60代の住宅ローン|3つの壁と「返せる額」で選ぶ組み方

60代の住宅ローン|3つの壁と「返せる額」で選ぶ組み方

60代で新たに住宅ローンを組むときは、頭金にいくら回せるかで、借りられる額が大きく変わります。

返せるかどうかは、年金で暮らしながら払える額に、毎月の返済を収められるかで見きわめます。

立ちはだかる3つの壁と、通常の借り方、親子で返す形、利息だけを払う形という3つの組み方を説明します。

60代でも住宅ローンは組める|まず「売却の手取りと残債」を突き合わせる

60代でも住宅ローンは組めます。問われるのは組めるかどうかではなく、いまのマンションを売った手取りをいくら頭金に回せて、残った借入を年金で返せるかです。

通常・親子リレー/ペア・リ・バース60という3つの組み方を、それぞれがどの壁を超える方法かという視点で見渡します。その前に、住み替えの資金計画の起点となる売却の手取りと残債の突き合わせから確かめます。

結論|組めるかより「頭金にいくら回せて、年金で返せるか」

60代でも、収入と健康の条件を満たせば住宅ローンは十分に組めます。

高齢での借り入れは決して例外ではありません。国土交通省の令和7年度の調査では、住宅ローンを扱う金融機関のうち、借入時の年齢を審査項目に挙げた956機関の内訳は、75歳未満が13機関、70歳未満が194機関、65歳未満が247機関、60歳未満が30機関、55歳未満が9機関、「その他」が477機関でした(複数回答)。60歳を超えると申し込めなくなる、という単純な線はありません。

出典:国土交通省住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」

ただし「組めるか」と「無理なく返せるか」は別の問題です。マンションを売って住み替えるなら、判断の軸は「いくらまで借りられるか」から「売った手取りを頭金にいくら回せて、年金で毎月いくら返せるか」へ移ります。頭金を厚くするほど借入は縮み、退職後の家計を圧迫しない範囲に収められます。

起点|売却の手取り(査定額−諸費用)と残債を突き合わせる

組み方を選ぶ前に、まず確かめたいのは「いまのマンションを売って手元にいくら残り、残債とどちらが大きいか」です。

ここで気をつけたいのは、査定額そのままで残債と比べないことです。本当に手元に残るのは、査定額から仲介手数料や抵当権抹消の費用などを引いた手取りの見込み額だからです。残債のほうは、金融機関の残高証明書や返済予定表、各行のWebサイトで確認できます。

この手取りと残債を突き合わせると、住み替えの資金の流れが決まります。手取りが残債を上回れば、残債を清算したうえで差額を新居の頭金に回せます。たとえば手取りの見込みが1,900万円、残債が1,500万円なら、差額の400万円を頭金にあてられる計算です。反対に手取りが残債に届かないオーバーローンの状態なら、不足分を清算するために住み替えローンなどの手当てが要ります。

マンションは、この突き合わせがしやすいカテゴリです。一戸ごとの個別性が戸建てより小さく、同じ建物や近隣で似た住戸の成約も多いため、比較の相手を見つけやすいからです。ただし会社ごとの査定額がどれだけ近い値に揃うかを集計した統計はありません。まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、手取りの見込みに幅を持たせて把握しておくと、頭金にいくら回せるかが見えてきます。

この頭金の厚みが、次に見る完済年齢の壁を大きく左右します。売った手取りを頭金に回して借入そのものを小さくできれば、返済期間が短くなりやすい60代でも、返せる範囲に収まりやすくなります。

60代の組み方は3つ|通常・親子リレー・リ・バース60(全体マップ)

60代の住宅ローンは、大きく3つの組み方に分かれます。

組み方主に超えられる壁向いているケース
通常の住宅ローン自力で3つすべて売却手取りを頭金に回せ、再雇用や年金で収入が安定し健康な人
親子リレー・ペアローン完済年齢の壁子と同居・近居や、住まいの承継を考える家庭
リ・バース60団信・毎月返済の壁年金中心で月々の負担を抑えたい人

