マンションを買って、まだ数年。転勤や家族の事情、住んでみて分かった不満で、もう引っ越したくなった。買ったばかりで売ったら大損するのか、税金が4割かかると聞いたけれど本当なのか、気になっている人も多いはずです。
先に答えを書きます。住んでいた家なら、5年以内に売っても、利益が3,000万円以内に収まれば3,000万円特別控除で税金はゼロになります。本当に気をつけたいのは、売れる価格・購入時の諸費用・ローンの減り方から生まれる損と、損が出たときの救済が所有期間5年以内だと使えない点です。
この記事では、買ってすぐ売ると損をしやすい理由、5年以内に売るときの税金、住宅ローンの扱い、引っ越すための4つの選択肢、損を小さくする売り方を、国税庁や住宅金融支援機構の公表資料で確かめながら順に見ていきます。
買ったばかりのマンションを売ると損をしやすい理由
買ったばかりのマンションを売ると、多くの場合は手元のお金が減ります。原因は税金よりも、次の3つにあります。
- 売れる価格の基準が変わる
- 購入時の諸費用は払ったきりになる
- ローンの元金がまだ多く残っている
この3つを押さえると、自分の場合にどのくらいの損が出そうかを見積もれるようになります。
新築から中古になると価格の基準が変わる
新築マンションの価格は、売主の不動産会社が決めています。分譲価格には、土地と建物の原価のほかに、広告や販売にかかる経費、売主の利益も含まれるのが一般的です。
一度でも人が住むと、そのマンションは「中古」として売りに出されます。中古の値段は、近くで広さや築年数が近い物件がいくらで売れたかを基準に決まります。比べられる相手が、新築の分譲価格から、近所の中古の成約価格に変わるのです。
そのため、買った値段と同じ金額で売れるかは、地域の相場しだいです。マンションの相場が上がっている地域では、買った値段以上で売れることもあります。自分のマンションがどちらに当てはまるかは、同じマンションや近くの物件の成約価格を調べると見えてきます。
中古で買った人は、もともと中古の相場で買っているため、この差は新築より小さくなりやすい傾向があります。
購入時の諸費用は払ったきりになる
マンションを買ったときには、物件の価格とは別に諸費用を払っています。
| 主な諸費用 | 中身 |
|---|---|
| 登記の費用 | 登録免許税と司法書士の報酬 |
| ローンの費用 | 事務手数料・保証料 |
| 税金 | 不動産取得税・印紙税 |
| 保険 | 火災保険料 |
| 仲介手数料 | 中古で買った場合 |
これらは物件の価格に上乗せして払ったお金で、売るときに買主から返ってくるお金とは別です。金額は物件や借り方で変わるので、購入時の精算書や領収書で合計を出しておくと、自分の損の大きさがつかめます。
例外は、ローンの保証料を借りたときに一括で払っている場合です。一括返済のときに、まだ経過していない期間の保証料が戻ることがあります(保証会社の手数料が差し引かれる)。保証料を金利に上乗せして払う形では、戻る保証料は原則としてゼロです。
売るときにも、仲介手数料などの費用がかかります。買うときと売るときの両方で費用がかかるので、買った値段より高く売れて、ようやく手元のお金が元に戻る計算です。
ただ、諸費用のうち仲介手数料、登記の費用(登録免許税など)、不動産取得税、印紙税は、税金の計算で「取得費」に含められます。この使い方は、後の売り方のコツの章で説明します。
出典: 国税庁 No.3252 取得費となるもの 出典: 三菱UFJ銀行 手数料一覧(住宅ローン)
返済の初めはローンの元金が減りにくい
住宅ローンは、毎月の返済額が同じ「元利均等返済」を選ぶ人が多い返し方です。この返し方では、最初のうちは返済額に占める利息の割合が大きく、元金(借りたお金そのもの)はゆっくり減っていきます。
例: 4,000万円を金利1.0%・35年・元利均等返済(ボーナス払いなし)で借りた場合(金利と期間は説明のための仮定)
- 毎月の返済額: 約11万2,900円
- 3年間で返した合計: 約406万円
- そのうち元金が減った分: 約291万円(残りの約116万円は利息)
- 3年後のローン残高: 約3,709万円
3年間で400万円以上払っても、残高は借りた額の9割を超えています。金利が高いほど、元金の減り方はさらにゆっくりになります。
頭金が少なく、物件価格に近い額を借りている人は、売れる価格がローン残高を下回ることがあります。その場合は、差額を貯金などで埋めて売ることになります。売るかどうかを考える前に、今のローン残高を返済予定表で確かめておきます。
購入後5年以内に売るときの税金の仕組み
「買ってから5年以内に売ると、税金が約4割かかる」と聞いて、売るのをためらう人は多いです。実際には、自分が住んでいた家なら、利益が3,000万円以内に収まる限り税金はゼロになります。注意したいのは、利益ではなく損が出たときです。
所有期間5年は売った年の1月1日で数える
