不動産会社から届いた、マンションの査定書。査定価格の欄は読めても、事例の表や評点、比率の欄が何を表しているのかは、説明を聞いた後も残りにくいものです。
先に答えを言います。査定書は、査定価格の欄より先に、比較に使われた事例の欄を読みます。査定価格は、比較事例や自宅の条件をもとに算出されるため、どの事例を選び、条件の違いをどう評価したかが重要だからです。
この記事では、マンション査定書の記載項目、査定価格の根拠を読む手順、読み違えやすい注意点、複数社の査定書を比べる方法、査定書を見ながら担当者に確かめる質問を、順に説明します。
マンション査定書は、金額の高さより事例と調整理由を見る
査定額だけでは、自宅の何が評価されたのか分かりません。 金額の高さを比べる前に、比較事例と、自分の部屋との差を見ます。査定価格と売出価格の意味も押さえておきます。
以下は、不動産流通推進センターのマンション版「不動産売却価格ご提案書」と査定画面の公開サンプルをもとに、当サイトで読む順番を整理した表です。会社独自の様式でも、対応する項目を探せます。
| 見る欄 | 分かること | 担当者に聞くこと |
|---|---|---|
| 査定価格・売出価格の提案 | 売れる見込みと、売り始める価格 | それぞれ何か月程度の販売を想定していますか |
| 物件の概要 | 面積・階数・築年・管理費などの入力条件 | どの資料の面積を使っていますか |
| 比較に使った事例 | 価格を考える出発点 | 成約した事例ですか。いつ、どのような部屋が売れましたか |
| 評点・補正の理由 | 事例と自宅の条件差の評価 | 自宅のどの特徴を、どのように評価しましたか |
| 販売活動の提案 | その価格で売るための具体策 | 広告・内覧・反響の報告はどう進めますか |
| 費用・手取りの試算があれば、その内訳 | 売却後に残るお金の見込み | 含まれていない費用はありますか |
出典:不動産流通推進センター・マンション版の公開サンプル、査定画面のサンプル。表の質問は当サイトで作成。
査定価格と売り出し価格は意味が違う
査定価格は、売れると見込む価格です。同センターの手引きでは、3か月程度で買い手が付くことを目安に算出します。一方、売り出し価格は販売開始時の提案です。公開の査定画面でも別の欄に分かれています。
高めから反応を見る提案も、期限を優先する提案もあり得ます。差額だけで判断せず、「この売出価格にした理由」と「反響が少なかった場合の見直し方」を聞きましょう。
会社独自の査定書では、想定期間や価格幅の意味が異なることがあります。下限も上限も、売却額の保証ではありません。 「下限なら確実に売れる」と受け取らず、その金額の前提を確認します。
出典:不動産流通推進センター・既存住宅価格査定マニュアル利用の手引き
物件の概要は、手元の資料と照合する
専有面積、所在階、向き、築年月、管理費、修繕積立金を、購入時の資料や管理組合からの最新のお知らせと比べます。金額を読む前に、入力違いを見つけられる部分です。
面積は、登記の数字と販売資料の数字が異なる場合があります。測り方の違いもあるため、数字が違うだけで誤記とは限りません。比較事例と自宅でどちらの面積を使ったかを確かめます。
参考に載せた事例と、計算に使った事例を分ける
成約事例は実際に売れた価格、売出事例は売り出した価格です。売出価格がそのまま成約するとは限りません。また、違う住戸の売出価格と成約価格を引いても、値引き額にはなりません。
同センターの査定画面では、周辺の成約事例・売出事例を参考表示する欄と、査定計算に使う「事例マンション」の欄が分かれています。事例が何件載っているかに加え、どの事例を計算に使ったかを見ます。
この構造は同センターのサンプルの説明です。各社の査定書が必ず1件の事例で計算されるわけではありません。
公式サンプルで査定価格の計算をたどる
公開サンプルには、事例単価62.5万円/㎡、査定住戸の評点114.1、事例の評点96.2、専有面積60㎡、査定価格4,448万円と記載されています。ここでは、その数字を当サイトで計算し直します。実際に当サイトが査定を受けた事例ではありません。
事例単価・評点・面積を順につなぐ
サンプルの式は次のとおりです。
62.5万円/㎡ ×(114.1 ÷ 96.2)× 60㎡ ≒ 4,448万円
事例の単価を出発点にし、自宅と事例の評価の差を反映してから、自宅の広さを掛けています。評点の比が1より大きいので、この例では事例の単価より高く評価しています。
公開資料には、表示上は単価を丸めても内部では丸めず計算するため、手計算と査定結果がずれる場合があるという注記があります。計算が合わなければ、まず丸め方や入力値を聞きます。
計算が合うことは、算出過程がつながるという意味です。選んだ事例や点数まで妥当だと証明するものではありません。 次に、点数の理由を読みます。
評点は、自宅の長所と短所を確かめる欄
サンプルでは、住戸位置、専有部分、修繕・管理などを点数にしています。読者が確かめやすい項目を抜き出すと、次のようになります。
| 公開サンプルの項目 | 査定住戸の記載 | 確認したい資料・事実 |
|---|---|---|
| 開口部の方位 | 南西角部屋:+5.0点 | 間取り図、窓の配置 |
| 室内の維持管理状況 | やや優れる:+3.0点 | 室内の写真、修繕した箇所 |
| 外からの騒音・振動 | あり:-5.0点 | 時間帯による違い、現地の状態 |
| 管理費 | 負担額が大きい:-3.0点 | 現在の月額、管理サービスの内容 |
