査定額を受け取ったあとで、「査定額と実際に売れる価格は違う」という話を聞いた。では、どのくらい違うのか。そんな疑問を抱えてこのページにたどり着いた方が多いと思います。
先にお伝えします。売却では4つの価格が出てきて、決める人がそれぞれ違います。そして価格が確定するのは、売主と買主が合意した瞬間です。査定額はその前の見積もりなので、一致するとは限りません。
この記事では、4つの価格を誰が決めるかで整理し、公的なデータで売り出しの水準と成約の水準を並べ、周辺の成約価格を参考に自宅の査定を確かめる手順、そして売り出してから成約までの価格の動き方までをまとめました。
査定額と売れる価格は、決まる時点が違う
査定額は不動産会社の見積もり、成約価格は売主と買主が条件に合意して契約する価格です。査定額で売れる場合もありますが、必ず一致するものではありません。
途中に出てくる売り出し価格と購入申込額も含めて、4つを分けると話が整理できます。
| 価格 | 誰が提示・決定するか | 何を表すか |
|---|---|---|
| 査定額 | 不動産会社が提示 | 売却できると見込んだ価格。売却の約束ではない |
| 売り出し価格 | 査定や希望を踏まえ、売主が設定 | 広告に載せ、買い手を募集する価格 |
| 購入申込額 | 購入希望者が提示 | その買い手が希望する購入価格 |
| 成約価格 | 売主と買主が合意 | 売買契約で定める価格 |
査定額を見直してほしいと相談することも、買い手に別の条件を返すこともできます。ただし、売主が希望した額が、そのまま査定額や成約価格になるわけではありません。
不動産流通推進センターの手引きでは、査定価格は売り出し価格の参考として、3か月程度で買い手が付くことを目安に算出すると説明されています。実際の依頼では、担当者にも想定期間を確認してください。
出典:不動産流通推進センター「既存住宅価格査定マニュアル利用の手引き」
査定額から何%下がるとは一律に決められない
「査定額から1割引けば売れる」といった一定の割合は、自宅の成約価格を決める根拠にはなりません。査定時の前提、売り出し価格、買い手との交渉で結果が変わるためです。
差が出たときに確認すること
| 査定時から変わり得ること | 具体的な確認事項 |
|---|---|
| 物件について分かった情報 | 室内・設備の状態、修繕や管理の情報 |
| 市場の状況 | 新しい成約事例、競合物件の価格、買い手の反応 |
| 売主の条件 | 売却期限、引き渡し時期、残す設備 |
| 買主の条件 | 希望額、資金調達、引き渡し希望日 |
差が出たからといって、必ず査定が間違っていたわけではありません。一方、査定の根拠が弱かったり、確認漏れがあったりする可能性もあります。理由を一つずつ確かめます。
売り出しと成約の平均差は、査定の誤差ではない
REINSの公表資料には、新規登録・成約・在庫の価格が載っています。2026年1〜3月期の首都圏中古マンションを、集計対象が分かる形で整理すると次のとおりです。最新相場の提示ではなく、統計の読み方の例です。
| 集計対象 | 件数 | 平均価格 | 平均㎡単価 | 平均面積 | 平均築年数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 期間中に成約した物件 | 12,585件 | 5,492万円 | 86.26万円 | 63.67㎡ | 27.08年 |
| 期間中に新規登録された物件 | 47,574件 | 6,398万円 | 110.43万円 | 57.94㎡ | 29.94年 |
| 3月末の在庫物件 | 44,728件 | 6,354万円 | 110.08万円 | 57.72㎡ | 29.51年 |
出典:東日本不動産流通機構「季報マーケットウォッチ 2026年1〜3月期」
成約と新規登録では、面積も築年数も違います。同じ物件の査定額と成約価格を追跡した表ではないため、平均価格の差を「査定からの値下がり額」や「値引き率」と読むことはできません。
成約件数を新規登録件数で割って、売れる確率を出すこともできません。今期に登録した物件が来期に売れることもあるからです。平均面積や築年数だけで、広く新しい部屋ほど先に売れるとも断定できません。
自宅で売れる価格を確かめるには
周辺の成約を調べると、会社へ質問する材料が増えます。ただし、自分で出した数字も見積もりです。最終的には、自宅と事例の条件差を担当者に確認します。
周辺の取引価格から参考額を計算する
不動産情報ライブラリやレインズ・マーケット・インフォメーションで、地域・築年・面積・取引時期などが近い事例を探します。一般公開されている情報は匿名化されており、同じ建物の住戸を特定できるとは限りません。
比較しやすくする計算は、次のとおりです。
