マンションが売れないとき不動産会社を変えるべき?判断基準と乗り換えの段取り

マンションが売れないとき不動産会社を変えるべき?判断基準と乗り換えの段取り

売り出して3か月。反響は少なく、担当者の報告は「引き続き頑張ります」だけ。満了が近づき、「この会社のまま更新するか、別の会社に変えるか」を決める期限が来ています。

先に答えを書きます。会社を変えて結果が変わるのは、売れない原因が会社側(報告・掲載・レインズの状況)にあるときだけで、価格が原因なら変えても同じ結果になります。変えるなら満了で更新しないのが基本で、費用も違約金も生じない形です。

この記事では、変えるかを決める判断基準、時期と費用、乗り換え先の選び方、そして乗り換えで失う権利と引き継ぐ資料を順に見ていきます。

不動産会社を変えるかを決める判断基準

マンションが売れないとき、「会社を変えれば売れるのでは」と考えるのは自然です。ただし、会社を変えて結果が変わるのは、売れない原因が会社側にあるときだけです。

原因の所在会社を変える意味
価格・物件側(成約事例より高い・管理費が重い)変えても同じ結果になる
会社側(報告に数字がない・掲載が少ない・レインズの状況・改善に応じない)変える意味がある
分からない改善を文書で求めて2〜4週間で確かめる

この章では、変えるかを決める4つの基準を整理します。

価格が原因なら会社を変えても結果は同じになる

売れない原因の多くは価格にあります。売り出し価格が同じ条件の成約事例より高ければ、どの会社が売っても買主の検索結果で選ばれるのは難しい状態です。この状態で会社だけを変えると、新しい会社が動き出すまでの時間を失い、同じ価格で同じ結果になります。

会社を変える前に、担当者に直近半年の成約事例を3件出してもらい、自分の価格との差を確かめます。差が大きければ、原因は価格の側にあります。会社を変えるより先に、価格を成約事例の水準に置き直すほうが早く動きます。値下げの幅をどう決めるかは、別の記事で扱っています。

会社側に原因があるのは、価格は成約事例に近いのに反響が少ない場合です。掲載が少ない、報告に数字がない、レインズの取引状況が「公開中」以外になっている、といった状態です。この場合は、価格を下げても状況は変わりにくく、会社を変える意味があります。原因の切り分けは、別の記事で扱っています。

不動産が売れない理由と対処|止まる場所で原因を切り分ける 不動産が売れない理由と対処|止まる場所で原因を切り分ける

報告と掲載とレインズの状況で会社側の原因を見分ける

会社側に原因があるかは、3つの記録で見分けます。

  • 業務報告: 掲載した媒体・閲覧数・問い合わせ数・内覧数が書かれているか
  • 掲載の範囲: 主要なポータルサイトに載っているか・写真の枚数と1枚目は競合と比べてどうか
  • レインズの取引状況: 売主専用画面で「公開中」になっているか

専任媒介契約では、宅地建物取引業法34条の2第9項が業務の処理状況を2週間に1回以上報告することを求めています(専属専任媒介契約は1週間に1回以上)。報告すべき事項について、国土交通省の解釈・運用の考え方はこう書いています。

報告すべき事項は、宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行った措置(指定流通機構への依頼物件の登録、広告等)、引き合いの状況等とする。

「行った措置」と「引き合いの状況」が入っていない報告が続いているなら、売り方が見えないままになっています。

レインズの取引状況は、専任媒介契約と専属専任媒介契約なら売主が自分で確かめられます。国土交通省と4つの不動産流通機構が出しているチラシによれば、登録される取引状況は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類で、売主は「売主専用画面」にアクセスして自分の物件の状況を確認できます。令和7年(2025年)1月からは、宅建業者から交付される登録証明書の二次元コードを読み取って、この画面に入れるようになりました(確認用IDとパスワードが要ります)。