右列は当サイトの確認案です。点数はサンプル上の例であり、どの会社でも同じ加点・減点になる基準ではありません。
長所が評価に入っていなければ、写真や工事記録を添えて伝えましょう。短所についても、実際の状態を踏まえた評価かを確かめます。プラスの項目が多いこと、マイナスがあることだけで査定書の信頼性は決まりません。
流通性比率を使っていれば、その理由も聞く
査定画面には、市場性によって価格を調整する「流通性比率」があります。入力されている場合は、どの市場事情を反映したのかを確認します。
例えば、競合物件の数や地域の需要が理由なら、対象の範囲と確認時点も聞くと、説明を検討しやすくなります。比率が1を超えることだけで、不当な高額査定とは判断できません。
査定書に書かれていない条件を確認する
価格の理由が読めたら、まだ調べていない条件と、含まれていない費用を確かめます。売り出した後の認識違いを減らすためです。
机上査定では、確認済みの範囲を聞く
訪問しない机上査定でも、資料や聞き取りで把握できることはあります。ただし、室内の傷み、眺望、騒音など、現地で確認するまで評価が定まらない点も残ります。
「どこまで確認済みか」「未確認の部分をどう仮定したか」「訪問後に価格が変わるとすれば何か」を聞きましょう。未訪問だから必ず標準値、あるいは低い査定になるとは限りません。
手取りの比較は、費用項目をそろえる
売却価格と、手元に残るお金は別です。手取りの試算が付いている場合は、次を確認します。
- 住宅ローンの返済額は、いつの残高か
- 仲介手数料などの費用は、見積もりか確定額か
- 登記やローン一括返済に関する費用を含むか
- 引越し費用や売却益にかかる税金を含むか
同じ売却価格でも、含めた費用が違えば手取りは変わります。価格の高低と、費用の集計差を分けて比べます。
なお、公開サンプルは鑑定評価書ではないことを明記しています。相続・離婚・税務などで資料を提出する場合は、その手続きに必要な書類を提出先や専門家へ確認します。査定書が一律に使えない、鑑定評価書が必ず必要、という意味ではありません。
複数社の査定書を同じ表で比べる
1社の評価だけで、自宅の価格を決めてしまうのは惜しいところです。 別の会社にも査定を依頼すると、評価される特徴や、価格の理由の違いが見えてきます。届いた査定書を、次の表に整理してみましょう。
| 比べる項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 査定価格と想定期間 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 売出価格の提案と理由 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 比較事例の種類・時期・条件 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 自宅の長所・短所の評価 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 未確認の条件 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 広告・内覧・報告の提案 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 手取り試算に含む費用 | 記入 | 記入 | 記入 |
当サイト作成。会社ごとに使用する様式が異なっても、説明の内容をそろえて比較するための記入表です。
同じマンションの事例でも、階数や時期が違えば評価は変わります。逆に、近隣の別マンションを使うことにも理由があり得ます。「なぜその事例を選んだか」を尋ね、査定額の差につながった項目を探します。
説明が足りなければ、次の質問を使えます。
- 「この事例を自宅と比べられる理由は何ですか」
- 「リフォームや眺望は、どの評価に入っていますか」
- 「この価格で売るために、どのような販売活動をしますか」
- 「反響が少ない場合、いつ何を見直しますか」
事例の原票を見せられない場合も、すぐに不正と結び付けず、開示できない理由と、説明可能な情報を聞きます。比較に時間が必要なら、その旨を伝えましょう。質問への答え、価格の理由、販売案を合わせて、売却を相談する会社を選べます。
まとめ:査定書は金額の欄より先に事例と評点の欄を読む
不動産流通推進センターの公開サンプルでは、事例単価に評点の比と専有面積を掛けて査定価格を算出します。市場性を調整する流通性比率の入力欄もあります。各社が必ず同じ計算方法を使うわけではありません。だから、どの事例を選び、どの項目に何点を付けたかで、査定価格そのものが動きます。金額の欄だけを見て会社を選ぶと、いちばん動かしやすい数字で判断することになります。
次の一歩は、査定書の査定条件表を開き、事例マンションの取引事例価格を専有面積で割って1㎡あたりの単価を出し、合計評点の比と自分の専有面積、流通性比率を掛けて、査定価格と同じ金額になるかを電卓でたどることです。これは同センターの様式を使う場合の確認方法です。計算が合っていても、事例の選び方や評点の理由が妥当かは別に確かめます。
そのうえで、事例の出所と評点の理由を担当者に聞き、答え方まで含めて会社を比べます。住み替えのトビラでは、査定書の欄ごとの読み方や複数社の比べ方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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