海外転勤でマンションを売る時期と手続き|非居住者の税金と貸す判断

海外転勤でマンションを売る時期と手続き|非居住者の税金と貸す判断

海外赴任の辞令が出て、赴任まではあと数か月。持っているマンションを売るか、貸して残すか、決める時期が来ています。売るなら出国前に間に合うのか、海外に行ってからでも売れるのかも気になるところです。

先に答えを書きます。売るか貸すかは「帰国後にその家へ戻るか」と「3,000万円特別控除の期限」の2つでほぼ決まり、売るなら出国前に引き渡しまで終えるのが最も段取りの軽い形です。出国後の決済になると、買主によっては代金の10.21%が差し引かれ、納税管理人を立てて翌年に確定申告をする流れになります。

この記事では、売るか貸すかの判断基準、売る時期の4つの選択肢、海外から売却を進める手続き、非居住者の税金の注意点を順に見ていきます。国税庁や法務省の資料に当たり、知っておくと手取りと段取りで損をしにくい点を中心にまとめました。

海外転勤でマンションを売るか貸すかの判断基準

海外転勤で持ち家をどうするかは、2つの基準でほぼ決まります。1つは帰国後にその家へ戻る予定があるか、もう1つは売るときの税の特例が使える期限です。

そこに、海外ならではの事情が加わります。海外から貸す場合、住宅ローンの承諾、家賃から差し引かれる税金、日本での申告と、国内の転勤より手間と税金の負担が重くなります。

国内の転勤と共通の収支の比べ方は、別の記事で扱っています。

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帰国後にその家へ戻る予定があるか

最初に考えるのは、帰国後にその家へ戻って住むかです。戻る予定がはっきりしていれば貸す、戻る見込みが薄ければ売る。方向はここで分かれます。

迷うときは、帰国した日の家族を想像してみます。海外赴任は数年単位になり、延長されることもあります(期間は会社と赴任先によって違う目安です)。その間に子どもが進学して通う学校が変わったり、家族が増えたりすると、今の家が合わなくなっていることがあります。帰国後の勤務地が変わることもあります。

正直に言うと、「戻るかもしれない」くらいの気持ちなら、売って身軽になる方が合う場合が多いです。帰国したときの家族に合う家を、そのとき選び直せます。反対に、学区や実家との距離など、その場所に住み続けたい理由がはっきりしているなら、貸して家を残す意味があります。

住宅ローンの契約で貸すことができるか

住宅ローンが残っているなら、貸す前に借りている金融機関の承諾が要ります。住宅ローンは、本人か家族が住むことを前提に、低い金利で貸しているお金だからです。

住宅金融支援機構は、財形住宅融資の案内の中で、無断で融資住宅を賃貸すると契約違反となり、融資金の全額を一括して返すことになると書いています。転勤で家族全員が一時的に住めなくなったときに管理人を立てて返済を続ける「留守管理」の手続きは、機構のページで「財形住宅融資のみ」と示されています。フラット35は、転勤などのやむを得ない事情で一時的に住めない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能としていて、その際は金融機関の窓口で住所変更の手続きをします。一方で、最初から第三者に貸す目的の投資用物件は対象外で、目的外の利用が分かった場合は全額の一括返済を求められることがあります。フラット35で借りている人も、民間の銀行で借りている人も、転勤で貸す扱いは返済中の金融機関に確かめます。

民間の銀行は対応が分かれ、承諾する銀行もあれば、賃貸用のローンへの借り換えを求める銀行もあります。賃貸用のローンは金利が高く、毎月の返済額が上がります。貸す方向で考えているなら、まず金融機関に「海外転勤で賃貸に出したい」と伝え、承諾の条件と金利を聞いておきます。条件が合わなければ、その時点で売る方向に傾きます。

もう1つ、住宅ローン控除を受けている人が家族ごと出国すると、控除は止まります。帰国して再び住んだときに残りの期間で再開するには、住まなくなる日までに税務署へ届出書を出しておく必要があります。