内覧がないのに「公開中」以外の表示になっているなら、他社からの紹介が止まっている可能性があります。まずは今の会社に問い合わせて、取引状況の登録が実態と合っているかを確かめます。確かめる手順は、別の記事で扱っています。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第9項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①イ) 出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう!」

改善を文書で求めて応じなければ変える根拠になる

会社側の原因が見えたとき、すぐに変える前に、改善を文書で求める段階を挟みます。会社を変えると、新しい会社が掲載と登録をやり直すまでに時間がかかり、その間の反響は止まります。

求める内容は具体的に書きます。掲載媒体の追加、写真の撮り直し、紹介文の修正、報告の頻度と項目(掲載媒体・閲覧数・問い合わせ数・内覧数・見送り理由)、必要なら担当者の交代。メールで送れば記録が残ります。掲載媒体の追加をためらわれたときのために、国土交通省の解釈・運用の考え方が「指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は、宅地建物取引業者の負担となる」としている点は、覚えておくと話が早くなります。

「反響なし」の報告が3回続いたので、掲載媒体の追加と写真の撮り直し、報告への閲覧数の記載をメールで求めた。2週間後、写真は差し替わったが掲載媒体は増えず、閲覧数の記載もないままだった。この記録を持って、満了で更新しない判断をした。

2〜4週間で改善が見られれば、変えずに済みます。改善が見られないときは、「文書で求めた改善に応じなかった」という記録が、会社を変える根拠になります。この記録は、乗り換え先の会社に前の会社の売り方を説明するときにも使えます。売れない状態が続くときの手の並べ方は、別の記事で扱っています。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑤)

住み替えの期限から乗り換えに使える月数を数える

会社を変えると、新しい会社が動き出すまでに時間がかかります。査定のやり直し、媒介契約、写真の撮り直し、レインズとポータルサイトへの登録、そして買主の目に触れるまでの期間です。ここは経験則の目安として1か月前後を見込みます。

住み替えの引き渡しやローンの都合で期限がある人は、この1か月を差し引いて、乗り換えに使える月数を数えます。満了まで1か月、新しい会社の立ち上がりに1か月(経験則の目安)、そこから売れるまでに3か月。合計5か月が期限の内側に収まるなら、乗り換えられます。

このうち「3か月」は、宅地建物取引業法34条の2第3項が専任媒介契約の有効期間の上限を3月と定めていることと、東京カンテイが2026年7月に公表した首都圏の中古マンションの調査で、売却期間が3か月以内の累計事例シェアが50.8%(2025年)だったことから置いた数字です。調査は売り出しから成約までが12か月以内の組み合わせを対象にしたもので、すべての売り出しの半数という意味ではない点は添えておきます。

期限に収まらないときは、乗り換えではなく、今の会社で価格を見直す、買取保証を使う、といった別の手を並べます。売れない期間ごとの判断と対策の全体像は、別の記事で扱っています。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第3項) 出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日)

会社を変える時期と費用

会社を変えると決めたら、次は「いつ」と「いくらかかるか」です。答えは、満了で変えれば費用はかからず、途中で変えると条件がつく、です。

変える時期費用・違約金
満了で更新しないかからない
途中・会社の義務違反を理由に解除かからない(催告のうえ解除)
途中・売主の都合で解除履行に要した費用の請求を受けることがある(上限は約定報酬額)
満了前に他社と重ねて専任契約違約金の対象

満了で更新しなければ費用も違約金も生じない

専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、宅地建物取引業法34条の2第3項により上限が3月と定められています。同条4項は、この有効期間を「依頼者の申出により、更新することができる」と定めています。更新は売主の申出があって初めて行われる形で、売主が申し出なければ契約は満了で終わります。同条10項は3項から6項までと8項・9項に反する特約を無効としているため、自動更新の特約はこの枠の外に置かれます。国土交通省の解釈・運用の考え方も、更新の申出は有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定するのは許されない、としています。

