持ち家のマンションから引っ越したい。でも、ローンはまだ何千万円も残っている。賃貸なら解約して出ればよいのに、持ち家だと簡単には動けない気がします。
先に答えを書きます。ローンが残っていても、持ち家から引っ越すことはできます。決め手になるのは、売ったお金でローンを返し切れるか、新居のローン審査に通るか、貸すなら借入先が認めるか、の3つです。
この記事では、4つの方法と3つの条件、引っ越すまでの流れと費用を順に整理します。あわせて、3,000万円特別控除の期限や住宅ローン控除が止まる時期など、知らずに動くと数十万〜数百万円の差になる点を、国税庁や住宅金融支援機構の公表資料で確かめながら見ていきます。
持ち家から引っ越すときの4つの選択肢
持ち家から引っ越す方法は、今の家を「売る」か「貸す」か、引っ越し先を「買う」か「借りる」かの組み合わせで4通りです。
| 方法 | 今の家 | 引っ越し先 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 買い替え | 売る | 買う | 戻る予定がなく、次の家の条件が決まっている |
| 売って賃貸へ | 売る | 借りる | 次に住む地域や家の形をまだ決めきれていない |
| 貸して購入 | 貸す | 買う | 将来戻る可能性があり、資金に余裕がある |
| 貸して賃貸へ | 貸す | 借りる | 転勤などで数年後に戻る予定がある |
どれを選ぶかは、2つの問いで決まります。今の家に戻ってくる予定があるか。次の家を今の時点で決められるか。この2つに答えると、4通りのうち自分に合うものが絞れます。
売って新居を買う
今の家を売り、そのお金を次の家の購入にあてる方法です。一般に「買い替え」と呼ばれ、持ち家から引っ越す人の多くがこの形を選びます。
向いているのは、戻る予定がなく、次に住みたい地域や広さが決まっている人です。売ったお金で今のローンを返し、残りを新居の頭金にできるので、住居費が1本にまとまります。
そのかわり、売る手続きと買う手続きを同時に進めるため、段取りは4つの中でいちばん複雑です。先に売るか、先に買うかで、仮住まいが要るか、ローンが一時的に2本になるかが変わります。
もう1つ気をつけたいのが予算の決め方です。いくらで売れるかが固まる前に新居の予算を決めると、資金計画がずれやすくなります。順番の決め方は、後の流れの章で説明します。
売って賃貸へ移る
今の家を売り、いったん賃貸住宅へ移る方法です。次の家を急いで決めずに済むのが、いちばんの利点です。
向いているのは、引っ越したい気持ちは固まっているものの、次に住む地域や、マンションか戸建てかをまだ決めきれていない人です。子どもの進学先が決まるまで、転職の結果が出るまで、といった待ち時間がある人にも合います。
売ったお金で今のローンを返し終えれば、身軽な状態で次の家を探せます。家を買うのは、新しい街に住んでみて、暮らしを確かめてからでも間に合います。
この方法でかかるのは、賃貸の家賃と、2回分の引っ越し費用です。もう1つ見ておきたいのが年齢です。住宅金融支援機構の「フラット35」では、借入期間の上限は「80歳−申込時の年齢(1年未満は切り上げ)」と35年の短いほうです。45歳で申し込めば35年、50歳なら30年、55歳なら25年が上限になります。いずれ買うつもりなら、何歳までに買えば何年のローンが組めるかを、売る前に逆算しておくと安心です。
貸して新居を買う
今の家を賃貸に出し、新しい家を買う方法です。家賃収入で今のローンを返しながら、家を資産として持ち続けます。
向いているのは、将来戻ってくる可能性がある人や、今の家が駅に近いなど、借り手が付きやすい立地にある人です。
ただし、大きな前提が2つあります。
1つ目は、住宅ローンが「借りた本人や家族が住む家」のための融資だという点です。住まなくなって他人に貸すには、借入先への相談と手続きが要ります(次の章で説明します)。
2つ目は、新居のローン審査で、今のローンも返済中の借金として数えられる点です。フラット35の審査の計算では、「賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金の返済額を含みます」と案内されています。家賃収入をどこまで返済の力として見てもらえるかは金融機関ごとに違い、借りられる額が想定より少なくなることがあります。
家賃でローンを返せそうに見えても、管理費・修繕積立金・固定資産税・空室の月を差し引くと、手元に残る額は小さくなりがちです。収支は厳しめに見積もっておきます。ローンの組み方の比べ方は、マンションを貸して新居購入|ローンの組み方とダブルローン審査で詳しく説明しています。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「総返済負担率はどのように算定すればよいですか。」
