新築で買ったマンションの査定が買った値段を下回ると、「今売ったら大損だ」と売るのをためらう人も多いでしょう。
ところが、家賃と比べた本当の損や、税金で戻るお金まで計算すると、損の見え方は大きく変わります。
この記事では架空のAさんの数字で、売る日を年明けにずらすだけで約120万円変わる理由と、売るか待つかの決め方を紹介します。
「買値割れ」は本当か?2026年は買値以上で売れる家と、買値を割る家に分かれている
首都圏では、マンションを買った時期と家の場所によって、買った値段より高く売れる人と安く売ることになる人に分かれます。
「マンションは買った瞬間から値下がりする」とよく言われます。ところが、ここ10年ほどの首都圏では値上がりが続き、買った値段より高く売れる家のほうが多くありました。
その首都圏の中古マンションの値段が、2026年に入って下がり始めています。値段が高くなってから買った人ほど、買った値段を割りやすくなっています。
10年続いた相場の上昇で、新築時より高く売れるマンションが多かった
2013年前後に新築で売り出された首都圏のマンションは、築10年ほどたっても、新築時より約4割高い値段で売りに出ていました。
東京カンテイ(不動産のデータ会社)は、築10年ほどのマンションが中古で売りに出ている値段を、新築時の値段と比べています。2023年の調査の結果は、次のとおりです。
| 2023年の調査(首都圏の445駅) | 結果 |
|---|---|
| 新築時の値段を100としたときの平均 | 139.5 |
| 新築時の値段を下回った駅 | 8駅(全体の1.8%) |
| 新築時より1割以上下がった駅 | 0駅 |
築10年ほどたっても、ほとんどの駅のマンションが新築時より高い値段で売りに出ていたことになります。
ただし、この調査の対象は2013年前後に売り出されたマンションです。値段が上がり始める前に買った人は、その後の値上がりの分だけ得をしました。
一方、2020年代に値段が上がりきってから買った家は、そこからさらに値上がりする余地が小さいと考えられます。2020年代に買った人は、この10年のデータを「上がり始める前に買った人の結果」として読むとよいでしょう。
出典: 東京カンテイ「2023年 中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」
2026年、首都圏の中古マンションの値段が下がり始めた
首都圏で売れた中古マンションの1㎡あたりの値段は、2026年5月に、前の年の同じ月を73か月ぶりに下回りました。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ。不動産会社が売れた値段を登録する機関)がまとめた2026年5月の数字は、次のとおりです。
| 2026年5月に首都圏で売れた中古マンション | 値段 | 前の年の同じ月と比べた動き |
|---|---|---|
| 1㎡あたりの値段 | 80.78万円 | 3.9%下落 |
| 1件あたりの値段 | 5,067万円 | 4.6%下落 |
東京カンテイの調べでも、東京23区の中古マンションの値段(70㎡あたり)が、2026年6月に前の月より0.8%下がりました。前の月を下回ったのは、26か月ぶりです。
値段の下落は始まったばかりで、この先の動きを予想するのは難しい段階です。それでも、買った値段まで戻るのを待ってから売ろうとすると、待つ期間が長くなるおそれがあります。
出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年5月度」
出典: 東京カンテイ「2026年6月 東京23区は-0.8%の12,741万円と26ヵ月ぶりのマイナス」
駅によって値段の動きが違う。まず自分の家の「今の値段」を確かめる
売るか待つかを考える前に、近くで実際に売れた値段と2〜3社の査定で、自分の家の今の値段を確かめておきましょう。
相場の平均と自分の家の値段には、大きな開きが出ることがあります。例えば東京カンテイの2020年の調査では、首都圏412駅の平均は新築時の値段とほぼ同じ(101.9%)でした。
それでも、代官山駅(東急東横線)では新築時より6割以上高い値段で売りに出ていました。郊外を中心に、新築時の7割を下回る駅も10駅ありました。