出典: 【フラット35】よくあるご質問 返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか 出典: 住宅金融支援機構 (財形住宅融資のみ)転勤などで一時的に住めなくなったとき 出典: 【フラット35】 ご利用条件 出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

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海外から貸し続けるときに増える手間と税金

海外から貸す場合、国内の転勤より手間と税金が増えます。主なものは次の3つです。

  • 家賃から差し引かれる税金(借主が会社のときなど)
  • 日本での確定申告と納税管理人
  • 帰国に合わせた契約の形

1年以上の予定で海外に勤務する人は、一般的に税金の上で「非居住者」になります。非居住者に国内の不動産の家賃を払う借主は、原則として家賃から20.42%を差し引いて税務署に納めます。差し引かれないのは、借主が個人で、自分か親族が住むために借りる場合です。会社が社宅として借りる場合などは差し引かれるので、受け取る家賃は約8割になり、差し引かれた分は翌年の確定申告で精算します。

家賃収入は日本で確定申告が要ります。海外から手続きを進めるために、申告書の提出や税金の納付を代わりに行う納税管理人を立てます。

契約の形も大切です。普通の賃貸契約で貸すと、帰国しても借主に出て行ってもらうのは難しくなります。期間が来たら終わる定期借家契約にして、期間を赴任に合わせておくと、戻る道を残せます。定期借家は書面(電磁的記録を含む)で契約し、貸主が前もって「更新がなく期間の満了で終わる」と書いた書面を渡して説明することが条件で、この説明を欠くと更新がないという定めが無効になります。管理会社に任せるときも、この説明の手順を確かめておきます。管理会社への委託料、管理費や修繕積立金、固定資産税の支払いも、海外から続けることになります。

出典: 国税庁 No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合 出典: 国税庁 No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率 出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第38条)

売るなら3,000万円特別控除が使える期限

売る場合に大きいのが、自宅を売ったときの利益から最大3,000万円を差し引ける特例(3,000万円特別控除)です。住まなくなった家でも使えますが、期限があります。国税庁は、以前に住んでいた家屋について次のように示しています。

住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。

期限の数え方(出国日は例として置いた仮定です)

式: 住まなくなった年に3を足した年の12月31日

例: 2026年10月に出国して住まなくなった場合、3年を経過する日は2029年10月で、期限はその年の12月31日、つまり2029年12月31日です。

出国より前に引っ越していれば、引っ越した日が起点になります。自分の「住まなくなった日」を当てはめて数えます。

住まなくなった後に貸していても、この期限内に売れば対象になります。「貸したら使えなくなる」と思われがちですが、見るべきは期限の方です。

期限を過ぎて売ると控除の対象から外れ、利益の分だけ税金がかかります。帰国が期限より後になりそうで、戻る予定も薄いなら、期限内に売る方が手元に残るお金は多くなりやすいです。親子や夫婦など、特別の関係がある人への売却は対象外です。

非居住者になってから売る場合、この特例の条文(租税特別措置法35条)が対象として書いているのは「個人」です。ただし自分のケースで使えるかは、申告の前に税務署で確かめておきます。また、売買契約の前日の住民票の住所と売った家の所在地が違う場合は、戸籍の附票の写しなど、その家に住んでいたことを示す書類を申告書に添えます。海外へ住民票を移した後に売る人は、ここで書類が1つ増えます。

出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: e-Gov法令検索「租税特別措置法」(第35条)

海外転勤でマンションを売るタイミングの選択肢

売ると決めたら、次はいつ売るかです。売る時期は大きく4つあり、時期によって税金の差し引かれ方、必要な書類、確定申告の段取りが変わります。

時期代金からの源泉徴収主な書類確定申告
出国前に引き渡しまでなし印鑑証明書・住民票出国までに申告か、納税管理人を届けて翌年に
出国前に契約・出国後に決済買主によってあり出国前に取った印鑑証明書など翌年に納税管理人を通して
出国後に売り出す買主によってあり署名証明・在留証明翌年に納税管理人を通して
貸してから期限内に売る買主によってあり署名証明・在留証明翌年に納税管理人を通して

