「マンション価格はそろそろ下がる」と言われ続けたこの10年で、首都圏の中古マンションの価格は約1.8倍に上がりました。
その背景には、毎年の予想より少なくしか売り出されてこなかった新築マンションがあります。
新築の予想と実績のずれから価格が上がり続けた理由を読み解き、自宅を売って住み替え(買い替え)をするときの考え方まで解説します。
新築マンションの発売戸数は、7年間で予想を約3万戸下回った
首都圏で売り出される新築マンションは、ここ7年、ほぼ毎年予想より少なくなっています。
一方で、新築の価格は、売り出される戸数が減るなかでも上がり続けています。
発売戸数は、7年のうち6年で予想を下回った
2019〜2025年の7年間のうち6年で、実際に売り出された新築マンションの戸数が予想を下回りました。
予想を発表しているのは、民間の調査機関の不動産経済研究所です。同研究所は毎年12月ごろ、翌年に首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で売り出される新築マンションの戸数を予想しています。
各年の予想と、実際に売り出された戸数を並べると、次のようになります。
| 年 | 予想 | 実績 | 予想との差 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 3万7,000戸 | 3万1,238戸 | −5,762戸 |
| 2020年 | 3万2,000戸 | 2万7,228戸 | −4,772戸 |
| 2021年 | 3万2,000戸 | 3万3,636戸 | +1,636戸 |
| 2022年 | 3万4,000戸 | 2万9,569戸 | −4,431戸 |
| 2023年 | 3万2,000戸 | 2万6,873戸 | −5,127戸 |
| 2024年 | 3万1,000戸 | 2万3,003戸 | −7,997戸 |
| 2025年 | 2万6,000戸 | 2万1,962戸 | −4,038戸 |
| 7年の合計 | 22万4,000戸 | 19万3,509戸 | −3万491戸 |
2021年に実績が予想を上回ったのは、コロナ禍で2020年に止まっていた売り出しが再開したためと考えられます。
2020年の予想は、コロナ禍が始まる前の2019年12月に出されていました。この年は、緊急事態宣言の間に売り手が販売の営業を控えたため、売り出しが大きく減っています。
予想との差を7年分合わせた約3万戸は、2025年の1年間に売り出された戸数(2万1,962戸)の約1.4倍にあたります。
出典: 不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(年間のまとめ)」、同「2023年のまとめ」、同「2024年(年間のまとめ)」、同「2022年のまとめ」、同「2018年のまとめ」、不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向 2019年のまとめ」、同「首都圏・近畿圏マンション市場予測 2021年の供給予測」、時事通信「マンション価格、過去最高=6260万円」(2022年1月25日)
価格は、発売戸数が減っても上がり続けた
発売戸数が予想を下回っていた7年間も、新築マンションの価格は上がり続けました。
首都圏の新築の平均価格は、2019年の5,980万円から2025年の9,182万円へ、約1.5倍になっています。1㎡あたりの価格も、2021年の93.6万円から2025年の139.2万円へ上がりました。
価格が上がっても、新築はよく売れていました。売れ行きの目安になる「初月契約率」(売り出した月のうちに契約が決まった割合)は、70%を超えると好調とされます。
首都圏の初月契約率は、2021〜2023年に73.3%、70.4%、70.3%と、70%台を保ちました。2024年からは60%台に下がっており、高い価格に買い手の予算が追いつきにくくなってきたと考えられます。
よく売れていたのに、なぜ新築は予想ほど増えなかったのでしょうか。
出典: 不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(年間のまとめ)」、同「2023年のまとめ」、同「2022年のまとめ」
新築は「出せなかった」のか「出さなかった」のか
新築マンションが予想ほど増えなかった理由は、大きく2つあります。
1つは、建築費の上昇や土地の不足で、売り手が出したくても出せなかったことです。もう1つは、売り手が売り出す量を自分で絞ったことです。
また、量を絞っても売れたのは、高い価格でも買える人が増えていたからです。
建築費が上がり、出したくても出せなかった