取引価格 ÷ 事例の面積 × 自宅の面積 = 面積だけをそろえた参考額
例えば4,800万円・68㎡の事例を72㎡に換算すると、4,800÷68×72で約5,082万円です。これは説明用の仮の例で、実際の売却事例ではありません。途中で単価を丸めずに計算しています。
この計算がそろえるのは面積だけです。階・向き・室内の状態・管理・取引時期の違いは残ります。似た事例を3件集めても、その最大値と最小値の間で必ず売れるわけではありません。
自分で加点せず、違いの評価を聞く
事例より高層階で設備も新しいとしても、「有利な項目が多いから何万円上」と機械的には計算できません。買い手によって評価が違い、項目ごとの影響も同じではないためです。
担当者には、次の3点を聞けば十分です。
- 自宅に近い成約事例はどれか
- その事例との違いを査定にどう反映したか
- 提示額は、どのくらいの販売期間を想定しているか
売る時期が決まっているなら、その期限も伝えます。高い数字だけでなく、期限に合う販売提案があるかを確かめましょう。
売り出し後は価格と条件を一緒に確認する
買い手から値引きの希望が来ても、その額を必ず受け入れる必要はありません。希望を受ける、断る、別の条件を提案するという選択肢があります。
一般的な購入申込書の提出と売買契約の締結は別の段階です。ただし、書類の名称だけで法的な扱いが決まるわけではありません。すでに合意した内容や契約状況を担当者に確認してから返答します。
価格以外では、引き渡し時期や残す設備などが調整材料になります。例えば、引き渡し日を変えて価格を維持できても、仮住まいの費用が増えるなら、その負担も含めて比べます。
問合せが少ない場合も、直ちに値下げとは限りません。広告の掲載状況、写真、競合、内見時の反応を確認したうえで、売り出し価格を見直します。詳しい価格設定は別の記事で扱っています。
査定額と手取りを分けて、複数の価格で試算する
売却代金の全額を次の予算に使えるわけではありません。住宅ローン残高の返済、仲介手数料、登記・契約の費用、条件によって生じる税金などを確認します。引越し・仮住まい費用も別に見込みます。
成約前は、査定を参考にした想定額と、それより低い場合を並べてみましょう。低い想定額も保証された下限ではありません。
| 仮の売却額 | 仮のローン残高 | 返済後の額(諸費用・税引き前) |
|---|---|---|
| 4,800万円 | 2,600万円 | 2,200万円 |
| 4,500万円 | 2,600万円 | 1,900万円 |
これは金額差の影響を見るための仮の試算です。実際の手取りは各費用で変わります。売却代金でローンを返しきれない場合は、自己資金や金融機関との調整が必要になるため、先に確認します。
先に売買契約を結んでから購入を考えると、契約価格をもとに予算を組みやすくなります。ただし、契約後もローン特約による解除などがあり得るため、入金済みの資金と同じには扱えません。
自宅がいくらで売れそうか分からないまま、希望を小さくする必要はありません。まず査定で今の価格を確かめ、根拠と手取りを一緒に確認しましょう。
まとめ:価格が確定するのは合意の瞬間なので、成約の水準で計画を組む
いちばん重いのは、価格が確定するのは売主と買主が合意した瞬間だという事実です。公益財団法人不動産流通推進センターの資料が、そう書いています。査定額はその前の見積もりで、しかも過去の成約事例から作られます。そのため査定額と成約価格は一致しない場合があります。差だけで査定の正誤は判断できません。4つの価格のうち、売主が単独で決められるのは売り出し価格だけです。
次の一歩は、周辺の成約価格を㎡単価に直し、自分の専有面積に換算した参考額と、査定の根拠を比べることです。国土交通省の不動産情報ライブラリとレインズマーケットインフォメーションで、誰でも無料で周辺の情報を調べられます。ただし匿名化された公開情報で同じ棟の住戸まで特定できるとは限らず、換算額も自宅の売却価格ではありません。成約前の見込み額だけで資金計画を確定すると、実際の価格との差で計画の見直しが必要になる場合があります。
そのうえで、査定を参考に、複数の売却額で予算を試算します。過去の成約事例の最安値も、自宅の売却下限ではありません。そこから仲介手数料と諸費用と残債を引いた額が、次に回せる金額になります。契約価格を把握してから購入を考えるなら、売り先行という順序があります。契約後の解除条件や実際の入金時期も確認します。住み替えのトビラでは、査定額と売れる価格の距離の測り方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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