赴任まで3〜4か月以上あるなら、出国前に引き渡しまで終えるのが最も段取りの軽い形です。時間が足りなければ、出国前に契約するか、空室にしてから売り出すかを選びます。国内の転勤も含めた4つの選択肢(売る・貸す・空き家・単身赴任)と逆算の考え方は、別の記事で扱っています。

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出国前に引き渡しまで終える

出国前に代金の受け取りと引き渡しまで終えれば、国内に住む人の普通の売却として進みます。代金は満額で受け取れ、書類も印鑑証明書と住民票で足ります。

気をつけたいのは確定申告の時期です。国税庁の案内では、年の途中で海外に転出する人は、転出の時までに納税管理人を決めていれば翌年2月16日から3月15日までに納税管理人を通じて申告し、決めずに出国するなら出国の時までに申告(準確定申告)をします。3,000万円特別控除を使うときも申告が要るので、出国前に税務署か税理士に相談しておくと安心です。

時間の目安も押さえておきます。東日本不動産流通機構の集計では、2025年に首都圏で成約した中古マンションの、登録から成約に至る日数は82.5日でした。そこから決済と引き渡しまでの期間が加わるので、売り出しから引き渡しまでは3〜4か月ほどを見込みます(成約後の期間は物件と買主によって変わる目安です)。住みながら内覧を受けるので、引っ越しの準備と重なる時期は負担が大きくなります。赴任日が近いなら、価格を相場に合わせて早めに決まる設定にするか、次の選択肢に切り替えます。

出典: 国税庁 No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合 出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2025年)

出国前に契約して出国後に決済する

出国前に売買契約まで結び、代金の受け取りと引き渡し(決済)を出国後に行う方法です。赴任日までに決済が間に合わないときに使います。

知っておきたいのは、源泉徴収の判断が「契約の日」ではなく「代金を払う時点」で行われることです。国税庁は、非居住者に払う代金の源泉徴収の時期を次のように説明しています。

源泉徴収をする時期は、原則として現実に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。

決済のときに海外に住んでいれば非居住者への支払いになり、買主が会社などの場合、代金の10.21%が差し引かれます。買主側の手続きにも関わるので、決済の時点で海外にいることを、契約の前に不動産会社と買主に伝えておきます。

書類は、住民票を海外に移す前に印鑑証明書を取っておくと、出国後の決済で使える場合があります。登記で使う印鑑証明書は作成後3か月以内のものと定められているので、決済日がその範囲に入るように日程を組みます。決済では本人確認があるので、一時帰国して立ち会うか、親族などの代理人に任せるかを、契約の前に決めておきます。

出典: 国税庁 No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ 出典: e-Gov法令検索「不動産登記令」(第16条・第18条)

出国後に売り出して海外から売る

出国して家を空にしてから売り出す方法です。赴任まで時間が少なく、引っ越しと売却を同時に進めるのが難しい人に向いています。

空室で売る良さは、内覧の日程を組みやすく、家具のない状態で部屋の広さを見てもらえることです。不動産会社に鍵を預けておけば、平日の内覧にも応じられます。

その代わり、手続きは海外から進めます。印鑑証明書の代わりに在外公館の署名証明を、住所の証明には在留証明などを使います。連絡は時差がある前提で、不動産会社とのやり取りは自分か国内の代理人のどちらか1人に決めておくと、話が食い違いにくくなります。空室の間も管理費や修繕積立金、固定資産税はかかり続けるので、売り出し価格は長く持ちこたえる前提にせず、相場に沿った設定にしておきます。

貸してから期限内に売る

まず貸して、3,000万円特別控除の期限内に売る方法です。帰国後に戻るか決めきれない人や、今すぐ売るのはもったいないと感じる人の選択肢になります。

売り方は2通りあります。

  • 入居者がいるまま、投資用として買う人に売る
  • 定期借家の期間が終わって空室になってから、住む人に売る

入居者がいるまま売ると、買主は家賃から利回りを計算して価格を決めるので、住む人向けより安くなりやすいです。投資用として買う人は源泉徴収の免除の条件に当てはまらないので、決済のときに海外にいれば代金の10.21%が差し引かれます。空室にしてから売れば、住む人向けの価格で売り出せます。