マンションの値段は、駅からの距離や建物の大きさ、管理の状態によっても大きく変わります。自分の家の今の値段は、次の2つで確かめられます。
- 同じマンションや近くのマンションの成約事例
- 2〜3社の査定額
成約事例とは、実際に売れた値段の記録のことです。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」で、近くのマンションが過去に売れた値段を調べられます。
査定を2〜3社に頼むと、会社ごとの査定額の差が分かります。査定額は「このくらいで売れそう」という見込みの値段で、その値段で売れる約束とは違います。
Aさんも、近くの成約事例と3社の査定を見比べました。Aさんの家の今の値段は5,400万円前後で、買った値段より600万円ほど安いことになります。
出典: 東京カンテイ「2020年 中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」
出典: 不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
新築を数年で売ると、なぜ損が出やすいのか
新築を数年で売ると、次の3つが重なって損が出やすくなります。
- 新築時の値段の上乗せ分
- 買ったときの諸費用
- まだ多く残っているローン
Aさんの数字で、順に見ていきます。
人が住むと値段から消える「新築プレミアム」
新築マンションの値段に上乗せされた「新築プレミアム」は、一度人が住むと値段から消えやすくなります。
新築マンションの値段には、建物と土地の値段に加え、販売会社の広告費やモデルルームの費用、会社の利益なども含まれています。この上乗せ分を、新築プレミアムと呼びます。
一度人が住んだ家は、買う人から見れば中古です。まわりの中古マンションと値段を比べられるため、売値は中古の相場に近づきます。
Aさんの家は、6,000万円から5,400万円へ1割下がりました。新築時の上乗せ分がなくなったことに加え、相場が下がり始めたことも、査定額に表れていると考えられます。
買ったときの諸費用は、数年で売るとほぼそのまま損になる
マンションを買ったときに払った諸費用は、数年で売るとほぼそのまま損として残ります。
マンションを買うときには、物件の値段とは別に、次のような諸費用がかかります。
- 登記の費用
- 住宅ローンの手数料や保証料
- 火災保険料
- 修繕積立基金
Aさんの場合、こうした諸費用は合わせて240万円でした。
諸費用は、登記やローンの手続きのために払ったお金で、家の値段とは別のお金です。買う人が比べるのは家そのものの値段なので、売値に諸費用の分を上乗せするのは難しいといえます。
1年あたりの諸費用の負担は、住んだ年数で変わります。例えば240万円の諸費用は、6年で売れば1年あたり40万円ですが、20年住めば1年あたり12万円です。
新築を数年で売る人が「損をした」と強く感じやすいのは、1年あたりの諸費用の負担が大きいためでもあります。
ローンを6年近く返しても、残債はまだ4,500万円以上ある
Aさんがローンを5年10か月返しても、2027年2月の時点でローンの残り(残債)は約4,560万円あります。
Aさんは、5,400万円を35年・金利0.5%で借りました。毎月の返済額は約14万円です。
2021年4月から2027年2月までの70か月で、Aさんが返したお金の内訳は次のとおりです。
| Aさんの返済(70か月分) | 金額 |
|---|---|
| 返済の合計 | 約981万円 |
| うち元本(借りたお金そのもの) | 約836万円 |
| うち利息 | 約146万円 |
35年かけて返す計画なので、約6年で返せた元本は、借りた額の6分の1ほどです。金利が高い人ほど返済に占める利息の割合が大きくなり、元本はさらにゆっくり減ります。
Aさんの家の値段とローンの残りを並べると、次のようになります。
| Aさんの家 | 金額 |
|---|---|
| 買った値段 | 6,000万円 |
| 今の値段(査定) | 5,400万円 |
| ローンの残り(2027年2月時点) | 約4,560万円 |
自分のローンの残りは、金融機関から届く返済予定表で確かめられます。ローンの残りが多いほど、家を売って得たお金の大半はローンの返済に回るため、手元に戻るお金は少なくなりがちです。