建築費が大きく上がると、売り手は予定していたマンションを計画どおりに売り出せなくなります。
建設物価調査会の建築費指数では、東京の鉄筋コンクリート造の集合住宅は、2015年を100として2024年に132まで上がりました。2020年から2024年の4年間だけでも、26%上がっています。
建築費が上がった主な原因は、資材の値上がりと、工事を担う職人の不足です。職人が足りないと人件費が上がり、その分も建築費に加わります。
売り手は、建築費が上がった分を売り出す価格に上乗せします。その価格で売れる見込みが立たなければ、売り手は工事を始める前に計画を見送ります。
こうして、予想を出した時点では売り出す予定だった物件の一部が、延期や中止になったと考えられます。
出典: ニッセイ基礎研究所「『新築マンション価格指数』でみる東京23区のマンション市場動向【2024年】」(2025年4月17日)
マンションに合う土地が手に入りにくくなった
都心ほど、マンションを建てられる土地が手に入りにくくなっています。
土地総合研究所が、マンションなどを分譲する会社に土地の取得件数を聞いた調査では、「減った」という答えが「増えた」を上回る状態が続いています。
ホテルやオフィスを建てる会社も、マンションに合う広さと立地の土地を買おうとします。とくに都心では、ホテルを建てるために土地を買う動きも強まりました。
売り手が土地を高く買えば、その分も建築費と同じように売り出す価格に上乗せされます。
東京23区の新築の発売戸数は、2019年の1万3,737戸から2025年の8,064戸へ、約4割減りました。首都圏全体の減り方は約3割なので、都心ほど大きく減ったことになります。土地の取り合いが、その一因と考えられます。
出典: ニッセイ基礎研究所「『新築マンション価格指数』でみる東京23区のマンション市場動向【2024年】」(2025年4月17日)、不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(年間のまとめ)」、同「2023年のまとめ」
売れ行きに合わせて戸数を絞れば、価格は下がりにくい
売り手が売れ行きに合わせて売り出す戸数を絞ると、新築の価格は下がりにくくなります。
大きなマンションの場合、売り手は「第1期」「第2期」と何回かに分けて売り出すのが一般的です。前の期の売れ行きを見て、次に売り出す戸数と価格を決めます。
売れ行きが鈍いときも、売り手は値下げをせずに、次の売り出しまでの間を空けて時間をかけて売ることがよくあります。値下げをすれば、先に高い価格で買った人は損をしたと感じます。そうなると、マンションの評判にも傷がつきます。
一度に売り出す戸数が少なければ売れ残りが出にくいので、売り手は価格を保てます。ニッセイ基礎研究所も、売り手は建築費の上昇や用地の不足を理由に、売り出す戸数を慎重に決めているとみています。
売り手がこうして価格を保ったことも、新築の価格が上がり続けた理由の一つと考えられます。
出典: ニッセイ基礎研究所「『新築マンション価格指数』でみる東京23区のマンション市場動向【2024年】」(2025年4月17日)
戸数を絞っても売れたのは、高い価格でも買える人が増えたから
新築が少なく高くなっても売れた背景には、高い価格でも買える世帯の増加があります。
1つ目は、住宅ローンの金利の低さです。金利が低ければ、月々の返済額が同じでも、より大きな金額を借りられます。
実際、国土交通省の調査では、金利の低い変動金利型を選ぶ人が増えています。新しく貸し出された住宅ローンのうち変動金利型の割合は、2019年度の63.1%から2023年度には84.3%になりました。
2つ目は、共働き世帯の増加です。2025年の共働き世帯の数は1,587万世帯で、専業主婦世帯の数(533万世帯)の約3倍です。
夫婦2人に収入があれば、1人の収入のときより大きな金額を借りられます。夫婦がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンを使う世帯も増えています。
ただし、金利は2024年から上がり始めました。金利が上がれば借りられる金額は小さくなるので、高い価格で買える人が減る可能性もあります。
出典: 国土交通省「住宅ローン、変動金利型の割合が継続的に増加」(2025年3月31日)、労働政策研究・研修機構「統計情報Q&A 専業主婦世帯、共働き世帯」
新築の不足が、あなたのマンションの価格も押し上げた
新築の供給が減ったこの10年で、中古マンションの価格も大きく上がりました。
自宅を売るときは、中古マンションの相場で値段が決まります。その中古の相場を押し上げたのが、新築の不足です。
中古マンションの価格は、10年で約1.8倍になった
