50代でマンションを買い替えるときは、売るのと買うのをどちらの順で動かすかで、その後の段取りが変わってきます。
順番に迷ったら、返し終えるまでの年数や手元に残る額などを踏まえて、今の住まいを先に売り切る形を選びます。
査定から売却、住まい探し、借り入れ、同じ日の決済までの5つの段階を、買い替えた後の税の手続きまで含めて説明します。
50代のマンション買い替えは何から始める?全体の流れと「売り先行」が基本の理由
50代のマンション買い替えは、いまの家を売る段取りから始めるのが基本です。
買い替えは売却と購入を連動させる動きです。公表されている日数は売却活動の一区間だけで、東日本レインズによれば首都圏の中古マンションはレインズへの登録から成約まで平均82.5日(2025年)でした。前年の2024年は85.3日、その前は80.1日です。買い替えを決めた人に向け、この記事は売り先行を前提に動く順番をたどる地図です。
この82.5日はレインズへの登録日から数えた日数で、売り出しからでも査定からでもありません。他社の記事や統計で日数を見るときは、どこを起点に数えているかを確かめてください。また年平均であり、何日以内に何%が成約したかという分布は公表されていません。一般媒介で売り出した物件は集計の母集団に入りません。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」p.9
マンション買い替えの全体フローと進む順番
買い替えは「査定→売却→購入→決済」の順に進み、売却の着地点が購入のスケジュールを決めます。
全体の流れは、今の家の査定から新居の決済まで5つの段階に分かれます。段階ごとの所要日数は、レインズ登録から成約までの区間を除いて公表されていません。日数で押さえるのではなく、「何が終われば次へ進めるか」で押さえてください。
段階を並行させながらも、ペースを決めるのは売却です。売却の引渡し時期が固まると、新居の決済日もそこから逆算で決まります。先に売る理由は、この一点で全体の予定が組み立てやすくなるためです。
| 段階 | 主な動き | ここが終われば次へ進む |
|---|---|---|
| 査定・準備 | 売却価格を把握し書類を準備 | 複数社の査定が出そろい、手取りの見込みが立つ |
| 売却活動 | 売り出しと内覧対応 | 買主と価格・引渡し時期の条件が合う |
| 売買契約〜引渡し | 契約と決済日の調整 | 決済日と引渡し日が確定する |
| 物件探し〜購入契約 | 新居選びと購入申込(売却と並行) | 売却の手応えがつかめ、購入申込が通る |
| 決済・引渡し | 売却と購入を同じ時期に着地 | 旧ローンの完済と新居の登記が済む |
50代は「売り先行」が基本。買い先行が向くのはどんな人か
50代は二重ローンと完済年齢の制約から、売却を先に固める「売り先行」が無理のない進め方になります。
理由の1つは、借入期間の短さです。国土交通省の調査では、完済時年齢を審査項目としている金融機関が994機関中978機関(98.4%)あり、その内容として最も多いのが「80歳未満」で716機関でした。次いで「その他」158機関、「85歳未満」65機関、「75歳未満」42機関と続きます。単一の線があるわけではありませんが、80歳未満を置く機関が多数派である以上、50代で新たに組む借入は期間が短くなります。期間が短いほど毎月の返済は重くなるため、大型ローンを前提にしない売り先行が現実的です。
なお、この調査は金融機関が申告した審査項目の集計であり、実際に融資が実行された案件の完済時年齢の分布ではありません。複数回答である点にもご注意ください。
返済期間を逆算するときは、フラット35の定め方に揃えるのが分かりやすい方法です。フラット35の借入期間の上限は「80歳−申込時の年齢(1年未満は切り上げ)」と35年のいずれか短いほうで、50歳なら30年、55歳なら25年になります。
出典: 国土交通省住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月)
もう1つは、二重ローンの回避です。新居を先に買う買い先行では、今の家が売れるまで2本のローンを抱える期間が生まれます。売り先行なら売却の手取りが確定してから新居を選ぶので、資金計画が途中で崩れにくくなります。
買い先行が向くのは、限られたケースです。資金に余裕があって二重の負担を一時的に許容できる人や、住みながらの売却や仮住まいをどうしても避けたい人などが当てはまります。多くの50代にとっては、まず売却を動かす流れが出発点になります。
| 観点 | 売り先行 | 買い先行 |
|---|---|---|
