マンションの住み替えは何年目がいい?5年・10年の税金と築年数の節目

マンションの住み替えは何年目がいい?5年・10年の税金と築年数の節目

マンションを買ってまだ数年なのに住み替えたくなったとき、何年目まで待てば損をしないのかは気になるものです。

実は、税金の5年・10年の節目は、3,000万円の特別控除があるため気にせずに済む人が多く、それより影響が大きいのは住宅ローン控除とローン残高の扱いです。

この記事では、住み替えた人の実際の年数から、税金・ローン・築年数の節目、損を抑える方法、時期の決め方までを、国税庁や国土交通省の資料で確かめながら順に見ていきます。

マンションを住み替える人が多い年数

マンションを買ってから何年目で住み替えるかは、数年で動く人から30年以上住んでから動く人まで、幅があります。

まずは、ほかの人が実際に何年目で動いているのかを、公的なデータで確かめておきましょう。

住み替えまでに住んでいた年数の実態

国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査」によると、持ち家から住み替えた世帯が、前の家に住んでいた年数の平均は次のとおりです。

住み替え先前の家に住んでいた平均年数
新築の分譲マンション29.3年
中古マンション28.9年

(三大都市圏・2023年度に住み替えた世帯)

平均は約29年。ただ、この数字は長く住んでから動いた世帯に引っ張られています。

前の家を2005年以降に手に入れた世帯、つまりおよそ20年以内に住み替えた世帯は、新築の分譲マンションを買った世帯で23.2%、中古マンションを買った世帯で24.6%いました。およそ4人に1人です。

なお、この調査の「前の家」には一戸建ても含まれます。平均より早く動く人も多いので、自分の住み替えが早すぎると心配しなくて大丈夫です。

出典: 国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」(分譲住宅・既存(中古)住宅「住み替え前の住宅の取得時期」)

中古マンションとして成約している築年数

売る側として気になるのは、自分のマンションが何年目まで買い手が付くかです。

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、2026年4〜6月期の首都圏の中古マンションの成約は1万1,849件。築年数ごとの内訳は次のとおりです。

築年数成約件数割合
築10年まで1,903件約16%
築10年超〜20年2,196件約19%
築20年超〜30年2,734件約23%
築30年超5,016件約42%

いちばん多いのは築30年超で、成約全体の4割を占めます。同じ時期の成約物件の平均築年数は27.70年です。

何年目に売りに出しても、買い手は付きます。年数で変わるのは、税金とローンの扱い、そして売れる価格です。次の章から、その節目を順に見ていきます。

出典: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況」(2026年4~6月) 出典: 東日本不動産流通機構「季報Market Watch 首都圏不動産流通市場の動向(2026年4~6月期)」

売却時の税金が変わる所有年数の節目

マンションを売って利益が出ると、その利益に税金がかかります。利益は次の式で計算します。

利益 = 売った価格 −(取得費 + 売るときにかかった費用)

この税金の重さは、所有年数で変わります。一方で、自分が住んでいた家には、所有年数に関係なく使える大きな特例もあります。節目と特例はセットで見ておきましょう。

所有5年以下は短期譲渡所得で税率が約2倍

所有5年以下で売った利益は「短期譲渡所得」、5年を超えると「長期譲渡所得」になります。

区分税率内訳
短期(5年以下)39.63%所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%
長期(5年超)20.315%所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%

利益が500万円なら、短期で約198万円、長期で約102万円。差はおよそ2倍です。

ここで見落としやすいのが、マンションの取得費が年々減っていくことです。買った価格のうち建物の部分は、住んだ年数に応じて価値が減ったものとして計算します(減価償却)。

取得費が減る例(仮定:鉄筋コンクリート造・建物部分2,000万円・5年住んだ場合)

  • 減った額 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率0.015 × 経過年数
  • 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 5年 = 135万円
  • 買った価格と同じ価格で売っても、計算上は約135万円の利益になる

自分の家で計算するときは、売買契約書で建物部分の価格を確かめ、上の式の2,000万円と5年を置き換えます。値上がりしていない家でも、計算上は利益が出ることがあります。税金がかかるかどうかは、この取得費まで含めて判断しましょう。

不動産売却の譲渡所得税の計算方法|5つのSTEPとモデルケースで解説 不動産売却の譲渡所得税の計算方法|5つのSTEPとモデルケースで解説

出典: 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」 出典: 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」

