築30年のマンションで子どもが独立し、水回りの古さも気になってきた。このまま住み続けるか、売って住み替えるかで迷う時期です。
判断の材料は、査定額のほかに「管理組合の修繕計画と積立金」「自分の年齢と次に組めるローンの長さ」「住み続けた場合と売った場合の10年間のお金」の3つです。
この記事では、判断基準、住み続ける費用、今売る利点、売るときの税の注意点、高く売るコツを、国や公的機関の資料で確かめながら順に見ていきます。
築30年のマンションを住み続けるか売るかの判断基準
住み続けるか売るかを決める材料は、次の3つにまとまります。
| 見る材料 | 確かめる資料 |
|---|---|
| 建物と管理の見通し | 長期修繕計画・総会資料 |
| 自分の年齢とローン | 住宅ローンの借入条件 |
| 10年間のお金 | 査定・成約事例と、家計の見積もり |
2026年に築30年なら、竣工はおおむね1996年前後です。新築時の長期修繕計画が30年で組まれていれば、その期間が終わるころでもあります。ここから先の10年に何が起きるかを資料で確かめてから決めると、後悔が少なくなります。
長期修繕計画と修繕積立金の残高
最初に見るのは、管理組合の長期修繕計画です。総会の資料に付いているほか、売るときに不動産会社が管理会社から取り寄せる「重要事項調査報告書」でも、修繕積立金の額や修繕の予定を確かめられます。
確かめるのは次の4点です。
- 計画期間が今から30年以上先まで続いているか
- 修繕積立金の残高と、計画上の必要額の差
- 積立金の値上げの予定と、その時期・金額
- 管理組合の借入や、一時金の徴収予定の有無
国土交通省のガイドラインは、計画期間を次のように定めています。
計画期間は、30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とします。
(国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)
同じガイドラインは、計画を5年程度ごとに見直すことを前提にしています。計画が見直され、残高も足りていれば、住み続ける安心材料になります。反対に、最後の見直しから年数がたっている計画は工事費の上昇を織り込めていない可能性があり、これから大きな値上げや一時金が出てくることもあります。
出典: 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)」令和6年6月7日改訂
次の大規模修繕と設備更新の時期
同じガイドラインのコメントは、外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期を「一般的に12~15年程度」としています。この周期なら、築30年は2回目の大規模修繕を終えたか、その前後にあたります。横浜市のマンションポータルも、築後30年程度を超えたマンションは当初の修繕計画の予定期間を超え、大規模修繕も2回程度経ている時期だと説明しています。
築30年からの修繕で重いのは、外壁や屋上に加えて設備の更新が重なる点です。ガイドラインのコメントは、経年30年程度で見込まれる工事として昇降機設備(エレベーター)の取替えを挙げ、給排水管の取替えなどは修繕周期が計画期間を上回り、計画に含まれていないことがあると注意しています。どれも1回の工事費が大きく、積立金が足りなければ値上げか一時金で集めることになります。
ここで知っておきたいのは、工事の前に売るか後に売るかで、費用を払う人が変わることです。工事の前に売れば、その費用は次の持ち主が積立金や一時金として負担します。ただし買主も工事の予定と積立金の残高を見て価格を考えるので、不足が大きいと値引きの材料になります。工事の後まで住み続けるなら、自分が払った分だけ建物の状態が良くなります。
総会資料で次の工事の時期と予算を確かめておくと、「いつまでに決めればいいか」が見えてきます。築年数ごとの売り時の節目は、別の記事で整理しています。
出典: 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)」令和6年6月7日改訂 出典: 横浜市「マンションの長寿命化・建替・売却を比較する」
年齢と住み替え先で組める住宅ローン
30代で新築を買った人なら、築30年の今は60代前後です。住み替え先をローンで買うなら、年齢が借りられる期間を左右します。
たとえばフラット35は、申込時の年齢が満70歳未満であることが条件です。借入期間の上限は「80歳−申込時の年齢(1年未満切上げ)」と「35年」の短い方で、下限は15年(申込みご本人または連帯債務者が満60歳以上なら10年)です。
次の表は、借入額2,000万円・金利年2.0%・元利均等返済・ボーナス返済なしで、借入期間を上限いっぱいに取った場合の試算です。金利2.0%は計算のために置いた仮定の値で、実際の金利は申込時にフラット35の金利情報で確かめます。
| 申込時の年齢 | 借入期間の上限 | 毎月の返済(試算) |
|---|---|---|