空室で売るなら、期限から逆算して定期借家の期間を決めます。2026年10月に出国した場合(例として置いた仮定)、期限は2029年12月31日です。売却に半年ほど見込むなら、賃貸は2029年の春ごろに終わる期間にしておきます。

海外から売却を進めるための手続きの流れ

海外にいても、マンションは売れます。ポイントは、出国前にしか取れない書類と、海外で取る書類を分けて準備することです。流れは次のとおりです。

  1. 出国前に不動産会社と媒介契約を結び、代理人と納税管理人を決める
  2. 出国前に印鑑証明書などを取り、権利証と鍵の預け先を決める
  3. 海外で署名証明と在留証明を取る
  4. 売買契約を郵送などで結ぶ
  5. 決済で代金を受け取り、引き渡す

出国前に用意しておく書類と届出

出国前にしか取れないものを、先に片づけます。

準備内容
代理人親族や司法書士。任せる範囲を決める
納税管理人所得税は税務署、住民税や固定資産税は市区町村(東京23区の固定資産税は都税事務所)へ届出
書類印鑑証明書・住民票の除票・権利証の保管場所
連絡先管理会社と管理組合に海外の連絡先を届出

代理人には、内覧の立ち会い、契約、決済のどこまでを任せるかを話し合っておきます。

所得税の納税管理人は、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を納税地の税務署に出します。国税庁は提出時期を「その納税管理人を定めたとき又は出国の日までに」としています。納税管理人は個人でも法人でもよく、親族に頼むこともできます。住民税や固定資産税などの地方税は、これとは別に、市区町村へ納税管理人を申告します。東京23区の固定資産税は、家のある区の都税事務所に「納税管理人申告書」を出すと、納税通知書が納税管理人あてに届きます。

書類は、登記簿の住所と今の住所が違うなら、そのつながりを示す書類も用意します。管理会社と管理組合に海外の連絡先と国内の代理人を伝えておくと、売却中の書類のやり取りが滞りにくくなります。鍵は不動産会社に預けます。

出典: 国税庁 A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続 出典: e-Gov法令検索「地方税法」(第300条・第355条) 出典: 東京都主税局 引越したとき

海外で取得する署名証明と在留証明

住民票を海外に移すと、日本の印鑑証明書は取れなくなります。法務省は、登記の手続きで本人が外国に住んでいる場合、印鑑証明書に代わる書面として日本の領事が作成した署名証明を添付できるとしています。

  • 署名証明: 印鑑証明書の代わり。本人のサインであることを、海外の日本大使館や総領事館(在外公館)が証明する
  • 在留証明: 住民票の代わりに、今の住所を示す書類として使われる。どの書類で住所を示すかは、登記を頼む司法書士に確かめる

署名証明は領事の前でサインして作ってもらう書類なので、本人が在外公館に出向く前提で日程を組みます。予約が必要な公館や、発行まで日数がかかる公館もあり、日本への郵送にも往復で数週間を見込みます(どちらも公館と国によって変わる目安です)。

決済日から逆算して、早めに取りに行くのが安全です。法務省は、住んでいる場所が在外公館から離れているなど領事の署名証明を取るのが難しいときは、外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記を申請することも認められているとしています。使えるかと形式は、司法書士に確かめておきます。