標準媒介契約約款の専任媒介契約約款では、満了で終える場合に費用の請求も違約金も生じない仕組みです。費用償還(第14条)は、有効期間内に売主が自ら発見した相手方と契約したときか、会社の責めに帰すことができない事由で契約が解除されたときの条項で、違約金(第12条)は期間中に他社へ重ねて頼んで成約したときの条項です。満了はどちらの場面の外にあります。

満了日は契約書の有効期間の欄で確かめます。契約日から3か月後が満了日で、その日までに「更新しない」と文書で伝えます。同約款第15条2項は、更新をしようとするときに売主から会社へ文書等で申し出るものとしているため、更新の意思を伝えないままにしておく形が基本です。伝え方は、別の記事で扱っています。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第3項・第4項・第10項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第12条・第14条・第15条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑧)

期間の途中で変えるには会社の義務違反か費用の負担が要る

満了を待たずに変えたい場合は、2つの道があります。

1つは、会社の義務違反を理由にした解除です。レインズへの登録がない、業務報告がない、登録証明書を交付しない、といった義務違反があれば、専任媒介契約約款第16条により、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに解除できます。レインズへの登録期間は、宅地建物取引業法施行規則15条の10が専任媒介契約の締結の日から7日(専属専任媒介契約は5日・休業日数は算入しない)と定めているので、登録証明書の有無と日付が義務違反を示す材料になります。会社の責めによる解除であれば、約款第14条1項の費用償還の要件である「乙の責めに帰すことができない事由」に当たらず、費用の請求も外れる建て付けです。

もう1つは、売主の都合による解除です。この場合、会社は契約の履行のために要した費用の償還を請求でき、その額は約定報酬額を超えられません(同約款第14条)。解釈・運用の考え方は、請求に当たって現地調査・権利関係等調査・販売活動・契約交渉に要した費用などについて「明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求するものとする」としています。通常の広告費は会社の負担が原則なので、請求される費用は限られた範囲に収まります。

途中解除の条件と費用の範囲は、別の記事で詳しく扱っています。満了まで1か月以内なら、満了を待つほうが費用の心配が消えます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第14条・第16条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑤・⑦)

満了の3週間前から次の会社と面談を始める

満了で変えると決めたら、満了日の3週間前から動きます。満了日に契約が終わってから次の会社を探し始めると、掲載の空白が1か月以上に延びます。次の3週間前・2週間前という刻みは、法令が定めた期限ではなく、面談と決定に必要な日数から置いた経験則の目安です。

  1. 3週間前: 候補の会社2〜3社に、前の会社の記録(反響数・内覧の見送り理由・査定書・図面)を渡して面談する
  2. 2週間前: 次の会社を決め、今の会社に「満了で更新しない」と文書で伝える
  3. 満了日の翌日: 次の会社と媒介契約を結び、写真の撮り直しと登録に入る

この段取りなら、掲載の空白は数日で収まります。新しい会社のレインズ登録は、施行規則15条の10により専任媒介契約の締結の日から7日(専属専任は5日・休業日数は算入しない)以内に行われるので、契約の翌週には他社の検索に載る形です。今の会社には満了日まで契約が続いているので、その間の内覧や申込は今の会社を通します。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10)

満了前に次の会社と重ねて契約すると違約金の対象になる

急ぐあまり、満了前に次の会社と専任媒介契約を結ぶのは避けます。専任媒介契約約款第12条は、違約金の場面をこう定めています。

甲は、専任媒介契約の有効期間内に、乙以外の宅地建物取引業者に目的物件の売買又は交換の媒介又は代理を依頼することはできません。甲がこれに違反し、売買又は交換の契約を成立させたときは、乙は、甲に対して、約定報酬額に相当する金額(この媒介に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を除きます。)の違約金の支払を請求することができます。

解釈・運用の考え方は、この違約金を「成約した場合に当該依頼者に請求し得る約定報酬額に相当する額」とし、他の顧客から報酬を受領できる見込みがあったとしても、その分を含めて請求することはできない、としています。

