「マンションの価格はそろそろ下がる」という予想を、この10年で何度も耳にしてきたのではないでしょうか。
実際には、首都圏の中古マンションの価格は10年で約1.8倍になり、2026年5月からは前の年を下回る月が続いています。
10年分の予想と実績を3つの記事で照らし合わせた結論をまとめ、過去の予想を今の住み替えの判断にどう生かすかまで解説します。
2026年、新築の価格は上がり続け、中古は5か月続けて前年を下回った
2026年の首都圏では、新築マンションの価格が上がり続ける一方で、中古マンションの価格は前の年を下回る月が続いています。
この10年、「マンションの価格はそろそろ下がる」という予想が何度も出るなかで、中古の価格は上がり続けてきました。その流れが、2026年に入って変わり始めています。
新築の平均価格は、2026年1〜6月に初めて1億円を超えた
2026年1〜6月に首都圏で売り出された新築マンションの平均価格は1億135万円で、半年の平均として初めて1億円を超えました。
不動産経済研究所によると、この平均価格は前の年の同じ時期より13.1%高くなっています。
一方で、売れ行きは鈍ってきています。2026年4〜9月の首都圏の新築の初月契約率(売り出した月のうちに契約が決まった割合)は62.8%で、好調とされる70%を下回ったままです。
価格が上がり続けるなかで、その価格で買える人は限られてきていると考えられます。
出典: 熊本日日新聞(共同通信配信)「首都圏マンション、初の1億円超 上半期、人手不足に資材価格高騰」(2026年7月21日)、不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年度上半期」
中古の成約㎡単価は、5月から前年を下回り続けている
首都圏で売れた中古マンションの成約㎡単価は、2026年5〜9月の5か月続けて、前の年の同じ月を下回りました。
成約㎡単価とは、実際に売れた中古マンションの1㎡あたりの価格で、東日本不動産流通機構(レインズ)が毎月まとめています。9月の成約㎡単価は81.07万円で、前の年の同じ月より4.8%低くなっています。
在庫件数(売れ残っている物件の数)も、9月は前の年の同じ月より15.1%増えました。
ただし、地域ごとの動きには差があります。例えば東京23区では、成約㎡単価がほぼ横ばいだった月もあります。
首都圏の平均が下がった理由は、金利上昇と人口減少の説を実績と照らし合わせた記事で、地域ごとに分けて解説しています。
出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 マーケットウォッチ サマリーレポート 2026年9月度」
この10年で、首都圏の中古マンションの価格は約1.8倍になった
首都圏で売れた中古マンションの1㎡あたりの価格は、2015年から2025年までの10年で約1.8倍になりました。
自宅を売るときの価格は、中古マンションの相場で決まります。2026年の変化を考える前に、この10年の上がり方を見ておきましょう。
首都圏の中古の成約㎡単価は、2015年から2025年まで毎年上がった
首都圏の中古マンションの成約㎡単価は、2015年から2025年まで、毎年前の年を上回りました。
レインズの統計で、各年の成約㎡単価と前の年からの上がり方をまとめると、次のとおりです。
| 年 | 成約㎡単価 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2015年 | 45.25万円 | +6.5% |
| 2016年 | 47.89万円 | +5.8% |
| 2017年 | 50.00万円 | +4.4% |
| 2018年 | 51.61万円 | +3.2% |
| 2019年 | 53.45万円 | +3.6% |
| 2020年 | 55.17万円 | +3.2% |
| 2021年 | 59.81万円 | +8.4% |
| 2022年 | 67.24万円 | +12.4% |
| 2023年 | 71.90万円 | +6.9% |
| 2024年 | 76.88万円 | +6.9% |
| 2025年 | 82.98万円 | +7.9% |
2021年以降は上がり方が大きくなり、2022年には1年で12.4%上がりました。
ただし成約㎡単価は、その年に売れた物件の場所や古さによっても上下します。