家を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に税金がかかります。税率は、持っていた期間が5年以下か、5年を超えるかで変わります。
| 所有期間 | 区分 | 税率の合計 |
|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63%(所得税30%・住民税9%・復興特別所得税0.63%) |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%) |
復興特別所得税は、所得税の額に2.1%を掛けて計算します(30%×2.1%=0.63%、15%×2.1%=0.315%)。
気をつけたいのは、5年の数え方です。住んでいた期間ではなく、売った年の1月1日の時点で、持っていた期間が5年を超えているかで決まります。国税庁は次のように説明しています。
長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
例: 2022年4月に買った場合
- 2027年中に売る → 2027年1月1日時点で4年9か月 → 短期
- 2028年1月1日以降に売る → 2028年1月1日時点で5年9か月 → 長期
「買ってから丸5年」で切り替わるのではなく、買ってから6回目の1月1日を迎えた年に売ると長期になります。自分の場合は、購入した年に6を足した年の1月1日以降が長期、と数えると分かりやすくなります。
出典: 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税) 出典: 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
利益が出ても3,000万円特別控除は所有期間に関係なく使える
税率が約4割と聞くと重く感じますが、自分が住んでいた家を売った場合は「3,000万円特別控除」が使えます。売った利益から最高3,000万円を差し引ける特例です。国税庁は次のように書いています。
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
購入から1年で売っても対象です。買ったばかりのマンションで3,000万円を超える利益が出るのはまれなので、多くの人は税金がゼロになる計算です。所有期間の要件があるのは、所有期間10年超で使える「軽減税率の特例」のほうで、3,000万円特別控除とは別の制度です。
使うときは、次の3点を押さえておきます。
- 自分が実際に住んでいた家であること。この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家や、仮住まいなど一時的な目的で入居したと認められる家は対象外です
- すでに住んでいない家なら、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(例: 2026年5月に引っ越した場合は、2029年12月31日まで)
- 税金がゼロになる場合も、この特例を使うには確定申告が必要なこと
新しい家で住宅ローン控除を使う予定の人は、もう1つ注意が要ります。3,000万円特別控除を使うと、新居に入居した年とその前2年・後3年の計6年間のどこかに当たる場合、新居の住宅ローン控除は対象外になります(令和2年3月31日以前の売却では、入居した年とその前後2年の計5年間でした)。どちらが得かは、売却の利益の大きさと、新居のローン控除の見込み額を比べて決めます。
なお、この「後3年」の制限が対象にしているのは、控除を受けている家とその敷地「以外の資産」を売った場合です(租税特別措置法41条)。今の家そのものを売って3,000万円特別控除を使う場合、今の家でこれまで受けた住宅ローン控除は、この制限の外にあります。
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: e-Gov法令検索 租税特別措置法(第41条)
売却損の繰越控除は所有期間5年超が条件
買ったばかりのマンションでは、利益よりも損が出るケースのほうが多くなりがちです。
家や土地を売って出た損は、原則として、ほかの家や土地を売った利益とだけ相殺でき、給料などほかの所得との差し引きは対象外です。国税庁は、他の土地や建物の譲渡所得から引いても引き切れない損は「事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません」と説明しています。
その例外が、住んでいた家を売って損が出たときの2つの特例です。
| 買い換えた場合の特例 | 住宅ローンが残る家の特例 | |
|---|---|---|
| 国税庁の番号 | No.3370 | No.3390 |
| 所有期間 | 売った年の1月1日で5年超 | 売った年の1月1日で5年超 |
