金利上昇とマンション売却|買い手・売り手に起きる変化と売り方

金利上昇とマンション売却|買い手・売り手に起きる変化と売り方

金利が上がるというニュースを見るたび、自分のマンションをどうするか決めきれないまま止まっているはずです。

金利上昇が売却の場面で先に崩すのは、価格よりも買い手の融資と、自分の残債の減り方です。

この記事では、買い手と売り手それぞれに何が起きるか、「上がる前に売れ」がどこまで本当か、金利上昇局面でも不利にならない売り方を、住宅金融支援機構・日本銀行・東日本レインズの一次情報で順に見ていきます。

金利上昇がマンション売却に与える影響

金利が上がると「買い手の負担が増えて価格が下がる圧力になる」と書かれます。

それは間違いではないのですが、売却の場面で先に起きるのは価格の下落より、別の3つの変化です。買い手・売り手・価格の3つに分けて、何がいつ変わるかを先に見ます。

誰に何が変わるかいつ変わるか
買い手借りられる金額が減る。審査が通りにくくなる基準金利の改定(多くの銀行で4月・10月)のたび
売り手自分の変動金利の返済が上がり、残債が減りにくくなる半年ごとの金利見直し・5年ごとの返済額見直し
価格時間差で、他の要因と重なって出る過去の局面では1〜2年後

買い手の借入可能額が減り指値が深くなる

買い手の多くは、毎月の返済額から逆算して借りられる金額を決めます。金利が上がると、同じ返済額で借りられる金額が減ります。

毎月13万円・35年・元利均等返済という仮定で計算すると、金利0.5%なら約5,008万円、1.25%なら約4,420万円が借りられる上限です。0.75%の上昇で、買い手の予算は約588万円小さくなります(毎月返済額・返済期間・返済方法・金利は、いずれもモデルケースの仮定値です)。

式は、借りられる金額=毎月返済額×{1−(1+月利)^(−返済回数)}÷月利(月利=年利÷12、返済回数=年数×12)です。自分の物件の価格帯に合わせて毎月返済額を入れ替えれば、同じ式で計算できます。

買い手の予算が減ると、その分だけ指値(値下げの申し出)が深くなります。売り出し価格を変えていなくても、届く申し込みの金額が下がる形で、金利上昇は売り手に届きます。

買い手の7割超が変動型で利上げのたびに慎重になる

金利上昇が買い手の心理に届きやすいのは、買い手の大半が変動金利で借りているからです。

住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)」では、利用した住宅ローンの金利タイプは変動型が75.0%で最も多く、固定期間選択型が14.9%、全期間固定型が10.1%でした。今後1年間の住宅ローン金利の見通しを「現状よりも上昇する」と答えた人は73.7%で、2025年4月調査より8.0ポイント増えています。

一方で、金利リスク(将来、金利が上昇した場合に返済額がどれくらい増えるか)について「理解しているか少し不安・よく理解していない・全く理解していない」と答えた人の合計は52.0%でした。

2026年1月調査(住宅ローン利用者)割合
変動型を利用75.0%
今後1年で金利は上昇すると見る73.7%
金利リスクの理解に不安がある・理解していない52.0%

買い手の4人に3人は変動金利で、7割は上がると見ていて、半数は上がったときの増え方をつかみかねている状態です。利上げのニュースが出るたびに、この層が一度立ち止まります。売り手から見ると、内覧の予約が減る、申し込みの返事が遅れる、という形で表れます。

出典: 住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)

売り手自身の返済も上がり残債が減りにくくなる

見落とされやすいのが、売り手自身のローンです。変動金利で借りている人は、金利が上がると自分の返済も変わります。

全国銀行協会の説明では、変動金利住宅ローンの金利は通常半年ごとに見直され、元利均等返済の返済額の見直しは通常5年ごとです。5年ごとの返済額見直し時には「125%ルール」といわれる上限があり、返済額の増加はそれまでの返済額の25%アップが上限となります。

このルールは家計を守る仕組みです。ただ、返済額が変わらない間に金利が上がると、毎月の返済額のうち利息に回る分が増え、元金に回る分が減ります。残債の減り方が、当初の返済予定表より遅くなります。金利上昇が急で利息部分が返済額を上回ると、その差は未払利息として残り、通常の返済とは別に支払わない限り、翌月以降、返済終了時まで蓄積されます。未払利息が発生している間は、返済額からローンの元金部分に充当される金額はゼロになります。

売却の手取りは「売却価格−残債−諸費用」です。残債が想定より減っていなければ、同じ価格で売れても手取りは減ります。金利上昇は、買い手の側と同じように、売り手の手取りにも静かに届きます。

出典: 全国銀行協会 変動金利住宅ローンの未払利息とは?

