住み替え(買い替え)の資金計画で、登記費用をいくら用意すればよいのか迷う人は多いでしょう。
迷いやすいのは、買うときの登記費用が売買価格ではなく、市区町村が決めた物件の評価額(固定資産税評価額)と、住宅ローンの借入額で決まるためです。
この記事を読めば、司法書士の見積書が届く前に、自分の住み替えでかかる登記費用を計算できます。
不動産の登記費用はいくら?売るときと買うときの目安
マンションの住み替えでかかる登記費用は、売るときが2万〜3.5万円ほど、買うときが数十万円で、費用の大半は買うときにかかります。
売るときの額は、必要な登記の種類でほぼ決まります。一方、買うときの額は、物件の固定資産税評価額と住宅ローンの借入額によって大きく変わります。
登記費用の中身は「登録免許税」と「司法書士報酬」
登記費用は主に、国に納める登録免許税と、手続きを任せる司法書士に払う司法書士報酬の2つを足した額です。
登記とは、不動産の持ち主が誰か、住宅ローンを貸した金融機関がどんな権利を持っているかなどを、国の記録(登記簿)に載せる手続きです。登録免許税は、この記録を載せるときにかかる税金です。
登録免許税の額は法律で決まっていて、自分で申請しても司法書士に頼んでも同じです。司法書士報酬は事務所ごとに違い、同じ登記でも頼む先によって額が変わります。
このほか、登記事項証明書(登記簿の内容を写した証明書)などを取る手数料が、数百円〜数千円かかります。
住み替えでは、今のマンションを売るときと、住み替え先を買うときの2回、登記の手続きがあります。必要な登記も費用を払う人も違うので、売るときと買うときに分けて計算すると、それぞれの額が分かりやすくなります。
出典: 国税庁「No.7190 登録免許税のあらまし」(2026年10月13日参照)
【早見表】住み替えの登記費用を誰が・いくら・いつ払うか
売るときの登記費用は売主が、買うときの登記費用は買主が負担し、どちらも決済日に司法書士へ払うのが一般的です。
決済日は、買主が残りの代金を払い、売主が物件を引き渡す日です。
| 場面 | 登記 | 払う人 | 金額の目安 | 払う時期 |
|---|---|---|---|---|
| 売るとき | 抵当権抹消(今の住宅ローンの抵当権を消す) | 売主 | ・登録免許税2,000円 ・司法書士報酬の平均17,470円 | 決済日(売買代金から差し引くことが多い) |
| 売るとき | 住所・氏名変更(登記簿の住所や氏名が今と違う場合) | 売主 | ・登録免許税2,000円 ・司法書士報酬の平均13,913円 | 決済日 |
| 買うとき | 所有権移転(名義を買主に移す) | 買主 | ・登録免許税=固定資産税評価額×税率(計算例では11.7万円) ・司法書士報酬の平均56,678円 | 決済日 |
| 買うとき | 抵当権設定(住宅ローンを借りる場合) | 買主 | ・登録免許税=借入額×0.1%(3,000万円なら3万円) ・司法書士報酬の平均42,699円 | 決済日 |
抵当権は、ローンを返せなくなったときに、金融機関が家を売ってお金を回収できる権利です。ローンを借りるときに抵当権を登記するのが抵当権設定、返し終えて消すのが抵当権抹消です。
司法書士報酬の平均は、日本司法書士会連合会が2024年(令和6年)3月に行った全国アンケートの値です。所有権移転と抵当権設定の平均は、固定資産税評価額(土地と建物の合計)と借入額がどちらも1,000万円の例での額です。
このほか、司法書士が決済の場に立ち会う手当(日当)や交通費が加わることもあります。
表の登録免許税2,000円は、不動産1個につき1,000円として、部屋と敷地を1個ずつ数えた額です。売るときの合計は、抵当権抹消だけなら約2万円、住所・氏名変更もあれば約3.5万円になります。
買うときの登記費用は、4,000万円の中古マンションを3,000万円借りて買う例で約25万円です。売るときと買うときの諸費用をまとめた額は、住み替え費用のシミュレーションで手順どおりに計算できます。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(2026年10月13日参照)
出典: 日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」(報酬に関するアンケート・令和6年3月実施)(2026年10月13日参照)
買うときの登記費用は固定資産税評価額と借入額で決まる