| 主な条件 | 新居を買い、償還期間10年以上の住宅ローンを組む | 償還期間10年以上の住宅ローンが残り、その残高を下回る価格で売る(新居は買わなくてよい) |
| 差し引ける損 | 売却の損 | 売買契約日の前日のローン残高から売った価格を引いた額が上限 |
| 引き切れない損 | 翌年以後3年内に繰り越せる | 翌年以後3年間繰り越せる |
| 期限 | 令和9年(2027年)12月31日までの売却 | 令和9年(2027年)12月31日までの売却 |
どちらも、損を給料などの所得から差し引けるので、所得税や住民税が戻ってきます。繰り越した損を差し引く年は、合計所得金額が3,000万円以下であることも条件です。
ところが、どちらの特例にも「売った年の1月1日において所有期間が5年を超えていること」という条件があります。購入から5年以内に売った場合は、対象外になります。
つまり、5年以内に売って出た損は、ほかの所得から差し引けず、そのまま自分の負担として残ります。利益は3,000万円特別控除で消えやすいのに対し、損は救済がないまま残るため、家計への影響はこちらのほうが大きくなりやすいのです。
もう1つ、表の期限にも気を配ります。2つの特例は、今の法令では令和9年(2027年)12月31日までの売却が対象です。たとえば2022年に買った人が5年を超えるのは2028年1月1日なので、今の期限の外になります。期限が延びるかは毎年の税制改正で決まるため、売る年の国税庁の案内で確かめます。
出典: 国税庁 No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合 出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき 出典: 国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
引っ越す前に確かめたい住宅ローンの扱い
ローンを組んで間もないうちに引っ越すと、控除や返済の手続きにも影響が出ます。売る場合も貸す場合も、引っ越す前に次の3つを確かめておきます。
- 住宅ローン控除が止まる時期と額
- 一括返済の手数料と、手続きにかかる日数
- 貸す場合の、借入先の承諾
住宅ローン控除は住まなくなった年から止まる
住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて所得税などが戻ってくる制度です。令和4年以降に入居した場合、控除率は年末残高の0.7%です(令和3年までの入居は1%)。控除を受けられる期間は、新築なら最長13年、中古なら10年が基本です(令和8年以降に入居した、省エネ性能の高い中古は13年)。
この控除は、控除を受ける年の12月31日まで引き続きその家に住んでいることが条件です。引っ越して住まなくなると、その年から控除が止まります。
購入して間もない時期は、控除の残りの年数が多く、ローン残高も大きいため、止まる額も大きくなります。
例: 年末残高3,700万円の場合(残高は説明のための仮定)
- 計算上の控除額: 3,700万円×0.7%=25万9,000円
- ただし、1年あたりの上限(控除限度額)は入居した年と住宅の省エネ性能で決まる。令和6年・7年に入居した新築なら、認定住宅31.5万円、ZEH水準省エネ住宅24.5万円、省エネ基準適合住宅21万円(子育て世帯などは上乗せあり)
- 実際に戻る額は、計算上の控除額と上限の小さいほうで、納めている税額でも変わる
自分の場合は「年末残高×0.7%と上限の小さいほう×残りの年数」で、止まる額のおおよそがつかめます。年21万円が10年残っている状態で引っ越すと、200万円を超える控除を受け取れなくなることもあります。
転勤などやむを得ない事情で住めなくなった場合は、扱いが2つあります。家族が今の家に住み続け、本人だけが転勤で離れる場合は、一定の要件のもとで控除を受け続けられます。家族と一緒に引っ越し、後で戻ってまた住む場合は、勤務先からの転任の命令などのやむを得ない事由があり、住まなくなる日までに税務署へ届出書などを出しておけば、戻った年(その年に人へ貸していたら翌年)から残りの期間の控除を受け直せます。
売る場合は戻る家がなくなるため、止まった控除はそのまま失われます。この額も、売るときの損の計算に入れておきます。
出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
一括返済の手数料と手続きの期間
家を売るときは、売ったお金で住宅ローンを全部返す(一括返済する)のが一般的です。このとき、金融機関によっては一括返済の手数料がかかります。
| 借入先(例) | インターネットの手続き | 窓口の手続き |
|---|---|---|
| フラット35 | 繰上返済手数料は不要 | 繰上返済手数料は不要 |
| 三井住友銀行 | 無料 | 33,000円 |
| 三菱UFJ銀行 | 16,500円 | 33,000円 |