3つを分けるのは「誰の力で壁を超えるか」です。自分の収入と健康で超えるか、家族を巻き込むか、自宅そのものを担保にするかで方向が決まります。

自分の力で組むのが通常の住宅ローン、家族の力を借りるのが親子リレーやペアローンです。年齢のせいで返済期間が足りない場合は、家族を組み込む方法が現実的になります。自宅を頼るのがリ・バース60で、毎月の支払いを利息だけに抑えたい場合の選択肢です。

60代の住宅ローンを左右する3つの壁|完済年齢・収入・団信

60代の住宅ローンには、完済年齢・収入・団信という3つの壁があり、どこでつまずくかで選ぶべき組み方が変わります。

3つの壁は、どの組み方にも共通する前提です。それぞれの壁が何を見るのかを知れば、自分がどこで引っかかりそうかを先に見極められます。自分がどの壁につまずきやすいかは、次の3点で確かめられます。

  • 完済時に80歳を超えないか → 超えるなら完済年齢の壁
  • 年金・再雇用の収入で返済負担率に収まるか → 収まらないなら収入の壁
  • 健康状態で団信に入れそうか → 不安なら団信の壁

完済年齢の壁|借入時の年齢で返済期間が決まる

最初の壁は、借入時の年齢で返済できる期間が決まることです。

住宅ローンには完済時の年齢に上限があります。国土交通省の令和7年度の調査では、完済時年齢を審査項目に挙げた金融機関は994機関中978機関(98.4%)にのぼりました。その978機関が挙げた具体的な内容は、80歳未満が716機関、85歳未満が65機関、75歳未満が42機関、70歳未満が5機関、「なし」が2機関、「その他」が158機関です(複数回答)。80歳未満が最も多いものの、85歳未満とする機関も、逆に75歳未満とする機関もあり、「その他」も158機関あります。単一の線ではないと考えてください。

期間の逆算の仕方は商品ごとに決まっています。フラット35なら借入期間の上限は「80歳-申込時の年齢(1年未満は切上げ)」と35年のうち短いほうです。この式にあてはめると、60歳の申込みで最長20年、65歳なら15年です。

なお、この調査が集計しているのは金融機関が申告した審査項目であり、実際に融資が実行された案件の完済時年齢の分布ではありません。

出典:国土交通省住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」

期間が短いほど、毎月の返済は重くなります。同じ2,000万円でも、20年返済と15年返済では月の負担が数万円単位で変わります。退職後の収入でこの金額を払えるかどうかが、最初の関門になります。

ここで効いてくるのが、いまのマンションを売った手取りです。期間を延ばせないなら、頭金を厚くして借入額そのものを小さくすれば、短い期間でも返せる範囲に収まります。売却の手取りを頭金に回せる60代は、この壁をやわらげやすい立場にあります。

収入の壁|再雇用・年金収入はどう審査されるか

次の壁は、退職後の収入が審査でどう評価されるかです。

審査では収入の安定性と総返済負担率が見られます。総返済負担率は年収に占める年間返済額の割合です。フラット35では年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下と公表されています。年金や再雇用後の収入も、この割合に収まるかどうかで判断されます。

年金収入は安定した収入と見なされます。ただし現役時より金額が下がるため、借りられる額は小さくなりがちです。再雇用の給与は、契約期間や更新の有無まで確認されます。

年金生活で住宅ローンが残るときの選択肢と対処法 年金生活で住宅ローンが残るときの選択肢と対処法

団信の壁|健康・年齢で入れないリスクと回避策

見落とされがちな最後の壁が、団体信用生命保険(団信)です。

団信は契約者が亡くなった際に残りのローンを保険金で完済する仕組みで、多くの住宅ローンで加入が条件になります。年齢や健康状態によっては加入を断られ、その結果ローン自体を組めないことがあります。健康に不安が出てくる60代では、ここが思わぬ関門になります。