国土交通省の不動産価格指数(マンション・全国)は、物件の広さや築年数などの影響を取り除いて計算されています。この指数でも、2015年12月の123.4から2025年12月の225.1へ、同じく約1.8倍になりました。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-① 中古マンションの基本指標[首都圏]」、国土交通省「不動産価格指数(2025年12月分)」、同「不動産価格指数(2015年12月分)」
70㎡の部屋で計算すると、10年で約2,600万円の値上がり
首都圏の平均の成約㎡単価を70㎡の部屋に当てはめると、10年で約2,600万円上がった計算になります。
【モデルケース】首都圏の70㎡の中古マンションの価格の目安
- 2015年:70㎡ × 45.25万円 = 約3,168万円
- 2025年:70㎡ × 82.98万円 = 約5,809万円
- 差:約5,809万円 − 約3,168万円 = 約2,641万円
※2015年と2025年の首都圏の平均の成約㎡単価に70㎡を掛けた目安で、売るときの費用・ローンの残り・税金を除いた金額です。
2つの年の成約㎡単価に、70㎡の代わりに自宅の広さを掛ければ、首都圏の平均で見た自宅の値上がりの目安がわかります。
ただし、値上がりの幅は、地域と築年数によって大きく違います。自宅のある地域の、この10年の価格の推移は、地域や駅を選んで調べられます。調べ方は、次の記事で解説しています。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-① 中古マンションの基本指標[首都圏]」
10年分の予想と実績を照らし合わせた、3つの記事の結論
住み替えのトビラでは、この10年に出たマンション価格の予想や説を、3つの記事で実績と照らし合わせました。
ここでは、各記事の結論を短くまとめます。
3つの記事で扱った予想や説と、その後の実績
3つの記事で照らし合わせた予想や説は、どれも、その後の出来事や制度、人の動きによって前提が変わりました。
それぞれの予想とその後の実績を、次の表にまとめました。
| 予想・説 | 言われた時期 | その後の実績 | 実績との差の主な理由 |
|---|---|---|---|
| 新築の供給の予想 | 毎年12月ごろ | 2019〜2025年の7年のうち6年で、実績が予想を下回った | 建築費の上昇、土地の不足、売り手が売り出す量を絞ったこと |
| 出来事をきっかけにした暴落説 | 2015〜2020年 | 五輪後・生産緑地・コロナのどれのあとも、年ごとの価格は上がり続けた | 新築の少なさなどの需給の力と、制度や売り手の動きで前提が変わったこと |
| 金利上昇・人口減少の説 | 2016年〜 | 2025年までは上がり続け、2026年5月から中古が前年割れ | 答えはまだ出ていない |
予想は、出された時点の前提が続くとして立てられています。その前提が続くかは、予想を出したあとの出来事や制度、人の動きで決まります。
新築の発売戸数は、7年のうち6年で予想を下回った
首都圏の新築マンションの発売戸数は、2019〜2025年の7年のうち6年で、不動産経済研究所の予想を下回りました。
予想との差を7年分合わせると約3万戸で、2025年の1年間に売り出された戸数の約1.4倍にあたります。
新築が予想ほど増えなかった理由は2つあります。1つは、建築費の上昇や土地の不足で、売り手が出したくても出せなかったことです。もう1つは、売り手が売れ行きに合わせて、売り出す量を絞ったことです。
新築が少なく高くなったことで、中古を選ぶ買い手が増え、中古の価格も上がりました。
出典: 不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(年間のまとめ)」
暴落説が挙げた3つの出来事のあとも、価格は上がり続けた
「暴落する」と言われた五輪、生産緑地の2022年問題、コロナ禍の3つの出来事のあとも、マンションの価格は上がり続けました。
例えば東京23区の中古の成約㎡単価は、五輪の年の2021年から2025年までに44%上がっています。
どの説にも、価格が下がるとみる根拠はありました。それでも、新築の少なさや住宅ローンの金利の低さなど、価格を押し上げる力のほうが強く働いたと考えられます。
生産緑地とコロナ禍の説では、説が置いていた前提も変わりました。生産緑地では、法改正で農地のまま残せる期間が延びました。コロナ禍では、買い手と同じように売り手も売り出しを控えました。