所有年数は売った年の1月1日時点で数える

短期か長期かを決めるのは、売った日の所有年数ではなく、売った年の1月1日時点の所有年数です。

2021年4月に引渡しを受けたマンションの場合

  • 2026年中に売る → 2026年1月1日時点で4年9か月 → 短期
  • 2027年中に売る → 2027年1月1日時点で5年9か月 → 長期

2026年5月に「5年たった」と思って売ると、短期の扱いになります。長期にするには、買ってから6回目の正月を迎えた年に売る必要があります。

もう1つ大事なのが「売った日」の決め方です。原則は買主に引き渡した日ですが、売買契約の日を売った日として申告することも選べます。年末に契約して年明けに引き渡す場合は、どちらの日で数えるかで短期と長期が分かれることがあります。

出典: 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」 出典: 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」 出典: 国税庁「所得税基本通達 法第36条〔収入金額〕関係」(36-12 山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)

所有10年超は軽減税率の特例を使える

自分が住んでいた家を売った年の1月1日時点で、建物と土地の所有年数がどちらも10年を超えていると、「軽減税率の特例」を使えます。

利益の部分税率
6,000万円以下の部分14.21%(所得税10%・復興特別所得税0.21%・住民税4%)
6,000万円を超える部分20.315%(通常の長期と同じ)

この特例は、次に説明する3,000万円の特別控除と重ねて使えます。

例えば利益が4,000万円なら、3,000万円を差し引いた残りの1,000万円に14.21%がかかり、税金は約142万円。軽減税率を使わない場合は約203万円なので、約61万円軽くなります。

10年の節目で得をするのは、大きく値上がりして、3,000万円を差し引いても利益が残る人です。

出典: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

3,000万円特別控除は所有年数を問わず使える

自分が住んでいた家を売ったときは、利益から最大3,000万円を差し引ける「3,000万円の特別控除」を使えます。この特例は、何年目で売っても使えます。国税庁も次のように書いています。

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。

(国税庁 タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」より)

利益が3,000万円以下なら、所有1年目で売っても税金は0円です。5年や10年の税率の差が関わってくるのは、利益が3,000万円を超える人。多くの人にとって、税率の節目は思っているより小さな問題です。

使うときの主な条件は次の3つです。

  • 売った翌年に確定申告をする
  • 売る相手が親子や夫婦など特別な関係の人以外である
  • 前年と前々年にこの特例を使っていない

そして、いちばん注意したいのが、この特例を使うと新しい家の住宅ローン控除が対象外になる点です。次の章で詳しく見ていきます。

マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較 マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

住宅ローンと住宅ローン控除で見た住み替えの注意点

所有年数が浅いうちの住み替えで、税金以上に影響が大きいのが住宅ローンです。確認したいのは、住宅ローン控除の残りの期間、新しい家の控除、ローン残高と売却価格の差の3つです。

住宅ローン控除の期間中に売ると残りの控除はなくなる

住宅ローン控除は、毎年の年末のローン残高に控除率をかけた額が、所得税(引ききれない分は住民税の一部)から戻る制度です。

控除率は2022年以降の入居で0.7%です。2021年までに入居した家は1%でした。控除期間は、新築なら原則13年、中古住宅なら10年です。2026年以降の入居からは、省エネ性能の高い中古住宅も13年に延びました。

控除を受けられるのは、その年の12月31日まで住み続けている年です。住み替えて住まなくなった年からは、残りの年数があっても控除は終わります。

入居5年目で住み替える例(仮定:2022年以降に入居した新築・控除期間13年)

  • 年末残高3,000万円なら、1年の控除は3,000万円 × 0.7% = 21万円
  • 13年の控除のうち、残り8年分を手放す
  • 残高が減っていく分を考えても、合計で100万円を超えることがある

自分の家の金額は、毎年の年末残高証明書の残高に控除率をかけて出せます。住み替えの損得を考えるときは、売却の利益や税金に加えて、この「受け取るはずだった控除」も、失う金額として数えておきましょう。

住み替えで住宅ローン控除は使える?2回目の条件と2026年改正を自己判定 住み替え(買い替え)で住宅ローン控除は使える?2回目の条件と2026年改正を自己判定

出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 国土交通省「住宅ローン減税」

3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除はどちらか一方になる

前の家を売って3,000万円の特別控除を使うと、新しい家の住宅ローン控除は対象外になります。

対象外になるのは、新しい家に入居した年と、その前2年・後3年の計6年間に、3,000万円の特別控除を使った場合です。10年超の軽減税率の特例を使った場合も同じ扱いです。

利益300万円・所有5年超の場合(仮定の例)

  • 3,000万円の特別控除を使う → 税金0円、新しい家の住宅ローン控除は対象外
  • 3,000万円の特別控除を使わない → 税金は300万円 × 20.315% = 約61万円、新しい家で住宅ローン控除を受けられる
  • 新しい家の年末残高が3,000万円なら、控除は1年で21万円。数年分で約61万円を上回る

