日本銀行が政策金利の引き上げを続け、変動金利で借りている住宅ローンの返済が気になる。住み替えを考えていたけれど、金利が上がる前に急ぐべきか、落ち着くまで待つべきか迷っている人に向けた記事です。
先に答えを書きます。急ぐか待つかは金利の予想ではなく、住み替えの理由に期限があるか、金利が1%上がっても返せるか、売却で頭金をどれだけ作れるかの3つで決めます。変動金利で借りている人は、今のローンの引下げ幅を手放して組み直すことも、住み替えのコストに数えます。
この記事では、金利上昇が住み替えに与える影響、急ぐべきかの判断基準、変動金利で借りている人の注意点、返済負担を抑える方法を、日本銀行・国土交通省・住宅金融支援機構・国税庁の公式情報とモデル計算で順に見ていきます。
金利上昇が住み替えに与える影響
金利の上昇は、住み替えの3か所に影響します。新しいローンの毎月の返済、借りられる額、今の家の売れ方です。住み替えの計画で最初にぶつかるのは、物件を探す段階の事前審査で分かる、借りられる額です。
日本銀行は、政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標)を、2025年12月に0.75%程度、2026年6月に1.0%程度、2026年9月に1.25%程度へと引き上げてきました。銀行の貸出金利の目安になる短期プライムレート(主要行で最も多い金利)は、2026年8月3日から年2.375%です(日本銀行の2026年9月11日現在の公表)。住宅ローンでも、たとえばPayPay銀行は変動金利の基準金利を2026年4月・7月・10月に引き上げ、10月1日から年3.530%としています。金利の推移と今後の見通しは、別の記事で扱っています。
出典: 日本銀行 金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日) 出典: 日本銀行 金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日) 出典: 日本銀行 金融市場調節方針の変更について(2025年12月19日) 出典: 日本銀行 長・短期プライムレート(主要行)の推移 出典: PayPay銀行 変動金利 改定履歴
新しいローンの毎月の返済が増える
住み替えで新しいローンを組むと、借りるときの金利で返済額が決まります。金利が上がった分だけ、毎月の返済は増えます。
どのくらい増えるかを、仮に置いた数字で計算します。借入額4,000万円、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合です。
| 金利(年) | 毎月の返済 | 1.00%との差 |
|---|---|---|
| 1.00% | 約112,900円 | — |
| 1.25% | 約117,600円 | 月約4,700円増 |
| 2.00% | 約132,500円 | 月約19,600円増 |
0.25%の上昇で月約4,700円、1%の上昇で月約2万円増えます。35年間の返済の合計で比べると、1.00%と2.00%の差は約823万円です。金利の水準も仮定なので、実際の金利は借りる金融機関の金利表で確かめます。
自分の数字に置き換える式
- 毎月の返済 = 借入額 × 月利 ÷ (1 − (1 + 月利)の「−返済回数」乗)
- 月利は年利÷12、返済回数は年数×12
- 例: 4,000万円・年1.00%・35年なら、月利は約0.000833、返済回数は420回で、毎月の返済は約112,900円
- 金融機関や住宅金融支援機構の返済シミュレーションでも計算できる
「金利が上がる前に急いで買うべき」と言われることがありますが、0.25%の差はこの例で月約4,700円です。急ぐことで物件選びを妥協するほどの差かを、自分の借入額に置き換えて冷静に比べます。
審査の金利が上がり借りられる額が減る
金利の上昇は、毎月の返済と同時に、借りられる額にも影響します。
金融機関は審査で、年収に対する年間の返済額の割合(返済負担率)を見ます。国土交通省の令和7年度の調査では、住宅ローンの融資の審査項目に返済負担率を挙げた金融機関が90.9%でした。フラット35の基準は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下で、車のローンやカードローンなど、ほかの借入れの返済も合わせて計算します。
返済負担率を計算するときに使う金利(審査金利)は金融機関ごとに違い、実際に借りる金利と違う場合があります。審査で使う金利が上がると、同じ年収でも借りられる額が減ります。
| 審査で使う金利 | 借りられる額の目安 |
|---|---|
| 3.0% | 約5,305万円 |
| 3.5% | 約4,940万円 |
年収700万円、返済負担率35%、返済期間35年、ほかの借入れなしと仮に置いた数字です。審査で使う金利が0.5%上がるだけで、借りられる額は約365万円減ります。