| 資金計画 | 手取り確定後に予算化 | 売却前に新居資金が必要 |
| 二重ローン | 起きにくい | 一時的に発生しうる |
| 仮住まい | 必要な場合あり | 原則不要 |
| 向く人 | 残債があり堅実に進めたい人 | 資金に余裕がある人 |
買い替え全体でかかるお金の見取り図
買い替えのお金は「売却の手取り→諸費用→新居予算」という1本の流れでつながっています。
出発点は、売却で手元に残るお金です。売却額からローン残債と仲介手数料などの諸費用を引いた金額が手取りになり、これが新居の頭金や予算のベースになります。新居側にも購入時の諸費用が別途かかります。
買う側の諸費用のうち、売買価格から額が確定するのは、媒介報酬の上限・印紙税・所有権移転登記の司法書士報酬・抵当権設定登記の司法書士報酬の4つです。これだけを積み上げると次のようになります。
| 売買価格 | 4費目の合計 | 売買価格に占める割合 |
|---|---|---|
| 2,000万円 | 83.54万円 | 4.18% |
| 3,000万円 | 116.54万円 | 3.88% |
| 4,000万円 | 149.54万円 | 3.74% |
| 5,000万円 | 182.54万円 | 3.65% |
割合は価格が上がるほど下がります。4つのうち価格に比例するのは媒介報酬の3.3%分だけで、印紙税は階段状の定額、司法書士報酬は定額だからです。
ここに含めていない費目が2種類あります。1つは登録免許税と不動産取得税で、これらは売買価格ではなく固定資産税評価額を課税標準とするため、価格からは確定しません(建物=評価額×0.3%、土地=評価額×1.5%、不動産取得税=建物は(評価額−控除額)×3%、土地は評価額×1/2×3%から住宅用地の減額を引いた額)。自分の物件の評価額は、売主に固定資産税の課税明細書を見せてもらうか、仲介する不動産会社に確認してください。もう1つは住宅ローンの事務手数料・保証料、火災保険料、引越費用、リフォーム費用で、金融機関・保険会社・物件ごとに額が違うため、この積み上げには入っていません。
なお、上に出した売却側の諸費用(仲介手数料など)と、この買う側の割合は、数えている費目が違います。売却側は媒介報酬の上限・印紙税・抵当権抹消の登録免許税と司法書士報酬を数え、買う側は媒介報酬の上限・印紙税・所有権移転登記と抵当権設定登記の司法書士報酬を数えています。2つの割合を足して「買い替え全体で◯%」とはまとめられません。
新居の規模感もつかんでおくと計画が描きやすくなります。国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査では、三大都市圏で分譲マンション(分譲集合住宅)を取得した世帯の購入資金は平均6,443万円・中央値5,500万円、中古マンション(既存集合住宅)を取得した世帯は平均3,321万円・中央値2,750万円でした。平均は高額の取引に引き上げられるため、自分の予算感に近いのは中央値のほうです。手取りと自己資金でどこまで賄えるかを見たうえで、残りの借入額を決めると、買い替え予算の全体像が見えてきます。
なおこの「令和7年度」は、2024年4月から2025年3月に住み替えなどを行った世帯を調べたものです。
出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(令和8年7月・住宅局)2.4.1
【STEP1】査定で手元に残る額を確かめ予算を固める
売り先行の最初の一手は、いまの家の査定で「手元に残る額」を確かめることです。
査定で売却見込みを把握し、残債と諸費用を引いた手取りから新居予算を逆算します。ここで予算枠が決まると、物件選びもローンも具体的に動き出します。
今の家がいくらで売れて、いくら残るか
手元に残る額は「売却見込み額−ローン残債−売却諸費用」でおおまかにつかめます。
最初の作業は、売却見込みを知ることです。複数の不動産会社の査定を並べると、いまの家がいくらで売れそうかの価格帯が見えてきます。複数社へ一度に依頼できる一括査定を使えば、相場の幅を短時間でつかめるのが利点です。
次に、住宅ローンの残高を差し引きます。残債は返済予定表や金融機関の残高証明で確認でき、売却見込みがこれを上回れば差額が手元に残る計算です。下回る分は自己資金などで補う前提です。
最後に、売却の諸費用を引きます。中心は仲介手数料です。国土交通省の告示は代金を3つに区切って上限を定めており、200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けて合計します(いずれも消費税等相当額を含む割合)。代金が400万円以上であれば、この合計は「売買価格×3.3%+6.6万円」という速算式と一致します。3,000万円なら105.6万円です。代金が400万円未満のときは速算式のほうが過大になるため使えません。