回避策はいくつかあります。引受条件をゆるめたワイド団信なら、持病があっても加入できる場合があります。通常の団信より金利が上乗せされるのが一般的ですが、上乗せ幅は金融機関ごとに異なり、業界横断で集計した公表資料はありません。検討するときは、申し込む金融機関の商品概要説明書で上乗せ幅を確かめてください。

団信に入らずに借りる道もあります。フラット35は団信への加入が任意で、健康状態を理由に借入を諦めずに済みます。ただし保険がない分、もしものときに返済が家族へ残るリスクは引き受けることになります。

【組み方①】60代が通常の住宅ローンを組む基本ルート

再雇用や年金で安定した収入があり、健康面もクリアできるなら、通常の住宅ローンが基本の選択肢になります。

銀行やフラット35を使い、自分の力で3つの壁を超える方法です。売却の手取りを頭金に回し、年金で返せる額に借入を抑える考え方がポイントになります。

仕組み|安定収入と健康で3つの壁を自力で超える

通常の住宅ローンは、自分の収入と健康だけで組む標準的な方法です。

借入先は民間銀行か、全期間固定のフラット35が中心です。完済時の年齢が上限に収まるよう、返済期間を逆算して決めます。60代では期間が短くなりやすいため、無理のない長さに設定することが出発点になります。

金利タイプは変動と固定から選びます。変動は当初の返済を抑えやすく、固定は将来の金額が読める安心感があります。退職までの期間が短い60代では、収入が読める固定を選ぶ人も多く見られます。

月々の返済と借入の目安|売却手取りを頭金に、返せる額で抑える

60代では、借りられる上限ではなく年金で返せる額を基準に借入を決めます。

借入の上限は総返済負担率で決まります。フラット35の基準は、年収400万円未満なら30%以下、年収400万円以上なら35%以下です。年収を境に2段階で切り替わるもので、そのあいだを連続して動く数字ではありません。ここで数えるのは住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンなど、すべての借入の年間合計返済額です。ただしこれは借りられる限界であって、無理なく返せる金額とは違います。大切なのは、退職後の家計から返せる額を逆算することです。

出典:住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在)

その返せる額に借入を寄せる近道が、売却の手取りを頭金に回すことです。頭金を厚くするほど借入は縮み、短い返済期間でも毎月の負担が軽くなります。フラット35の利用者調査でも、頭金を一定程度入れて借入を抑える利用者が多く見られます。

出典:住宅金融支援機構「2025年度【フラット35】利用者調査」

目安をつかむには、毎月いくらなら払えるかから借入額を逆算します。たとえば毎月8万円を15年、元利均等で返す場合の借入額は、【フラット20】2026年8月適用の金利 年2.970%(借入期間20年以下・融資率9割以下・新機構団信付き。2026年8月時点)でおよそ1,160万円です。金利が上がれば、同じ返済額で借りられる元本は減ります。【フラット35】2026年8月適用の金利 年3.290%(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き。2026年8月時点)なら約1,135万円、そこから1.0ポイント上がって年4.290%なら約1,061万円です。

金利は毎月変わるため、実際の借入時の金利で確認してください。

向いている人と注意点|変動金利・繰上返済の使いどころ

通常の住宅ローンは、安定収入があり健康に不安がない人に向いています。

向いているのは再雇用や事業収入が続く人や、売却の手取りや退職金で頭金を厚く用意できる人です。逆に、年金だけが収入で健康に不安がある場合は、審査や団信で行き詰まりやすくなります。

変動金利を選ぶときは、金利上昇への備えが欠かせません。60代は返済期間が短く、上昇局面に当たっても影響を受ける年数は限られます。とはいえ年金生活では家計の余力が小さいため、上がっても払える範囲かを確認しておくべきです。