借りられる額の目安の計算の順序
- ① 月の返済の上限 = 年収 × 返済負担率 ÷ 12(例: 700万円 × 35% ÷ 12 = 約20万4,200円)
- ② ほかの借入れがあれば、その月の返済を①から引く
- ③ 借りられる額の目安 = 月の返済の上限 × (1 − (1 + 月利)の「−返済回数」乗) ÷ 月利(月利は審査で使う金利÷12)
- 自分の場合は、年収・金融機関の基準の返済負担率・審査で使う金利を入れる。実際の額は金融機関の事前審査で確かめる
住み替え先の予算は、この借りられる額で上限が決まります。事前審査で借りられる額を早めに確かめ、エリアや広さの条件を見直しておきます。
出典: 国土交通省 民間住宅ローンの実態に関する調査(令和7年度・令和8年6月5日訂正) 出典: 【フラット35】ご利用条件
買い手の予算が縮み今の家の売れ方が変わる
住み替えでは、今の家を売る側にも金利上昇の影響が出ます。
今の家を買う人も、住宅ローンを使うなら同じ影響を受けます。金利が上がると、買い手の借りられる額が減り、出せる予算が縮みます。その結果、売り出し価格によっては、問い合わせが減ったり、売れるまでの期間が延びたりすることがあります。
ただし、マンションの価格は金利のほかに、立地や需給によっても動きます。住み替えの計画では、売れるまでの期間を長めに見ておくと安心です。金利上昇の中で売り手としてどう売るかは、別の記事で扱っています。
金利上昇局面で住み替えを急ぐべきかの判断基準
金利が上がる中で、住み替えを急ぐべきか待つべきかは、自分の側の事情で決めます。金利の先行きは、誰にとっても読み切れないからです。判断は、次の3つの基準で行います。
住み替えの理由に期限があるか
最初に考えるのは、住み替えの理由に期限があるかです。
子どもの入学に合わせたい、家が手狭で限界に来ている、転勤や親の介護で住む場所を変える必要がある。こうした期限のある理由なら、金利より期限を優先します。金利を待っている間に、家族の事情の方が先に進んでしまうからです。
反対に、「いつかは広い家に」「今より便利な場所に」といった期限のない理由なら、急ぐ必要は小さくなります。金利が上がる中で無理に動くより、頭金を増やしたり、今の家の売り時を見極めたりする時間に使えます。
まずは、自分の住み替えの理由に「いつまでに」があるかを書き出してみます。
金利が1%上がっても返し続けられるか
次に、金利が上がっても返し続けられるかを確かめます。
やり方はシンプルです。新しいローンの返済額を、今の金利で計算したものと、金利が1%上がったときのもので並べます。前の章のモデルケースなら、年1.00%で月約112,900円、年2.00%で月約132,500円です。
この上がった方の返済額を、今の手取りの収入で払えるかを見ます。教育費や老後の資金を貯めながら払えるなら、金利上昇への備えはできています。払うと貯蓄に回せなくなるなら、借りる額を下げるか、住み替え先の予算を下げます。
変動金利で借りる場合は特に、上がったときの返済額を先に確かめておくことが、住み替え後の家計を守ることになります。
売却で頭金をどれだけ作れるか
3つ目は、今の家を売って頭金をどれだけ作れるかです。
売ったときの手取りは、売却価格から仲介手数料などの費用と、今のローンの残高を引いた額です。この手取りを新しい家の頭金に回すと、借りる額が減ります。
金利上昇による返済の増え方は、借りる額に比例します。前の章のモデルケースで、金利が1.00%から2.00%に上がると、4,000万円を借りる場合は月約19,600円増えますが、2,000万円なら月約9,800円です。手取りが大きく、借りる額を小さくできる人ほど、金利の上昇を急ぐ理由にする必要は小さくなります。
反対に、手取りが少なく、借りる額が大きくなる人は、金利の影響を強く受けます。この場合は、予算を下げるか、頭金を増やしてから住み替える方法を考えます。
変動金利で借りている人が住み替えるときの注意点
国土交通省の調査では、令和6年度に民間金融機関が新しく貸した住宅ローン(新規貸出額)の83.5%が変動金利型でした。変動金利で借りている人にとって、住み替えは「今のローンを返し終えて、新しいローンをその時点の条件で組み直すこと」でもあります。今の条件を手放す点を知ったうえで判断します。
出典: 国土交通省 民間住宅ローンの実態に関する調査(令和7年度・令和8年6月5日訂正)
今のローンの優遇幅と新しいローンの金利を比べる
変動金利の適用金利は、金融機関の基準金利から、契約時に決まった幅を差し引いて決まります。この差し引く幅を、引下げ幅(優遇幅)といいます。PayPay銀行の場合、実際の借入金利は「金利変更時の基準金利 − 引下幅」で、引下幅は契約月などによって人ごとに違うと案内しています。