本当にそんなに損か?家賃と比べると、損は思ったより小さいことがある
買った値段より安く売っても、住んでいた間の住居費として見直すと、損は思ったより小さいことがあります。
Aさんが感じている損は約1,030万円です。値下がりした600万円に、買ったときの諸費用240万円と、売るときの費用約193万円を足した額です。
もし賃貸に住んでいれば、Aさんはこの5年10か月の間も毎月家賃を払っていたはずです。そこで、Aさんの損を、その家に住むためにかかった費用として計算し直します。
売って手元に残るお金は「売れた値段−売るときの費用−ローンの残り」で出す
住み替えに使えるお金は、売れた値段から、売るときの費用とローンの残りを引いた額です。
売るときの費用には仲介手数料などがあり、Aさんの場合は合わせて約193万円です。
| 売るときの主な費用 | Aさんの場合(目安) |
|---|---|
| 仲介手数料(上限額) | 約185万円 |
| 売買契約書に貼る印紙税 | 3万円 |
| 抵当権を外す登記の費用(司法書士への報酬を含む目安) | 約2万円 |
| ローンを一括で返す手数料 | 約3万円 |
仲介手数料の上限は、売れた値段が400万円を超える場合、「売れた値段×3%+6万円」に消費税を足した額です。抵当権とは、ローンの担保として銀行が家に付けている権利のことです。ローンを一括で返す手数料は、借りている金融機関によって違います。
印紙税の3万円は、売買契約書に書かれた金額が5,000万円を超え1億円以下の場合の、軽減された税額です。
Aさんの場合、売れた値段の5,400万円から、売るときの費用約193万円とローンの残り約4,560万円を引くと、手元に残るお金は約640万円です。
Aさんが買うときに払った頭金と諸費用は、合わせて840万円でした。売れば、そのうち約640万円が戻る計算になり、このお金を新居の頭金に使えます。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(令和6年7月1日施行)
出典: 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
Aさんの5年10か月の住居費は月いくらだったか。同じ広さの賃貸の家賃と比べる
Aさんの住居費を月あたりに直すと約18.4万円で、同じ広さの賃貸の家賃とほぼ同じです。
Aさんが5年10か月住むのにかかった費用は、払ったお金の合計から、売って手元に残るお金を引くと出せます。Aさんが払ったお金の内訳は、次のとおりです。
| Aさんが払ったお金(2021年4月〜2027年2月) | 金額 |
|---|---|
| 頭金・買うときの諸費用 | 840万円 |
| ローンの返済(約14万円×70か月) | 約981万円 |
| 管理費・修繕積立金(月3.5万円×70か月) | 約245万円 |
| 固定資産税(年13万円×約6年) | 約76万円 |
| 住宅ローン控除で戻った税金(年35万円×6年) | −約210万円 |
| 合計 | 約1,930万円 |
合計の約1,930万円から、売って手元に残る約640万円を引くと、Aさんが住むのにかかった費用は約1,290万円です。これを70か月で割ると、1か月あたり約18.4万円になります。
近くで同じ広さの賃貸マンションの家賃を月19万円とすると、Aさんの住居費は家賃より少し安いくらいでした。
Aさんが損だと感じていた約1,030万円の多くは、実は賃貸に住んでいても家賃として払っていたお金だったことになります。
ただし、査定がもっと低いと結果は変わります。例えば査定が買った値段より2割安い4,800万円なら、Aさんの住居費は月約26.7万円になり、家賃を7万円以上上回ります。
自分の家でも、払ったお金と手元に残るお金を書き出して、月あたりの住居費を出しておくとよいでしょう。その額が近くの同じ広さの賃貸の家賃より安ければ、住居費として見た損は小さいといえます。
手元に残るお金がマイナスでも、住み替えはできる
売ってもローンが残る人も、足りない分を貯金か住み替えローンで埋めれば住み替えられます。
頭金が少なかった人や、諸費用までローンで借りた人は、売れた値段よりローンの残りが多くなることがあります。この状態を「オーバーローン」といいます。