貸して賃貸へ移る
今の家を賃貸に出し、自分も賃貸に住む方法です。転勤や親の介護など、数年後に戻る予定が決まっている人に向いています。
利点は、戻る家を確保したまま身軽に動けることです。
戻る時期が決まっているなら、期間を区切って貸す「定期借家契約」を使います。普通の賃貸契約で貸すと、借り手の住む権利が強く守られるため、戻りたい時期に部屋を空けてもらえるかは借り手しだいになります。定期借家なら、期間が満了すれば契約は終わり、予定どおりに戻れます。
ただし、借地借家法38条が決める手順を踏む必要があります。
- 契約は書面(または電磁的記録)で結ぶ
- 契約の前に「更新がなく、期間の満了で終わる」ことを書面を渡して説明する(この説明を省くと、更新がない定めそのものが無効になる)
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終わることを借り手に通知する
通知を忘れて期間が過ぎた場合、借り手に出てもらえるのは、通知した日から6か月がたった後になります。戻る日から逆算して、通知の時期を管理会社と共有しておきます。
承諾の前提は「貸して新居を買う」と同じで、住宅ローンの借入先に相談して認めてもらう必要があります。
持ち家から引っ越せるかを決める3つの条件
ローンが残っていても、持ち家から引っ越すことはできます。引っ越せるかを決めるのは、次の3つです。
- 売るなら、売ったお金でローンを返し切れるか
- 新しく買うなら、新居のローン審査に通るか
- 貸すなら、住宅ローンの借入先が認めるか
順番に見ていきます。
売却額でローン残高を返し切れるか
家を売るときは、売ったお金でローンを全部返し、家に付いている「抵当権」(借入先が家を担保にしている権利)を外します。買う人は抵当権を外した状態の家を受け取るので、ここが売るための入口です。
確かめる式はシンプルです。
売却額 −(ローン残高 + 売るときの費用)
答えがプラスなら、売ったお金でローンを返し切れます。ローン残高は、金融機関から届く返済予定表や残高証明書で分かります。売るときの費用は、目安として売却額の4%前後を置くと見積もりやすくなります。3,000万円で売る場合、仲介手数料の上限105万6,000円だけで約3.5%になり、これに印紙税や抵当権を外す費用が加わるためです。内訳は費用の章で説明します。
答えがマイナスでも、足りない分を貯金で埋められれば売れます。貯金で足りないときは、次の家のローンに不足分を上乗せする「住み替えローン」という商品もあります。家の価値より多く借りることになるので、審査は厳しめで、返済の負担も重くなります。
まずは「いくらで売れるか」より先に、「いくらで売れれば引っ越せるか」を出しておきます。この金額があると、不動産会社との相談がぐっと早く進みます。
新居の住宅ローン審査に今のローンが残るか
買い替えで見落としやすいのが、新しい家のローン審査です。審査では、年収に対して年間の返済額がどのくらいの割合か(返済負担率)を見ます。フラット35の基準は、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下です。このとき、今の家のローンも返済中の借金として数えられます。
今のローンと新しいローンを合わせると、返済負担率が上限を超えて、審査に通りにくくなることがあります。
ここで知っておきたい扱いがあります。今の家を売って今のローンを返し終える予定なら、その分を計算から除いてもらえる場合があるのです。住宅金融支援機構は、フラット35のよくある質問で次のように案内しています。
返済中の住宅ローンの融資対象となっている現在居住している住宅を売却予定で、その売却予定額により当該住宅ローンを完済できることが確認できる場合に限り、総返済負担率の算定において当該住宅ローンの返済額を年間返済額から除くことができることとします。
なお、売却予定額が現在返済中の住宅ローンの残高に満たない場合であっても、住宅ローンの残額と売却予定額との差額を手持金や新規借入金で賄うことが資料等により確認できるときは、総返済負担率の算定において現在返済中の住宅ローンの返済額を年間返済額から除くことができます。
読み取れるポイントは2つです。1つ目は、対象が「現在居住している住宅を売却予定」の場合だという点です。先に引っ越して今の家を貸してしまうと、このよくある質問のとおり今のローンは返済額に含めて計算されます。2つ目は、売却予定額が残高に届かなくても、差額を手持ちの資金などで埋めることを資料で示せれば除ける点です。どの資料で示すかは、申し込む金融機関が案内します。