その結果、どの説でも、想定された「売り物があふれる」場面は起きずに終わりました。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-③ 中古マンションの基本指標[都区部]」
金利と人口減少の説は、これからの実績で答えが出る
「金利が上がれば下がる」「人口が減れば下がる」という2つの説の答えは、これからの実績で決まります。
日本銀行は2024年にマイナス金利を解除し、その後も政策金利(日本銀行が決める、世の中の金利の目安になる金利)を少しずつ引き上げてきました。それでも、首都圏の中古マンションの価格は2025年まで上がり続けました。政策金利は、2026年9月には1.25%まで上がっています。
ところが2026年5月からは、首都圏の中古の成約㎡単価が前の年を下回っています。売れ残っている物件の数も増えています。
人口減少の説では、空き家率の予測と実績も照らし合わせました。2023年の空き家率について、野村総合研究所の予測は、前提の置き方で17.4%と14.1%に分かれていました。
2023年の空き家率の実績は13.8%でした。予測との差の主な理由は、世帯数が予測より増えたことです。
出典: 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)、野村総合研究所「2040年の住宅市場と課題」(第357回NRIメディアフォーラム・2023年6月22日)、同「2040年度の新設住宅着工戸数は58万戸に減少、2043年の空き家率は約25%まで上昇する見通し」(2024年6月13日)
新築・金利・空き家の最新の見通しと、その前提
最新の見通しは、何を前提にしているかとあわせて読むと、この先の価格を考えるときに役立ちます。
ここでは、新築の供給、金利、空き家について、主な発表元の最新の見通しを、前提と途中の実績とあわせて紹介します。
不動産経済研究所は、2026年の新築の価格上昇を「一服」とみていた
不動産経済研究所は2025年12月の予測で、首都圏の新築マンションは、2026年に価格の上昇が一服するとみていました。
その理由として同研究所は、建築費は一段と上がっているものの、売り出される物件のうち価格の高い東京23区の物件の割合が下がることを挙げていました。同じ予測で、2026年の首都圏の発売戸数は2万3,000戸としています。
ところが2026年の新築の価格は、ここまでのところ、この見通しとは逆に上がっています。2026年1〜6月の首都圏の新築の平均価格は1億135万円で、前の年の同じ時期より13.1%上がりました。
見通しの前提だった東京23区の物件の割合がどう変わったかは、例年1月に発表される年間のまとめで、2026年1年間の実績が出たときに確かめられます。
出典: 不動産経済研究所「首都圏・近畿圏マンション市場予測 2026年の供給予測」(2025年12月23日)、熊本日日新聞(共同通信配信)「首都圏マンション、初の1億円超 上半期、人手不足に資材価格高騰」(2026年7月21日)
日本銀行は、政策金利をさらに引き上げる方針を示している
日本銀行は、2026年9月に政策金利を引き上げたあとも、経済・物価・金融の情勢に応じて、さらに引き上げていく考えを示しています。
2026年9月18日の決定では、政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げました。引き上げの時期やペースは、海外の情勢や為替相場の影響などを確かめながら決めるとしています。
政策金利が上がると、変動金利型の住宅ローンの金利も上がりやすくなります。
住宅ローンの金利が上がれば、同じ月々の返済額で借りられる金額は小さくなります。そうなると、高い価格の物件は売れにくくなります。
出典: 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
野村総合研究所は、2043年の空き家率を約25%とみている
野村総合研究所は2025年6月に、全国の空き家率が2043年に25.6%まで上がるという予測を出しました。2023年の空き家率の実績は13.8%です。
この予測は、古い住宅の取り壊しが今の水準のまま続くことを前提にしています。世帯数の見通しも、予測の前提の一つです。
国立社会保障・人口問題研究所は、全国の世帯数が2030年の5,773万世帯でピークを迎え、その後は減っていくと推計しています。