金利上昇の前にマンションを売るべきと言われる理由

「金利が上がる前に売ったほうがいい」という言葉は、仲介会社からも記事からもよく出てきます。

根拠は本物です。ただし、急ぐ単位を間違えると、値付けを誤ります。この章では、次の4つを順に見ます。

  • 基準金利の改定前なら買い手の審査の前提が変わらない
  • 上がる前に借りたい買い手が改定前に集まる
  • 自分の返済額の見直し前に残債を確定できる
  • 急ぐ単位は今週ではなく次の改定日である

基準金利の改定前なら買い手の審査の前提が変わらない

住宅ローンの変動金利は、多くの銀行で4月と10月に基準となる金利を見直します。

日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を「1.0%程度で推移するよう促す」と決めました。従来は0.75%程度で、あわせて補完貸付制度の基準貸付利率を1.25%としています。この引き上げ分は、大半の銀行で10月の見直しに反映されると見られています。改定の時期と幅は銀行ごとに違うので、買い手が使う銀行の公式の発表で確かめます。次の金融政策決定会合は、2026年9月17日・18日に開かれます。

買い手の住宅ローン審査は、申し込んだ時点の条件で進みます。改定の前に事前審査と本審査を通した買い手は、改定前の前提で借りられる金額が決まります。改定後に申し込んだ買い手は、上がった金利で審査され、通る金額が減ります。

売り手にとって、改定前に契約まで進めることは、買い手の予算が減る前に価格を決めることと同じです。改定日を境に、同じ物件でも届く申し込みの金額が変わります。

出典: 日本銀行 金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日)

出典: 日本銀行 金融政策決定会合の運営(開催日程)

上がる前に借りたい買い手が改定前に集まる

改定の前は、買い手の側にも「上がる前に借りたい」という動きが出ます。

変動型で借りる人が75.0%、今後1年で上昇すると見ている人が73.7%という調査結果を重ねると、改定の前に契約と融資実行を終えたい買い手は一定数います。この層は決断が早く、価格交渉も浅くなりやすい相手です。

売り手から見ると、改定前の1〜2か月は、内覧の申し込みが集まりやすい時期です。この時期に売り出し中でいることが、金利上昇局面で有利に売るいちばん単純な方法です。

出典: 住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)

自分の返済額の見直し前に残債を確定できる

売り手自身の変動金利にも、見直しの節目があります。元利均等返済の返済額の見直しは通常5年ごとで、見直し後の返済額は最大で25%増えます。

売却してローンを完済すれば、残債はその時点で確定します。見直し後の返済額で払い続けてから売るより、見直し前に売って完済するほうが、利息として出ていく額は少なくなります。

自分のローンの次の見直し時期は、返済予定表か金融機関のサイトで確かめられます。売却の時期を決めるときに、この日付を1つ入れておきます。

出典: 全国銀行協会 変動金利住宅ローンの未払利息とは?

急ぐ単位は今週ではなく次の改定日である

ここまでの理由は本物です。ただ、「今すぐ」「今週中に」と急かされる理由とは別のものです。

基準金利の改定は、多くの銀行で年2回です。返済額の見直しは5年ごとです。買い手の予算は一夜で変わるのではなく、改定日を境に段階的に変わります。急ぐ単位は「今週」より「次の改定日まで」です。

「上がる前に売れ」の出どころ

この言葉は、査定や媒介契約を取りたい側からもよく出てきます。理由は本物ですが、急かされて売り出し価格を高いまま出したり、最初に来た申し込みを条件を確かめずに受けたりすると、金利上昇より大きな損をします。次の章で、価格がすぐには下がらない理由を見ておくと、落ち着いて改定日までの時間を使えます。

金利上昇でもマンション価格がすぐには下がらない理由

金利が上がると価格が下がる、という説明は筋が通っています。ただ「すぐに」「一律に」の部分は、実際の動きと違います。

過去の利上げ局面の実例と、金利が家計に届くまでの時間差を、次の3つで見ます。

  • 2006年の利上げ後も首都圏の成約単価は2年上がり続けた
  • 基準金利の見直しは年2回で買い手の家計には段階的に響く
  • 固定金利を選ぶ買い手が増えると変動の上げ幅が届く範囲が狭まる