利益が小さい人ほど、3,000万円の特別控除を使わずに税金を払い、新しい家で住宅ローン控除を受けたほうが得になることがあります。反対に、利益が大きい人は3,000万円の特別控除を使ったほうが得です。

新しい家の控除は、借入限度額(省エネ性能などで変わる)と、自分が納めている所得税・住民税の額の範囲までです。どちらが得かは、自分の数字で売る前に試算して決めましょう。

住宅ローン控除と買換え特例は併用できない|両取りの罠と選び方 住宅ローン控除と買換え特例は併用できない|両取りの罠と選び方

出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

入居から年数が浅いほどローン残高が売却価格を上回りやすい

住宅ローンは、最初の数年は返済のうち利息の割合が大きく、残高はゆっくり減っていきます。

4,000万円を35年・金利1.0%で借りた場合(仮定:元利均等返済・金利は全期間1.0%のまま)

  • 毎月の返済は約11.3万円
  • 5年間で返した合計は約677万円
  • そのうち元金が減ったのは約489万円で、残高は約3,511万円

一方、売るときには仲介手数料などの費用がかかります。仲介手数料の上限は「売買価格 × 3% + 6万円」に消費税を足した額で、4,000万円で売った場合は138万6,000円です。

新築で買った価格は、中古として売る価格より高めになる傾向があります。そのため、頭金が少なく入居から年数が浅い人ほど、売却額から費用を引いた手取りがローン残高に届きにくくなります。その差は、自己資金などで埋めてから売ることになります。

ここ数年は都市部を中心に値上がりが続き、築浅でも買った価格より高く売れる例も増えています。自分がどちらに当てはまるかは、返済予定表の残高と相場を並べて確かめましょう。

オーバーローンでも売却はできる|差額の埋め方と方法4つ マンションがオーバーローンでも売れる|不足額の計算・埋め方と税金

出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」

築年数で見たマンションの売り時の節目

所有年数とは別に、マンションそのものの築年数にも節目があります。築年数が進むと、売れる価格に加えて、修繕積立金や大規模修繕の負担も変わります。

東日本レインズの2026年4〜6月期の首都圏の中古マンションの成約データでは、1㎡あたりの成約価格は次のとおりです。

築年数1㎡あたりの成約価格
〜築5年153.1万円
築5〜10年130.9万円
築10〜15年124.4万円
築15〜20年97.7万円
築20〜25年93.1万円
築25〜30年76.7万円
築30年超47.1万円

この表は、築年数の違う別々のマンションを比べた数字です。新しいマンションほど駅の近くや都心に建っていることも多く、1つのマンションの価格の動きは、この表と違うことがあります。おおまかな傾向として見ておきましょう。

築10年までは価格が下がりやすい

新築マンションの価格には、広告や販売の費用と、「新築であること」への上乗せが含まれています。一度人が住むと中古として扱われるため、この上乗せの分だけ評価が下がりやすくなります。

上の表でも、〜築5年は1㎡あたり153.1万円、築5〜10年は130.9万円で、約15%の差があります。

ただ、価格が下がることと、買った価格より安く売ることは別の話です。首都圏の中古マンションの成約価格(1㎡あたり)は、2025年度まで13年連続で上がりました。築10年以内でも、買った価格より高く売れる例はよくあります。

築浅のうちに住み替えるなら、「築年数でどれだけ下がるか」より先に、「今の相場で買った価格を上回るか」を確かめましょう。

マンションの売り時は築年数で変わる|節目と維持費で測る マンションの売り時は築年数で変わる|節目と維持費で測る

出典: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況」(2026年4~6月) 出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年度)」

築12〜15年ごろは大規模修繕と修繕積立金の値上げが重なる

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」は、外壁の塗装や屋上の防水といった大規模修繕の周期を、一般的に12〜15年程度としています。築12〜15年ごろに1回目の大規模修繕を迎えるマンションが多いのは、このためです。

修繕積立金の集め方にも特徴があります。令和5年度マンション総合調査では、新築時に低く設定して段階的に上げる「段階増額積立方式」が47.1%で、毎月同じ額を集める「均等積立方式」の40.5%より多くなっています。1回目の大規模修繕の前後は、積立金の値上げや、足りない分を集める一時金の話が出やすい時期です。