出典: 法務省 外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて

売買契約と決済を海外から進める方法

売買契約は、買主と売主が別々に署名して郵送でやり取りする方法(持ち回り契約)で結べます。電子契約に対応している不動産会社もあります。

決済は、代金の受け取りと所有権の移転登記を同じ日に行う手続きです。司法書士が売主本人の意思を確認するので、方法は次の2つになります。

  • 一時帰国して決済に立ち会う
  • 代理人に任せて委任状を出す

代理人に任せる場合も、司法書士が売主本人と電話やオンラインで話して確認することが多く、時差を考えて日時を合わせます(確認の方法は司法書士によって違う目安です)。

登記簿の住所が出国前のままなら、売る前に住所を変える登記が必要になります。法務省は、登記簿上の住所から移転している人が売却するときは、本来は所有権移転の登記の前に住所変更の登記が必要だと示しています。住所変更の登記は2026年4月1日から義務になり、住所が変わった日から2年以内に申請し、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になります。2026年4月1日より前に住所が変わっていて登記していない場合は、2028年3月31日までが期限です。それまでは義務でなかったため、昔の住所のまま登記簿が残っている人は多いはずです。

住所変更を法務局が職権で行う「スマート変更登記」も始まりましたが、法務省は、海外に住んでいる人は住基ネットで住所を確認できないため対象外としています。海外にいる間に売る人は、住所変更の登記を自分で、売却の登記とまとめて司法書士に頼むことになるので、早めに相談しておきます。

出典: 法務省 住所等変更登記の義務化について 出典: 法務省 住所等変更登記の義務化に関するQ&A 出典: e-Gov法令検索「不動産登記法」(第76条の5・第164条)

売却代金を受け取る口座と送金

売却代金は、国内の銀行口座で受け取るのが一般的です。住宅ローンが残っていれば、決済の日に代金から返済し、抵当権を外す手続きも同時に行います。

ここで源泉徴収が絡むと、決済の日の入金は代金の約9割になります。ローンの残りがその額を上回っていると、完済には差額を手元の資金から足すことになります。出国後の決済で、買主が会社などになりそうなら、ローンの残りと「代金×89.79%」を先に比べておきます。

海外に住むことになったら、銀行にそのことを届け出ます。届け出た後は、口座は残せても、一部の取引やネットバンキングの機能が制限される銀行があります(扱いは銀行ごとに違います)。決済の口座として使えるかを、出国前に銀行に確かめておきます。

受け取ったお金を海外に送るなら、送金手数料と為替の差がかかります。急いで送る必要がなければ、国内に置いて帰国後の住まいの資金に回す方法もあります。代金から税金が差し引かれた場合は、翌年の確定申告で精算するまで手元の金額が少なくなるので、資金計画に入れておきます。

非居住者がマンションを売るときの税金の注意点

海外に住む人が日本のマンションを売っても、日本で所得税がかかり、利益の計算の仕方は国内に住む人と同じです。変わるのは、誰がいつ税金を納めるかと、住民税の扱いです。

買主による10.21%の源泉徴収

非居住者が日本の不動産を売ると、原則として買主が代金から10.21%を差し引き、売主の代わりに税務署に納めます。これを源泉徴収といいます。国税庁は次のように示しています。

非居住者が国内にある土地等の不動産を売却して受け取る譲渡対価については、原則として、10.21パーセントの税率により計算した額の所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)が源泉徴収されますが、この源泉徴収税額の還付を受けるための申告を行うこともできます。

2027年(令和9年)1月1日以後に生じる所得からは、所得税に防衛特別所得税(所得税額の1%)が加わり、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に下がります。国税庁は、上乗せ分の合計の税率(2.1%)は改正の前後で同じとしており、所得税率10%に対する合計の税率は改正後も10.21%です。2027年以後の決済でも、差し引かれる割合は同じと考えて計画できます。

差し引かれないのは、次の2つを両方満たすときです。

  • 売却代金が1億円以下
  • 買主が個人で、自分か親族が住むために買う

この免除は買主側の条件です。不動産会社などの買取、投資用に買う人、1億円を超える売却では差し引かれます。売り方を選ぶ段階で、買主によって手取りの時期が変わると知っておきます。

買取業者に5,000万円で売った場合(売却額は例として置いた仮定です)

式: 差し引かれる額=売却代金×10.21%/決済の日に受け取る額=売却代金−差し引かれる額

差し引かれる額: 5,000万円×10.21%=510万5,000円

決済の日に受け取る額: 5,000万円−510万5,000円=4,489万5,000円

差し引かれた分は、翌年の確定申告で実際の税額と精算し、差し引かれた額の方が多ければ差額が還付されます。自分の売却額を当てはめ、実際の税額は申告のときに税務署か税理士に確かめます。

