンやクレジットカードの利用の記録)に残り、しばらくは新しいローンを組みにくくなります。
一方で、返済が止まって裁判所の手続きで家を売られる「競売」より、ふつうの相場に近い値段で売れるため、売ったあとに残る借金を減らせます。
返済が遅れる前なら、返済期間を延ばすなど、返し方の条件を変える相談ができます。苦しくなりそうだと感じた段階で銀行へ連絡すると、選べる方法が多く残ります。
任意売却の流れは、マンションの任意売却で解説しています。
オーバーローンで売って出た損は、税金が減る形で一部取り戻せる
マイホームを買った値段より安く売って損が出たら、その損を給料などの所得から差し引き、所得税と住民税を減らせる特例があります。
オーバーローンで売る人は、買った値段より安く売ることが多いため、この特例の条件に当てはまりやすくなります。
特例は、確定申告(自分で税金を計算して税務署に届け出る手続き)をして初めて使えます。売った翌年の申告を、忘れずに予定に入れておきましょう。
売却損は、ローン残高ではなく買った値段をもとに計算する
売却損は、売値と「取得費」の差で決まります。
取得費とは、買った値段から、建物が古くなった分(減価償却費)を差し引いた額のことです。差し引く額は年数がたつほど大きくなるので、取得費は年々小さくなります。
そのため、売値が取得費を上回ることもあります。その場合はローンが残っていても計算上は売却益となり、損が出たときの特例は使えなくなります。
取得費の計算には、買ったときの売買契約書が必要です。売り出す前に、手元にあるかを確かめておきましょう。
次の家を買わなくても、ローン残高と売値の差までは所得から引ける
次の家を買わない場合でも、売却損のうち「ローン残高 - 売値」の額までは、その年の給料などの所得から差し引けます。
差し引ける額の上限は、売買契約を結ぶ前の日のローン残高から売値を引いた額です。
不足額と違って売る費用は含めないため、ローン残高3,000万円・売値2,900万円の例なら、上限は100万円です。その年に引ききれなかった損は、翌年から3年間、繰り越して引けます。
この特例(租税特別措置法41条の5の2)の主な条件は、次の3つです。
- 売った年の1月1日時点で、家と土地(マンションでは敷地の持ち分)を持っている期間が、どちらも5年を超えている
- 売買契約を結ぶ前の日に、返済期間10年以上の住宅ローンが残っている
- 売値が、そのローン残高より少ない
対象は、令和9年(2027年)12月31日までに売った場合です。
配偶者や親子など特別な関係にある人に売った場合は対象外です。また、損を繰り越す年は、その年の合計所得が3,000万円以下であることも条件です。
出典: 国税庁「No.3390 特定のマイホームを譲渡して譲渡損失が生じた場合の損益通算及び繰越控除の特例」
次の家をローンで買うなら、買い替えの特例で売却損の全額を引ける
次の家をローンで買う場合は、買い替えの特例(租税特別措置法41条の5)を使うと、「ローン残高 - 売値」の額にとどまらず、売却損の全額を所得から差し引けます。
主な条件は次のとおりです。
- 売った家を、売った年の1月1日時点で5年を超えて持っている
- 次の家の床面積が50㎡以上ある
- 売った年の前年1月1日から、売った年の翌年12月31日までに次の家を買う
- 次の家を買った年の翌年12月31日までに住み始める
- 次の家を買った年の12月31日に、返済期間10年以上の住宅ローンが残っている
対象は、令和9年(2027年)12月31日までに売った場合です。この特例は、次の家の住宅ローン控除と一緒に使えます。
次の家を買う人は、ローン残高と売値の差まで引ける特例と買い替えの特例の、どちらか一方を使うことになります。どちらを使うかで引ける額が変わるので、売買契約の前に税務署か税理士に確かめておくと安心です。
出典: 国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームの買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
決済日に不足額を用意するまでの段取り
オーバーローンで売るときにいちばん大切なのは、不足額を決済日に間に合うように用意しておくことです。
今の家を売るのと次の家を買うのと、どちらを先にするかは、不足額の埋め方によって変わります。
住み替えローンを使わないなら先に売り、使うなら同じ日に決済する
預貯金や無担保ローンで埋めるなら、今の家を先に売り、そのあとで次の住まいを決める「売り先行」がおすすめです。
先に売れば売値が決まり、不足額も決まります。次の住まいに使えるお金も、計算しやすくなるでしょう。
売ってから次の住まいに移るまで仮住まいをするなら、その家賃と2回分の引っ越し代も、用意するお金に足しておきましょう。
住み替えローンを使う場合、今の家を売る決済と次の家を買う決済を、同じ日にそろえる必要があります。
売る側の決済が遅れると、買う側の決済もできなくなります。決済日は、売る側の準備が間に合う日を選んでおくと安心です。
次の家の売買契約には、「買い替え特約」を付けておきましょう。期限までに今の家が売れなかったときに、次の家の契約を取りやめられる約束です。
先に次の家を買う「買い先行」は、今のローンと次の家のローンを一時的に両方抱えることになります。オーバーローンの状態では、銀行の審査に通りにくくなります。
どちらを先にするかの決め方は、売り先行と買い先行の選び方で比べています。
不足額は、決済日より前に口座へ用意しておく
不足額は、決済日に銀行へ払えるよう、前もって口座に入れておきましょう。
決済日には、買主から受け取る代金と自分で用意した不足額を合わせて、ローンを一度に返す流れです。その場で、銀行から抵当権を外すための書類を受け取ります。
同じ日に、司法書士(登記の手続きを代わりに行う専門家)が抵当権を外す手続きを申請します。これで、売却の手続きは終わりです。
定期預金の解約や親からの振り込みには、数日かかることがあります。銀行への一括返済も、決済の数週間前までに申し込むよう求められるのが一般的です。
決済日が決まったら、すぐに銀行へ連絡しておくと、申し込みの期限に間に合います。
ローンを借りたときに前払いした保証料が一部戻ってくる場合でも、振り込まれるのは決済のあとです。当日に使えるお金には入れずに計算しておくと、決済日にお金が足りなくなるのを防げます。
まとめ:オーバーローンでも、不足額を決済日までに用意すれば売れる
マンションがオーバーローンでも、売る費用を含めた不足額を決済日までに用意できれば売れます。
まずは決済予定日のローン残高を銀行に聞き、成約事例に近い査定額から不足額を計算してみてください。売る費用を入れずに計算すると不足額を小さく見積もり、決済の直前にお金が足りなくなるおそれがあります。
不足額が分かったら、預貯金で払える額と次の家を買う予定を確かめて、埋め方を決めましょう。住み替えのトビラでは、オーバーローンで売るときのお金の用意と売却損の税金の特例も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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