子どもが大きくなって子供部屋が足りないとき、今のマンションの間取りを変えるか、広い家へ住み替えるかで迷う家族は多いものです。
部屋数だけが足りないなら間取り変更のほうが費用も手間も小さく、広さや学区まで変えたいなら住み替えのほうが解決できる範囲は広くなります。
この記事では、2つの違いを表で並べたうえで、子供部屋をつくる工事の方法、費用の比べ方、選ぶ基準、間取り変更で後悔しやすい点を、管理規約や法律の決まりとあわせて順に見ていきます。
間取り変更と住み替えの違い
子供部屋が足りないときの道は、大きく2つです。今のマンションの間取りを変えるか、部屋数の多い家へ住み替えるか。まずは2つを1つの表で並べます。
| 比べる点 | 間取り変更(リフォーム) | 住み替え |
|---|---|---|
| 変えられる範囲 | 部屋の内側の壁・床・天井 | 広さ・部屋数・立地・学区 |
| 一度にかかるお金 | 工事費(工事の範囲しだい) | 売る・買うの諸費用+物件価格の差 |
| 毎月の支出 | ほぼ今のまま | ローン・管理費などが増えやすい |
| かかる期間 | 管理組合への申請から工事まで | 売却と購入の両方の期間 |
| 引越し | 住みながら工事できることが多い | 1〜2回必要 |
| 子どもの独立後 | 壁を外して元に戻せる | 部屋が余ったまま暮らす |
変えられる範囲の違い
いちばん大きな違いは、変えられる範囲です。
マンションで自分の判断で手を入れられるのは、専有部分と呼ばれる部屋の内側です。国土交通省の「マンション標準管理規約」では、天井・床・壁のうち、建物の骨組みにあたる躯体を除いた部分が専有部分とされています。窓枠と窓ガラスは、共用部分の扱いです。
つまり、間取り変更でできるのは、部屋の内側に壁を立てたり、外したりする工事です。窓を増やす、部屋を外に広げるといった工事は、共用部分に手を入れることになるため、管理組合の判断に委ねられます。
住み替えなら、広さや部屋数に加えて、立地や学区、駅までの距離までまとめて変えられます。
今の家の「部屋数」が不満なら、間取り変更で足りることが多いもの。「広さや場所」にも不満があるなら、住み替えのほうが解決できる範囲は広くなります。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」(令和7年10月改正)(第7条)
費用と期間の違い
費用と期間は、大きさがまるで違います。
間取り変更は、工事費が中心です。壁・ドア・電気の工事をどこまでするかで金額は変わりますが、住み替えの諸費用と比べれば小さく収まることが多い方法です。毎月のローンや管理費も、今のままです。
住み替えは、売る・買うの両方に仲介手数料や登記などの諸費用がかかります。仲介手数料だけで、売買価格によっては2回分で数百万円になります(4,500万円で売って6,000万円の家を買うと、上限は合計約360万円)。広い家を買えば、物件価格の差だけローンも増えます。
期間も、間取り変更は管理組合の承認から工事まで、住み替えは売却と購入の両方を進める時間がかかります。
ただし、金額の大小だけで決めるのは早すぎます。住み替えは、お金をかける代わりに、広さや立地まで手に入る選択です。金額の内訳と比べ方は、第3章で見ていきます。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
暮らしと将来への影響の違い
暮らしへの影響も、2つでは大きく違います。
間取り変更は、住みながら工事できることが多い方法です。子どもの学校も家族の通勤もそのままで、引越しも不要です。工事の音やほこりが出る期間の過ごし方を考えておけば十分です。
住み替えは、引越しが必要です。先に今の家を売る場合は、仮住まいを挟んで引越しが2回になることもあります。学区が変われば、子どもの転校も伴います。
将来への影響では、子どもが独立した後が分かれ目です。間取り変更なら、壁を外して元の広い部屋に戻せます。住み替えで広い家に移った場合は、部屋が余ったまま暮らすか、もう一度住み替えるかを考えることになります。
子供部屋をつくる間取り変更の方法と費用
子供部屋をつくる間取り変更には、大きく3つの方法があります。
- 間仕切り壁で1室を2室に分ける
- 可動式の間仕切りや収納家具で仕切る
- リビングや和室の一部を個室にする
どの方法でも、マンションでは工事の前に管理組合の承認が要ります。標準管理規約では、承認が要る工事の例として「間取りの変更」が挙げられています。
間仕切り壁で1室を2室に分ける
いちばん多いのが、広めの洋室を間仕切り壁で2つに分ける方法です。8畳の部屋を4畳ずつに分けて、子ども2人分の個室をつくる、といった形です。