次の会社との契約は、満了日の翌日以降にします。面談や査定は満了前に行えますが、媒介契約の締結日は満了日の後に置きます。解釈・運用の考え方は「媒介契約締結の日」について、媒介の契約締結の意思の合致のあった日であって、書面の交付の日ではない点に留意が必要である、としています。書面を交わす前でも意思が合致していれば締結日として扱われるため、「満了後にお願いします」と伝え、それまでは検討中の状態を保ちます。

一般媒介契約なら、他の会社へ重ねて依頼できるうえ、一般媒介契約約款には他社経由の成約に対する違約金の条項が置かれていないので、今の契約を続けたまま次の会社を足せます。契約の種類を変える方法は、別の記事で扱っています。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第12条・一般媒介契約約款) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①ハ・⑥)

乗り換え先の不動産会社の選び方

乗り換え先を選ぶ物差しは、査定額の高さではなく、「前の会社で売れなかった理由を説明できるか」です。この章では、選び方を4つに分けます。

  • 前の会社の記録を渡して売れなかった理由を説明できる会社を選ぶ
  • 同じマンションか近隣の成約実績で候補を探す
  • 販売計画と報告の項目を契約前に文書で出してもらう
  • 前の会社より高い査定額を出す会社は根拠を確かめる

前の会社の記録を渡して売れなかった理由を説明できる会社を選ぶ

乗り換え先の候補には、前の会社の記録を渡します。売り出し価格と変更の履歴、業務報告(反響数・内覧数・見送り理由)、査定書、販売図面です。

これらを見て、「価格が成約事例より高かった」「写真が少なかった」「掲載が2媒体だけだった」のように、売れなかった理由を成約事例つきで説明できる会社は、次の売り方を組み立てられます。記録を見ないまま「うちなら売れます」と言う会社は、前の会社と同じ売り方をする可能性があります。

説明を聞くときは、「では何を変えるか」を続けて聞きます。価格なら成約事例に合わせた額、掲載なら媒体の名前、見せ方なら写真と図面の作り直し。具体的な答えが返ってくる会社を選びます。内覧が入らなかった理由をどこまで分解できるかも、同じ場で見えてきます。

同じマンションか近隣の成約実績で候補を探す

乗り換え先の候補は、一括査定サイトで集めるより、同じマンションか近隣の成約実績を持つ会社を直接あたるほうが、成約事例の質が上がります。

  • 同じマンションの過去の売り出しを扱った会社を、ポータルサイトの掲載履歴や図面で確かめる
  • 管理会社に相談する(管理会社が仲介部門を持つこともあります)
  • 近隣の成約事例を担当者から聞いたとき、その事例を扱った会社を控えておく

同じマンションの成約を扱った会社は、そのマンションを探している買主の問い合わせを受けた経験があり、管理状態や住民の構成も知っていることが多くなります。成約事例の㎡単価も、担当者の手元にあります。ここは公表資料で裏づけられる話ではないので、経験則の目安として候補の集め方に使います。

販売計画と報告の項目を契約前に文書で出してもらう

乗り換え先を決める前に、販売計画を文書で出してもらいます。口頭の「頑張ります」では、前の会社との違いが見えないままになります。

  • 掲載する媒体の名前
  • 写真の撮り直しと図面の作り直しの予定
  • 報告の頻度と項目(掲載媒体・閲覧数・問い合わせ数・内覧数・見送り理由)
  • 値下げを提案する判断基準(何週間で問い合わせが何件以下なら)
  • 専任か一般か

この文書は、契約後に「約束が守られているか」を確かめる物差しになります。専任媒介契約を結ぶなら、報告の方法と頻度は媒介契約書に書かれる項目です。専任媒介契約約款第4条1項2号は、会社の義務として「甲に対して、専任媒介契約書に記載する方法及び頻度により業務の処理状況を報告すること」を挙げているので、報告の項目まで書き込んでもらえば、義務の中身が具体的になります。契約の種類をどう選ぶかは、別の記事で扱っています。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第4条)

