課税明細書に載っている固定資産税評価額を見て、「うちのマンションはこの値段で売れるのか」「0.7で割れば売れる値段になるのか」「1.4倍という数字はマンションにも当てはまるのか」と考えたのだと思います。
先に答えを書きます。マンションの固定資産税評価額は、÷0.7や×1.4で売却価格に変換できる数字ではありません。国税庁が平成30年の売買実例を調べたところ、マンションの市場価格は相続税評価額の平均2.34倍で、約65%のマンションは評価額が市場価格の半額以下でした。
この記事では、土地と家屋で理由がどう違うのか、倍率の実態と幅、課税明細書を読み、査定の相談に使う手順、売却の手続きで固定資産税評価額を使う場面を順に説明します。
固定資産税評価額を1.4倍しても、売却価格にはならない
固定資産税評価額は税金を計算するための評価です。マンションの売却価格は、近隣の取引、部屋の条件、管理状態、売る時期なども踏まえて決まります。評価額に一定の倍率を掛けて求めることはできません。
「評価額が低いから、この程度でしか売れない」と判断する必要もありません。納税通知書の金額で、自宅の可能性を小さく見積もらない。売れる価格は、今の査定で確かめましょう。
土地の「7割」はマンション全体の換算率ではない
宅地の固定資産税評価は、地価公示価格などの7割を目途に行われます。そこから「0.7で割る」「約1.4倍」という計算が出てきますが、これはマンション全体の市場価格を表すルールではありません。土地だけでも、個別の取引価格が公示価格と一致するとは限りません。
マンションの敷地は各所有者が持分を持ちます。たとえば敷地2,500㎡、持分100分の1なら25㎡相当です。ただし、この面積が小さいからといって、立地の価値や土地の金額の割合まで小さいとは決められません。
出典:総務省「固定資産税」
家屋は建築費を基に評価し、市場とは見方が違う
家屋の評価は、同じ建物を評価時点で建て直す場合の費用を基に、経過年数による補正などを行います。市場で買主が比べる眺望・日当たり・室内の状態を、そのまま売却価格と同じ方法で反映する仕組みではありません。
高層住宅では階層によって税額を各戸へ配分する調整もありますが、それを階数別の売却価格の差として使うことはできません。また、評価の経年補正に下限があっても、それは自宅の売却価格の下限ではありません。
評価年度と今の市場にも違いがある
土地・家屋は3年ごとの評価替えが基本です。基準年度以外は原則据え置きですが、土地価格の下落による修正や新築・増改築などの例外があります。「市場が動いても必ず3年間変わらない」という意味ではありません。
明細は対象年度も確認しましょう。古い評価額を現在の査定と比べても、その差だけで査定が高すぎる・低すぎるとは判断できません。
「平均2.34倍」も自宅の売却価格には使えない
国税庁の資料には、2018年のマンションの売買実例で、市場価格が相続税評価額の平均2.34倍だったという分析があります。この数字は、固定資産税評価額に対する倍率ではありません。
相続税評価では、土地と家屋の評価方法が固定資産税と同一ではなく、対象も過去の売買実例です。自宅の固定資産税評価額を合計して2.34を掛ける計算には使えません。
| よく見る計算 | 自宅の売却価格に使えない理由 |
|---|---|
| 固定資産税評価額÷0.7 | 宅地の評価水準を、マンション全体の市場価格へ転用している |
| 固定資産税評価額×2.34 | 過去の相続税評価に関する平均で、税の種類も対象も違う |
| 評価額×国税庁の評価乖離率 | 相続税等の評価を補正する制度で、個別住戸の査定方法ではない |
国税庁の資料が教えてくれるのは、税務評価と市場価格には差があるということです。「1.4倍が駄目なら2.34倍」と、別の倍率へ置き換えないようにしましょう。
出典:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」、国税庁「居住用の区分所有財産の評価」
課税明細書は「価格・課税標準額・税額」を分けて読む
課税明細書には似た数字が並びます。売却の準備では、何の数字かを分けて確認することが先です。
| 欄 | 意味 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 価格・評価額 | 固定資産税の評価に用いる価格 | 敷地全体・建物全体か、自分の持分相当かを確認 |