退職金を使った繰上返済は、タイミングが鍵になります。早い時期に元金を減らせば利息の総額を抑えられますが、手元資金を使いすぎると急な出費に対応できなくなります。生活防衛資金を残したうえで、無理のない範囲にとどめます。

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【組み方②】親子リレー・ペアローンで年齢の壁を超える

子と同居・近居の予定があり、自分一人では返済期間が足りないなら、親子リレーローンが有力な選択肢になります。

子の年齢や収入を組み込み、完済年齢の壁を家族で超える方法です。仕組みの違いや、相続・団信をめぐる注意点に踏み込みます。

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仕組み|子の年齢を基準に「完済年齢の壁」を超える(ペアローンとの違い)

親子リレーローンは、子の年齢を基準に返済期間を延ばす仕組みです。

通常は申込者本人の年齢で返済期間が決まりますが、親子リレーでは後継者となる子の年齢が基準になります。フラット35の例では、親が60歳でも後継者が30歳なら、最長35年の借入が可能です。フラット35の申込資格は申込時の年齢が満70歳未満ですが、親子リレー返済を利用する場合は満70歳以上でも申し込めます。この点が、通常ローンとの大きな違いです。

出典:住宅金融支援機構【フラット35】「親子リレー返済」

後継者になれるのは、子や孫など申込者の直系卑属とその配偶者で、定期収入のある人です。後継者は契約当初から連帯債務者となり、設定できるのは1名のみです。まず親が返済し、引き継ぐ時期が来たら子が残りを返していきます。

よく似た方法に、ペアローンがあります。親子リレーが1本のローンを引き継ぐのに対し、ペアローンは親と子がそれぞれ別々にローンを組み、同時に返していきます。引き継ぎか並走かという返し方の違いが両者を分けます。

月々の返済と借入の目安|親子で返す前提での見方

借入枠も返済も、親子で返していく前提で見ます。

期間を長く取れる分、毎月の返済は親一人で組むより軽くできます。借入枠は親子それぞれの収入を合算して判断されるため、単独より大きな金額を借りやすくなります。ここでも売却の手取りを頭金に回せば、二世代で背負う総額そのものを圧縮できます。

ただし軽く見えるのは、返済が二世代に分かれているからです。総額が減るわけではなく、いずれ子が引き継ぐ負担が前提になります。親子で返済計画を共有しておくことが、後々のトラブルを防ぎます。

向いている家庭と注意点|子の負担・相続・団信は誰が入るか

親子リレーは、住まいを子へ承継する前提が固まっている家庭に向いています。

向いているのは子と同居や近居をしていて、その家に住み続ける見通しがある家庭です。子が遠方で暮らし、その家を継ぐ予定がないなら、リレーの前提が崩れてしまいます。

親子リレーは「実家の戸建てを子が継ぐ」場面で語られがちですが、住み替え先のマンションでも仕組みは同じように使えます。ただし承継する対象がマンションの場合、子が引き継ぐのは建物だけでなく、その後も続く管理費や修繕積立金の負担でもあります。戸建てを継ぐ場合とは背負うものの中身が違う点を、早めに共有しておくと安心です。

子の側の負担も見落とせません。将来マイホームを買う際に、すでに住宅ローンを抱えていると新たな借入が難しくなります。子のライフプランに重なる負担を、早めに話し合っておく必要があります。

団信に誰が入るかも、事前に決めておきます。加入できるのは親子のうち1名で、その人に万一があったときだけローンが完済される場合が多くあります。相続の観点でも、家と残債を誰が引き継ぐかが曖昧だと、相続時に他の家族との間で不公平感が生まれます。誰が住み、誰が返すのかを、早い段階で家族の合意にしておくと安心です。