前の会社より高い査定額を出す会社は根拠を確かめる

乗り換え先の候補が、前の会社より高い査定額を出すことがあります。「前の会社の価格が低すぎた」と言われると、乗り換える気持ちが後押しされます。

ここで確かめるのは根拠です。宅地建物取引業法34条の2第2項は、媒介契約書に書く価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない、と定めています。専任媒介契約約款第4条2項1号も、媒介価額の決定に際して価額に関する意見を述べるときは根拠を示して説明を行うことを会社の業務として挙げています。高い査定額の根拠が、直近の成約事例か、それとも売り出し中の価格や「これから上がる見込み」かを聞きます。

前の会社で売れなかった価格より高い価格で出し直すなら、その価格で売れる根拠が要ります。根拠のない高値で乗り換えると、3か月後に同じ状況になり、そのときは売り出しから半年が経っています。査定額の高さで乗り換え先を選ぶより、成約事例の読み方が納得できる会社を選びます。担当者個人の見極め方は、別の記事で扱っています。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第2項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第4条)

乗り換えで失う権利と引き継ぐ資料

会社を変えると、前の会社との契約で生じた権利の一部が残り、手元の資料は次の会社へ引き継げます。

失う・残る引き継ぐ
前の会社の紹介で知った買主との直接取引は満了後2年まで報酬請求の対象査定書・業務報告の記録・販売図面
専任限定の売却保証は外れる管理関係の書類・鍵・設備の説明書
レインズの登録は削除(次の会社が改めて登録)写真は撮影した側の許諾が要る場合があるため撮り直しが基本

前の会社の紹介で知った買主とは2年間直接取引できない

見出しは「できない」と書きましたが、標準媒介契約約款が置いているのは禁止ではなく、報酬を請求できるという条項です。専任媒介契約約款第11条は、こう定めています。

専任媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。

たとえば、前の会社の案内で内覧に来た買主が、乗り換え後に「やはり買いたい」と申し込んできた場合、この買主は前の会社の紹介で知った相手です。前の会社を外して次の会社だけを通して契約すると、前の会社から報酬の請求を受ける可能性があります。額は約定報酬額そのものではなく、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額です。国土交通省の解釈・運用の考え方も、同じ場面で「契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬請求権が認められる」としています。

同じ条項は、専属専任媒介契約約款では第11条(こちらは有効期間の満了後2年以内のみ)、一般媒介契約約款では第13条に置かれています。このような買主が出てきたときは、前の会社に連絡して、前の会社を通す形で進めます。乗り換え後に初めて内覧した買主は、この条項の外に置かれます。前の会社経由で内覧した買主の一覧は、乗り換え前に業務報告から控えておきます。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第11条・専属専任媒介契約約款第11条・一般媒介契約約款第13条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)③)

査定書と反響記録と管理書類は次の会社へ引き継ぐ

乗り換えで失うものがある一方、手元の資料は次の会社の売り方の土台になります。

引き継ぐ資料は5つです。前の会社の査定書(比較事例と㎡単価)、業務報告の記録(反響数・内覧数・見送り理由)、販売図面、管理関係の書類(長期修繕計画・総会議事録・修繕履歴・管理規約)、そして鍵と設備の説明書です。

写真は引き継ぎに注意が要ります。著作権法は写真の著作物を著作物の例として挙げ(10条1項8号)、著作権は著作者にあるとしています(17条1項)。誰が著作者になるかは撮影の実態で分かれ、会社の従業員が職務上作成し、その会社の名義で公表した写真は、別段の定めがなければ会社が著作者になります(15条1項)。前の会社が用意した写真をそのまま次の会社が使うには、撮影した側の許諾が要る場合があるので、撮り直すのが基本です。撮り直しは、写真を変えて新着として出し直す効果もあります。

専任媒介契約に付いていた売却保証(買取保証)は、その会社のサービスなので、乗り換えで外れます。次の会社に同じ仕組みがあるかは、契約前に確かめます。

出典: e-Gov法令検索「著作権法」(第10条第1項第8号・第15条第1項・第17条第1項)