| 課税標準額 | 税率を掛ける基になる額 | 住宅用地の特例等により、価格と異なることがある |
| 税額 | 実際の税負担 | 減額等の適用や、対象となる年度・物件を確認 |
持分按分済みかは、明細の注記で確かめる
自治体によって表示方法が違います。東京都の案内では、「共用土地」などの記載がある区分所有物件について、価格欄が土地一筆・家屋一棟全体を表す場合が示されています。
面積や金額の桁だけで判断せず、明細の注記・自治体の案内を確認してください。すでに持分相当に分けられた額に、さらに持分を掛けると二重に按分してしまいます。
不明なときは、市区町村の固定資産税担当、東京23区なら都税事務所へ、「この価格欄は全体ですか、自分の持分相当ですか」と聞くと確認できます。家屋も、課税標準額が常に評価額と一致すると決めつけず、適用されている特例等を確かめます。
出典:東京都主税局「不動産登記の申請時には固定資産税・都市計画税課税明細書をご利用ください」
売れる価格は成約事例と査定で確認する
明細から売却価格を逆算するより、近年の取引と自宅の条件を比べる方が、売却の判断に役立ちます。
- 自宅の所在地・専有面積・階数・築年などを確認する。
- 必要に応じて、不動産情報ライブラリ等で近い条件の成約事例を見る。
- 複数社に査定を依頼し、参考事例と価格の理由を比べる。
公開事例は匿名化され、面積や価格が丸められている場合があります。単価に自宅の面積を掛けた数字も概算で、成約を保証するものではありません。査定が事例と離れるなら、階数・向き・管理・室内状態など、何を評価したのか聞きましょう。
税務の評価額と、本当に売れそうな価格。その差を知るだけでも、売却の選択肢は具体的になります。 査定を頼む前に税務の計算を仕上げる必要はありません。
固定資産税評価額が役立つのは、登記や税負担の確認
売却価格の換算には使えなくても、明細は売却手続きで役立つ資料です。
| 場面 | 確認するもの |
|---|---|
| 所有権移転登記 | 登録免許税の基となる固定資産の価格。必要書類は司法書士に確認 |
| 買主の不動産取得税 | 評価額と控除・軽減の適用条件 |
| 固定資産税等の精算 | 年税額、精算期間、契約で決めた負担方法 |
| 買主への維持費の説明 | 当該住戸の税額と、減額が終わる予定の有無 |
精算は評価額を単純に日割りするのではありません。税額や契約上の取り決めを使います。また、固定資産税等の精算は当事者間の合意によるもので、日割りの起算日なども契約で確認します。
評価証明書が必要か、課税明細書で足りるかは地域や時期によって異なります。先に大量の証明書を取らず、決済を担当する司法書士に必要年度と書類を聞きましょう。
出典:国税庁「登録免許税の税額表」、東京都主税局「不動産取得税Q&A」
まとめ:固定資産税評価額に売却価格へ換算できる倍率は無い。現在の成約事例と査定で確かめる
いちばん重いのは、マンションの固定資産税評価額に、売却価格へ換算できる倍率がそもそも無いという点です。課税明細書の土地は全体額か持分反映後かを確認し、家屋は再建築費を基に経年による減点補正などで評価されます。土地には立地も関わりますが、個々の部屋の売却価格を示す評価ではありません。だから÷0.7も×1.4も当たらず、国税庁の統計では、平成30年のマンションの市場価格は相続税評価額の平均2.34倍、約65%のマンションで2倍以上の開きがありました。
次の一歩は、課税明細書の「価格」と「課税標準額」を区別し、土地の持分が反映済みかを確認することです。2.34倍は過去の相続税評価額との比較で、固定資産税評価額から自宅の価格を出す倍率には使えません。現在の売却見込みは査定で確かめます。
そのうえで確かめるのは、条件が近い成約事例と、不動産会社が査定の根拠にした条件です。価格が離れるときは、部屋や取引時期などの違いを聞きましょう。住み替えのトビラでは、固定資産税評価額と売却価格の関係も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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