| 55歳 | 25年 | 84,771円(約8.5万円) |
| 60歳 | 20年 | 101,177円(約10.1万円) |
| 65歳 | 15年 | 128,702円(約12.9万円) |
毎月の返済額は「借入額×月利×(1+月利)^返済回数÷{(1+月利)^返済回数−1}」で求めます(月利=年利÷12、返済回数=年数×12)。自分の借入予定額と金利を入れれば、同じ式で置き換えられます。
この試算では、55歳で申し込むか60歳で申し込むかで、同じ借入額でも毎月の返済が16,406円、約1.6万円上がります。申込時の年齢は1年未満を切り上げるので、55歳3か月なら56歳として数え、上限は24年です。「あと5年住んでから考える」を選ぶなら、建物の状態と同じくらい、自分の年齢も判断の材料に入れておきます。
出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在)
売った場合の手取りと住み続けた場合の支出の比較
最後に、両方のお金を同じ期間で並べます。期間は10年がおすすめです。
| 比べる項目 | 住み続ける | 売って住み替える |
|---|---|---|
| 入るお金 | なし | 売却額から仲介手数料・税金・ローン残債を引いた手取り |
| 出るお金 | 管理費・修繕積立金・室内の改修費・固定資産税 | 新居の購入費・諸費用・新居の管理費など |
| 10年後に残る住まい | 築40年のマンション | 新居(築年数は選び方次第) |
売却額は、査定1社の数字に頼らず、築年数の近い成約事例で見当をつけます。売った後に手元に残る額の計算は、別の記事で手順を追っています。
この表を作ると、住み続ける側の支出がどれくらいになるかが見えてきます。次の章で、その中身を見ていきます。
築30年のマンションに住み続ける場合にかかる費用
住み続ける場合の費用は2つに分かれます。管理組合を通じて払う共用部の費用と、自分で払う室内の費用です。
共用部の費用は総会の決議で決まり、区分所有者の多数決で動きます。室内の費用は、時期と範囲を自分で選べます。この違いを分けて見積もると、10年間の支出が読みやすくなります。
修繕積立金と管理費の値上げ
修繕積立金の集め方には、最初から一定額を集める「均等積立方式」と、最初は安く段階的に上げていく「段階増額積立方式」があります。国土交通省は、段階増額積立方式のマンションの中に計画期間中の積立金の水準が大幅に上昇している例があるとして、2024年6月にガイドラインを改め、引上げ幅の目安を示しました。
段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。
(国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改訂)
基準額は、計画期間全体で集める修繕積立金の総額を、マンションの総専有床面積と計画期間の月数で割った額(1㎡あたりの月額)です。長期修繕計画の収支表から総額と期間を拾えば、自分のマンションの計画がこの目安に収まっているかを確かめられます。計画の最高額が基準額の1.1倍を超えていれば、これから値上げ幅が大きくなる計画だと読めます。
ガイドラインは、工事費の高騰などを踏まえた計画の見直しで積立金を大幅に引き上げることまで制限するものではない、とも書いています。目安に収まっていても、見直しのたびに値上げが出ることはあります。
管理費も、管理委託費の改定などで見直されることがあります。総会の議案に「管理委託費の改定」が出ていないかも合わせて見ておきます。値上げが売却に与える影響は、別の記事で詳しく扱っています。
出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月7日改訂 出典: 国土交通省 報道発表「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定について(令和6年6月7日)
室内の給排水管と水回りのリフォーム費用
マンションの給排水管は、建物を縦に通る共用の管と、各住戸の床下を通る室内の管に分かれます。国土交通省のマンション標準管理規約は、給水管は本管から各住戸のメーターを含む部分まで、雑排水管と汚水管は配管継手と立て管を共用部分としています。その先にある室内の管の取替え費用は、標準管理規約のコメントで、各区分所有者が実費に応じて負担するものとされています。
標準管理規約はひな型なので、どこまでが共用部分かは自分のマンションの管理規約で決まります。規約の別表で範囲を確かめておきます。
築30年は、室内の配管や給湯器、浴室・キッチン・トイレといった水回りの交換を考える時期と重なりやすいころです。床下の配管を替えるには床をはがすので、水回りのリフォームと同時に行うと工事をまとめられます。