民間の金融機関の扱いは銀行ごとに違います。新居を探し始める前に、借りたい金融機関へ「今の家を売る予定です。今のローンは審査でどう数えますか」と聞いておくと、買える価格の上限が早めに分かります。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「総返済負担率はどのように算定すればよいですか。」 出典: 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件
貸すなら住宅ローンの借入先の承諾が取れるか
住宅ローンは、借りた本人や家族が住む家のための融資です。フラット35は「お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる住宅」の取得資金と定めていて、民間の銀行も同じ前提を置いています。
そのため、ローンを返している途中の家を、借入先に知らせずに他人へ貸すと、契約違反になるおそれがあります。三井住友銀行は、戻る見込みがない転居や第三者への賃貸について、次のように案内しています。
ご自身がお住まいにならず、第三者に賃貸する場合(転勤期間中の一時的な賃貸は除く)等は、ご利用中の住宅ローンを全額お返しいただく場合もございます。
一方で、転勤など本人の事情で一時的に住めなくなる場合は、認められる道があります。フラット35は、転勤等のやむを得ない事情で一時的に住めない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能としていて、そのうえで金融機関の窓口での住所変更の手続きを求めています。ドコモSMTBネット銀行は、ずっと賃貸にするなら住宅ローンの完済を求め、転居や海外赴任の場合は個別に事情を聞いて案内するとしています。
まとめると、扱いを分けるのは「戻る前提かどうか」です。戻る予定がないまま貸すなら、完済や事業用のローンへの借り換えを求められることがあると考えておきます。認める条件は金融機関ごとに違います。
貸すことを考えているなら、不動産会社に家賃の相場を聞く前に、まず借入先へ相談するのが順番です。家賃の見込みが良くても、借入先が認めて初めて貸せるからです。承諾の取り方と転勤のときの扱いは、住宅ローン中のマンションを貸す・売る|承諾の取り方と転勤特例で詳しく説明しています。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」 出典: 三井住友銀行 住宅ローン その他変更手続 出典: ドコモSMTBネット銀行 よくあるご質問「住宅ローンで借りている物件を賃貸物件に切り替えます。住宅ローンはこのまま継続できますか。」
持ち家から引っ越すまでの流れ
持ち家からの引っ越しは、賃貸からの引っ越しより準備に時間がかかります。引っ越したい時期が決まっているなら、そこから逆算して動き始めます。大きく分けると、調べる、順番を決める、日にちを合わせる、の3段階です。
ローン残高と今の家の相場を調べる
最初にやるのは、2つの金額を知ることです。ローンの残高と、今の家がいくらで売れそうかです。
ローン残高は、返済予定表を見れば分かります。手元に見当たらないときは、借入先のインターネットサービスや窓口で確認できます。
今の家の相場は、不動産会社に査定を頼む前に、自分で当たりを付けられます。
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」: 取引価格と成約価格を、地域や駅ごとに調べられる(取引価格は、国土交通省が取引の当事者に行うアンケートの回答をもとにした情報)
- 不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」: 不動産会社を通じて実際に売れた価格(成約価格)を、地域ごとに見られる
同じマンションや、広さ・築年数が近い物件がいくらで売れたかを見ておきます。
自分で相場を知っておくと、不動産会社の査定額が高すぎるのか低すぎるのかを判断しやすくなります。査定額は「この金額で売れる」という約束ではなく、各社の見込みです。自分の物差しを1本持っておくと、後の判断がぶれにくくなります。
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ 出典: 不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
売り先行か買い先行かを決める
次に決めるのは、今の家を先に売るか(売り先行)、新しい家を先に買うか(買い先行)です。賃貸へ移る場合は、売るか貸すかの手続きと賃貸探しを並行させます。