売る側として知っておきたいのは、買い手は修繕積立金の額や長期修繕計画、積立金の残高を見てから買うということです。

  • 値上げが決まった後 → 毎月の負担が増えるぶん、買い手の評価は下がりやすい
  • 大規模修繕を終えた直後 → 外観がきれいになり、印象が良くなる

管理組合の総会資料で、修繕の予定と値上げの時期を確認してから、売る時期を決めましょう。

大規模修繕の前に売るか後に売るか|買主の見え方と工事中の内覧の工夫 大規模修繕の前に売るか後に売るか|買主の見え方と工事中の内覧の工夫

出典: 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定) 出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」

築20年を過ぎると設備の更新と2回目の大規模修繕が近づく

築20年を過ぎると、外壁や防水に加えて、建物の設備の更新が近づきます。長期修繕計画作成ガイドラインの修繕周期の例は次のとおりです。

工事周期の例
エレベーターの取替え26〜30年
給水管の取替え30〜40年

大規模修繕の周期が12〜15年なら、2回目は築24〜30年ごろに来ます。この時期は、修繕積立金がさらに上がったり、一時金を求められたりすることがあります。上の表でも、築25〜30年は1㎡あたり76.7万円、築30年超は47.1万円と、築20年台の後半から差が大きくなっています。

買い手の住宅ローンにも影響があります。金融機関によっては、築年数が古いほど借りられる期間を短くしたり、担保としての評価を低くしたりします。買い手が借りにくくなると、売れる価格にも響きます。

築20年を過ぎたマンションに住んでいるなら、2回目の大規模修繕の時期と積立金の残高を確かめ、負担が増える前に動くかどうかを考えておきましょう。

出典: 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定) 出典: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況」(2026年4~6月)

所有年数が短いうちに住み替えるときに損を抑える方法

買ってから年数が浅いうちの住み替えでも、時期と手順を工夫すれば損を小さくできます。ここでは、ここまでの節目をどう使うかを、手順で紹介します。

引渡しを所有5年超の年までずらす

所有5年の節目で得をするのは、次の2つに当てはまる人です。

  • 利益が3,000万円を超える人
  • 3,000万円の特別控除を使わず、新しい家で住宅ローン控除を受けるつもりの人

特に2つめの人は見落としがちです。3,000万円の特別控除を使わないなら、利益にそのまま税金がかかるので、短期か長期かで税金がおよそ2倍変わります。

手順は次の3つです。

  1. 買ったときの引渡し日を、売買契約書などで確認する
  2. 6回目の正月(1月1日)を迎える年を数える
  3. 売り出しの時期を逆算し、引渡しをその年の1月以降にする

売り出しから引渡しまでは数か月かかります。前の年の秋に売り出し、引渡しを年明けに設定すれば、早めに売り出しながら長期の扱いにできます。

売った日を引渡し日と契約日のどちらで数えるかは、確定申告の前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。

出典: 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」 出典: 国税庁「所得税基本通達 法第36条〔収入金額〕関係」(36-12 山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)

3,000万円特別控除と住宅ローン控除の有利な方を試算する

どちらの特例を使うかは、次の手順で比べます。

  1. 利益を計算する(売却額 −(減価償却後の取得費 + 売る費用))
  2. 3,000万円の特別控除を使わない場合の税金を出す(利益 × 短期39.63% または 長期20.315%)
  3. 新しい家で住宅ローン控除が戻る合計の見込みを出す(毎年の年末残高 × 0.7% を控除の年数分)
  4. 2と3を比べ、3のほうが大きければ住宅ローン控除を選ぶ

3の金額には上限があります。新しい家の借入限度額は、省エネ性能などで変わります。また、戻ってくるのは、自分が納めている所得税と住民税(上限あり)の範囲までです。年収によっては、計算上の金額より戻る額が少なくなります。

試算は、新しい家の売買契約の前に済ませておくのが理想です。どの家を選ぶかで、控除の金額が変わるからです。

出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 国土交通省「住宅ローン減税」

残債を自己資金か住み替えローンのどちらで埋めるか先に決める

まず、今の家を売ったときの手取りを出します。

手取り = 売却額 − 売る費用 − ローン残高

この手取りがマイナスになるなら、売る前に埋め方を決めておきます。家を売れるのは、ローンを返し終えて抵当権を外してからだからです。

埋め方内容注意点
自己資金貯金から不足分を出す新しい家の頭金が減る
住み替えローン不足分を新しい家のローンに上乗せする審査が厳しく、毎月の返済が増える

住み替えローンは手元のお金を残せる一方で、家の価格より多く借りることになります。そのぶん審査は厳しくなり、返済の負担も重くなります。

どちらを選ぶかで、新しい家の予算が変わります。売り出す前に、金融機関に相談しておきましょう。

住み替えローンは使えるか・使うべきか|売却額と残債で自分で判断する 住み替えローンは使えるか・使うべきか|売却額と残債で自分で判断する

貸してから売るなら住まなくなって3年目の年末までに売る

すぐに売ると損が出る場合、一度貸して時期を待つ人もいます。このとき気をつけたいのが、3,000万円の特別控除の期限です。

以前住んでいた家を売る場合、この特例を使えるのは次の期限までです。

以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。…)