標準管理規約のコメントは、共用部分の配管と専有部分の配管の取替えを同時に行うことで費用が軽減される場合には、一体的に工事を行うことも考えられるとしています。その場合は、長期修繕計画に専有部分の配管の取替えを記載し、修繕積立金から出すことを規約に定めるなどの手当てが要ります。共用部の工事予定を総会資料で確かめてから室内の工事の時期を決めると、無駄が出にくくなります。
費用は住戸の広さや工事の範囲で大きく変わります。複数の会社から見積もりを取り、配管の交換が含まれているかを見比べます。
出典: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」令和7年10月17日改正
老後に向けた段差解消や手すりの改修費用
住み続けるなら、10年後、20年後の体の変化に合わせた改修も見込んでおきます。建てられた時期によっては、浴室の出入口の段差や、手すりのない廊下やトイレが残っていることがあります。
要介護や要支援の認定を受けると、介護保険の住宅改修費の支給を使えます。東京都大田区の案内では、次のとおりです。
- 対象の工事: 手すりの取付け、段差の解消など
- 対象になる工事費: 要介護度にかかわらず20万円まで
- 支給額: そのうち9割・8割・7割(自己負担は1〜3割。1割負担の人が20万円の工事をすると、保険給付は18万円・自己負担は2万円)
- 手続き: 工事の前に申請する
20万円を超える部分は全額が自己負担です。浴室全体の入れ替えのような大きな工事では、この枠を超える分を自分で払うことになります。手続きの細部は市区町村で違うので、住んでいる自治体の案内で確かめます。
一方で、家屋の固定資産税の評価額は、建築後の年数の経過に応じた減価(経年減点補正率)を反映して算定されます。住み続ける費用は「共用部の値上げ」「室内の設備」「体の変化への備え」の3つを足し、固定資産税は毎年届く課税明細書の額をもとに見積もります。
出典: 大田区「介護保険住宅改修費の支給」 出典: 総務省「固定資産税の概要」
築30年のマンションを今売って住み替えるメリット
築30年のマンションは、買主の税の条件、売主の税の特例、自分の年齢の3つが、売る側に有利にそろいやすい時期です。
東日本不動産流通機構の2026年4〜6月の集計は、首都圏の中古マンションについて「首都圏の築25年超の成約件数は、成約件数全体の50%以上を占める。」としています。同じ集計で「築30年~」の帯の成約は5,016件で、全体11,849件の約4割(42.3%)でした。築年数の古い物件にも、買い手はついています。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2026年04~06月】」
新耐震基準で買主が住宅ローン控除を使える
中古マンションで住宅ローン控除を使うための築年数の要件は、住み始めた時期で変わっています。令和3年(2021年)までに住み始めた場合は、マンションなどの耐火建築物なら建築から取得までの期間が25年以下であるか、耐震基準に適合する建物であることが要件でした。令和4年(2022年)1月1日以後に住み始める場合の要件は、次のとおりです。
昭和57年1月1日以後に建築されたものであること。
(国税庁 タックスアンサー No.1211-3)
2026年に築30年のマンションは1996年前後の竣工なので、この要件を満たします。買主は、床面積や所得などのほかの要件を満たせば控除を使えます。
売主が手元で確かめておくのは、登記簿の「新築年月日」です。この要件は建物が建築された日で判定されるので、売り出しの段階で日付を示しておくと、買主や買主の銀行が控除の可否をすぐに判断できます。「築30年だと税で損をするのでは」という買主の心配を、資料で先に解いておけます。
出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 国税庁 No.1214 中古住宅を取得し、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
所有期間10年超の軽減税率と3,000万円控除を使える
自分が住んでいた家を売って利益が出たときに、税金を抑える特例が2つあります。
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 所有期間の長短に関係なく、利益から最高3,000万円を差し引く |
| 所有期間10年超の軽減税率 | 課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の所得税が10%(住民税は4%)になる |
国税庁は、この2つの特例は重ねて受けることができる、としています。軽減税率の所有期間は売った年の1月1日で判定するので、新築時から持っている人なら10年超の条件は満たしています。
東日本不動産流通機構の同じ集計では、首都圏の築20年超の各築年帯で、成約価格がすべての都県・地域で前年同期比上昇でした。購入時の価格によっては売却益が出ることもありますが、3,000万円控除の範囲に収まるか、超えても軽減税率で抑えられる場合があります。利益が出るかどうかは、購入代金から建物の減価償却費相当額を差し引いた「取得費」で決まります。
