家を売って家を買う|売ったお金が入る日と頭金の計算・順番の選び方

家を売って家を買う|売ったお金が入る日と頭金の計算・順番の選び方

今の家を売って、そのお金で次の家を買いたい。でも、売ったお金はいつ手元に入るのか、新居の支払いに間に合うのか、先に売るのと先に買うのはどちらがいいのか、気になっている人も多いはずです。

先に答えを書きます。売ったお金は、ローンの残りと費用を引いた残りが、今の家の引き渡しの日にまとめて入ります。新居の手付金はそれより前に払うので、自己資金で用意しておく必要があり、順番はこの時間差と手元の資金から逆算して決めます。

この記事では、売ってから買うまでのお金の流れ、売り先行・買い先行・同時決済の選び方、ローンが残っているときの資金の組み方、税金の特例の選び方、売却が間に合わないときの備えを、民法や国税庁・住宅金融支援機構の公表資料で確かめながら順に見ていきます。

家を売ったお金で次の家を買うまでのお金の流れ

家を売ったお金で次の家を買うとき、最初に押さえたいのは、お金が「いつ」「いくら」手元に来るかです。

  • 売ったお金の大部分が入るのは、今の家の引き渡しの日
  • 新居の手付金は、それより前の契約の日に払う
  • 頭金に回せるのは、ローン残高・売る費用・税金を引いた残り

この時間差を知らずに新居の契約を進めると、支払いの日にお金が足りなくなります。

売却代金が手元に入るのは引き渡しの日

家を売るときのお金は、2回に分けて受け取るのが一般的です。

受け取る日お金金額
売買契約の日手付金契約で決める(売買価格の1割前後が目安)
引き渡しの日(決済日)残りの代金売買価格から手付金を引いた額

引き渡しの日には、買主の住宅ローンからお金が振り込まれ、その場で売主の住宅ローンを全部返します。あわせて、家に付いている抵当権を外す登記と、買主へ名義を移す登記の申請を、司法書士が同じ日に行うのが一般的な流れです。

つまり、売買代金の大部分を使えるようになるのは、引き渡しの日からです。ローンが残っている人は、受け取った代金がその場で返済に回り、残った分だけが手元に来ます。

売買契約から引き渡しまでは、1〜2か月ほどが目安です。実際の日付は、売買契約書に書く「代金の支払の時期」と「引渡しの時期」で決まるので、新居の支払いの日程は、この2つの日付を見て組み立てます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第37条)

新居の手付金は売却代金より先に払う

新居を買うときも、売買契約の日に手付金を払い、残りの代金は新居の引き渡しの日に払います。

気をつけたいのは、新居の手付金を払う日に、今の家の売却代金がまだ手元にないことが多い点です。新居の手付金は、貯金などの自己資金で用意しておきます。新居の売主が不動産会社の場合、受け取れる手付金は代金の10分の2までと、宅地建物取引業法で上限が決まっています。

手付金には、契約をやめるときの決まりがあります。

手付による解除(民法557条)

  • 買主は、払った手付金を手放せば契約を解除できる
  • 売主は、受け取った手付金の倍の額を買主に現実に差し出せば解除できる
  • この方法で解除できるのは、相手が契約の履行に着手するまで

今の家の買主から受け取った手付金を、新居の手付金に回す方法もあります。ただ、買主の住宅ローンが通らずに融資の特約で契約が解除されると、受け取った手付金は無利息で買主へ返します。自分の都合で今の家の契約をやめるときは、手付金の倍の額が要ります。

受け取った手付金は、買主のローンの結果が出て、融資の特約で解除できる期限が過ぎるまで、使わずに置いておくと安心です。期限は売買契約書の特約の欄で確かめます。

新築マンションの場合は、手付金のほかに、引き渡し前に中間金を払うことがあります。支払いの回数と日にちは、契約前に確かめておきます。

出典: e-Gov法令検索「民法」(第557条) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第39条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第35条第1項第12号関係)

新居の頭金に回せる額を計算する

「家を売ったお金」のうち、新居の頭金に回せるのは、売却額から次のお金を引いた残りです。

新居の頭金に回せる額 = 売却額 −(ローン残高 + 売るときの費用 + 税金)