なお告示が定めるのは上限額であって定価ではありません。ただし実務では上限いっぱいで請求されるのが通例です。これらを引いた残りが新居に回せる手取りになります。
出典: 国土交通省告示第1552号 第二(昭和45年建設省告示第1552号・最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)
退職金・老後資金をどこまで使うか、50代の予算で必ず決めること
退職金や老後資金をどこまで住み替え(買い替え)に回すかを、50代は予算づくりの最初に決めておきます。
中古マンションの買い替えは、自己資金の比重が大きくなりがちです。令和7年度の住宅市場動向調査では、中古マンション(既存集合住宅)を取得した世帯の自己資金比率は40.0%で、購入資金3,321万円のうち自己資金が1,329万円、借入金が1,992万円でした。分譲マンションを取得した世帯でも自己資金比率は39.9%です。手取りにこれらを上乗せして、新居の自己資金を作る形になります。
出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(令和8年7月・住宅局)2.4.1
退職金を頭金へ多く回すほど、毎月の返済は軽くなります。ただし老後の生活費や医療・介護への備えが薄くなり、反対に自己資金を絞れば借入が増えて、完済年齢の制約で返済が窮屈になります。どちらに寄せるかを、住み替え前に見定めておくと安心です。
決めておきたいのは3点あります。自己資金として出せる上限、手元に残す生活防衛資金、そして毎月の無理のない返済額です。この3つが固まると、新居の予算上限が現実的な数字に落ち着きます。
予算づくりでつまずくポイント
予算づくりでつまずく原因の多くは、「高く売れる前提」と「退職金頼みの返済」に集まります。
査定額や希望価格をそのまま手取りとみなして予算を組むと、成約額が下回ったときに計画が崩れます。予算は強気の価格ではなく、堅めの売却見込みで組んでおくと、値下げ局面でも耐えられます。
退職金を当て込んだ返済計画も、つまずきやすいところです。受け取る額や時期は確定とは限らず、老後資金とも取り合いになります。退職金は前倒し返済に回せる余力と考え、なくても回る計画にしておくと崩れにくくなります。
【STEP2】今の家を売る|50代の買い替えで売却をするときの判断
予算が固まったら売却を動かし、その引渡し時期で新居購入の予定を組み立てます。
売り先行では売却の売買契約と引渡し時期が新居購入のスケジュールを決めます。買い替えを成立させるには、売却を購入のタイミングに合わせて動かす判断が欠かせません。
媒介契約から売り出し・売買契約までの進み方と価格設定
売却は媒介契約を結んで売り出し、買主と条件が合えば売買契約へと進みます。
買い替えで意識したいのは、成約の時期です。売買契約で決まる引渡し日が、新居の決済日から逆算した目標になります。だから漫然と売り出さず、いつまでに売るかの目安を持つことが大切です。
売り出し価格は、売主が自分で決めます。査定額を上限の目安にしつつ、相場や売り出し中の似た物件を見て設定するのが基本です。高すぎれば反応が鈍って時間を失い、低すぎれば手取りが減るため、「いつまでに・いくらで」を両にらみで置きます。
売り出してからは、内覧や問い合わせの数で価格の手応えを読みます。反応の薄い状態が続けば、価格や見せ方の見直しも売主の判断です。新居の決済時期が近づくほど、価格より時期を優先する場面も出てきます。
住みながら売る50代の内覧対応と、引渡し時期の調整
50代の多くは住みながら売るため、内覧対応と引渡し時期を購入の予定に合わせて進めます。
住んだまま売り出すと、どうしても生活感が出ます。内覧で印象を左右するのは、片付けと部屋の明るさです。玄関・水回り・窓まわりを重点的に整理し、家具を減らして動線を見せると、広さが伝わりやすくなります。
内覧は週末に集中しやすく、急な依頼が入ることもあります。対応できる曜日や時間帯を不動産会社へ先に伝えておくのが安心です。留守中の対応の任せ方も、先に決めておきます。
買い替えで難しいのは、引渡し時期の決め方です。早く引き渡せば新居が決まる前に住む場所を失い、遅らせ過ぎると買主が離れることもあります。新居の購入時期を見ながら、売買契約で引渡し日に幅を持たせる交渉が効きます。
買い替えの売却で陥りやすい落とし穴
買い替えの売却でいちばん多い失敗は、新居を急ぐあまり安く手放すことです。