2006年の利上げ後も首都圏の成約単価は2年上がり続けた

日本銀行は2006年3月に量的緩和政策を解除し、7月にはゼロ金利を解除して、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%前後で推移するよう促すことを決めました。2007年2月21日には、これを0.5%前後へ引き上げています。内閣府の「日本経済2006-2007」には、短期プライムレートの引上げから変動金利型の住宅ローン金利が6年振りに上昇した、と書かれています。

この時期の首都圏中古マンションの成約㎡単価を、東日本レインズの年報で並べます。

成約㎡単価前年比
2005年32.75万円+4.1%
2006年34.67万円+5.9%
2007年38.63万円+11.4%
2008年39.87万円+3.2%
2009年37.77万円−5.3%

利上げのあった2006年と2007年は、成約単価が上がり続けています。2007年は2桁の上昇です。下がったのは2009年で、2008年秋のリーマン・ショックのあとでした。金利上昇だけで価格が下がったのではなく、景気の変化と重なって初めて価格に出ています。

2026年は、首都圏の中古マンションの成約㎡単価がすでに下向きに変わっています。東日本レインズの2026年8月度の月例速報では、成約㎡単価は81.60万円で前年同月比マイナス3.8%と4か月連続の下落です。市況の読み方と月ごとの数字は、マンションの売り時を市況・築年数・税金で見極めるハブ記事にまとめています。過去と同じ動きになるとは限りませんが、「利上げならすぐ急落」とは別の動きだったことを、上の表は示しています。

出典: 内閣府 日本経済2006-2007 第5章

出典: 日本銀行 金融市場調節方針の変更について(2007年2月21日)

出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2010年)

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

基準金利の見直しは年2回で買い手の家計には段階的に響く

金利が上がっても、買い手の家計に届くまでには時間の差があります。

変動金利の基準金利の見直しは、多くの銀行で年2回です。すでに借りている人の返済額の見直しは通常5年ごとで、上げ幅は25%アップが上限です。新しく借りる人にとっても、改定が年2回であれば、その間の適用金利は据え置かれます。

買い手の予算は、改定のたびに段階的に減ります。半年に一度、少しずつ買える価格帯が下がる、というのが実際の動き方です。価格が一気に下がる形ではなく、売れる価格帯の上限が半年ごとにじわじわ下がる形で、売り手には届きます。

出典: 全国銀行協会 変動金利住宅ローンの未払利息とは?

固定金利を選ぶ買い手が増えると変動の上げ幅が届く範囲が狭まる

もうひとつ、金利上昇が買い手全員に同じように届くとは限らない理由があります。

住宅金融支援機構の調査では、固定期間選択型が14.9%(2025年4月調査比+2.7ポイント)、全期間固定型が10.1%(同+1.3ポイント)と、固定を選ぶ人が増えています。固定金利で借りる買い手は、変動の基準金利が上がっても、借入時の金利で総返済額が決まります。

固定で借りる買い手が増えるほど、変動金利の上げ幅は買い手全員の予算を削るものから、変動で借りる7割超の予算を削るものへと、範囲が狭まります。固定で借りる買い手は、長期金利の水準を見て予算を決めています。

売り手にとっての意味は、「金利が上がったから買い手が消える」ではなく、「変動で借りる買い手の予算が減る」という限定された変化だということです。

出典: 住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)

金利上昇局面でマンションを売るときの注意点

金利上昇局面の売却でつまずくのは、価格より、買い手の融資が途中で崩れるところです。

崩れない買い手を選び、崩れる前に決済まで持っていくための注意点を、次の4つに絞ります。

  • 事前審査が済んだ買い手を優先して契約する
  • ローン特約の期限を短く設定して改定日をまたがない
  • 基準金利の改定日から逆算して売り出し時期を決める
  • 住み替え先のローンは金利タイプを先に決める

事前審査が済んだ買い手を優先して契約する

申し込みが複数入ったとき、いちばん高い金額の申し込みを選びたくなります。金利上昇局面では、金額より先に見るところがあります。

その買い手が、金融機関の事前審査を通しているかどうかです。事前審査は、年収や勤務先などをもとに借りられる見込み額を金融機関が示すもので、扱いは金融機関によって違います。事前審査を経ていない買い手の場合、本審査で減額や否決が出たときに契約が白紙に戻ります。