例(説明のための仮定の数字): 4,000万円で売れて、ローン残高2,500万円、売る費用150万円、税金0円の場合

→ 4,000万円 −(2,500万円 + 150万円 + 0円)= 1,350万円

売るときの費用は、次のように積み上げて見積もります。

売るときの費用4,000万円で売る場合の例確かめる先
仲介手数料(上限)138万6,000円(売買価格×3.3%+6万6,000円)媒介契約書
売買契約書の印紙税1万円(1,000万円超5,000万円以下・令和9年3月31日までに作る契約書の軽減後の税額)契約書の金額
抵当権を外す登録免許税不動産1つにつき1,000円(土地と建物で2,000円〜)登記事項証明書
ローンの一括返済手数料金融機関ごと(例: 三井住友銀行は窓口33,000円・インターネット無料、三菱UFJ銀行は店頭33,000円・インターネット16,500円)借入先の手数料表
司法書士への報酬事務所ごと見積書

仲介手数料の上限は、価格を200万円以下・200万円超400万円以下・400万円超の部分に分けて、5.5%・4.4%・3.3%(消費税込み)を掛けて足した額です。400万円を超える物件では「売買価格×3.3%+6万6,000円」と同じ額になります。

例の150万円は、表の金額の合計(約143万円)に司法書士への報酬などを足して丸めた仮定の値です。自分の場合は、表の右の列の書類で実額に置き換えます。

税金は、売って利益が出たときにかかります。自分が住んでいた家なら、利益が3,000万円以内に収まれば3,000万円特別控除で税金をゼロにできますが、新居の住宅ローン控除とどちらを取るかを選ぶ場面があります(後の税金の章で説明します)。

新居を買うときにも、登記の費用、ローンの手数料や保証料、不動産取得税、中古なら仲介手数料などの諸費用がかかります。これらは自己資金から払うことが多いので、手元に残る額から諸費用を引いた残りが、頭金として使える金額です。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号)」 出典: 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」 出典: 法務省「抵当権の抹消登記手続について(法務局)」 出典: 三井住友銀行「住宅ローン 繰上返済」 出典: 三菱UFJ銀行「借入後に必要な住宅ローン手数料」

売り先行・買い先行・同時決済の選び方

家を売って家を買う順番は、次の3つです。どれを選ぶかで、お金の動きと、仮住まいや二重ローンの必要が変わります。

順番お金の動き仮住まい二重ローン
売り先行売却の手取りが決まってから新居を買う要ることがある起きにくい
買い先行自己資金か新しいローンで先に買う不要起きることがある
同時決済売却代金をその日に新居の支払いに回す不要起きにくい
売り先行・買い先行はどちら?住み替えで損しない選び方と実践テクニック 売り先行・買い先行はどちら?住み替え(買い替え)で損しない選び方と実践テクニック

売り先行が向く人

売り先行は、今の家を先に売り、手取りの金額が決まってから新居を買う方法です。

向いているのは、ローンが残っていて、売却代金で返してから新居のローンを組みたい人です。売れた金額が分かってから新居の予算を立てられるので、資金計画がずれにくくなります。

注意したいのは、今の家の引き渡しまでに新居が決まらない場合です。仮住まいの家賃と、引っ越し2回分の費用がかかります。

これを避けるには、今の家の売買契約で、引き渡し日を遅めに設定してもらう方法があります。売り出す段階から「新居を探しながら売る」と不動産会社に伝え、買主と引き渡しの時期を相談できるようにしておくと、日程を合わせやすくなります。

買い先行が向く人

買い先行は、新居を先に買って引っ越し、その後に今の家を売る方法です。

向いているのは、自己資金に余裕がある人や、ローンをすでに返し終えている人です。気に入った物件をじっくり探せて、今の家から新居へ1回の引っ越しで移れます。空き家にしてから売り出すので、内覧で部屋を広く見せられる利点もあります。

一方で、今の家が売れるまでは、今のローンと新居のローンを両方払う「二重ローン」になることがあります。新居のローンの審査では今のローンの返済も負担として数えられるので、年収によっては新居のローンの額が想定より小さくなります(次の章で詳しく見ます)。

新居の支払いに期限がある中で今の家を売るため、値下げの交渉に応じやすくなる点も覚えておきたいところです。

売りと買いを同じ日に決済する同時決済

同時決済は、今の家の引き渡しと、新居の引き渡しを同じ日に行う方法です。今の家の売却代金で今のローンを返し、残りのお金をそのまま新居の支払いに回します。

仮住まいも二重ローンも避けられるので、「売ったお金で買う」をいちばんそのまま形にできる方法です。

そのかわり、段取りが要ります。今の家の買主、新居の売主、それぞれの金融機関、司法書士の日程を同じ日にそろえます。売却の決済で受け取ったお金で新居の決済をするので、同じ日のうちに売却の決済を先に、購入の決済を後に行う順番で組みます。