レインズの登録は削除され次の会社が新規登録する

専任媒介契約の満了で、前の会社が登録したレインズの物件情報は削除されます。中部圏不動産流通機構の利用ガイドラインは、会員の義務をこう書いています。

会員は、媒介契約の内容の変更や解除があったときは、速やかに物件情報の変更・削除を行わなければなりません。

同じガイドラインの一覧では、物件削除を行う場面として「媒介(代理)契約途中解約・期間満了、売却等中止」を挙げ、92日間物件更新を行わなければ自動削除されるとしています。また、媒介の依頼を受けずに媒介契約物件として登録することはできないため、次の会社は自社が結んだ媒介契約に基づいて改めて登録する形になります。これは中部圏の規程の記述で、他の機構では各機構の利用規程と運用が定めています。

改めて登録された物件は、他社の担当者の検索で新着として載ります。長く掲載された物件より目に留まりやすく、これが乗り換えで得られる効果の1つです。ポータルサイトでも、次の会社の掲載は新着として扱われます。

ただし、買主から見た「新着」と、統計上の「売り出しからの期間」は別です。東京カンテイの価格乖離率の調査は、抽出にあたって「各取引事例と当該住戸から生じた売出事例の中で最も古いもの(=最初の売出事例)を突き合わせ」る方法を取っています。最初の売り出しから数える以上、会社を変えても売り出しからの期間は続いていきます。価格を変えずに会社だけ変えると、長期化した物件の値下げ幅がそのまま残ります。乗り換えは、価格か見せ方の見直しとセットで行います。

出典: 公益社団法人中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン」 出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日)

引き止めの提案は更新の条件として文書にできるかで判断する

「更新しません」と伝えると、担当者から引き止めの提案が来ることがあります。値下げの提案、買取の提案、担当者の交代、広告の追加です。

引き止めの内容が、これまで文書で求めても実現しなかった改善なら、「更新の条件として契約書に書けるか」で判断します。掲載媒体の追加、写真の撮り直し、報告の項目、担当者の交代が、更新後の契約の条件として文書になるなら、乗り換えずに済むこともあります。専任媒介契約約款第15条3項は、更新に当たって契約の内容について別段の合意がなされなかったときは従前の契約と同一内容の契約が成立したものとみなす、としています。裏を返せば、合意して書き込めば内容を変えられる形です。

口頭の「今度は頑張ります」は、更新の条件として残りようがない形です。値下げの提案には成約事例の根拠を、買取の提案には買取価格の書面を求めます。引き止めへの返し方は、別の記事で扱っています。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第15条)

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まとめ:会社を変えて結果が変わるのは、原因が会社側にあるときだけ

いちばん重いのは、売れない原因の所在を先に切り分けるという点です。価格が同じ条件の成約事例より高いなら、どの会社が売っても買主の検索結果で選ばれにくく、会社を変えても同じ結果になります。会社を変えて結果が変わるのは、価格は成約事例に近いのに、報告に「行った措置」と「引き合いの状況」が書かれていない、掲載が少ない、レインズの取引状況が「公開中」になっていない、といった会社側の理由があるときです。

次の一歩は、改善したい点を文書で送り、2〜4週間の返事を見ることです。掲載媒体の追加、写真の撮り直し、報告の項目、担当者の交代をメールで求めれば、応じてくれた場合は乗り換えずに済み、応じてくれなかった場合はその記録が乗り換えの根拠になります。ここを飛ばしていきなり会社を変えると、新しい会社が動き出すまでの時間を失ったうえ、前の会社と同じ理由で売れない状態が続きます。

変えると決めたら、満了で更新しない形を取り、満了の3週間前から次の会社と面談を始めます。前の会社の紹介で知った買主との直接取引は満了後2年まで報酬請求の対象に残るので、その買主が戻ってきたときは前の会社を通します。住み替えのトビラでは、マンションが売れないときの不動産会社の乗り換えの判断と段取りも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。