家を売るには、ローンを全額返して担保(抵当権)を外す必要があります。そのため、オーバーローンの人は、足りない分を埋める方法を売る前に決めておくことになります。
ローンの足りない分を埋める方法は、主に次の2つです。
- 貯金で埋める
- 住み替えローンを使う
貯金で埋めるときは、新居の頭金や引っ越し代、もしものときの生活費を手元に残しておきましょう。
住み替えローンとは、返しきれなかった分を新居のローンに上乗せして借りるローンのことです。借りる額が新居の値段を上回るため、審査は通常のローンより厳しくなりがちです。
住み替えローンを使う人は、今の家の引き渡しと新居の購入を同じ日に行う必要もあります。
査定額がローンの残りに近い人は、売り出す前に、金融機関で住み替えローンの審査の条件を聞いておくと安心です。
売る前に必ず確かめたい「所有5年・1月1日」のルール。数か月の差で戻る税金が変わる
マイホームを売って出た損は、持っていた期間が5年を超えていれば、給料などの所得から差し引けます。
損を差し引いた分だけ所得が減るため、すでに払った税金の一部が戻ります。損が出た年は家を売った利益がないため、その利益にかかる税金もゼロです。
特例の条件は、国税庁のホームページ(タックスアンサー)で最新の内容を確かめておくと安心です。迷ったときは、税務署や税理士に相談できます。
税金の計算上の損は「買値−売値」より小さい。買値から建物の目減り分を引くため
税金の計算では、買った値段から建物が古くなった分を引くため、損は買った値段と売れた値段の差より小さくなります。
税金を計算するときは、買った値段の代わりに「取得費」を使います。取得費は、土地と建物の値段に買うときの諸費用の一部を足し、建物が古くなった分を引いて出します。
建物の価値は、年数がたつごとに減ったものとして扱います。鉄筋コンクリート造の自宅の場合、減った分は次の式で計算します。
Aさんが買った6,000万円の内訳は、土地が2,400万円、建物が3,600万円でした。持っていた5年10か月は6年として数えるため、建物が古くなった分は3,600万円×0.9×0.015×6年=約292万円です。
Aさんの税金の計算上の損は、次のとおりです。
| 税金の計算上の損 | Aさんの場合 |
|---|---|
| 土地と建物の値段 | 6,000万円 |
| 建物が古くなった分 | −約292万円 |
| 買うときの諸費用のうち取得費に入る分 | +120万円 |
| 取得費 | 約5,828万円 |
| 売れた値段 | 5,400万円 |
| 売るときの費用 | 約193万円 |
| 税金の計算上の損(売れた値段−取得費−売るときの費用) | 約−621万円 |
Aさんの税金の計算上の損は約621万円で、Aさんが感じていた約1,030万円より400万円ほど小さくなります。それでも損が出ているので、家を売った利益にかかる税金はゼロです。
自分の家の土地と建物の内訳は、買ったときの売買契約書で確かめられます。契約書に総額だけが書かれている場合も、建物にだけかかる消費税の額から内訳を計算できることがあります。
家を売った損を、給料などの所得から差し引ける2つの特例
マイホームを売って出た損は、2つの特例のどちらかを使うと、給料などの所得から差し引けます。
土地や建物を売って出た損は、ふつうは同じ年に土地や建物を売って出た利益とだけ差し引きできます。マイホームの損を給料などの所得とも差し引ける2つの特例の主な条件は、次のとおりです。
| 主な条件 | 買い換えの特例 | ローンが残る場合の特例 |
|---|---|---|
| 持っていた期間 | 売った年の1月1日に5年超 | 売った年の1月1日に5年超 |
| 新居 | ・売った年の前年1月1日〜翌年12月31日に買う ・床面積50㎡以上 ・買った年の翌年12月31日までに住む | 新居の購入は条件外 |
| 住宅ローン | 新居を買った年の12月31日に、返済期間10年以上のローンがある | 売る契約の前日に、今の家の返済期間10年以上のローンが残っている |
| 売れた値段 | 条件なし | ローンの残りより安い |
| 差し引ける損 | 売って出た損 | 「ローンの残り−売れた値段」まで |
2つの特例には、次の決まりが共通しています。
- 2027年12月31日までの売却が対象
- 使うには確定申告が必要