工事には、壁のほかに次のものが要ります。
- 新しい部屋の出入口のドア
- 照明とスイッチ
- コンセント
- エアコン(取り付けられる場合)
壁だけの工事と比べると、これらを加えたぶん費用も日数も増えます。見積もりは、壁・ドア・電気の工事をまとめて頼み、総額で比べましょう。
向いているのは、窓が2つ以上ある広い部屋がある家族です。分けた2部屋の両方に窓があれば、どちらも明るく、風が通る部屋になります。
工事の前には、設計図や工程表を添えて管理組合に申請します。承認が出るまでの期間も、予定に入れておきましょう。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」(令和7年10月改正)(第17条・第17条関係コメント)
可動式の間仕切りや収納家具で仕切る
工事を最小限にしたいなら、可動式の間仕切りや、背の高い収納家具で部屋を仕切る方法もあります。
可動式の間仕切りは、天井や床にレールを付けて、引き戸のように開け閉めできる仕切りです。開ければ1部屋、閉めれば2部屋。収納家具で仕切るなら、工事なしで今日からでも始められます。
この方法の良さは、子どもが独立した後に元へ戻しやすいことです。壁を壊す工事がないぶん、戻す費用もわずかで済みます。
その代わり、音や光は通りやすくなります。家具の上や引き戸のすき間から、話し声や照明の光が漏れます。受験期の勉強部屋としては、物足りなく感じることもあります。
小学生のうちの個室づくりや、数年だけ部屋を分けたい家族に向いている方法です。
リビングや和室の一部を個室にする
洋室を分けにくい間取りなら、リビングの一部や、リビングとつながった和室を個室にする方法があります。
例えば、リビング横の和室を洋室に変えて子供部屋にする。広いリビングの奥を壁で仕切って、1部屋つくる。こうした形です。
気をつけたいのは、リビングが狭く、暗くなりやすいことです。窓側を個室にすると、残ったリビングに光が届きにくくなります。反対に、窓のない奥側を個室にすると、その個室が暗くなります。
和室の床を洋室に変えるなら、床の遮音性能にも注意します。マンションの管理規約では、床材の遮音の基準を決めていることが多く、承認を受けるには、基準を満たす床材を選ぶ必要があります。
家族がリビングで過ごす時間が長い家庭は、リビングの広さをどこまで削れるかを先に決めておくと、工事の後で後悔しにくくなります。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」(令和7年10月改正)(別添2 専有部分の修繕等の考え方)
間取り変更と住み替えの費用の比べ方
間取り変更と住み替えは、工事費と物件価格だけで比べると判断を誤ります。比べるときは、「一度にかかる総額」と「毎月の支出の変化」の2つで並べましょう。
間取り変更でかかる費用
間取り変更でかかる費用は、主に次の4つです。
- 工事費(壁・ドア・電気・内装)
- エアコンの購入と取り付け
- 家具の買い替え
- 工事中に家で過ごせない日の外泊費
工事費は、部屋の形や工事の範囲で大きく変わります。複数の会社から見積もりを取り、壁・ドア・電気・エアコンまで含めた総額で比べます。
毎月の支出は、ほぼ今のままです。ローンも管理費も今と同じです。リフォームローンを使う場合だけ、その返済が加わります。
間取り変更は、総額が小さく、毎月の支出もほぼ変わらない方法です。そのぶん、変えられる範囲は部屋の内側に限られます。
住み替えでかかる費用
住み替えでかかる費用は、売るときと買うときの両方に出ます。
| 場面 | 主な費用 |
|---|---|
| 売るとき | 仲介手数料・抵当権を外す登記・印紙税・引越し |
| 買うとき | 仲介手数料・登記・ローンの手数料や保証料・火災保険・印紙税 |
いちばん大きいのは、仲介手数料です。上限は「売買価格 × 3% + 6万円」に消費税を足した額です。
住み替えの例(仮定:4,500万円で売り、6,000万円の家を買う)
- 売るときの仲介手数料の上限:155万1,000円
- 買うときの仲介手数料の上限:204万6,000円
- 差額1,500万円を35年・金利1.0%で借り増すと、毎月の返済は約4.2万円増える
広くなったぶん、管理費や修繕積立金、固定資産税も上がります。住み替えは、一度にかかる総額も、毎月の支出も大きくなりやすい方法です。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
減税と補助を差し引いて比べる
比べるときは、使える減税も差し引きます。