日程がそろわないときは、今の家の引き渡しを数日遅らせてもらう「引渡し猶予」と組み合わせる方法もあります。どこまで合わせられるかは、売り出しの段階から不動産会社と相談しておきます。

住み替えの同時決済と引渡し猶予とは?仕組みと条件 住み替え(買い替え)の同時決済と引渡し猶予とは?仕組みと条件

ローンが残っている家を売って買うときの資金の組み方

ローンが残っている家を売って新しい家を買う場合は、今のローンをどう返すかが資金計画の中心になります。

  • 基本は、売却代金で今のローンを返してから新居のローンを組む
  • 新居の審査で、今のローンを返済負担に入れない扱いがある
  • 売却額が残高に届かないときは、住み替えローンという方法がある

売却代金で今のローンを完済してから新居のローンを組む

基本の流れは、今の家の売却代金で今のローンを全部返し、抵当権を外してから、新居のローンを使う順番です。

住宅ローンは、本人や家族が住む家のために借りるお金です。たとえばフラット35の資金使途は、申込本人またはその親族が住む住宅の建設・購入資金で、第三者に貸す目的の投資用の物件は対象外です。今のローンを売却代金で返し終えてから新居のローンを使う順番にすると、2つの住宅ローンを同時に抱える期間を作らずに済みます。

同時決済の日には、次の順番でお金が動きます。

  1. 今の家の買主から残りの代金を受け取る
  2. そのお金で今のローンを一括返済し、抵当権を外す
  3. 新居の住宅ローンのお金が出る(融資の実行)
  4. 新居の残りの代金を払い、新居の引き渡しを受ける

この流れを1日で行うため、今のローンの借入先には、一括返済の日を早めに伝えておきます。例えば三井住友銀行は、売却で全額を返す当日に抵当権を外す書類が要る場合、3週間前(大型連休を挟むときは4週間前)までに取引店へ申し込むよう案内しています。

出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」 出典: 三井住友銀行「住宅ローン 繰上返済」

新居の審査で今のローンを返済負担に入れない扱い

新居の住宅ローン審査では、年収に対する年間の返済額の割合(返済負担率)が見られます。審査の時点で今のローンが残っていれば、その返済も負担として数えられます。

ここで知っておきたいのが、今の家を売って今のローンを返す予定なら、その分を計算から除いてもらえる場合があることです。住宅金融支援機構は、フラット35の総返済負担率について次のように案内しています。

返済中の住宅ローンの融資対象となっている現在居住している住宅を売却予定で、その売却予定額により当該住宅ローンを完済できることが確認できる場合に限り、総返済負担率の算定において当該住宅ローンの返済額を年間返済額から除くことができることとします。

売却予定額が残高に届かない場合でも、差額を手持金や新しい借入れで賄うことが資料などで確認できれば、今のローンの返済額を除けるとされています。対象は「現在居住している住宅」の売却予定なので、すでに貸している家は別の扱いです。

民間の金融機関の扱いは、銀行ごとに違います。売り先行で売買契約まで済んでいれば、売却額が契約書で決まっているので、説明の材料をそろえやすくなります。買い先行では、売却予定額をどの資料で示せばよいかを、借りたい金融機関へ新居を探し始める前に確かめておくと、買える価格の上限が早く分かります。

出典: 住宅金融支援機構「総返済負担率はどのように算定すればよいですか。」(Q&A番号3222)

売却額が残高に届かないときの住み替えローン

今の家を売っても、ローン残高に届かないことがあります。その差額を貯金で埋められないときに使われるのが「住み替えローン」です。

住み替えローンは、新居の購入資金に、今のローンの返しきれない分を上乗せして借りるローンです。今の家の抵当権を外して売れるので、新居に移れます。

ただ、借りる額が新居の価値を上回るため、審査は通常の住宅ローンより厳しくなります。借入額が増える分、毎月の返済も重くなり、扱う金融機関も限られます。

使う前に、差額がいくらになるのか、貯金でどこまで埋められるのか、新居の価格を下げて対応できるかを先に計算しておきます。

住み替えローンは使えるか・使うべきか|売却額と残債で自分で判断する 住み替えローンは使えるか・使うべきか|売却額と残債で自分で判断する

家を売って買うときの税金の特例の選び方

家を売って買うときは、売る側の税金の特例と、買う側の住宅ローン控除のどちらを使うかを選ぶ場面があります。

売却の結果選び方の目安
利益が大きい3,000万円特別控除を検討
利益が小さい新居の住宅ローン控除と損得を比べる
損が出た損益通算・繰越控除と住宅ローン控除を一緒に使える場合がある