この予測が示すのは、全国の数字です。長い目で自宅の価格を考えるときは、自宅のある市区町村が公表している人口や世帯数の推移も見ておくとよいでしょう。
出典: 野村総合研究所「2040年の住宅市場と課題」(第395回NRIメディアフォーラム・2025年6月12日)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」
過去の予想を、今の住み替えにどう生かすか
過去の予想と実績の差から、住み替えの判断に使える考え方がいくつか得られます。
ここでは、自宅を売って次の家を買う人に向けて、その考え方を3つにまとめます。
予想を読むときは、数字より先に前提を見る
予想を読むときは、数字より先に何を前提にしているかを見ておくと、その数字に振り回されずに判断できます。
予想を読むときに確かめる3つのこと
- 予想の前提(何が続くと仮定しているか)
- 予想の対象(新築か中古か、地価全体か)
- 途中の実績(中古の成約㎡単価と在庫件数の前年比)
前提を見ておくのは、前提が変わると、実績が予想から離れるからです。例えば新築の発売戸数は、建築費の上昇で売り手が計画を見送ったことで、予想を下回りました。生産緑地の暴落説では、法改正で農地のまま残せる期間が延び、前提そのものが変わりました。
対象を見ておくのは、新築と中古で価格の動きが違うことがあるからです。2026年は、新築の価格が上がる一方で、中古の価格は前の年を下回っています。
途中の実績は、レインズが毎月出している「マーケットウォッチ」で確かめられます。首都圏の中古の成約㎡単価と在庫件数を前の年の同じ月と比べれば、予想の前提が今も続いているかを判断できます。
住み替えで手元に残るお金は、売る家と買う家の価格の差で決まる
住み替えで手元に残るお金は、自宅が売れる価格の高さより、次の家の価格との差で決まります。
売る家も買う家も、同じ時期の相場で価格が決まるからです。
例えば同じ地域で同じくらいの家に買い替えるなら、価格が下がるのを待っても、売る家と買う家の価格は同じように下がります。一方、中古を売って新築を買う人にとっては、中古の価格が下がり、新築の価格が上がっている2026年の状態は不利です。
まずは自宅について、「売れる価格 − ローンの残り − 売るときの費用」で手元に残る額を出し、次の家の価格と比べておきましょう。売りと買いのどちらを先にするかでも、お金のやりくりは変わります。
住み替えを決める前に、近くで売れた価格と査定で自宅の今の価格を知る
住み替えを決める前に、近くで売れたマンションの価格と不動産会社の査定で、自宅の今の価格を知っておきましょう。
予想も統計も、首都圏全体の平均の話です。自宅の価格は、立地や築年数、広さで大きく変わります。
近くで実際に売れたマンションの価格は、レインズの「レインズ・マーケット・インフォメーション」や、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。
そのうえで不動産会社に査定を頼むと、自宅がいくらで売れそうかがわかります。査定は、売ると決める前でも頼めます。
査定額は会社によって差が出るので、複数の会社に頼み、金額とその根拠を比べるとよいでしょう。一括査定サイトを使えば、1回の入力で複数の会社にまとめて査定を頼めます。
出典: 東日本不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」、国土交通省「不動産情報ライブラリ」
まとめ:予想は前提とあわせて読み、自宅の今の価格から住み替えを考える
この10年のマンション価格の予想は、新築の供給の少なさや制度の変更など、出したあとに前提が変わったことで、実績との差が生まれてきました。予想の数字は、何を前提にしているかとあわせて読むことが大切です。
住み替えを考えるなら、まず近くで売れたマンションの価格と査定で自宅の今の価格を知り、次の家の価格との差を計算しておきましょう。ここを飛ばすと、予想や首都圏全体の平均だけで、売るか待つかを決めることになります。
あわせて、中古の成約㎡単価と在庫件数が毎月どう動いているかも、確かめておきたい点です。住み替えのトビラでは、マンション価格の予想と実績の10年分の照らし合わせも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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