住宅ローンが残るマンションを、住み替え(買い替え)のために売りたい。まず知りたいのは、自分のマンションの評価額がローン残高より高いのかどうかです。
ところが「評価額」と呼ばれる額は1つではなく、固定資産税の通知書の額、ネットのAI査定、不動産会社の査定額、銀行の担保評価額があります。残高の側も、返済予定表とネットバンキングと年末残高証明書で数字が違うので、比べる相手を取り違えると住み替えの計画そのものがずれます。
この記事では、ローン残高と比べる評価額の選び方、ローン残高を正しく出す手順、比べた結果ごとの住み替えの見通し、比べるときの見誤り、上回ると分かった後の住み替えの進め方を順に説明します。
ローン残高と比べるのは、今の売却見込み額
税金の通知書に載る評価額がローン残高より低くても、それだけで「売れない」とは判断できません。売却の見通しを確かめるなら、今いくらで売れそうかを査定で確認し、費用を引いて完済額と比べます。
| 手元にある数字 | 意味 | 残高と比較するときの使い方 |
|---|---|---|
| 不動産会社の査定額 | 自宅の条件や事例に基づく売却価格の見立て | 根拠と販売期間を確認し、複数の価格で試算する |
| AIの推定価格 | 入力条件やデータに基づく概算 | 最初の参考。自宅の状態の反映範囲を確認 |
| 周辺の成約価格 | 過去に別の物件が売れた額 | 時期・立地・住戸条件の違いを確認 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税などの計算に使う評価 | 売却価格の代わりにしない |
| 銀行の担保評価額 | 融資の担保を評価した額 | 今の売却価格を示す数字ではない |
固定資産税評価額から、売れる額を換算しない
固定資産税評価額は市場価格とは決まり方が違います。評価額を一定の割合で割り戻しても、自宅の売却価格にはなりません。
評価額が低いだけで売却を諦めたり、反対にローン残高より高いだけで完済できると判断したりしないことが大切です。各種評価額の意味は不動産の評価額で確認できます。
最も低い査定額も、売却の保証にはならない
複数社に査定を依頼する目的は、一番高い額や低い額を機械的に採用することではありません。事例の選び方、自宅への評価、想定する販売期間の違いを確かめるためです。
同じ部屋でも、時間をかけて高めを目指す提案と、短い期間で売る提案では価格が違う場合があります。低い査定額なら必ず売れるわけではないため、現実的な売却見込みと、価格を調整する場合を並べて計算します。
査定前に相場を調べたい場合は、公的な成約情報やAIの概算が参考になります。ただし、下側の推定値が残高を超えたことだけで、費用まで賄えるとは判断しません。
比較するローンの金額は、決済日の完済額へ合わせる
ローン残高の照会と、全額返済の申込みは別です。検討を始めた段階では今の残高を確認し、売却時期が見えてきたら金融機関へ完済額を聞きます。
返済予定表・ネットバンキングで、現在の元本を確認する
借入先の返済予定表やネットバンキングで、現在の元本残高を確認します。繰上返済や借り換えをした場合は、その後の情報を使ってください。
年末残高証明書は住宅ローン控除などのための書類で、記載された基準日の残高です。今日返す額や、数か月先の決済日に必要な額とは一致しません。
銀行には、日付を伝えて必要額を聞く
「○月○日に、売却代金で全額返済する場合の必要額を教えてください」と伝えます。元本のほか、利息や手数料が含まれるかも確認します。
| 銀行に聞く項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 決済予定日の完済額 | 現在の元本残高と違う場合がある |
| 利息・返済手数料の内訳 | 費用表と二重計上しないため |
| 全額返済の申込期限 | 売買契約の決済日に間に合わせるため |
| 抵当権抹消書類を当日受け取る方法 | 通常の完済手続きと扱いが違う場合がある |
| 保証料返戻の有無と入金日 | 後日の入金を当日の資金に数えないため |
例えば三井住友銀行は、売却等で完済当日に抹消書類が必要な場合、3週間前、大型連休を挟む場合は4週間前までの申込みを案内しています。自分の銀行の期限は別に確認してください。
ペアローンは2契約分、連帯債務は重複に注意
ペアローンでは、それぞれの契約の完済額を足します。一方、1本のローンを夫婦で連帯して負っている場合、同じ残高を2人分として二重に足すことはありません。人数ではなく、借入契約ごとに整理します。
同じマンションに別のローンの担保も設定されていれば、その扱いも確認が必要です。不動産会社・金融機関・司法書士に登記と契約を確認してもらい、通常の売買で必要な抵当権抹消の条件をそろえます。
いくらで売れれば、自己資金を足さずに完済できる?