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 長野市「個人市民税・県民税(住民税)の課税標準額と税率」
住宅ローンを組める年齢のうちに住み替え先を買える
住み替え先をローンで買うなら、早く動くほど借入期間を長く取れます。判断基準の章で見たとおり、フラット35は申込時の年齢が46歳を超えると上限が「80歳−申込時の年齢」で決まるので、年齢が5歳上がるごとに借入期間の上限が5年縮みます。
団体信用生命保険を付けて借りる場合は、加入するときに健康状態の告知が要ります。持病が出てからだと選べる保険やローンが狭まることがあるので、収入と健康の見通しが立っているうちの方が、希望の借入額を組みやすくなります。
売却代金で新居の大部分を払えるなら、ローンは小さくて済みます。そのときも、借りられる期間が長いうちに借りておく方が毎月の返済を抑えられ、選べる住み替え先が広がります。
出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在)
築30年のマンションを売って住み替えるときの注意点
築30年のマンションを売るときに気をつけたいのは、税金の落とし穴2つと、売る・買うの順番です。どれも売り出した後に気づくと取り返しにくいので、住み替えを考え始めた段階で確かめておきます。
購入時の契約書の有無で譲渡所得税が変わる
売却の利益は「売った金額−取得費−譲渡費用」で計算します。取得費を示すのが、購入時の売買契約書です。30年前の契約書が見つからない場合、国税庁は次のように扱います。
売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなど、取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。
(国税庁 タックスアンサー No.3258)
契約書が見つからないときは、購入時の領収書、住宅ローンの契約書、通帳の振込記録、分譲時のパンフレットの価格表など、買った値段を示す資料を探し、取得費の根拠に使えるかを税務署に相談します。住み続けるか迷っている今のうちに探しておくと安心です。
出典: 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 長野市「個人市民税・県民税(住民税)の課税標準額と税率」
3,000万円控除と新居の住宅ローン控除はどちらか一方を選ぶ
住み替えで見落とされやすいのが、売る家の特例と、買う家の住宅ローン控除の関係です。国税庁は中古住宅の住宅ローン控除の要件として、一定の期間に3,000万円の特別控除や軽減税率、買換えの特例などを受けていないことを挙げています。
居住年およびその前2年、その後3年の計6年間(令和2年3月31日以前の譲渡の場合は、居住年およびその前後2年の計5年間)に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
(国税庁 タックスアンサー No.1211-3)
居住年は、新居に住み始めた年です。住み替えで今の家を売る年はこの6年間に入りやすいので、売る家で3,000万円控除や軽減税率を使うか、買う家で住宅ローン控除を使うか、どちらかを選ぶことになります。
売却益が出ないなら、住宅ローン控除を選べば済みます。利益が出るなら、特例で減る税金と、住宅ローン控除で戻る税金を比べて、多い方を選びます。住宅ローン控除を選ぶと売却益には軽減税率も使えず、通常の長期譲渡所得の税率(所得税15%・住民税5%、復興特別所得税を含めて20.315%)で計算する点も比べる材料に入れます。
このほか、売った人の居住期間が10年以上、所有期間が10年超、売却代金が1億円以下などの条件で使える「特定の居住用財産の買換えの特例」もあります(令和9年12月31日までの売却が対象)。税金を将来に繰り延べる仕組みで、3,000万円控除や軽減税率とは選択になります。どれが得かは金額で変わるので、売り出す前に税務署か税理士に試算を頼むと安心です。
出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(令和8年4月1日現在法令等) 出典: 国税庁 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例(令和8年4月1日現在法令等)
売却と購入の順番で資金繰りが変わる
住み替えには、今の家を先に売る「売り先行」と、新居を先に買う「買い先行」があります。
| 進め方 | 利点 | 負担 |
|---|---|---|
| 売り先行 | 売却額が決まってから予算を組める | 仮住まいと2回の引越し |
| 買い先行 | 新居をじっくり選べる | 売れるまで両方の住居費 |
新築時に35年以内のローンを組み、繰上げ返済もしてきた人なら、築30年の今は完済しているか、残りが数年分という人もいます。その場合は買い先行でも二重の返済の負担が小さく、手元の資金で新居の頭金を出せれば、売却を急がずに済みます。