3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除は、決まった期間の中では同時に使えない組み合わせなので、どちらが得かを比べて選びます。

売却益が出るなら3,000万円特別控除

自分が住んでいた家を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、「3,000万円特別控除」が使えます。利益から最高3,000万円を差し引けるので、利益が3,000万円以内なら税金はゼロになります。

利益は、売却額から「取得費(買った値段や購入時の費用から、建物の価値が減った分を引いたもの)」と「売るときの費用」を引いて計算します。古くに買った家や、相場が上がった地域の家では、利益が大きくなることがあります。

ただし、この特例を使うと、新居で住宅ローン控除が使えなくなる期間があります。新居に入居した年と、その前2年・後3年の計6年間に3,000万円特別控除を使うと、新居の住宅ローン控除は対象外です。令和2年3月31日以前の売却では、入居した年とその前後2年の計5年間でした。

ここで見落としやすいのが、売る時期をずらして両方を受ける道です。今の家を出たのが新居に入った年かそれより前なら、3,000万円特別控除が使える売却の期限(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日)は、この6年間の中に入ります。住み替えでは、どちらか一方を選ぶ前提で考えます。

売却益が3,000万円を超えるような場合は、「特定のマイホームを買い換えたときの特例」も候補になります。売った家の利益への課税を、買い換えた家を将来売るときまで先送りする特例で、税金がなくなるものとは違います。使えるのは、売った家に10年以上住み、売った年の1月1日で所有期間が10年を超え、売却代金が1億円以下で、令和9年12月31日までに売る場合などです。この特例も、3,000万円特別控除や新居の住宅ローン控除とは同時に使えない組み合わせです。

利益が出る家を売って、新居をローンで買う人は、次のh3の比べ方で、どちらを取るかを決めます。

マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較 マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」 出典: 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

売却益が小さいなら新居の住宅ローン控除を優先

売却益が小さい場合は、3,000万円特別控除を使わずに税金を払い、新居の住宅ローン控除を受けたほうが、手元に残るお金が増えることがあります。

比べる2つの金額

  • 3,000万円特別控除で減る税金 = 売却益 × 税率(売った年の1月1日で所有期間5年超は20.315%、5年以下は39.63%)
  • 新居の住宅ローン控除で戻る税金 = 各年の控除額(年末残高×0.7%と控除限度額の小さいほう)を、控除期間の年数分足した額

例(仮定): 売却益300万円・所有期間5年超 → 特例を使わずに払う税金は 300万円×20.315%=約61万円

新居の住宅ローン控除で戻る税金の見込みが61万円より大きければ、住宅ローン控除を選んだほうが得になります。所有期間が5年以下なら、同じ300万円の売却益でも税金は約119万円(300万円×39.63%)になり、分かれ目が上がります。

戻る税金には上限があります。控除限度額は、入居した年と住宅の省エネ性能で決まり、例えば令和8年に入居する中古住宅のうち省エネ基準に当てはまらない「その他の住宅」は年14万円・10年間なので、戻る税金は多くても140万円です。新築や省エネ性能の高い住宅では、限度額や控除期間が大きくなります。

実際に戻る額は、ローン残高の減り方と、その年に納める所得税の額でも変わります。所得税から引き切れない分は、翌年度の住民税から一定の範囲で差し引かれます。売る前に、新居の借入額と入居予定の年で、自分の見込み額を計算しておきます。

もう1つ、住宅ローン控除を選ぶと、所有期間10年超の家を売ったときの軽減税率の特例も同じ期間は使えなくなるので、売却益の税金は上の税率のまま計算します。

住み替えで住宅ローン控除は使える?2回目の条件と2026年改正を自己判定 住み替え(買い替え)で住宅ローン控除は使える?2回目の条件と2026年改正を自己判定

出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」

売却損が出たときの損益通算と繰越控除

家を売って損が出た場合は、売却の税金はゼロです。さらに、条件を満たせば、その損を給料などの所得から差し引ける特例があります。

「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」では、住んでいた家を売って損が出て、新居をローンで買った場合に、その損を給与所得や事業所得など他の所得から差し引けます。その年に引き切れない損は、翌年以降3年間繰り越せます。

この特例は、新居の住宅ローン控除と一緒に使えます。損が出るケースでは、両方を使って税金を減らせます。

主な条件は次のとおりです。

対象主な条件
売った家売った年の1月1日で所有期間が5年を超えている
売った時期令和9年12月31日までの売却
新居売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得・床面積50平方メートル以上・取得した年の翌年12月31日までに住む
新居のローン取得した年の12月31日に、返済期間10年以上の住宅ローンがある
繰越控除繰り越す年の合計所得金額が3,000万円以下・その年の12月31日にも返済期間10年以上の住宅ローンがある