申し込みを受けるときに、事前審査の有無、金融機関名、承認された金額を仲介会社を通じて確かめます。金額が少し低くても、事前審査済みで自己資金が厚い買い手のほうが、決済まで進む確率は高くなります。

ローン特約の期限を短く設定して改定日をまたがない

売買契約には、買い手の住宅ローンが承認されなかった場合に契約を白紙にできる「融資利用の特約(ローン特約)」が付くのが一般的です。この特約の期限の置き方で、金利上昇局面のリスクが変わります。

特約の期限を長く取ったときに起きること

9月中旬に契約し、ローン特約の期限を10月末に置いたとします。10月に基準金利が改定され、買い手の本審査が改定後の金利で進むと、承認額が減り、買い手が契約を続けられなくなる場合があります。白紙になれば、売り手は売却活動を最初からやり直すことになり、2か月前後の空白が生まれます。

本審査の結果が出るまでに要する日数は金融機関によって違うので、仲介会社を通じて買い手の金融機関に確かめたうえで、改定日をまたがない日程で特約の期限を設定します。買い手側には本審査の申し込みをすぐに出してもらうよう、契約時に約束しておきます。

基準金利の改定日から逆算して売り出し時期を決める

金利上昇局面の売り出し時期は、改定日から逆算して決めます。改定前に契約と融資実行を終えたい買い手が動く時期に、売り出し中でいることが目的です。

段階目安
多くの銀行の基準金利の改定4月・10月(適用は翌月〜)
改定前に融資実行を終えたい買い手の契約改定の1〜2か月前
売り出しから成約まで2025年の首都圏中古マンションの平均は82.5日
逆算した売り出し開始改定の4〜5か月前(10月改定なら5〜6月、4月改定なら11〜12月)

10月の改定を狙うなら、売り出しは初夏です。すでに秋に入っている場合は、次の4月の改定前を狙って、年内に売り出す進め方になります。改定日と改定幅は、買い手が主に使う銀行の公式サイトで確かめます。

出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2025年)

住み替え先のローンは金利タイプを先に決める

売却と住み替えを同時に進める人は、買う側のローンにも同じ金利上昇がかかります。売却の手取りを頭金にどれだけ入れるかと、金利タイプの選び方は、売り出しの前に決めておきます。

変動で組むなら、5年ごとの返済額見直しと125%ルールの扱いを、借りる予定の銀行で確かめます。この扱いは金融機関によって違い、採用していない銀行では金利が上がるとその都度返済額が変わります。固定で組むなら、変動より高い金利で総返済額が決まるので、売却の手取りで頭金を厚くして借入額を抑える設計になります。

金利タイプの選び方と金利の推移は、住宅ローン金利の推移と今後の見通しに詳しくまとめています。売り出しの前に、住み替え先の金融機関で事前審査を受け、金利タイプごとの毎月の返済額を出しておくと、売却価格の下限も決めやすくなります。

まとめ:金利上昇で崩れるのは価格より買い手の融資である

いちばん重い答えは、金利上昇局面で先に崩れるのは価格ではなく、買い手の融資だということです。2006年3月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除、2007年2月の0.5%前後への引き上げをはさんでも、首都圏中古マンションの成約㎡単価は2006年34.67万円、2007年38.63万円、2008年39.87万円と上がり続け、下がったのは景気が変わった2009年でした。価格の下落を恐れて売り出し価格を早く下げるより、融資が崩れない買い手を選ぶほうが、手取りを大きく左右します。

次の一歩は、買い手が主に使う銀行の基準金利の改定日と、自分のローンの次の返済額見直し日を書き出し、その2つから逆算して売り出し時期を決めることです。この一歩を飛ばして申し込み金額の高さだけで買い手を決めると、本審査で減額が出て契約が白紙に戻り、売却活動を最初からやり直すことになって、2か月前後の空白が生まれます。

そのうえで、申し込みが入ったら事前審査の有無と金融機関名を確かめ、ローン特約の期限が改定日をまたがないかを、契約書に署名する前に見ておきましょう。住み替えのトビラでは、金利上昇が買い手と売り手それぞれに届く道筋と、改定日からの逆算の仕方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。