| 売り先行 | 買い先行 | |
|---|---|---|
| 資金計画 | 売れた額で予算を立てられる | 売れる額が未定のまま予算を立てる |
| 住まい | 仮住まいが要ることがある | 仮住まいは不要 |
| ローン | 1本のまま | 売れるまで2本になることがある |
| 売り方 | 値段の交渉に余裕がある | 売る期限が付く |
売り先行は、資金計画がぶれにくい方法です。買い先行は、気に入った家をじっくり探せます。
どちらが合うかは、手持ちの資金と、今の家がどのくらい早く売れそうかで決まります。迷ったら、ローンを2本払いながら生活が回るかを先に計算してみます。回らないなら、売り先行が安全です。
引き渡し日と引っ越し日を合わせる
最後に調整するのが日にちです。今の家を買主に引き渡す日と、新しい家に入れる日がずれると、その間の住まいが必要になります。
売り先行なら、売買契約のときに、引き渡しまでの期間を長めに取れるよう買主と相談する方法があります。代金を受け取った後もしばらく住み続ける「引渡し猶予」という取り決めもあります。買主の了解が要るので、売り出す時点で不動産会社に伝えておきます。
買い先行なら、新居の引き渡し日が先に決まるので、今の家の売却に期限が付きます。東日本不動産流通機構の集計では、2025年の首都圏の中古マンションは、売りに出して(登録して)から契約が決まる(成約する)までに平均82.5日かかっています。契約から引き渡しまでの期間は買主との取り決めで決まり、買主の住宅ローンの手続きを考えると、目安として1〜2か月を見込んでおくと安心です。
引き渡し日が決まったら、借入先へローンの完済を早めに申し込みます。たとえば三井住友銀行は、売却で全額を返す当日に抵当権を外す書類が要る場合、3週間前(大型連休を挟むなら4週間前)までに申し込むよう案内しています。
子どもの学校の区切りや転勤の辞令日がある場合は、その日から逆算して、半年前には査定を始めておくと余裕が持てます。
出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2025年) 出典: 三井住友銀行 住宅ローン 繰上返済(お手続方法)
持ち家から引っ越すときにかかる費用
持ち家から引っ越すときの費用は、今の家を手放すとき、新しい家に入るとき、その間をつなぐとき、の3つの場面に分けると整理できます。賃貸からの引っ越しと比べて、今の家を手放す費用がまとまってかかるのが特徴です。
今の家を売る・貸すときの費用
売る場合の主な費用は次のとおりです。
| 費用 | 金額の決まり方 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 上限は売買価格×3%+6万円+消費税(400万円超の場合の速算式) |
| 印紙税 | 売買価格1,000万円超5,000万円以下なら1万円(令和9年3月31日までに作る契約書の軽減後の額) |
| 抵当権を外す費用 | 登録免許税は不動産1個につき1,000円+司法書士の報酬 |
| ローンの一括返済手数料 | フラット35は不要。民間の銀行は金融機関ごとに違う |
いちばん大きいのは仲介手数料です。国土交通省の告示が決めているのは、売買価格を200万円以下・200万円超400万円以下・400万円超の3つに区切り、それぞれ5%・4%・3%(どれも消費税別)を掛けて足した額です。「3%+6万円」は、400万円を超える場合にこの合計を1本の式にした速算式です。3,000万円で売れた場合、上限は(3,000万円×3%+6万円)×1.1=105万6,000円になります。決まっているのは上限なので、払う額は不動産会社との取り決めで決まります。
抵当権を外す登録免許税は、マンションの場合、部屋(建物)1個と、敷地の土地の数の合計で数えます。敷地が1筆なら2個で2,000円、敷地が3筆なら4個で4,000円です。敷地の筆数は登記事項証明書で分かります。
貸す場合は、入居者を探してもらう費用と、毎月の管理を任せる管理会社への委託料がかかります。委託料の決め方は管理会社との契約によります。貸す前に室内を整える費用も見ておきます。
出典: 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(最終改正 令和6年6月21日) 出典: 国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置 出典: 法務省民事局 抵当権の登記の抹消の登記申請手続のご案内(令和6年4月版) 出典: e-Gov法令検索 登録免許税法(別表第一 一(十五)) 出典: 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件