首都圏で実際に売れた中古マンションの1㎡あたりの価格は、この10年で約1.8倍になりました。
東日本不動産流通機構(レインズ)は、不動産会社が取引した物件の情報を集めている団体です。
レインズの統計によると、首都圏で売れた中古マンションの1㎡あたりの価格(成約㎡単価)は、2015年の45.25万円から2025年の82.98万円に上がりました。
ただし成約㎡単価のような平均の値は、その年に売れた物件の場所や古さによっても上下します。そこで、物件の広さや築年数などの違いによる影響を取り除いて計算した、国土交通省の不動産価格指数(マンション)も見てみましょう。
この指数も、2015年12月の123.4から2025年12月の225.1へ、約1.8倍に上がりました。
首都圏の平均の成約㎡単価を、70㎡の部屋に当てはめると次のようになります。
- 2015年は、70㎡ × 45.25万円 = 約3,168万円
- 2025年は、70㎡ × 82.98万円 = 約5,809万円
70㎡の部屋の価格は、10年で約2,600万円上がった計算です。自宅の広さで同じ計算をすれば、首都圏の平均で見た値上がりの目安がわかります。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-① 中古マンションの基本指標[首都圏]」、国土交通省「不動産価格指数(2025年12月分)」、同「不動産価格指数(2015年12月分)」
新築に手が届かない人が、中古を選ぶようになった
新築の価格が上がり、数も少なくなるなかで、多くの買い手が中古を選ぶようになりました。
2025年の首都圏の1㎡あたりの価格は、新築が139.2万円、中古が82.98万円でした。中古なら、同じ広さの部屋を新築の6割ほどの価格で買えます。
新築をあきらめて中古を探す人が増えれば、中古は高い値段でも売れるようになります。
新築の価格は、近くの中古の値段の目安にもなります。例えば近くの新築が1億円で売り出されていれば、買い手には、少し古い同じくらいの広さの部屋が8,000万円でも割安に見えます。
こうして新築の不足と値上がりが、中古マンションの値段を押し上げてきました。
出典: 不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(年間のまとめ)」、東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-① 中古マンションの基本指標[首都圏]」
中古マンションの値上がりは、地域と築年数で大きく違う
中古マンションの値上がりの大きさは、場所と築年数によって大きく違います。
東京23区の中古の成約㎡単価は、2015年の67.40万円から2025年の130.75万円へ、約1.9倍になりました。同じ期間に、多摩地域は37.25万円から55.51万円へ、約1.5倍の上昇です。
直近の2年間(2023〜2025年)では、地域の差がさらに広がりました。東京23区の成約㎡単価が約24%上がった一方で、埼玉県は約2%、千葉県は約5%の上昇にとどまっています。
築年数による差も大きくなっています。2025年の首都圏の成約㎡単価は、築5年以内の物件が143.64万円で、築31年以上の物件(45.28万円)の約3倍です。
自分の部屋の値段を考えるときは、首都圏の平均ではなく、同じ地域で同じくらいの築年数の物件の値段を目安にするとよいでしょう。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-③④ 中古マンションの基本指標[都区部][多摩]」、同「表15 中古マンションの築年帯別状況」
新築が少ない今、住み替えをどう考えるか
新築が少なく価格が高い今は、自宅を高く売れる一方で、次に買う家も高くなります。
ここでは最新の見通しとあわせて、自宅を売って次の家を買うときに知っておきたい見方を紹介します。
2026年も新築は少ないまま、売れ行きは鈍り始めた
首都圏の新築は2026年も少ないままですが、売れ行きは鈍り始めています。
不動産経済研究所は、2026年の供給戸数を首都圏で2万3,000戸、東京23区で8,000戸と予想しています。首都圏の2万3,000戸は、2025年の発売戸数(2万1,962戸)とほぼ同じ水準です。
同研究所は、建築費がさらに上がっていることも指摘しています。
実際に2026年4〜9月に首都圏で売り出された新築は8,601戸で、前年の同じ時期より6.0%減りました。平均価格は1億1,494万円で、前年の同じ時期より21.1%上がっています。
ただ、同じ時期の新築の初月契約率は62.8%で、好調とされる70%を下回ったままです。首都圏の中古マンションの成約㎡単価も、2026年5〜7月に3か月続けて前年の同じ月を下回りました。