金額は消費税込みで、各行の公表時点のものです。対象のローンや保証会社によって扱いが異なる場合もあるので、借りたばかりの人は、契約書の「繰上返済」「全額返済」の項目と、借入先の手数料の案内を読んでおきます。保証料を借りたときに一括で払った人は、まだ経過していない期間の保証料が戻り、そこから保証会社の手数料(両行とも11,000円)が差し引かれます。
もう1つ大切なのが、手続きにかかる日数です。三井住友銀行は、家の売却で全額を返す当日に抵当権を外す書類が要る場合、3週間前(大型連休を挟むなら4週間前)までに取引店へ申し込むよう案内しています。インターネットで手続きすると、抵当権を外す書類は後日の郵送で、1か月程度かかるとしています。売買の決済日に間に合うよう、買主が決まった時点で借入先へ連絡を入れておくと安心です。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件 出典: 三井住友銀行 住宅ローン 繰上返済 出典: 三井住友銀行 住宅ローン 繰上返済(お手続方法) 出典: 三菱UFJ銀行 手数料一覧(住宅ローン)
貸すなら借入先の承諾が必要になる
売らずに賃貸に出して引っ越す方法もあります。ただ、住宅ローンは本人や家族が住む家のための、低い金利の融資です。フラット35は「お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる住宅」の取得資金と定めていて、民間の銀行も同じ前提を置いています。
借入先に知らせずに他人へ貸すと、契約違反になるおそれがあります。三井住友銀行は、次のように案内しています。
ご自身がお住まいにならず、第三者に賃貸する場合(転勤期間中の一時的な賃貸は除く)等は、ご利用中の住宅ローンを全額お返しいただく場合もございます。
一方で、転勤など本人の事情で一時的に住めなくなる場合は、認められる道があります。フラット35は、転勤等のやむを得ない事情で一時的に住めない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能とし、金融機関の窓口で住所変更の手続きを求めています。ドコモSMTBネット銀行は、ずっと賃貸にするなら住宅ローンの完済を求め、転居や海外赴任の場合は事情を聞いたうえで案内するとしています。扱いを分けるのは「戻る前提かどうか」で、認める条件は金融機関ごとに違います。
買ったばかりの家を貸すときは、家賃でローン返済と管理費・修繕積立金・固定資産税をまかなえるかも厳しく見ておきます。借りた額が大きい購入直後は、家賃だけでは足りない月が出ることもあるからです。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」 出典: 三井住友銀行 住宅ローン その他変更手続 出典: ドコモSMTBネット銀行 よくあるご質問「住宅ローンで借りている物件を賃貸物件に切り替えます。住宅ローンはこのまま継続できますか。」
買ったばかりのマンションから引っ越す4つの選択肢
買ったばかりのマンションから引っ越したいときの選択肢は、次の4つです。
| 選択肢 | 向いている人 | 主な注意 |
|---|---|---|
| 売って住み替える | 戻る予定がなく、売っても資金が回る人 | 損の大きさを先に計算する |
| 貸して引っ越す | 転勤などで戻る予定がある人 | 借入先の承諾と家賃の収支 |
| 5年を超えてから売る | 損が出そうな人・利益が大きそうな人 | 損失の特例の期限と3,000万円控除の期限 |
| 住み続けて不満を解消する | 不満の原因に手を打てる人 | 対策の費用と効果 |
どれを選ぶかは、戻る予定の有無と、売ったときの損益の見込みで絞り込めます。
売って住み替える
今のマンションを売り、そのお金でローンを返して、新しい家に移る方法です。戻る予定がなく、引っ越したい理由がはっきりしている人に向いています。
売る前に確かめたいのは、売れそうな価格からローン残高と売る費用を引いて、手元にいくら残るかです。マイナスになる場合は、差額を貯金で埋めることになります。
新しい家を買う場合は、新居の住宅ローン審査で今のローンがどう数えられるかも確かめます。住宅金融支援機構は、フラット35の審査について次のように案内しています。
返済中の住宅ローンの融資対象となっている現在居住している住宅を売却予定で、その売却予定額により当該住宅ローンを完済できることが確認できる場合に限り、総返済負担率の算定において当該住宅ローンの返済額を年間返済額から除くことができることとします。
売却予定額が残高に届かない場合も、差額を手持金や新規借入金で賄うことが資料などで確認できれば、同じく除けるとしています。対象は「現在居住している住宅」を売る予定の場合なので、先に引っ越して貸してしまうと扱いが変わります。民間の銀行の扱いは銀行ごとに違うので、借りたい金融機関へ先に聞いておきます。