新居を早く押さえたい気持ちが強いほど、売却を焦って値下げに走りがちです。わずかな値下げでも手取りは大きく目減りし、新居予算にそのまま響きます。売り急ぎは、せっかくの売り先行の利点を打ち消してしまいます。
焦りを抑える鍵は、下げてよい下限を先に決めておくことです。値下げは感情ではなく、決めた下限と反応のデータに沿って判断します。引渡し日に幅を持たせておけば、時期に追われずに価格を守りやすくなります。
【STEP3】終の棲家となるマンションを選ぶ|50代の物件選びで外せない軸(売却と並行)
売却と並行して新居を探し、50代は20〜30年後の終の棲家として選ぶのが分かれ目です。
物件選びは、今の住みやすさに加えて、20〜30年先まで安心して住めるかが鍵になります。価格に表れない管理や修繕の質まで見る目が、後悔を防ぎます。
物件探しから購入申込・契約までの進み方
新居探しは売却と並行で進め、購入のタイミングを売却の引渡しに合わせます。
物件探しから内見、購入申込、売買契約までが新居側の流れです。買い替えでは売却の進み具合を見ながら、申込のタイミングを計ります。
申込が早すぎると、売却前に購入が確定して資金繰りが苦しくなりがちです。遅すぎれば、希望の物件を逃すこともあります。売却の手応えがつかめた段階で動くと、無理なく両者を重ねられます。
終の棲家として50代が見る判断軸
終の棲家として見るのは、駅近・間取り・バリアフリー・医療アクセスの4つの軸です。
歳を重ねると、駅やバス停までの距離が暮らしやすさを大きく左右します。買い物や通院が徒歩で完結する生活圏かを確かめます。
間取りは、夫婦中心の暮らしに合うコンパクトさが扱いやすいです。段差の少なさや手すり、エレベーターなど、室内と共用部のバリアフリーも見ます。
よくあるのは、都心の戸建てから駅近マンションへの住み替えです。郊外の戸建てを売って子の近くに移る人や、広い3LDKから駅近2LDKへ移る人も少なくありません。
選ぶときは、今の便利さと20〜30年後の体力の変化を重ねるのが大切です。階段や坂道、エレベーターの更新見込みは、年齢が上がるほど効いてきます。
中古マンションで必ず確認すること
価格に表れない管理と修繕の質こそ、中古マンション選びで必ず確認すべき点です。
完成年次別の修繕積立金(月/戸当たり・令和5年度)
| 完成年次 | 月額修繕積立金 |
|---|---|
| 昭和59(1984)年以前(N=295) | 11,685円 |
| 昭和60〜平成6(1985〜1994)年(N=250) | 13,163円 |
| 平成7〜平成16(1995〜2004)年(N=425) | 14,317円 |
| 平成17〜平成26(2005〜2014)年(N=343) | 13,485円 |
| 平成27(2015)年以降(N=154) | 11,405円 |
修繕積立金の全体平均は月13,054円です。ここで気をつけたいのは、完成年次が古いほど高いという単純な形にはなっていないことです。最も高いのは平成7〜16年完成の14,317円で、最も低いのは平成27年以降の11,405円。新しい物件ほど段階増額積立方式を採っていて、いま見えている額が低く抑えられているためです。つまり「築浅だから修繕積立金が安く済む」とは限らず、これから上がることを織り込んで見る必要があります。
管理費も合わせると、使用料等からの充当額を除く系統で月24,557円になります。管理費には充当額を含む系統もあり、そちらでは合計が月30,481円です。他社の記事と数字が合わないときは、どちらの系統かを確かめてください。
あわせて見たいのが、長期修繕計画と管理組合の財政です。令和5年度のマンション総合調査では、長期修繕計画を作成している管理組合は88.4%(N=1,589)。計画期間は30年以上が72.7%で最も多くなっています。
積立の状況は、長期修繕計画を定めて積み立てているマンション1,402組合のうち、現在の残高が計画に対して「不足している」が36.6%、「不足していない」が39.9%、「不明」が23.5%でした。不明が4組合に1組合近くあるため、不足しているマンションの実際の割合は36.6%より高くなる余地があります。購入を検討する物件については、この点を管理組合の資料で個別に確かめてください。
見落としやすいのが、エレベーターや給排水管の更新時期です。築20〜30年で大型の更新が重なると、月々の負担が跳ね上がることもあります。修繕の実施履歴と次回の予定を、売主や管理会社に確認しておきます。
終の棲家チェックリスト(中古マンション)
- [ ] 長期修繕計画があり、計画期間が30年以上か
- [ ] 修繕積立金の今後の値上げ予定と幅
- [ ] 積立額が計画に対して不足していないか
- [ ] 大規模修繕の実施履歴と次回の時期