この先の変化は、新築の発売戸数と初月契約率、中古の成約㎡単価の前年比に表れます。不動産経済研究所とレインズがそれぞれ毎月発表しているので、売り時を考えるときの手がかりになります。
出典: 不動産経済研究所「首都圏・近畿圏マンション市場予測 2026年」、同「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年度上半期」、東日本不動産流通機構「マーケットウォッチ 2026年7月度」
自宅が値上がりしても、次の家も同じように高くなっている
自宅が値上がりしていても、次に買う家も同じように値上がりしています。
売る家も買う家も、同じ時期の相場で値段が決まるからです。そのため住み替えで手元に残るお金は、売れる価格の高さより、次の家の価格との差で決まります。
【モデルケース】東京23区の70㎡の中古マンションを売って住み替える場合
この部屋の売値を、2025年の東京23区の中古の成約㎡単価(130.75万円)で計算すると、約9,153万円になります。住み替え先ごとの価格の目安と、売値との差は次のとおりです。
| 住み替え先 | 次の家の価格の目安 | 売値との差 |
|---|---|---|
| 東京23区の中古70㎡ | 約9,153万円 | ほぼ0円 |
| 東京23区の新築70㎡ | 約1億4,763万円 | 約5,610万円足りない |
| 埼玉県の中古70㎡ | 約3,024万円 | 約6,129万円残る |
※2025年の平均の㎡単価(23区の新築210.9万円、埼玉県の中古43.20万円)に70㎡を掛けた目安で、売るときの費用・ローンの残り・税金を除いた金額です。
同じ地域で同じ広さの家に買い替えると、自宅が値上がりした分は、そのまま次の家の代金に回ります。値上がりした分を手元に残せるのは、住む場所や広さを変えて、次の家の価格を抑えたときです。
自宅について計算するときは、「売れる価格 − ローンの残り − 売るときの費用」で手元に残る額を出し、次の家の価格と比べておきましょう。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)表1-③ 中古マンションの基本指標[都区部]」、同「表15 中古マンションの築年帯別状況」、不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(年間のまとめ)」
自宅の今の価格は、近くの物件が売れた価格と査定で確かめる
自宅の今の価格は、近くで売れた物件の価格と、不動産会社の査定で確かめておくと安心です。
相場の統計は、たくさんの取引をならした平均の値です。同じ地域で同じ広さの部屋でも、駅からの距離や階数、部屋の向き、管理の状態によって、値段は数百万円単位で変わります。
まずは「レインズ・マーケット・インフォメーション」や国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、近くで実際に売れたマンションの価格を調べてみましょう。どちらも、地域や広さを選んで、過去に売れた価格を無料で見られます。
そのうえで不動産会社に査定を頼むと、自宅がいくらで売れそうかがわかります。その金額を使えば、住み替えで手元に残るお金を具体的に計算できます。査定は、売ると決める前でも頼めます。
査定額は会社によって差が出るので、複数の会社に頼み、金額とその根拠を比べるとよいでしょう。一括査定サイトを使えば、1回の入力で複数の会社にまとめて査定を頼めます。
出典: 東日本不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」、国土交通省「不動産情報ライブラリ」
まとめ:新築の不足が価格を押し上げ、住み替えの損得は差額で決まる
マンションの価格が上がり続けた大きな理由は、新築の不足です。新築が予想より約3万戸少なかった分、買い手が中古に集まり、中古の価格も上がりました。
住み替えを考えるなら、まず近くで売れた価格と査定で自宅の今の価格を知り、次の家の価格との差を計算しておきましょう。ここを飛ばすと、相場の平均だけを見て、手元に残るお金を多く見積もってしまいます。
あわせて、新築の初月契約率や中古の成約㎡単価が毎月どう動いているかも、確かめておきたい点です。住み替えのトビラでは、マンション価格の過去の予想と実績の検証も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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