買ったばかりで売ると、多くの場合は手元のお金が減ります。その損と、住み続けた場合の負担(長い通勤、家族の暮らしにくさなど)を並べて、売るほうが良いと思えるかで判断します。売る・貸すと買う・借りるの組み合わせや、引っ越すまでの流れは、持ち家から引っ越したい|ローン残債があっても動ける条件と4つの方法で詳しく説明しています。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「総返済負担率はどのように算定すればよいですか。」
貸して引っ越す
マンションを賃貸に出し、自分は別の家に移る方法です。転勤など、数年後に戻る予定がある人に向いています。
利点は、売って損を確定させずに済むことです。戻る時期が決まっているなら、期間を区切って貸す「定期借家契約」を使うと、予定どおりに戻りやすくなります。定期借家契約は、書面(または電磁的記録)で結び、契約の前に「更新がなく、期間の満了で終わる」ことを書面で説明し、期間が1年以上なら満了の1年前から6か月前までに終了を通知する、という手順が借地借家法38条で決まっています。
前提は、住宅ローンの借入先の承諾です。住まなくなると住宅ローン控除も止まるので、戻る予定があるなら、引っ越す前に税務署への届出を済ませておきます。家賃から、ローン返済・管理費・修繕積立金・固定資産税・管理会社への手数料を引いて、毎月いくら残るか、いくら足りないかを計算してから決めます。
貸した後に売ることにした場合も、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、3,000万円特別控除は使えます。国税庁は、その家は住まなくなった日以後「どのような用途に使用してもかまいません」としています。この期限を過ぎると対象外になるので、住まなくなった日を記録しておきます。
出典: e-Gov法令検索 借地借家法(第38条) 出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
所有期間5年を超えてから売る
すぐには売らず、売った年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えるまで待ってから売る方法です。
待つ意味が大きいのは、主に2つの場合です。
- 売ると損が出そうな場合: 5年を超えれば、損を給料などの所得から差し引ける特例の対象になり、税金が戻ってきます。ただし今の法令では、特例の対象は令和9年(2027年)12月31日までの売却です。2027年中に5年超になるのは、2021年までに買った人です。
- 利益が3,000万円を超えそうな場合: 3,000万円を超えた分にかかる税率が、約40%から約20%に下がります。
2022年以降に買った人は、5年を超えるのが2028年以降になり、損失の特例は今の期限の外になります。待つかどうかは、期限の延長があるかを国税庁の案内で確かめてから決めます。利益が3,000万円以内に収まりそうなら、3,000万円特別控除で税金はゼロになるので、待つ意味は小さくなります。
待つ間に先に引っ越して貸す場合は、3,000万円特別控除と損失の特例の期限(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日)にも気を配ります。待つ間もローン返済・管理費・修繕積立金はかかり続けるので、その額と、待って得られる税金の差を比べます。
出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき 出典: 国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき 出典: 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
住み続けて不満を解消する
引っ越したい理由によっては、住み続けたまま解消できる場合もあります。売る・貸すの前に、一度考えてみる価値があります。
| 引っ越したい理由 | 住み続けたまま試せる手 |
|---|---|
| 上の階の音 | 管理会社・管理組合に相談し、掲示や文書で注意を呼びかけてもらう |
| 隣人とのトラブル | 直接話す前に、管理会社・管理組合を通す |
| 部屋が狭い・使いにくい | 収納の見直し、間仕切りなどの内装工事 |
| 通勤が大変 | 在宅勤務の日数などを職場と相談する |
音や人間関係は相手があることなので、手を打っても解決までに時間がかかることがあります。対策にかける費用と期間、効果が出なかったときにどうするかを先に決めてから試すと、引っ越すかどうかの判断も先延ばしになりにくくなります。
損を小さくする売り方のコツ
売ると決めたら、損を小さくする準備をしておきます。ポイントは、損益の分かれ目の計算、税金の計算に使う書類、築浅ならではの強みの3つです。
売り出す前に損益の分かれ目を出す
売り出す前に、2つの金額を出しておきます。