新居に入るときの費用
新居を買う場合は、物件の価格とは別に諸費用がかかります。ローンの手数料や保証料、登記の費用、不動産取得税、火災保険料などです。中古を仲介会社から買う場合は、買う側にも仲介手数料がかかります。
賃貸に移る場合は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・保証会社の費用などの初期費用がかかります。
どちらでも、引っ越し業者の費用と、家具・家電の買い替えが加わります。持ち家から持ち家への引っ越しでは、窓の大きさや部屋の広さが変わるので、カーテンや照明を買い直す場面も出てきます。見積もりの段階で、この分も予算に入れておくと慌てずに済みます。
二重の住居費と仮住まいの費用
見落としやすいのが、引っ越しの前後で住居費が重なる期間の費用です。
買い先行では、新居のローン返済が始まった後も、今の家が売れるまでは今のローンを払い続けます。マンションなら管理費・修繕積立金・固定資産税も続きます。重なる期間の費用は、次の式で出せます。
今の家の毎月の支払い × 売れるまでの月数
例(仮定の数字): ローン返済9万円と管理費・修繕積立金3万円で毎月12万円、売れるまで5か月なら60万円
5か月は、前の章の平均82.5日(約3か月)に、契約から引き渡しまでの1〜2か月を足した目安です。自分の毎月の支払いと、売れるまでに見込む月数を入れて計算してみます。
売り先行では、新居が決まる前に引き渡すと、仮住まいの家賃と、2回分の引っ越し費用がかかります。短い期間だけ借りられる物件は、家賃が割高になることもあります。
どちらの順番でも、つなぎの期間の費用はかかるものと考えておきます。何か月重なると家計が苦しくなるかを先に出しておくと、売り出し価格を下げるかどうかの判断もしやすくなります。
持ち家から引っ越すときに損をしやすい注意点
持ち家からの引っ越しでは、税金の期限やローン控除の扱いを知らずに動くと、数十万円から数百万円の差が出ることがあります。売る・買うの手続きの説明に比べて後回しにされやすいので、動く前に押さえておきます。
3,000万円特別控除には売却の期限がある
自分が住んでいた家を売って利益が出たとき、その利益から最高3,000万円を差し引ける特例があります。「3,000万円特別控除」と呼ばれ、利益にかかる税金を大きく減らせます。
すでに住んでいない家を売る場合、国税庁は対象となる家を次のように書いています。
以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)
つまり、住まなくなってから3年がたつ日が属する年の12月31日までに売ることが条件です。
例: 2026年5月に引っ越した場合 → 3年がたつのは2029年5月 → 2029年12月31日までに売れば使える
知っておきたいのは、「どのような用途に使用してもかまいません」とあるとおり、住まなくなった後に人へ貸していても、この期限内に売れば使えることです。「しばらく貸して、期限内に売る」という選び方ができます。
貸したまま期限を過ぎると使えなくなり、利益が大きい家ほど税金の差が広がります。計算例(仮定)として、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える家で利益が1,000万円出た場合、税額は所得税150万円、復興特別所得税3万1,500円、住民税50万円の合計203万1,500円です。期限内に売って3,000万円特別控除を使えば、この利益にかかる税金はゼロになります。
もう1つ、新居で住宅ローン控除を使う人は注意が要ります。3,000万円特別控除を使うと、新居に入居した年とその前2年・後3年の計6年間のどこかに当たる場合、新居の住宅ローン控除が使えなくなります(令和2年3月31日以前の売却では、入居した年とその前後2年の計5年間でした)。どちらが得かは、売却の利益の大きさと、新居のローン控除の見込み額を比べて決めます。
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除は住まなくなった年から止まる
今の家で住宅ローン控除を受けている場合、住まなくなった年からは控除が止まります。住宅ローン控除は、控除を受ける年の12月31日まで引き続きその家に住んでいることが条件だからです。
控除の期間が残り5年あっても、引っ越した年から先の分は対象外になります。控除が多く残っている人ほど、引っ越す時期による差は大きくなります。
転勤などやむを得ない事情で家族と一緒に住まなくなり、後で再びその家に住む場合は、残りの期間について控除を受け直せます。条件は次の2つです。