知りたいのは査定額と残高の大小だけでなく、費用も払えるかです。次の式で、不足または余剰の見込みを出します。
売却見込み額+決済までに使える精算金等−完済額−売却に必要な費用=売却で残る額、または不足額
費用に引っ越し代を含めた場合、後の予算からもう一度引かないようにします。税金や新居の費用、生活の予備費は、含めたかどうかを欄に明記してください。
売却価格が残高を超えても、不足する例
次は当サイトによる仮定例です。完済額4,200万円、売却費用180万円、精算金・税金・引っ越し・新居費用は計算外としています。
| 売却価格の仮定 | 費用を引いた額 | 完済後の差額 |
|---|---|---|
| 4,500万円 | 4,320万円 | +120万円 |
| 4,400万円 | 4,220万円 | +20万円 |
| 4,300万円 | 4,120万円 | −80万円 |
4,300万円で売れれば、価格自体は完済額を100万円上回ります。それでも、費用を含めると80万円不足します。査定額だけを見て「ローンより高いので大丈夫」と考えると、この差を見落とします。
この表は仕組みを見せるため費用を固定しています。実際には、仲介手数料などを各売却価格に合わせて再計算します。
完済に必要な価格の目安から、査定で聞くことを決める
上の条件では、4,200+180=4,380万円が、自己資金を足さずに完済と費用を賄う計算上の目安です。ただし、これは自宅の市場価値や、必ず売れる価格ではありません。
査定では「費用込みで4,380万円程度必要です。この価格を目指せる事例と売り方はありますか」と聞けます。必要額と市場の見込みを並べれば、価格を待つか、不足資金を用意するかを検討しやすくなります。
生活の予備費や納税資金も残したいなら、その額を別に足して試算します。「残高の10%余れば安心」といった一律の線引きではなく、自分が必要とする現金から判断します。
手付金を先に使った場合は、当日の残高も見る
売却代金の一部を手付金で受け取っている場合、決済当日の入金は残代金です。手付金を新居などの支払いに回していれば、売却全体では足りていても、当日の完済口座に現金が足りない場合があります。
「売却全体の収支」と「決済日に口座にある額」を分けて確認してください。精算金や返戻金も含む時期別の計算は、マンション売却の手取りにまとめています。
比較した結果ごとに、次の確認先を決める
費用と完済額を上回るなら、売却後に残すお金を確認
複数の売却価格で計算しても余剰が見込めるなら、通常の売却を具体的に検討しやすくなります。余剰の全額を使う前に、税金・引っ越し・新居費用・生活の予備費を確認します。
高めの価格を目指す場合も、待っている間のローン返済や管理費等を考えます。「いくら高く売るか」に加え、「いつ売れて、どれだけ残るか」を不動産会社に聞きましょう。
少し下がると不足するなら、価格ごとの必要資金を出す
価格が100万円変わったときに、必要な自己資金がどう変わるかを確認します。手元資金で対応できるか、販売期限をどこまで延ばせるか、費用に見落としがないかを先に整理します。
住み替える場合は、先に売却額を確認する売り先行も選択肢です。ただし仮住まいが必要になることもあり、売り先行なら無条件に有利というわけではありません。
不足するなら、埋め方を確認してから契約へ進む
売却見込み額が残債を下回る状態は、一般にオーバーローンと呼ばれます。価格が残債を超えていても、費用分だけ現金が足りない場合もあるので、両方を確認します。
不足分への対応には、次のような選択肢があります。
| 選択肢 | 先に確かめること |
|---|---|
| 自己資金を足す | 不足分を払っても、生活に必要な現金が残るか |
| 返済しながら売却時期を見直す | 価格が下がる可能性と、保有中の費用も含めて待てるか |
| 住み替えローン等を検討する | 商品の対象・審査・新しい返済負担 |
| 返済が苦しい場合、銀行へ相談する | 返済条件の変更や任意売却など、利用できる対応 |
任意売却は債権者との調整が必要で、売るだけで残債が消える制度ではありません。売却代金だけで完済できない場合も、利用できる方法を確認してから判断します。
抵当権抹消や契約・決済の手順は、残債があるマンションの売り方で説明しています。この記事では、その前に行う価格と必要資金の比較に焦点を当てています。
比較する前後で、見落としやすいこと
売るためだけに、先に繰上返済をする必要はない
通常の売却では、決済時に売却代金を使って完済する方法があります。先に手元資金だけでローンをなくしてから査定を頼む必要はありません。
繰上返済をすれば元本は減りますが、手元の現金も減ります。売却前後の支払いに必要な額を確認し、利息や手数料も合わせて考えてください。
今のローンを返せることと、新しいローンを組めることは別
自宅の売却で完済できそうでも、次の住宅ローンは別の審査です。収入、ほかの借入れ、年齢、団信の加入条件などを確認します。
買い先行では、現在の住宅ローンを審査でどう扱うかも金融機関へ聞きます。売却・完済予定の借入れを含めるかは商品や条件によるため、「必ず除外できる」「必ず全額算入される」と決めつけないようにします。
完済後の余剰と、税金上の利益も別
ローン残高は、税務上の取得費ではありません。譲渡所得は売却の収入金額から取得費・譲渡費用を引いて計算し、建物の取得費には減価償却を反映します。残高を大きく上回ったから課税、下回ったから非課税、という関係ではありません。
マイホームの3,000万円特別控除には適用条件と申告が必要です。新居の住宅ローン控除との併用制限もあるため、納税用に残す額を税務署などへ確認します。
ローン残高だけを見て、売れないと決めない。 今の査定額が分かれば、完済できるか、いくら残せるかを具体的に比べられます。複数社に自宅を見てもらい、価格と根拠を確かめましょう。
まとめ:比べるのは費用を引いた手取りと、決済日の完済額
ローン残高と比べる相手は、固定資産税評価額でも銀行の担保評価額でもありません。固定資産税評価額は、宅地なら地価公示価格などの7割を目途に置かれた税金用の額です。担保評価額は、返せなくなったときの想定売却価額です。比べるのは、根拠を確認した売却見込み額から必要な費用を引いた額と、決済日の完済額です。最も低い査定額も売却の保証ではないため、価格が変わる場合も試算します。
次の一歩は、借入先に「○月○日に全額繰上返済する場合の必要額」を出してもらうことです。決済までの元本の変化や利息・手数料によって、書類の残高と完済額は一致しない場合があります。時点を合わせずに比べると、必要な資金を見誤るおそれがあります。
費用を引いた売却見込み額と完済額を並べ、いくら残るか、不足するならいくら必要かを確かめてみましょう。住み替えのトビラでは、マンションの評価額とローン残高の比べ方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 