築10年のマンションも、立地や部屋の状態などによって売却価格は変わります。
ただ、高く売れることと、手元にお金が残ることは、まったく別の話です。
住宅ローンの元金の減り方、税の特例の選び方、同じ棟に並ぶ競合。この3つを押さえてから売り出すかどうかを決めると、あとから悔やむ場面が減ります。
築10年の売却相場は、近い条件の成約事例で見る
築10年前後は、設備や管理の状態を確認しながら、売却を具体的に考えやすい時期です。ただし、築年だけで売り時や値段は決まりません。まず市場の比較と自宅の査定を分けて見ます。
首都圏の築年帯別の成約状況
東日本不動産流通機構の2026年4〜6月期の集計です。「〜築10年」は築6〜10年、「〜築15年」は築11〜15年の帯を指します。
| 築年帯 | 成約価格 | ㎡単価 | 専有面積 |
|---|---|---|---|
| 〜築5年 | 9,448万円 | 153.1万円 | 61.7㎡ |
| 〜築10年 | 7,757万円 | 130.9万円 | 59.2㎡ |
| 〜築15年 | 7,916万円 | 124.4万円 | 63.6㎡ |
出典:東日本不動産流通機構「地域別・築年帯別成約状況(2026年4〜6月)」
築6〜10年帯の㎡単価は130.9万円でした。ただし、これは首都圏全体の別々の住戸を集計した平均です。築5年以内の153.1万円との差を、「同じ部屋が5年で約15%下がる」と読むことはできません。
総額は築11〜15年帯の方が高く、面積などの構成も違います。㎡単価にそろえても立地や設備の違いは残るため、表は市場の位置を知る参考にします。
同じ建物の事例があれば、部屋ごとの差まで聞く
査定を頼むときは「同じマンションの近年の成約事例はありますか」と聞きましょう。事例がない場合は、近隣のどの物件を参考にしたか、違いをどう調整したかを確認します。
同じ棟でも、階数・向き・室内状態・取引時期は違います。現在売り出している住戸は競合の確認に役立ちますが、売り出し価格は成約価格ではありません。
築10年という平均ではなく、今の自宅はいくらか。複数社の査定で、部屋の強みまで評価してもらいましょう。
築10年前後に確認したい設備と修繕の予定
この時期に見る価値があるのは、これから負担する費用です。売れば必ず得という話ではなく、保有を続ける費用と今売った場合を比べます。
給湯器や水まわりは、年数より現在の状態を確認する
給湯器・エアコン・食洗機などは、使用状況によって傷み方が違います。築10年だから一斉交換する必要はありません。作動状況、交換した年、不具合の有無を一覧にして査定時に伝えます。
| 状態 | 売却前に確認すること |
|---|---|
| 問題なく使える | 交換履歴・保証書等が残っているか |
| 不具合がある | 症状を伝え、現状売却と修理後の売却を比較 |
| 状態が分からない | 分からないまま正常と記載せず、確認方法を相談 |
高額なリフォームを先に決めるより、現状での査定を受ける方が費用をかける必要性を判断できます。交換費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。
修繕積立金は、決定済みの増額と将来の計画を分ける
長期修繕計画には、工事の時期や費用、積立金の見通しが載っています。築10年前後の見直しで、それまで計画の外だった将来の工事が加わることもあります。
確認したいのは、現在の月額だけでなく、増額が決まっているか、一時金や借入を予定しているかです。国の段階増額方式の目安を、自宅の月額が今後何倍になるかという予測には使いません。
たとえば月7,000円の増額なら年間の追加負担は8万4,000円です。これは家計負担の計算で、売却価格が一定額下がるという意味ではありません。管理・工事が適切に進むことも含め、査定でどう評価するかを聞きます。
高く売れるかと、手元に残る額は別に確認する
売却後の資金は、売却代金からローンの返済額と費用を引いて考えます。税金が発生する場合は、その支払い分も確保します。
ローンは借りた時期と条件によって残高が違う
次は、4,000万円を35年、元利均等・毎月返済、ボーナス返済・繰上返済なし、金利が一定と仮定した当サイトの試算です。
| 借入から | 金利0.5% | 金利1.0% | 金利1.5% |
|---|---|---|---|
| 10年後の残債 | 2,928万円 | 2,996万円 | 3,062万円 |
| 元金が減った割合 | 26.8% | 25.1% | 23.4% |
10年返済しても、この条件では元金の約7割が残ります。ただし、築10年とローンの返済10年は同じとは限りません。途中で中古購入した場合などは、実際の借入時期・返済状況で確認してください。