買うときの登録免許税は、所有権移転の分が固定資産税評価額で、抵当権設定の分が借入額で決まります。
どちらにも、条件を満たすと税率が下がる軽減税率があります。軽減税率を使えないと、4,000万円の計算例では登録免許税が約24万円増えます。
所有権移転の登録免許税は「固定資産税評価額×税率」
所有権移転の登録免許税は、売買価格ではなく、固定資産税評価額に税率を掛けた額です。
軽減税率を使うと、税率は土地が1.5%、建物が0.3%です。
固定資産税評価額は、毎年の固定資産税を計算するために市区町村が決めた、土地や建物の価格です。多くの場合は売買価格よりかなり低いので、売買価格で計算すると登記費用を高く見積もってしまいます。
マンションの土地は、敷地全体の固定資産税評価額に自分の持ち分の割合を掛けた額が、計算のもとになります。つまり、敷地をほかの住人と分けて持つ分だけ額が小さくなり、土地の登録免許税も低めに収まりやすいのです。
たとえば、4,000万円の中古マンションを、3,000万円の住宅ローンを借りて買う場合を例に、計算してみましょう。固定資産税評価額は、土地(自分の持ち分)600万円、建物900万円とします。
| 登記 | 計算のもとになる額 | 金額(例) | 税率(軽減税率) | 登録免許税 |
|---|---|---|---|---|
| 所有権移転(土地) | 土地の固定資産税評価額(自分の持ち分) | 600万円 | 1.5% | 9万円 |
| 所有権移転(建物) | 建物の固定資産税評価額 | 900万円 | 0.3% | 2.7万円 |
| 抵当権設定 | 借入額 | 3,000万円 | 0.1% | 3万円 |
| 合計 | 14.7万円 |
登録免許税は合計14.7万円です。これに司法書士報酬の平均(所有権移転56,678円、抵当権設定42,699円)を足すと約24.6万円になり、買うときの登記費用は約25万円が目安です。
表の600万円と900万円を買う物件の固定資産税評価額に置き換えれば、自分の物件の登録免許税も同じ手順で出せます。
固定資産税評価額は、売主に毎年届く固定資産税の課税明細書に載っていて、仲介会社に頼めば契約の前に確かめてもらえます。仲介会社が出す費用の見積もりにも、この額で計算した登記費用が入っていることが多いです。
課税明細書のほかの調べ方は、固定資産税評価額の調べ方で確かめられます。
新築マンションの建物は、所有権移転ではなく、はじめて持ち主を記録する「所有権保存」の登記になります。税率は軽減税率で0.15%、土地の持ち分は中古と同じく1.5%です。
新築の建物はまだ固定資産税評価額が決まっていないため、法務局が決めた基準の額をもとに計算されます。登記費用の見積もりは、たいてい売主から示されます。
なお、登記とは別に、買ってから数か月後に、都道府県から不動産取得税の納税通知書が届きます。登記費用の見積書には入っていない税金なので、資金計画に忘れずに入れておきましょう。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(2026年10月13日参照)
抵当権設定の登録免許税は借入額の0.1%
抵当権設定の登録免許税は、住宅ローンの借入額に0.1%(軽減税率)を掛けた額で、3,000万円を借りれば3万円です。
軽減税率を使えないときの税率は0.4%で、同じ3,000万円なら4倍の12万円です。
今の家のローンの残りも合わせて借りる住み替えローンでは、借入額が増えた分だけ登録免許税も増えます。たとえば借入額が500万円多いと、登録免許税は5,000円上がる計算です。
住み替えローンを使える条件は、住み替えローンの解説にまとめています。
現金で買う場合は抵当権を設定しないので、この登記は不要です。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(2026年10月13日参照)
軽減税率の条件は登記簿で50㎡以上、1982年以降に建った家
建物の所有権移転と抵当権設定の軽減税率は、主に次の条件をすべて満たすと使えます。
- 自分が住む家である
- 登記簿の床面積が50㎡以上ある
- 1982年(昭和57年)1月1日以降に建てられた
- 買ってから1年以内に登記する
- 市区町村が出す住宅用家屋証明書を、登記のときに添える
住宅用家屋証明書は、自分が住む家であることなどを市区町村が証明する書類です。東京都中央区では手数料が1通1,300円で、司法書士に頼めば代わりに取ってもらえます。