急ぎで買取を選ぶときは、この約1割が一時的に手元にないことを、資金計画に入れておきます。

出典: 国税庁 No.1932 海外勤務中に不動産を売却した場合 出典: 国税庁 No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき 出典: 国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)

納税管理人の届出と翌年の確定申告

非居住者が日本で確定申告をするには、国内に納税管理人を置きます。納税管理人は、税務署からの書類を受け取り、確定申告書の提出や税金の納付などを代わりに行う人です。

納税管理人は、税理士などの資格者に限られず、親族や知人にも頼めます。会社に頼むこともできます。届出書を出した後は、税務署が発送する書類が納税管理人あてに届きます。

確定申告の期間は、売った年の翌年2月16日から3月15日までです。3,000万円特別控除を使うのも、差し引かれた10.21%を取り戻すのも、この申告が前提です。売買契約書、購入時の契約書、かかった費用の領収書は、納税管理人の手元にまとめておくと、海外からでも申告を進めやすくなります。

出典: 国税庁 No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任 出典: 国税庁 No.1932 海外勤務中に不動産を売却した場合

住民税と赴任先の国の税金

住民税は、毎年1月1日に住所がある市区町村が、前の年の所得に対してかけます。品川区は、海外赴任などで出国し、1月1日をまたいで1年以上海外に住む場合は、国内に住所がないものとして課税されないと案内しています。売った年の翌年1月1日に海外に住んでいれば、その年の売却の利益は住民税の対象から外れます。出国前に売った場合も、翌年1月1日に海外に住んでいれば同じ扱いです。売却の利益にかかる税金は所得税(復興特別所得税を含む)だけになり、国内に住む人より負担が軽くなる場合があります。

一方で、出国する年の住民税は、その年の1月1日の住所地で前の年の所得にかかります。納税通知書は出国後に届くことがあるので、前の年の所得で課税される見込みの人は、出国前に市区町村へ納税管理人を申告しておきます。

赴任先の国の税金にも目を向けます。国によっては、その国に住む人の世界中の所得に税金をかけるので、日本のマンションを売った利益も現地で申告が要る場合があります。国税庁は、日本が結んでいる多くの租税条約で、不動産の譲渡による所得は不動産のある国でも課税できるとされていると説明しています。日本と赴任先の両方で税金がかかったときの調整は、赴任先の国の制度(日本で納めた税を差し引く仕組みなど)と租税条約によって決まります。

どの国のルールが当てはまるかは、赴任先によって大きく変わります。会社の海外人事の担当や現地の税理士に、出国前に確かめておくと安心です。

出典: e-Gov法令検索「地方税法」(第318条) 出典: 品川区 海外へ出国(転出)する場合の特別区民税・都民税(住民税)について 出典: 国税庁 No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき

まとめ:売るなら出国前の引き渡しを軸に、貸すなら3年目の年末から逆算する

いちばん重いのは、売る時期によって手取りの時期と段取りが変わることです。出国前に引き渡しまで終えれば普通の売却として満額を受け取れますが、決済が出国後になると、買主が会社や投資用の人なら代金の10.21%が差し引かれ、戻るのは翌年の確定申告の後になります。貸して残す場合も、3,000万円特別控除は住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。

次の一歩は、出国の日を起点に、売るなら引き渡しの日、貸すなら売り出す日を逆算して、出国前に納税管理人と代理人を決めておくことです。ここを飛ばすと、出国後に印鑑証明書が取れず在外公館で署名証明を取り直したり、申告を出国の時までに済ませる必要が出たりして、海外から書類を集める手間が増えます。

そのうえで、借りている金融機関に貸す場合の扱いを、税務署に申告と特例の使い方を確かめておきます。住み替えのトビラでは、海外転勤でマンションを売るか貸すかの判断と、非居住者になってからの売却の段取りも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。