- 1年で引ききれずに残った損は、翌年から3年間持ち越せる
- 持ち越した損を使えるのは、合計所得金額が3,000万円以下の年
- 親子や夫婦など、特別な関係の人に売った場合は対象外
- すでに引っ越した家は、住まなくなってから3年がたつ日の属する年の12月31日までに売る
売却の期限は、2026年度の税制改正で2年延びて、2027年12月31日までになりました。以前の期限で覚えている人は、新しい期限で数え直しておくと安心です。
Aさんは売れた値段がローンの残りより多いため、ローンが残る場合の特例は対象外です。新居を返済期間10年以上のローンで買えば、Aさんは買い換えの特例を使えます。
出典: 国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
出典: 国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
所有期間は「売った年の1月1日」で数える。Aさんは2027年1月以降に売れば条件を満たす
2つの特例の条件にある「持っていた期間(所有期間)5年」は、売った日ではなく、売った年の1月1日の時点で数えます。
そのため、売る日が年をまたぐだけで、特例の対象になることがあります。Aさんは2021年4月に新築の引き渡しを受けたので、売った年の1月1日の時点で持っていた期間は次のようになります。
| Aさんが売る時期 | 売った年の1月1日の時点で持っていた期間 | 特例 |
|---|---|---|
| 2026年12月 | 4年9か月 | 対象外 |
| 2027年1月以降 | 5年9か月 | 対象 |
2027年に売れば、Aさんは約621万円の損を給料の所得から差し引けます。年収700万円のAさんの場合、戻る所得税と住民税は、2027年分と2028年分を合わせて約85万円の見込みです。
税金の計算で「売った日」とされるのは、原則として買う人に家を引き渡した日です。売買契約の効力が生じた日(一般的には契約を結んだ日)を、売った日として申告することもできます。
そのため、契約を年内に結んでも、引き渡しを1月以降にすれば、引き渡した日を売った日として、次の年に売ったことにできます。
2つの特例と新居の住宅ローン控除は、同じ年に一緒に使えます。ただし、損を差し引いた年に新居の住宅ローン控除も受けると、税金がゼロになり、控除の一部が使われずに余ることがあります。その場合、特例で戻る税金は約85万円より小さくなります。
年末に売る話が進んでいる人は、引き渡しの日を年明けにずらせるよう、不動産会社を通じて買う人と相談しておくとよいでしょう。
出典: 国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
今の家の住宅ローン控除は、年末に住んでいた年の分まで受けられる
住宅ローン控除は、その年の12月31日にその家に住んでいる人が受けられます。
Aさんは、今の家で毎年約35万円の住宅ローン控除を受けてきました。2026年12月に売って引っ越すと、2026年分の約35万円は控除の対象から外れます。年明けまで住んでから引き渡せば、Aさんは2026年分の控除も受けられます。
Aさんが年末に引き渡す場合と、年明けに引き渡す場合の差は次のとおりです。
| Aさんが受け取るお金 | 2026年12月に引き渡す | 2027年1月以降に引き渡す |
|---|---|---|
| 特例で戻る税金(目安) | 0円 | 約85万円 |
| 今の家の2026年分の住宅ローン控除 | 0円 | 約35万円 |
| 合計 | 0円 | 約120万円 |
引き渡しを年明けにずらすだけで、Aさんが受け取るお金は約120万円増えることになります。
今の家の住宅ローン控除は、売った時点で終わります。その代わり、Aさんは新居で条件を満たせば、新しく住宅ローン控除を受けられます。
出典: 国税庁「No.1212 住宅の新築等をし、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
売るか、待つか。待つ間に動くお金を、売る家と買う家の両方で比べて決める
売るか待つかは、今売る場合と待ってから売る場合で、この先に動くお金を比べて決めるとよいでしょう。
買った値段は、すでに払い終えたお金です。Aさんなら、いつ売っても払った額は6,000万円のままです。