条件を満たさないと、税率が本来の高さに戻ります。4,000万円の計算例では、建物の税率が0.3%から2.0%に、抵当権設定の税率が0.1%から0.4%に上がります。
登録免許税は14.7万円から39万円になり、約24万円増えます。 土地の1.5%は別の制度による軽減税率なので、この条件にかかわらず1.5%のままです。
マンションで特に気をつけたいのは床面積です。実は、同じ部屋でも、広告と登記簿では床面積の数字が違います。
登記簿の床面積は、壁の内側で測った「内法(うちのり)」の面積です。広告やパンフレットの面積は壁の厚みの真ん中で測った「壁芯(へきしん)」の面積なので、登記簿のほうが少し小さくなります。
広告に50㎡台前半と書かれた部屋は、登記簿では50㎡に届かないことがあります。 契約の前に、登記事項証明書で床面積を確かめておきましょう。
住宅ローン控除(年末のローン残高に応じて所得税などが減る制度)の床面積の条件も、登記簿の面積で判断します。登記事項証明書を一度見ておけば、両方の条件を確かめられます。
住宅ローン控除のほかの条件は、マンション住み替えの住宅ローン控除で確かめられます。
1981年(昭和56年)12月31日以前に建てられたマンションでも、耐震基準を満たすことを示す証明書があれば、軽減税率を使えます。証明書は買う前に取る必要があるので、早めに仲介会社へ相談しましょう。
| 登記 | 本来の税率 | 軽減税率 | 軽減税率の期限 |
|---|---|---|---|
| 土地の所有権移転(売買) | 2.0% | 1.5% | 2029年(令和11年)3月31日までの登記 |
| 住宅の建物の所有権移転(売買) | 2.0% | 0.3% | 2027年(令和9年)3月31日までに買った家 |
| 住宅の建物の所有権保存(新築) | 0.4% | 0.15% | 2027年(令和9年)3月31日までに新築した家か、買った家 |
| 住宅ローンの抵当権設定 | 0.4% | 0.1% | 2027年(令和9年)3月31日までに新築した家か、買った家 |
土地の軽減税率は、2026年度(令和8年度)の税制改正で、2026年3月31日までだった期限が3年延びました。
建物と抵当権設定の軽減税率の期限は2027年3月31日です。それより後に買う場合は、国税庁のページでその時点の制度を確かめるのがおすすめです。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(2026年10月13日参照)
出典: 東京都中央区「住宅用家屋証明書」(2026年10月13日参照)
出典: 不動産登記規則(e-Gov法令検索)(2026年10月13日参照)
売るときの登記費用は抵当権抹消と住所変更で数万円
売るときに売主が払う登記費用は、抵当権抹消と、必要な場合の住所・氏名変更の2つで、合わせても数万円ほどです。
名義を買主に移す所有権移転の費用は、買主が払うのが一般的です。売主は、この2つの登記に必要な書類を、決済日までにそろえておきましょう。
抵当権抹消は約2万円、売買代金から差し引いて払える
抵当権抹消の費用は、登録免許税2,000円と司法書士報酬の平均17,470円を合わせた約2万円です。
登録免許税は不動産1個につき1,000円で、マンションの多くは部屋と敷地の2個なので2,000円です。敷地がいくつかの土地に分かれていると個数が増えるため、登記事項証明書で数えておくと正確な額が分かります。
住み替えでは、決済日に売買代金で今の住宅ローンを返し、同じ日に抵当権を消すのがふつうです。司法書士が、所有権移転と続けて抵当権抹消を申請します。
抵当権抹消の費用も売買代金から差し引かれることが多く、手元のお金を別に用意しなくて済みます。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(2026年10月13日参照)
出典: 日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」(報酬に関するアンケート・令和6年3月実施)(2026年10月13日参照)
登記簿の住所が今と違えば、住所・氏名変更登記も必要
登記簿の住所や氏名が今と違うときは住所・氏名変更登記が必要で、費用は登録免許税2,000円と司法書士報酬の平均13,913円を合わせた約1.6万円です。
登記簿の住所は、引っ越したあとも、変更の登記をするまで古いままです。住所や氏名が違ったままでは名義を買主に移せないため、司法書士が決済日に所有権移転とまとめて申請するのが一般的です。