- [ ] エレベーターや給排水管の更新時期
- [ ] 段差・手すりなどバリアフリーの状況
- [ ] 駅距離と医療機関へのアクセス
マンションを終の棲家として選ぶ人は多く、令和5年度のマンション総合調査では区分所有者3,102人のうち「永住するつもり」と答えた割合が60.4%でした。ただしこの割合は平成30年度の62.8%から下がっており、増え続けているわけではありません。一方で居住者の高齢化が進み、修繕の合意形成が滞るマンションも見られます。管理組合がきちんと機能しているかも、長く住むうえで欠かせない確認点です。
【STEP4】50代の住宅ローンを組む|完済年齢の壁と住み替えローンの使い方
50代の住宅ローンは「組めるか」より「無理なく返せるか」が問われます。
完済年齢の上限で借入期間が短くなり、残債があれば住み替えローンも選択肢に入ります。定年後の収入減を見込み、返済しきれる範囲で組むのが50代の基本です。
ローン審査から本承認までの進み方(売り先行・買い先行での違い)
ローンの組み方は、売り先行か買い先行かで変わります。
審査は、事前審査から本審査、本承認の順に進みます。本承認は、購入する物件と売買契約が固まってから下りるのが基本です。
売り先行では旧ローンを売却で完済してから新居の借入を組むため、二重の返済になりません。買い先行は旧ローンを抱えたまま申し込むので、二重負担とみなされて審査が厳しくなりやすいです。売却で完済できる旧ローンは返済負担率の計算から外せることもあり、売り先行のほうが通りやすい場面が多いです。
残債がある50代が判断すること(住み替えローン・頭金・収入合算をどう組むか)
残債が売却で消えないときは、住み替えローン・頭金・収入合算の組み合わせで考えます。
売却額で旧ローンを返しきれない場合の選択肢が、住み替えローンです。残った残債と新居の購入資金を1本にまとめる借り方で、その分だけ借入総額は大きくなります。
頭金を厚くするほど、借入額が減って完済年齢の壁が緩みやすいです。売却の手取りと預貯金を、どこまで頭金に回すかが効きます。
配偶者などの収入を合算すると、返済負担率の基準を満たしやすくなる利点があります。借入枠も広がりますが、合算者にも返済義務が生まれる点には注意します。
50代は、借入を抑える方向ほど定年後の返済が軽くなりがちです。どの調整弁を使うかは、返せる月額から逆算して決めます。
完済年齢の壁を越える注意点と、審査を通すための備え
完済年齢と返済比率の壁を踏まえ、審査を通す備えを先に固めます。
フラット35の借入期間の上限は、「80歳−申込時の年齢(1年未満は切り上げ)」と35年のうち短いほうです。55歳なら最長25年、60歳なら20年と、年齢が上がるほど期間は短くなります。期間が短いほど毎月の返済は重くなるため、借入額の調整が要ります。なお申込みそのものにも要件があり、申込時の年齢が満70歳未満であることが条件です(親子リレー返済を使う場合は満70歳以上でも申し込めます)。
総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)にも基準があり、フラット35では年収400万円以上で35%以下、400万円未満で30%以下です。ここには住宅ローン以外の自動車ローン・教育ローン・カードローンなども含めて数えます。定年後の収入減も見込み、現役時の上限いっぱいでは組まないのが安全です。
出典: 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在)
審査を通すには、繰上返済の予定を示す、頭金を上積みするなどの備えが効きます。団信に加入できるかも50代では関門になり、健康状態は早めに確かめておきます。無理に枠いっぱいを狙わず、返せる額から逆算する姿勢が結局は近道です。
【STEP5】売却と購入の決済・引渡しを同時に着地させる
買い替えの山場は、売却の引渡しと購入の決済を同じ日に着地させる「同時決済」です。
ここまでの売却と購入が一点に集まり、タイミングがズレると二重ローンや余分な仮住まい費用が生まれます。最後は、段取りの最終調整がものを言います。
同時決済の進み方と、売主・買主としてやることの段取り
同時決済では、売却の引渡しと購入の決済を1日のなかで連続して行います。
当日までに、必要書類と資金、司法書士の手配をそろえておくのが前提です。ローンの実行日と引渡し日が1日に重なるよう、不動産会社と金融機関で日程を擦り合わせます。
当日の入口は、買主からの入金で旧ローンを完済し、抵当権を抹消する手続きです。続けて新居のローンが実行され、購入代金を払って引渡しを受けます。司法書士が登記をまとめて進め、売主と買主の立場が1日で入れ替わります。