比べる意味があるのは、これから動くお金のほうです。住み替えでは、今の家の売値と新居の買値の両方で、待つ間の動きを比べる必要があります。
待つ間に余分に出ていくお金と、売値が変わる理由
売るのを待つ間に余分に出ていくお金は、主に二重払いと、金利が上がって増える新居のローンの返済です。
今の家に住みながら待つ間のローン返済や管理費は、賃貸に住んでも家賃としてかかるお金です。待つ間に余分にかかるお金は、次の2つです。
- 先に新居へ移ったときの二重払い
- 金利の上昇で増える新居のローンの返済
先に新居へ移ると、新居の住居費とは別に、今の家のローン約14万円と管理費など3.5万円を払い続けることになります。Aさんなら、この二重払いは毎月約17.5万円です。
日本銀行は2026年9月18日に、政策金利(無担保コールレート)を1.25%程度にすることを決めました。住宅ローンの変動金利は、これに少し遅れて上がっていきます。
例えば新居で6,500万円を35年で借りる場合、新居のローンの金利が1.25%から1.5%に上がると、返済額は毎月約7,800円、35年で約330万円増えます。この金利は、計算のために置いた仮の値です。
今の家の売値も、待つ間に変わります。相場の上がり下がりに加えて、家は1年ごとに古くなり、そのぶん値段が下がりやすくなります。
家を貸して家賃を受け取りながら待つ方法は、住宅ローンを借りている間は使える場面が限られます。住宅ローンは、自分が住む家のために借りるお金だからです。
例えばフラット35では、人に貸すことを目的に家を買うと契約違反になり、ローンを一括で返すよう求められます。家を貸すことを考えている人は、前もって借りている金融機関に相談しておくと安心です。
待つ月数が長くなるほど、二重払いの額と、金利の上昇で増える返済額は大きくなります。
出典: 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために」
住み替えは「売る」と「買う」がセット。相場が下がれば新居も安く買える
新居が今の家より高い人は、相場が下がったほうが住み替えで得をします。
相場が下がるのを心配する人は、今の家の値段ばかりを見がちです。しかし住み替えでは、同じ時期の相場で新居も買います。相場が同じ割合で下がれば、値段の高い新居のほうが、下がる額も大きくなります。
Aさんは今の家を5,400万円で売り、7,500万円の3LDKを買う予定です。相場が5%動いたときのAさんの損得は、次のとおりです。
| 相場の動き | 今の家の値段 | 新居の値段 | Aさんにとっての差 |
|---|---|---|---|
| 5%下がる | 5,130万円(−270万円) | 7,125万円(−375万円) | 105万円の得 |
| 変わらない | 5,400万円 | 7,500万円 | ±0 |
| 5%上がる | 5,670万円(+270万円) | 7,875万円(+375万円) | 105万円の損 |
今の家の値段が戻るほど相場が上がれば、新居も同じように値上がりします。今の家の値段が戻るのを待っても、Aさんの損得は良くなりにくいといえます。
一方、今の家より安い家に移る人は、今の家の値段の動きの影響を大きく受けます。
今の家と新居で、エリアや「新築か中古か」が違えば、値段の動き方も違います。不動産情報ライブラリなどで、住み替え先の近くで売れた値段の動きも調べておくとよいでしょう。
Aさんの場合、今売る・年明けに売る・1年待つのどれが得か
Aさんの場合は、2027年の年明けすぐに家を引き渡して売ると、いちばん得になります。
3つの時期に売った場合の数字を並べると、次のとおりです。
| 2026年12月に売る | 2027年2月に売る | 2027年11月に売る(相場5%下落・金利0.25%上昇) | |
|---|---|---|---|
| 手元に残るお金 | 約620万円 | 約640万円 | 約490万円 |
| 特例で戻る税金(目安) | 0円 | 約85万円 | 約120万円 |
| 今の家の2026年分の住宅ローン控除 | 対象外(約35万円減) | 受けられる | 受けられる |
| 新居の値段 | 7,500万円 | 7,500万円 | 7,125万円 |