① 手元にお金が残るかの分かれ目
ローン残高 + 売るときの費用
② 税金の計算で利益が出るかの分かれ目
取得費(買った値段+取得費に入る購入時の諸費用−建物の減価償却費相当額)+ 売るときの費用
①を下回る価格で売ると、貯金からお金を出すことになります。②を超えた分が税金の計算上の利益で、3,000万円特別控除の対象になります。売るときの費用(譲渡費用)には、仲介手数料や売買契約書の印紙代などが入ります。
この2つの金額があると、不動産会社から値下げを提案されたとき、どこまでなら応じられるかを自分で判断できます。値下げの下限を先に決めておくことが、損を広げないためのいちばんの備えです。
出典: 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
取得費に入れられる費用の領収書をそろえる
利益が出た場合も、損が出た場合も、税金の計算では「取得費」が大切です。取得費が大きいほど、利益は小さく計算されます。
取得費には、物件の価格のほかに、買ったときの次のような費用も含められます。
- 仲介手数料(購入手数料)
- 登記の費用(登録免許税・司法書士の報酬)
- 売買契約書に貼った印紙代
- 不動産取得税
一方、建物の部分は年数がたつと価値が減ったとみなされ、その分(減価償却費相当額)を取得費から差し引きます。自分で住んでいた家の場合、計算は次のとおりです。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
- 償却率: 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造なら0.015
- 経過年数: 6か月以上の端数は1年、6か月未満の端数は切り捨て
- 例(仮定): 建物部分2,000万円・3年で売る場合 → 2,000万円×0.9×0.015×3=81万円
買ったばかりなら、差し引く額は小さく済みます。建物部分の価格は、売買契約書で建物と土地の内訳を確かめます。
これらを示すのが、購入時の売買契約書と領収書です。取得費が分からないときは、売った価格の5%を取得費とする計算(概算取得費)になり、買ったばかりの家では利益が実際より大きく計算されやすくなります。引っ越しの片付けで手放さないよう、売ると決めた時点でひとまとめにして保管しておきます。
出典: 国税庁 No.3252 取得費となるもの 出典: 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算 出典: 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
築浅の強みを売り出しに生かす
買ったばかりのマンションには、中古の中でも「築浅」という強みがあります。売り出すときは、この強みが買主に伝わるように見せます。
伝えたいのは、次のような点です。
- 設備が新しく、交換の時期が先であること
- 新築時に売主が付けたアフターサービス(不具合の対応)の期間が残っていること
- 室内の傷や汚れが少ないこと
アフターサービスの内容や期間、次の買主へ引き継げるかは売主ごとに決まっているので、購入時に受け取った書類で確かめておきます。
内覧では、生活感をできるだけ減らし、新しさが伝わるようにします。床や壁がきれいなこと、水回りが清潔なことは、写真でも内覧でも印象を大きく左右します。
同じマンションの中に、ほかの売り物件や新築時からの販売中の住戸がある場合は、価格を比べられます。売り出しの時期や価格は、同じマンションの売り出し状況を見て決めると、比べられたときに選ばれやすくなります。
まとめ:買ったばかりのマンションは税金より損の大きさを先に計算する
住んでいた家なら、5年以内に売っても、利益が3,000万円以内に収まれば3,000万円特別控除で税金はゼロになります。重いのは損のほうで、5年以内に売って出た損は給料などの所得から差し引けず、5年超で使える特例も今の法令では2027年12月31日までの売却が対象です。
次の一歩は、返済予定表のローン残高と、購入時の売買契約書・領収書をそろえて、「手元にお金が残る価格」と「税金の計算で利益が出る価格」の2つを出すことです。ここを飛ばすと、値下げの提案にどこまで応じてよいか決められず、取得費を書類で示せないまま利益が大きく計算されることもあります。
貸すことや5年を超えるまで待つことを考えているなら、3,000万円特別控除の期限、借入先への相談、住宅ローン控除の届出を先に確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、買ったばかりのマンションを売るときの税金と住宅ローンの扱いも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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