変動金利で借りていると、基準金利が上がれば今のローンの金利も上がります。今のローンで持ち続けているのは、契約時の引下げ幅の方です。住み替えると、今のローンを返し終えて、新しいローンをその時点の基準金利と、その時点で審査を経て決まる引下げ幅で借り直します。
金利の動きの例として、PayPay銀行の新規の借入金利は、2024年10月の年0.530%(基準金利2.430%)から、2026年10月の年1.580%(基準金利3.530%)へ上がりました。差し引くと引下げ幅は1.900%から1.950%で、この銀行では新規の引下げ幅はほぼ同じまま、基準金利の上昇がそのまま新規の金利に表れています。引下げ幅は金融機関や借りる時期で違います。
そのため、今の自分の適用金利と引下げ幅を、新しいローンで適用される金利と引下げ幅に並べて比べます。新しいローンの金利の方が高ければ、その差も住み替えのコストの1つです。返済予定表や金利の通知、ネットバンキングの契約内容の画面で、今の適用金利と引下げ幅を確かめておきます。
出典: PayPay銀行 変動金利 改定履歴 出典: PayPay銀行 住宅ローン基準金利の変更について(変更日:10月1日)
5年ルールと125%ルールは新しいローンで始まり直す
変動金利には、返済額が急に増えすぎないための決まりを置いている商品があります。たとえば七十七銀行の変動金利型住宅ローンは、金利を半年に1度見直す一方で、返済額は約5年ごとにしか変えず(5年ルール)、増える場合も前の返済額の25%増しまで(125%ルール)としています。
この5年の数え方は、借入れの後から始まります。七十七銀行の場合、返済額の見直しは、借入れ後に最初に来る10月1日を1回目として、5回目ごとの10月1日の金利で行います。住み替えで新しいローンを組むと、今のローンで何年たっていたかは引き継がれず、新しいローンの1回目から数え直しになります。
一方で、これらの決まりを置いていない変動金利もあります。PayPay銀行は「5年ルール」「125%ルール」の取り扱いがなく、金利を年2回(4月1日・10月1日)見直し、上がった幅に応じて返済額も見直します。新しい金利は6月または12月の返済日の翌日から適用されるので、借りた時期によっては、借りてから半年ほどで返済額が増えることがあります。
決まりがある商品でも、金利が上がった分の利息は、返済額に占める利息の割合が増える形で払い続けます。PayPay銀行も、2つのルールは返済額の増加を先送りにする仕組みで、総返済額を減らすものとは違うと説明しています。新しいローンを選ぶときは、返済額の見直しの決まりがあるかと、金利の見直し日・返済額に反映される日を確かめます。未払利息を含めた仕組みの詳しい説明は、別の記事で扱っています。
出典: 七十七銀行 住宅ローンのよくあるご質問 出典: PayPay銀行 住宅ローン 商品要項 出典: PayPay銀行 よくあるご質問「PayPay銀行に『5年ルール』・『125%ルール』はありますか。」 出典: PayPay銀行 住宅ローン基準金利の変更について(変更日:10月1日)
2本のローンを抱える期間は両方の金利が上がる
新しい家を先に買う「買い先行」で住み替えると、今の家が売れるまで、今のローンと新しいローンの両方を払うことになります。
2本とも変動金利なら、金利が上がると2本とも利息が増えます。返済額が増える時期は、それぞれのローンの見直しの決まりで違います。今の家が思ったより早く売れなければ、2本分の返済が長く続きます。前の章で見たとおり、金利上昇で売れるまでの期間が延びることもあります。
買い先行を選ぶなら、2本を払い続けられる期間を、手取りの収入と貯蓄から計算しておきます。不安があれば、今の家を先に売る「売り先行」にするか、つなぎ融資や住み替えローンと比べます。住み替えローンを使えるか・使うべきかの判断は、別の記事で扱っています。
金利上昇局面で住み替えの返済負担を抑える方法
金利そのものは選べませんが、借りる額、金利の組み方、予算の決め方は自分で選べます。返済負担を抑える方法を3つ紹介します。
売り先行で頭金を増やし借りる額を減らす
いちばん手堅い方法は、借りる額を減らすことです。そのために、今の家を先に売る「売り先行」で住み替えます。
売り先行なら、売却価格と手取りが決まってから、新しい家を探せます。手取りの全額を頭金に回せば、借りる額はその分だけ小さくなります。金利が上がったときの返済の増え方も、借りる額に比例して小さくなります。
その代わり、売ってから新しい家に移るまでの仮住まいが必要になり、家賃と引っ越し2回分の費用がかかります。仮住まいの費用と、借りる額が減ることで抑えられる利息を比べて判断します。売る順番と買う順番の選び方は、別の記事で扱っています。
変動と固定を組み合わせて上昇の影響を区切る
金利の組み方を工夫して、上昇の影響を一部に区切る方法もあります。