住所・氏名変更登記は、2026年(令和8年)4月1日から義務になりました。住所や氏名が変わってから2年以内に申請する必要があります。
2026年4月1日より前に変わった分は、2028年(令和10年)3月31日が期限です。正当な理由なく申請しないと、5万円以下の過料(行政上の罰として払うお金)の対象になります。
法務局が住所を自動で書き換える「スマート変更登記」もありますが、個人は前もって法務局へ申し出ておくことが条件です。売ることが決まっているなら、決済の手続きの中で直しておくと、売却の登記と一度にまとめられます。
出典: 不動産登記法(e-Gov法令検索)(2026年10月13日参照)
出典: 法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」(2026年10月13日参照)
出典: 日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」(報酬に関するアンケート・令和6年3月実施)(2026年10月13日参照)
登記費用で抑えられるのは司法書士報酬の一部
登録免許税は誰が申請しても同じ額なので、登記費用のうち節約できるのは司法書士報酬の部分に限られます。
ただし住み替えでは、司法書士を自由に選べないことや、自分で申請できないことも多く、実際に減らせるのはその一部と考えられます。
見積書が高いと感じたら、登録免許税と司法書士報酬に分けて確かめる
見積書を見て「思ったより高い」と感じたら、総額から登録免許税を引き、残った司法書士報酬を平均と比べてみてください。
数十万円の見積もりでも、実はその多くが登録免許税で、こちらは法律で決まった額です。
司法書士報酬の部分には、主に次のような項目が並びます。
- 登記の申請の代行(所有権移転・抵当権設定・抵当権抹消など)
- 登記に使う書類の作成
- 決済に立ち会う手当(日当)
- 登記事項証明書や住宅用家屋証明書を代わりに取る手数料
このほか、証明書の発行手数料や郵送費などの実費が、別の欄に書かれていることもあります。
項目の名前や分け方は事務所ごとに違うので、司法書士報酬の合計で比べると判断しやすくなります。買うときなら、所有権移転と抵当権設定の平均を足した約10万円に、立ち会いの日当などを加えた額が目安です。
新築マンションでは、売主が決めた司法書士に頼むことがほとんどで、替えるのは難しいでしょう。
中古マンションでは仲介会社が紹介することが多いものの、ローンを借りる金融機関が認めれば、自分で選んだ司法書士にも頼めます。替えたいときは、売買契約の前に仲介会社へ伝えておきましょう。
出典: 日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」(報酬に関するアンケート・令和6年3月実施)(2026年10月13日参照)
自分で登記できるのは、ローンを先に返し終えた場合の抵当権抹消
自分で申請して司法書士報酬を節約できるのは、主に決済より前に住宅ローンを返し終えている場合の抵当権抹消です。
売買代金でローンを返す場合は、決済日に司法書士が所有権移転と続けて抵当権抹消を申請するため、こちらも司法書士に任せることになります。
住宅ローンを借りて買う場合、所有権移転と抵当権設定は、金融機関から司法書士に頼むよう求められるのがふつうです。代金の支払いと登記を、同じ日に誤りなく進めるためです。この2つは、司法書士に頼む前提で見積もっておきましょう。
ローンを返し終えている人は、金融機関から届く抵当権抹消の書類を使い、自分で法務局に申請できます。節約できる司法書士報酬は約1.7万円で、書類づくりと法務局での手続きに数時間から半日ほどかかります。
まとめ:登記費用の大半は買うときにかかる
住み替えの登記費用の大半は買うときにかかり、その額は売買価格ではなく、固定資産税評価額と借入額で決まります。
契約の前に、買う物件の固定資産税評価額と、登記簿の床面積を確かめておきましょう。床面積が50㎡に届かないと軽減税率を使えず、計算例では登録免許税が約24万円増えます。
司法書士の見積書が届いたら、登録免許税を差し引いた司法書士報酬の額を、平均と比べてみてください。住み替えのトビラでは、マンションを売るときと買うときの登記費用の計算の仕方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