(国税庁 タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」より)

2026年5月に住み替えた場合

  • 3年を経過するのは2029年5月
  • 売る期限は2029年12月31日

貸す場合は、ほかにも次の2点を押さえておきます。

  • 貸している間は、今の家の住宅ローン控除は対象外になる
  • 住宅ローンは本人が住むための融資なので、貸す前に金融機関の承諾が必要

貸して待つなら、売る期限と金融機関の承諾を先に確かめておきましょう。

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

何年目かより優先したい住み替えの判断基準

5年や10年の節目を待てば、税金が軽くなることはあります。でも、待っている間に失うものもあります。

節目を待つ得と、待つ間の損。この2つを比べて決めましょう。比べるときの基準は、次の3つです。

  • 家族の暮らしの変化に間に合うか
  • 新しい住宅ローンを組める年齢か
  • 今の相場で売った場合の手取り額

家族の暮らしの変化に間に合うか

住み替えのきっかけは、子どもの成長や入学、親との同居など、家族の変化であることが多いものです。こうした変化には期限があり、税金の節目とは別の時計で進んでいます。

例えば、子どもの小学校入学に合わせて学区を変えたいなら、入学前の3月までに引越しを終える必要があります。売り出しから引渡しまでは数か月かかるので、遅くとも前の年の夏から秋には動き始めたいところです。

待つことで得られる税金の差と、部屋が足りない、通学が遠いといった不便が続く期間。この2つを並べてみましょう。暮らしの不便はお金に表れにくいものの、家族にとっては大きな損になることがあります。

住み替えのタイミングはいつ?年齢・築年数・税金で見極める 住み替え(買い替え)のタイミングはいつ?年齢・築年数・税金で見極める

新しい住宅ローンを組める年齢か

住み替えで新しいローンを組むなら、年齢は大事な基準です。例えば【フラット35】の借入期間は、「80歳 − 申込時の年齢」と「35年」の短いほうが上限です。最長の35年で組めるのは、申込時45歳までです。

それを過ぎると、1年待つごとに借りられる期間が1年ずつ短くなります。

借入期間毎月の返済(仮定:4,000万円・金利1.0%・元利均等)
35年約11.3万円
30年約12.9万円
25年約15.1万円

40代後半で節目を待つと、税金で得をしても、毎月の返済が増えることがあります。

40代以上なら、待つことで借入期間がどれだけ短くなるかを、借りたい金融機関の条件で先に確かめておきましょう。

出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」

今の相場で売った場合の手取り額

最後の基準は、今売るといくら手元に残るかです。

手取り = 売却額 −(ローン残高 + 売る費用 + 税金)

相場は、年数の節目よりも大きく動くことがあります。首都圏の中古マンションの成約価格(1㎡あたり)は2025年度まで13年連続で上がりましたが、2026年4〜6月期は前年同期比0.3%の上昇と、伸びが小さくなっています。1年待つ間に相場が下がれば、税金の差より大きく手取りが減ることもあります。

まずは国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、同じマンションや近くの物件の取引価格を調べましょう。そのうえで複数の不動産会社に査定を頼み、手取りを計算します。

手取りが十分にあって、家族の事情も整っているなら、年数の節目を待たずに動くのも、十分に合理的な選び方です。

出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年度)」 出典: 東日本不動産流通機構「季報Market Watch 首都圏不動産流通市場の動向(2026年4~6月期)」 出典: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」

まとめ:マンションの住み替えは年数の節目より手取りと家族の事情で決める

自分が住んでいた家は、3,000万円の特別控除を所有年数に関係なく使えるので、利益が3,000万円以下なら5年・10年の税率の差は関わってきません。それより大きいのは、3,000万円の特別控除と新しい家の住宅ローン控除がどちらか一方になることです。

次の一歩は、売り出す前に、今の家の手取りと、2つの控除のどちらが得かを試算することです。ここを飛ばして確定申告で3,000万円の特別控除を使うと、新しい家の住宅ローン控除が対象外になり、数十万円単位の差がそのまま損になることがあります。

まずは返済予定表のローン残高と、管理組合の総会資料にある修繕積立金の予定を手元にそろえてみましょう。住み替えのトビラでは、所有年数で変わる税金や住宅ローン控除の選び方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。