1つは、借入額の一部を固定金利、残りを変動金利で借りる方法です(ミックスローン)。住宅金融支援機構の「フラット35パッケージ」は、全期間固定金利型のフラット35と、固定金利期間選択型または変動金利型の住宅ローンを、金融機関が一体で融資する商品です。固定の部分は金利が上がっても返済額が変わらないので、上昇の影響を受けるのは変動の部分だけになります。
ほかに、最初の10年など一定期間だけ金利を固定する方法(固定金利期間選択型。PayPay銀行では2年から35年までの8つの期間から選べます)や、フラット35のように、借りるときに返済終了までの金利が決まる全期間固定金利もあります。
金利の水準の例として、2026年10月のフラット35(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下)で最も多い金利は年3.830%、同じ月のPayPay銀行の変動金利の新規の借入金利は年1.580%です。この例のように、固定金利は借りた時点の返済額が変動金利より高くなることがありますが、先の返済額が読めるようになります。金利タイプごとの選び方は、5年ルールの節で紹介した記事で詳しく扱っています。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】商品ラインアップ(フラット35パッケージ) 出典: 住宅金融支援機構【フラット35】金利情報(2026年10月) 出典: PayPay銀行 住宅ローン 商品要項 出典: PayPay銀行 変動金利 改定履歴
新居の予算を借りられる額ではなく返せる額で決める
最後に、新しい家の予算の決め方です。予算は、借りられる額ではなく、返せる額から決めます。
金融機関の審査で通る上限は、あくまで貸せる額の上限です。金利が上がったときにも払い続けられる額は、それより小さいことがあります。前の章で確かめた「金利が1%上がったときの返済額」で払える範囲から、借りる額を逆算します。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の考え方も見直します。控除の額は、払った利息の額ではなく、年末のローン残高(住宅の取得価格の方が少なければその価格)の0.7%で計算し、所得税から差し引きます。住宅の区分(新築か中古か、省エネ性能など)と住み始めた年ごとに、控除の期間と1年あたりの上限が決まっています。たとえば中古住宅で省エネ性能の区分に当たらない「その他の住宅」は、令和4年から令和12年に住み始めた場合、控除の期間が10年、上限が年14万円です。
金利が上がって利息が増えても、控除の額は残高で決まるので、そのままです。前の章のモデルケース(4,000万円・35年・元利均等)で1年目を計算すると、払う利息は年1.00%で約39.6万円、年2.00%で約79.3万円です。一方、1年目の年末残高に0.7%をかけた額は、どちらも約27万円で、上限が年14万円の住宅なら控除は14万円までです。
控除と利息を比べる式(1年目の目安)
- 控除の目安 = 年末のローン残高 × 0.7%(住宅の区分ごとの上限と、その年の所得税額までが限度)
- 1年目に払う利息は、返済予定表の利息の欄を12か月分足して確かめる
- 控除の目安が利息より小さいほど、利息の多くが自分の負担として残る
控除を当てにして借りる額を増やすのではなく、返せる額の範囲に収めます。自分の住宅の区分と上限は、国税庁のタックスアンサーで確かめます。
出典: 国税庁 No.1211-1 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
まとめ:住み替えは金利の予想より自分の返せる額で決める
金利が上がる中で住み替えを急ぐか待つかは、金利の予想ではなく、自分の側の3つの基準で決めます。住み替えの理由に期限があるか、金利が1%上がっても返せるか、売却で頭金をどれだけ作れるかです。返済の増え方は借りる額に比例するので、借りる額を小さくできる人ほど、金利の上昇に振り回されずに済みます。
次の一歩は、今の家の査定とローンの残高を確かめ、売却の手取りを出したうえで、金融機関の事前審査で借りられる額と、金利が1%上がったときの返済額を並べることです。これを飛ばして「上がる前に」と急ぐと、借りられる額いっぱいで予算を組み、金利が上がったときに家計が持たなくなるおそれがあります。
変動金利で借りている人は、今の適用金利と引下げ幅、新しいローンの返済額の見直しの決まりを確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、金利上昇の中での住み替えの判断やローンの組み直しも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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