返済予定表は概算の確認に使い、決済日が見えたら金融機関に一括返済額と手数料を確認します。
売却費用と、次の住まいへの費用も見込む
仲介手数料、抵当権抹消の登記費用、ローンの返済手数料などがかかります。紙の売買契約書なら印紙税も確認します。費用の支払日が決済より前なら、先に用意する現金も必要です。
住み替えの場合は、仮住まい・引っ越し・一時的なローンの重複など、自分の進め方で発生する費用を加えます。どの方法でも同じ費用が必ず発生するわけではありません。
| 査定時に出してもらう数字 | 目的 |
|---|---|
| 根拠のある売却見込み額 | 自宅の今の価格を知る |
| 価格が下振れした場合の試算 | 自己資金が不足しないか見る |
| 売却費用と支払時期 | 決済前に必要なお金を把握する |
価格だけを受け取らず、売った後にいくら残るかまで聞く。 ここまで分かると、売却するかどうかを判断しやすくなります。
税金は「築10年」と「10年所有」を混同しない
税務上の所有期間は、原則として売った年の1月1日現在で判定します。築年数ではありません。
所有10年超の特例は、年をまたぐと判定が変わる
仮に2016年6月に取得し2026年8月に売る場合、売却時には10年を過ぎていても、2026年1月1日時点では9年7か月です。10年超所有の軽減税率の所有期間要件は満たしません。
2027年の売却なら、この所有期間の条件は満たし得ます。ただし、家屋と敷地の所有期間、居住、他の特例などの要件も必要です。税だけでなく、売却価格や待つ間の費用も比べて判断します。
売却益の特例と新居のローン控除を比べる
要件を満たす自宅の売却では、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度などがあります。ただし、一定期間内に売却の特例を使うと、新居の住宅ローン控除と併用できない場合があります。
比較には、売却益だけでなく、新居の性能・入居年・借入額・本人の所得税額等も必要です。「借入額が大きいからローン控除が得」とは決められません。査定で価格の見通しを立ててから、取得時の資料を使って税務署や税理士へ具体額を確認します。
出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」、国税庁「中古住宅の住宅ローン控除」
売却損の特例も、対象となる損失を確認する
売却損には、買い替えに伴う制度と、住宅ローンが売却価格を上回る場合の制度があります。いずれも所有期間等の要件と申告が必要で、購入価格より安く売れれば自動的に適用されるものではありません。
残債を基にする制度では、売買契約日の前日のローン残高から売却価格を引いた額が、対象となる譲渡損失の上限です。返済後に残った不足額から、売却価格をもう一度引く計算ではありません。
出典:国税庁「買換えに伴う譲渡損失の特例」、国税庁「住宅ローンが残る自宅の譲渡損失の特例」
自宅の強みを、査定と販売の説明に反映させる
同じ棟の住戸と価格だけを並べず、向き・階数・眺望・設備の更新履歴を伝えます。「競合より安くする」だけでなく、その違いをどう説明して売るかを会社ごとに聞きましょう。
管理の資料は手元にあるものから共有します。積立金や工事の予定に未確認の部分があれば、そのまま伝えて確認を進めます。設備の不具合は告知書や付帯設備表に正しく記載し、修理の有無・引渡し後の責任は契約内容で確認します。「現状渡し」と書くだけで、すべての責任がなくなるわけではありません。
住みながら内見を受ける場合は、床やテーブルの上を片づけ、収納を見やすくし、水まわりを清掃するところからで十分です。大きな費用をかける前に、査定担当者に優先する箇所を聞くと無駄を抑えられます。
まとめ:築10年は売れた金額より残る金額で決める
築10年でも購入時より高く売れる場合はありますが、築年数だけで決まりません。住宅ローンの減り方も借入期間・金利・返済方法によって異なります。だから判断すべきは売却価格ではなく、そこから残債・諸費用・税・住み替えの費用を引いた金額です。
次の一歩は、金融機関から残高証明書か返済予定表を取り寄せることです。ここを飛ばしたまま査定額だけで住み替えの予算を立てると、売買契約の後に新居の頭金の不足が分かるおそれがあります。そうなってから引き返すのは、かなり大変です。
残債が分かったら、次は同じ棟の直近の成約価格と、いま売りに出ている住戸を確かめてみてください。住み替えのトビラでは、築年数ごとの売却相場や税の特例の選び方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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