タイミングのズレを防ぐ鍵は、関係者の予定を早めに一本化しておくことです。引っ越しの日取りや鍵の受け渡しまで含めて、当日の動きを事前に共有しておきます。
仮住まいを挟むか、一度の引っ越しで済ませるかの判断
旧居の引渡しと新居の入居がずれるかどうかで、仮住まいの要否が決まります。
同時決済で当日に入居まで運べれば、引っ越しは1回で済み、費用も抑えられます。段取りが噛み合えば、仮住まいなしで進めるのが理想です。
引渡しが先に来る場合は、短期の賃貸などで仮住まいを挟みます。仮住まいは家賃と2回分の引っ越し費用がかかるため、期間を最小にする計画が大切です。
タイミングがズレた時のリスクと備え(二重ローン・仮住まい費用・つなぎ融資)
タイミングがズレると、二重ローン・仮住まい費用・つなぎ融資の負担が生じます。
購入が売却に先行すると、旧居と新居のローンを一時的に二重で抱えます。売却が長引くほど負担は膨らむので、売却の見通しを立ててから購入を確定させるのが安全です。
売却前に購入資金が要る場合は、つなぎ融資で一時的に立て替えます。短期で金利が割高になりやすく、売却代金で返す前提の使い方になります。
ズレに備えるには、引渡し日に幅を持たせ、つなぎ融資の可否を金融機関に確かめておきます。想定外に備えて、数か月分の二重負担に耐えられる余力を見ておくと安心です。
【買い替え後】確定申告と税金の特例を確認する(目安:売却翌年の2〜3月)
買い替えが終わっても、税の手続きは売却した翌年に残ります。
利益が出た人と損が出た人で、使える特例は別物です。特例どうしには併用できない組み合わせもあり、どれを選ぶかで手元に残る額が変わります。
売却益が出た人・損が出た人、それぞれ次にやること
まずは売却で利益が出たか損が出たかで、次にやることが分かれます。
利益(譲渡所得)が出た人がまず行うのは、確定申告での税額の計算です。特例を使わなければ譲渡所得税がかかるため、3,000万円特別控除などの適用を検討します。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
損(譲渡損失)が出た人が使えるのは、損失を他の所得と相殺する特例です。給与など他の所得と通算し、引ききれない分は翌年以降へ繰り越せます。
出典: 国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」
3,000万円特別控除・買換え特例・住宅ローン控除のどれを選ぶか(併用できない点の整理)
利益が出た人は3,000万円特別控除か買換え特例を選び、住宅ローン控除との損得も見比べます。
利益が出た場合、3,000万円特別控除と買換え特例は、どちらか一方しか使えません。3,000万円控除は譲渡益から差し引く方式、買換え特例は課税を将来へ繰り延べる方式です(非課税ではありません)。
出典: 国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
これらの特例と、新居の住宅ローン控除は併用できません。入居した年とその前後の数年(前2年・後3年)に譲渡益の特例を使うと、住宅ローン控除は受けられません。どちらが得かを比べて選ぶのが、利益が出た人の判断です。
一方、損が出て損益通算・繰越控除を使う人は、住宅ローン控除と併用できます。ただし損益通算で所得税がゼロになる年は、住宅ローン控除で差し引く税金がない点に注意します。
特例の選び方(売却損益で分岐)
| 売却の結果 | 主に使える特例 | 住宅ローン控除との関係 |
|---|---|---|
| 利益が出た | 3,000万円特別控除/買換え特例(いずれか一方) | 併用できない |
| 損が出た | 譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 併用できる |
特例の要件や適用期限は改正で見直されることがあるため、利用前に国税庁で最新を確かめ、迷う場合は税理士に相談すると安心です。
まとめ:50代の買い替えを売り先行で進めるなら、住み替えのトビラ
50代でマンションを買い替えるとき、売るのと買うのを同時に動かすと、返済が重なる危うさを背負います。今の住まいを先に売り切り、次に出せる額が分かってから探します。
売り先行で進めるなら、今の住まいがいくらで売れそうかを先につかみます。高く売れる前提で予算を組むと、値下げした分だけ次の住まいで選べる候補が減ります。
次の住まいを探し始める前に、退職金をどこまで使うのかを決めておきましょう。住み替えのトビラでは、50代の買い替えを進める順番も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