- 勤務先からの転任の命令、またはそれに準じるやむを得ない事由があること
- 住まなくなる日までに、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」などを税務署へ出しておくこと
戻った年に今の家を人に貸していた場合は、受け直せるのはその翌年からです。控除の期間は延びず、残りの年数の範囲で受け直す形になります。戻る予定がある「貸して賃貸へ移る」人は、引っ越す前に届出を済ませておきます。
控除の残りの年数と金額は、毎年の年末残高証明書と、控除が始まった年から計算できます。条件は12月31日時点で住んでいるかどうかなので、12月中に引っ越すとその年の分から受けられなくなります。引っ越しを年明けにずらせば、その年の分は受けられ、控除を1回分多く受けられることがあります。
出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
空き家のまま持つと維持費がかかり続ける
「売るか貸すか決めるまで、とりあえず空けておこう」と考える人もいます。マンションは、空けている間も毎月の費用がかかり続けます。
| 費用 | 空けている間 |
|---|---|
| 管理費・修繕積立金 | 毎月かかる(全国平均で合わせて月約2.5万〜3.0万円) |
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年かかる |
| ローンの返済 | 残っていれば毎月かかる |
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、1戸あたりの月額の平均は、管理費が1万1,503円〜1万7,103円、修繕積立金が1万3,054円〜1万3,378円です(駐車場使用料などからの充当を除くか含むかで2通り)。合わせると月約2.5万〜3.0万円で、1年空けておけば管理費と修繕積立金だけで30万円前後が出ていきます。自分の部屋の実額は、管理組合からの請求額で確かめます。
さらに、人が住まない部屋は換気や水の流れが止まるため、においやカビが出ることがあります。売るときや貸すときに、手入れの費用が上乗せされることもあります。
空けておく期間ができるなら、「何か月たったら決める」と期限を決めておきます。決めかねている間にかかる費用を計算してみると、決める後押しになります。
出典: 国土交通省 令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕
期限付きで売ると値下げ交渉に弱くなる
買い先行で新居を先に決めたときや、転勤の日が迫っているときは、「いつまでに売る」という期限付きの売却になります。
期限付きの売却は、値下げの交渉で不利になりがちです。買い手から値下げを求められたとき、断って次の買い手を待つ時間が残っていないからです。不動産会社から「早く売るために価格を下げましょう」と提案されたときも、受け入れやすくなります。
これを防ぐには、売り出す前に次の2つを決めておきます。
- ここまでなら下げてもよい、という下限の価格
- 期限までに売れなかったときの代わりの手段
下限の価格は、前の章の式(ローン残高+売るときの費用)を基準にすると決めやすくなります。
代わりの手段の代表は、不動産会社が直接買い取る「買取」です。仲介で売るより価格は下がりやすいものの、期限内に現金にしやすい方法です。逃げ道を1つ用意しておくと、焦って大きく値下げする場面を避けられます。
まとめ:ローンが残っていても、3つの条件と期限を押さえれば持ち家から引っ越せる
ローンが残っていても、持ち家から引っ越すことはできます。分かれ目は、売ったお金で返し切れるか、新居の審査で今のローンがどう数えられるか、貸すなら借入先が認めるか、の3つです。この3つに答えが出れば、4つの方法のどれを選ぶかも自然に絞れます。
次の一歩は、返済予定表でローン残高を確かめ、「いくらで売れれば引っ越せるか」を出すことです。ここを飛ばすと、新居の予算や値下げの下限が決められないまま、査定額や気に入った物件に引っ張られて資金計画がずれていきます。
貸すことや空けておくことを考えているなら、3,000万円特別控除の期限(住まなくなってから3年がたつ年の12月31日)と、借入先への相談を先に確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、持ち家から引っ越す4つの方法や、ローン・税金の期限の注意点も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