子育て世帯が子供部屋をつくる工事には、所得税の「子育て対応改修工事」の控除を使える場合があります。対象の工事には、子どもの就寝や学習のための部屋を増やす、間仕切り壁の位置の変更が含まれます。
主な条件は次のとおりです。
- 40歳未満で配偶者がいる、または19歳未満の扶養親族がいる
- 工事の標準的な費用が50万円を超える
- 工事後の床面積が50㎡以上で、合計所得金額が2,000万円以下(2026年以降に住み始めた場合は、40㎡以上50㎡未満で合計所得金額1,000万円以下も対象)
- 2028年12月31日までに工事後の家に住む
控除額は、標準的な工事費用(上限250万円)の10%などです。住宅ローン控除と同時には使えず、どちらか一方を選びます。
住み替えなら、新しい家で住宅ローン控除を使えることがあります。2つの方法は、それぞれ使える減税を差し引いた金額で並べましょう。
出典: 国税庁「No.1228 子育て対応改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」
間取り変更と住み替えを選ぶ判断基準
間取り変更と住み替えのどちらが向いているかは、家族によって逆になります。次の4つの基準で考えると、迷いが減ります。
- 子どもが個室を使う年数
- 今の立地と学区への満足度
- 管理規約と建物の制約
- 住宅ローンの残高と今の家の売却額
子どもが個室を使う年数
最初の基準は、子どもが個室を使う年数です。
子ども2人(3歳差)の例(仮定)
- 上の子:小学4年生から高校卒業まで個室を使う → 約9年
- 下の子:3年遅れて同じように使う → 2人とも個室が要るのは約6年
- 上の子が家を出た後は、部屋が1つ余る
個室が要る期間が10年ほどで、その後も今の家に住み続けるつもりなら、間取り変更が向いています。必要な期間だけ部屋を分け、独立後に元へ戻せるからです。
子どもが3人いて個室が要る期間が長い、子どもの独立後も広い家に住みたい。そんな家族は、住み替えが候補になります。
子どもごとに、個室を使い始める年と家を出る年を書き出してみましょう。部屋が要る期間がはっきりすると、選びやすくなります。
今の立地と学区への満足度
2つめの基準は、今の立地と学区に満足しているかです。
今の学区や通勤、周りの環境に満足しているなら、間取り変更が向いています。住み替えで同じ学区に希望の広さの家が見つかるかは、そのときの売り物しだいです。子どもを転校させたくない家族にとって、今の家で部屋を増やせるのは大きな利点になります。
反対に、通わせたい学校がある、通勤が遠い、周りの環境を変えたい。こうした不満もあるなら、住み替えが向いています。立地や学区は、住み替えでしか変えられないからです。
部屋数の不満と、場所の不満。どちらが大きいかを家族で話し合っておくと、選ぶときの迷いが減ります。
管理規約と建物の制約
3つめの基準は、今のマンションで工事ができるかです。
専有部分の工事のうち、共用部分や他の部屋に影響するおそれのあるものは、事前に理事長へ申請し、承認を受ける決まりです。
区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面又は電磁的方法による承認を受けなければならない。
(国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第17条第1項より)
確かめておきたいのは、次の3点です。
- 管理規約で間取り変更の工事が認められているか
- 床材の遮音の基準や、工事できる時間帯の決まり
- 新しい部屋にエアコン用の穴(スリーブ)があるか
この3点を満たせば、間取り変更で使いやすい子供部屋をつくれます。満たせない点が多いなら、住み替えを中心に考えましょう。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」(令和7年10月改正)(第17条)
住宅ローンの残高と今の家の売却額
4つめの基準は、住み替えるお金のめどが立つかです。
住み替えでは、今の家を売ったお金でローンを返し終える必要があります。まずは次の式で手取りを出します。
手取り = 売却額 −(ローン残高 + 売るときの費用)
手取りがプラスなら、その額を新しい家の頭金にできます。マイナスなら、差額を貯金で埋めるか、住み替えローンで借りることになります。
ローン残高が多く手取りがマイナスになる家族は、まず間取り変更で今の家に住み続け、ローンが減ってから住み替える方法もあります。
今の家の相場は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、同じマンションや近くの物件の取引価格を調べるとおおよそ分かります。
子供部屋の間取り変更で後悔しやすい点