確定申告が必要なので、条件に当てはまるかを売る前に確かめておきます。期限のある特例なので、売る年に国税庁の案内で最新の期限も確かめます。

出典: 国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」

売却が間に合わないときの備え

家を売って家を買う計画で、いちばんのリスクは今の家が予定どおりに売れないことです。売り先行でも買い先行でも、間に合わなかったときの備えを契約の段階で用意しておきます。

備え使う場面必要な同意
買い替え特約買い先行で新居を先に契約するとき新居の売主
引渡し猶予売り先行で引き渡し日がずれるとき今の家の買主
買取保証期限までに売れなかったとき不動産会社

新居の契約に買い替え特約を付ける

買い替え特約は、新居の売買契約に「決めた日までに今の家が売れなかったら、契約を白紙に戻せる」という条件を付けるものです。今の家が売れなかった場合に、新居の手付金を返してもらい、契約を解除できます。

買い先行で新居を先に契約するときの保険になります。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」も、買い換えのときに売却する物件が売れなかった場合の措置を、契約の書面に明記することが望ましいとしています。

あわせて知っておきたいのが、仲介手数料の扱いです。売却と購入の両方の仲介を同じ不動産会社に頼む場合、売却の契約が成立しなかったときは、購入の仲介で受け取った報酬を全額返す特約を結び、書面にすることが望ましいとされています。買い替え特約を付けるときは、仲介手数料の扱いも一緒に確かめておきます。

ただ、新居の売主にとっては売れる時期が先に延びる条件なので、付けるには売主の同意が要ります。断られることや、期限を短く設定するよう求められることもあります。

付けた場合は、期限までに売れる価格で売り出せるよう、今の家の売り出し計画を先に固めておきます。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係・第37条第1項関係)

買い替え特約とは?使える場面と断られる場面・手付の扱い 買い替え特約とは?使える場面と断られる場面・手付の扱い

引渡し猶予で引っ越しまで住み続ける

引渡し猶予は、今の家の代金を受け取った後も、数日間だけ住み続けられるようにする取り決めです。売り先行で、今の家と新居の引き渡しの日がずれるときに使います。

今の家の売却代金を受け取り、そのお金で新居の代金を払って新居に引っ越すまでの間、今の家に住み続けられるので、仮住まいを避けられます。

使うには買主の同意が要ります。買主はお金を払っても数日間は入居できないため、受け入れてもらえないこともあります。猶予の日数は買主との取り決めで決まり、数日から1週間程度が目安です。

引き渡しの時期は売買契約書に書く事項なので、使いたい場合は、売買契約の前に不動産会社を通して買主に伝え、契約書の日付に反映してもらいます。

買取保証で売れ残りに備える

買取保証は、決めた期間内に仲介で売れなかった場合、不動産会社があらかじめ決めた価格で買い取る約束です。売り出す前に、仲介の契約と合わせて結びます。

この仕組みがあれば、期限までにお金を用意できる見通しが立つので、新居の購入を進めやすくなります。

注意したいのは、買い取りの価格が、仲介で売れる相場より低くなることです。また、使える物件の条件は不動産会社が決めています。

買取保証を付けるときは、保証される価格でも新居の資金計画が成り立つかを確かめておきます。成り立つなら、売れ残ったときの安心材料になります。

まとめ:売ったお金が入る日から逆算して順番と資金を決める

家を売って家を買うときにいちばん重いのは、売ったお金の大部分が今の家の引き渡しの日まで使えず、新居の手付金はそれより前に自己資金で払うという時間差です。ローンが残っていれば、受け取った代金はその場で返済に回り、残った分だけが頭金になります。

次の一歩は、査定額とローンの返済予定表から、頭金に回せる額を「売却額 −(ローン残高+売るときの費用+税金)」で出し、借りたい金融機関に、今のローンを返済負担から除けるかを確かめることです。ここを飛ばすと、新居の契約後に手付金や頭金が足りないと分かったり、借りられる額が想定より小さかったりして、手付金を手放して契約をやめる事態にもなり得ます。

売却益が出そうなら、3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除のどちらが得かを契約前に計算し、損が出そうなら損失の特例の所有期間と期限を確かめましょう。住み替えのトビラでは、家を売ったお金で次の家を買うときのお金の流れと税金の特例の選び方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。