| 新居のローンの返済総額(6,500万円・35年) | 約8,030万円(金利1.25%) | 約8,030万円(金利1.25%) | 約8,360万円(金利1.5%) |
| 2027年2月に売る場合と比べた差 | 約145万円の損 | 基準 | 約70万円の損 |
2026年12月に売ると、2027年2月に売るより約145万円少なくなります。このうち約120万円は、特例で戻る税金と今の家の住宅ローン控除の分です。
1年待つと、損が大きくなるぶん、特例で戻る税金は約35万円増えます。新居も375万円安く買えます。
それでも、相場が下がるぶん手元に残るお金は約150万円減ります。金利が0.25%上がれば、新居のローンの返済総額も約330万円増えます。
差し引きすると、1年待った場合は2027年2月に売るより約70万円少なくなります。Aさんの場合、1年待って得られるお金より、手元のお金の減り方と返済総額の増え方のほうが大きいといえます。
タイプ別の早見表で見る、買値より安くても売るべき人と待つべき人
売るべきか待つべきかは、今の家を持っている期間や築年数、売ってローンを返しきれる見込みによって変わります。
| あなたのタイプ | おすすめの動き方 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 今の家を持っている期間が5年以下の人 | 5年を超える年の1月以降に引き渡す | 新築の引き渡しを受けた日 |
| 高い時期に買い、5年を超えて持っている人 | 新居の値段の動きとあわせて売る時期を決める | ・近くの成約事例 ・特例の条件 |
| 築年数が古い家の人 | 大規模修繕や修繕積立金の値上げの前に売る | ・長期修繕計画 ・管理組合の総会の資料 |
| 売ってもローンが残る人 | 返しきれる見通しが立ってから売る | ・ローンの残高証明書 ・住み替えローンの審査 |
持っている期間が5年以下の人は、5年を超える年の1月まで待つ月数を数えておきましょう。その間の二重払いや手狭な暮らしの負担より、特例で戻る税金のほうが大きければ、待つほうが得になります。
高い時期に買った人は、新居の候補の近くで売れた値段も調べ、今の家の値段と並べて比べておきたいところです。
築年数が古い家の人は、管理組合の長期修繕計画で、大規模修繕の時期と修繕積立金の値上げの予定を確かめておくと安心です。積立金が上がると、買う人から見た毎月の負担が増え、売りにくくなると考えられます。
売ってもローンが残る人には、足りない額を貯金で埋められるまで待つ方法と、住み替えローンを使って売る方法があります。
売ると決めたら、手元に残るお金を多くするために、次の3つを押さえておきましょう。
- 売り出す値段の決め方
- 値下げの計画
- 買取を使う場面
売り出す値段は、2〜3社の査定と近くで売れた値段を比べてから決めるとよいでしょう。
買う人から値下げを頼まれることも見込み、「いつ・いくら下げるか」を先に決めておくと、慌てて大きく値下げせずに済みます。
不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」は、早く売れる一方で、仲介で売るより安くなるのが一般的です。売る期限が迫った人は、最後の手段として買取も考えておくと安心です。
まとめ:買値まで待つより、所有5年と1月1日を基準に売る日を決める
買った値段より安くても、持っていた期間が5年を超える年の1月以降に引き渡せば、売った損を給料などの所得から差し引けて、税金の一部が戻ります。Aさんの例では、引き渡しを年末から年明けにずらすだけで、戻る税金と住宅ローン控除が合わせて約120万円増えました。
まずは売買契約書などで新築の引き渡しを受けた日を確かめ、売る年の1月1日の時点で5年を超えるかを数えておきましょう。この確認をせずに年末に引き渡すと、Aさんの例では約120万円が受け取れる額から外れます。
次は、近くで実際に売れた値段と2〜3社の査定で今の家の値段を確かめ、手元に残るお金を計算しておくとよいでしょう。住み替えのトビラでは、買った値段より安く売るときの損の計算や売る日の決め方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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