間取り変更で子供部屋をつくった家族が、あとから後悔しやすい点は4つあります。どれも、工事の前に確かめれば防げるものです。
- 窓のない部屋になる
- エアコンとコンセントを増やせない
- 子どもの独立後に戻す費用がかかる
- 売るときに間取りの評価が分かれる
窓のない部屋になる
1つめの後悔は、窓のない部屋ができることです。
広い部屋を2つに分けると、窓が片方の部屋にしか残らない場合があります。窓のない部屋は暗く、風も通りにくくなります。夏は熱がこもり、冬は結露が出やすくなります。
建築基準法では、住宅の居室に、採光と換気のための窓を設けることが決められています。採光や換気の基準を満たさない部屋は、不動産の広告のルール(不動産の表示に関する公正競争規約)で、「納戸」などと表示されることになります。
一方で、建築基準法には、ふすまや障子のように、いつでも開け放せるもので仕切った2つの部屋は1つの部屋とみなす、という決まりもあります。
ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前三項の規定の適用については、一室とみなす。
(建築基準法 第28条第4項より)
窓のない側をつくるなら、引き戸で仕切る、壁の上に光を通す欄間や室内窓を付ける、といった工夫で、光と風を通しましょう。
エアコンとコンセントを増やせない
2つめの後悔は、新しい部屋にエアコンを付けられないことです。
マンションのエアコンは、外壁の穴(スリーブ)を通して室外機とつなぎます。外壁は躯体で、共用部分にあたります。新しい穴を自分の判断で開けることはできず、管理組合の判断になります。
標準管理規約の考え方では、スリーブの増設を禁止する例や、構造に関わらない部分に限って認める例が示されています。扱いはマンションごとに違うため、工事の前に管理組合に確かめておきます。
新しい部屋にスリーブがない場合は、エアコンのある部屋を子供部屋に割り当てるなど、部屋の分け方から見直すのが近道です。
コンセントや照明も、配線の位置によっては増やしにくいことがあります。工事の前に、電気の配線ルートも確かめておきましょう。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」(令和7年10月改正)(第7条・第17条関係コメント・別添2)
子どもの独立後に戻す費用がかかる
3つめの後悔は、子どもが独立した後、元の広い部屋に戻す費用がかかることです。
壁を立てて2部屋にした場合、戻すときは壁を壊し、床や天井、壁紙を張り直す工事が要ります。つくるときと同じくらいの費用になることもあります。
戻すつもりがあるなら、最初から戻しやすい方法を選んでおくのがおすすめです。
- 可動式の間仕切りや引き戸で仕切る
- 壁を立てる前に、床や天井の仕上げを部屋全体で済ませておく
- 照明やコンセントを、1部屋に戻したときにも使える位置に付ける
子どもが個室を使う年数と、その後の部屋の使い方を決めてから工事の方法を選ぶと、二度目の工事の費用を抑えられます。
売るときに間取りの評価が分かれる
4つめの後悔は、将来売るときに、間取りの評価が分かれることです。
子供部屋のために小さく分けた部屋は、買い手によって評価が変わります。子育て中の家族には部屋数の多さが喜ばれる一方、夫婦2人で住みたい買い手には、小さな部屋が並ぶ間取りは使いにくく見えます。
窓のない部屋やエアコンを付けにくい部屋は、部屋数に数えられず、広告で「納戸」などと表示されることもあります。
売る時期が近いなら、可動式の間仕切りなど、買い手が自分で使い方を決められる形にしておくと安心です。工事の前に、その間取りで売るときにどう見えるかを不動産会社に聞いておく方法もあります。
まとめ:部屋数だけなら間取り変更、広さや学区も変えたいなら住み替え
子供部屋が足りないだけで、今の学区や通勤に満足しているなら、間取り変更のほうが費用も毎月の支出も小さく済みます。広さや立地まで変えたいなら、諸費用とローンの増加を受け入れて住み替えるほうが、悩みをまとめて解決できます。
次の一歩は、管理組合に間取り変更の工事ができるかと、新しい部屋にエアコン用の穴(スリーブ)があるかを確かめることです。ここを飛ばして工事を頼むと、承認が下りない、エアコンを付けられないといった理由で、使いにくい子供部屋が残ることがあります。
あわせて、子どもごとに個室が要る年数を書き出し、今の家の相場も調べてみましょう。住み替えのトビラでは、間取り変更と住み替えの比べ方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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