ローンが残っている人は、売り先行か、売却と購入の決済日を同じ日に合わせる進め方が安全です。
築30年のマンションを高く売るコツ
築30年のマンションでは、内装の新しさとあわせて、管理の状態とこれからかかる費用が買主の関心になりやすくなります。高く売るには、見た目を整えることより、買主の不安を資料で先に解くことに力を入れます。
リフォームをせずにそのまま売り出す
築30年の中古マンションを探す人の中には、買った後に自分の好みでリノベーションしたい人もいます。売主が先にリフォームしても、その内装が買主の好みと合わなければ、かけた費用ほど価格に上乗せされにくい傾向があります。
工事が終わるまで売り出しを待つので、売却の時期も後ろにずれます。
売主がやっておきたいのは、ハウスクリーニングと、不具合の正直な申告です。民法は、引き渡した物が契約の内容に適合しないとき、買主が売主に修補などを請求できると定めています(契約不適合責任)。水漏れの跡や設備の故障を契約前に伝え、契約書や物件の状況を書く書面に記載しておけば、その不具合を含めた内容で契約したことになり、引き渡しの後に責任を問われる心配が減ります。
迷ったときは、不動産会社に「そのまま売る場合」と「直して売る場合」の査定を両方出してもらい、差額と工事費を比べて決めます。
修繕履歴と長期修繕計画を買主に示す
築30年のマンションの買主が知りたいのは、「この先、修繕積立金がいくら上がるのか」「一時金を払うことにならないか」です。そこで、売り出しの段階から次の資料をそろえておきます。
- 長期修繕計画(最新の見直し版)
- 過去の大規模修繕の時期と内容
- 修繕積立金の残高と、今後の値上げ予定
- 管理計画認定の有無
管理計画認定は、マンションの管理計画(長期修繕計画や管理規約など)について、地方公共団体が認定する制度です。認定を受けた中古マンションは住宅金融支援機構の【フラット35】維持保全型の対象になり、買主がこれを使うと、借入金利が当初5年間、年0.25%引き下げられます。維持保全型には予算金額があり、達する見込みになると受付が終わります。
これらは、住み続けるか売るかを判断するときに見た資料と同じものです。判断の段階で集めておけば、売ると決めたときにそのまま買主に渡せます。
出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】維持保全型」 出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】維持保全型 利用要件」
築年数の近い成約事例で売り出し価格を決める
売り出し価格は、築年数・広さ・駅からの距離が近い物件の「成約価格」で決めます。売り出し中の価格は売主の希望額なので、それと比べると高く見積もりやすくなります。
ここで気をつけたいのが、統計の区切りです。東日本不動産流通機構の築年帯別の集計は「~築30年」の帯の次が「築30年~」で、築30年を超えた物件は築40年や築50年の物件と同じ帯にまとめられます。2026年4〜6月の首都圏の中古マンションでは、成約価格の平均が「~築30年」で5,211万円、「築30年~」で2,767万円でした。広さや立地の違いも混ざった平均なので、築30年を少し超えただけの物件を「築30年~」の平均と比べると、実際より安く感じます。
価格は平均ではなく、同じマンションや近くの同じ年代の成約事例で見当をつけます。具体的な調べ方は、築30年前後の相場の記事にまとめています。
査定は複数の会社に頼み、価格の根拠に成約事例が示されているかを確かめます。根拠のそろった査定を比べることが、築30年のマンションを納得のいく価格で売る近道です。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2026年04~06月】」
まとめ:築30年は修繕計画と年齢で住むか売るかを決める
築30年のマンションを住み続けるか売るかで、いちばん重い材料は管理組合の長期修繕計画です。計画期間と積立金の残高、次の工事の時期が見えれば、住み続けた場合の10年間の支出と、売るならいつまでに動くかが決まります。
次の一歩は、最新の総会資料と長期修繕計画を手元にそろえることです。これを飛ばして査定額だけで決めると、住み続けた後の値上げや一時金を見落とし、売る段階でも買主に示す資料が足りず、価格の交渉で押されやすくなります。
資料がそろったら、自分の年齢で組めるローンの期間と、購入時の契約書の有無も確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、築30年のマンションの修繕計画の読み方や売却時の税の特例の使い分けも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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