【組み方③】リ・バース60で団信・毎月返済の負担を抑える

年金中心で毎月の負担を抑えたい人や、年齢・健康で通常ローンが難しい人には、リ・バース60という第三の道があります。

毎月の支払いを利息だけに抑え、元金は最後に自宅の売却で清算する高齢者向けのローンです。負担の軽さと引き換えの注意点や、マンションでの扱いもあわせて見ます。

リ・バース60とは?仕組み・条件と向くケースを解説 リ・バース60とは?仕組み・条件と向くケースを解説

仕組み|毎月利息のみで「団信・返済の壁」を抑える

リ・バース60は、毎月の返済を利息だけにできる満60歳以上向けのローンです。

住宅金融支援機構の保険を使い、民間の金融機関が提供します。毎月支払うのは利息のみで、元金は契約者が亡くなったときに返します。返し方は、自宅の売却か、相続人による一括返済のどちらかを選びます。資金の使い道は、住宅の建築・購入・リフォームや住宅ローンの借り換えなどに限られ、生活資金には使えません。住み替えでの新居購入は、この使い道に含まれます。

出典:住宅金融支援機構【リ・バース60】の商品概要

団信を前提としない点が通常ローンとの違いです。健康状態を理由に断られる心配が小さく、年齢の上限も実質的にありません。完済年齢と団信という2つの壁を同時に避けられる仕組みです。

返済方法には、ノンリコース型とリコース型があります。ノンリコース型なら、自宅を売っても元金に届かなかった場合に、不足分を相続人が背負わずに済みます。相続人の負担を抑えたいなら、ノンリコース型が安心です。

月々の返済と総負担の目安|元金は最後に自宅売却で清算

毎月の負担は通常ローンより大きく軽くなりますが、総負担は見え方が変わります。

利息だけを払う仕組みのため、毎月の支払いは通常ローンよりかなり小さく収まります。年金収入でも家計を圧迫しにくく、住み替えやリフォームの資金を用意しやすくなります。

いっぽうで元金は減らないため、利息は残高にかかり続けます。長生きするほど支払う利息の総額は増え、最後に自宅を手放す前提になります。毎月の軽さと引き換えに、住まいを資産として残しにくい点は理解しておくべきです。

向いている人と注意点|マンションは担保評価・対象可否を個別確認

リ・バース60は、月々の負担を最優先にしたい人に向いています。

向いているのは年金中心の家計で毎月の返済を軽くしたい人や、健康面で通常ローンが難しい人です。自宅を最終的に手放すことに納得でき、相続でもめる心配が小さい場合に選びやすくなります。

ここでマンションから住み替える人がとくに確かめたいのが、担保評価です。融資限度額は担保評価額の50〜60%(長期優良住宅では55〜65%)が上限の目安とされ、担保の評価が低いほど借りられる額も小さくなります。リバースモーゲージは担保評価が土地を中心に見られる仕組みのため、土地の持分が小さいマンションは対象外になるか、都市部の高く評価される物件に限られ、条件が厳しくなりがちです。一方でリースバックは自宅を売る仕組みで担保評価の下限という壁がなく、分譲マンションでも扱う事業者が多いため、比較的使いやすい方法です。扱いは商品や事業者によって異なるため、自分のマンションが対象になるか、いくらまで借りられるかは、個別に確かめておくと安心です。

出典:住宅金融支援機構「【リ・バース60】」

金利は通常ローンより高めに設定されやすく、不動産価格が下がると売却額が元金に届かない担保割れが起こることもあります。税金面では、住宅ローン控除の対象にならない点にも注意が必要です。控除は元金の返済に応じて受けられる仕組みのため、利息だけを払うリ・バース60では適用されません。控除を見込んで資金計画を立てている場合は、前提から見直しておきます。

60代の住宅ローンの選び方|売却の手取りと年金で「返せる額」から決める

3つの組み方は、売却の手取りと、年金で無理なく返せる額という共通のものさしで比べると、自分のケースで2〜3案に絞り込めます。

借りられる額ではなく、頭金にいくら回せて年金からいくら返せるかを起点に考えます。比較表と逆算の手順、状況別の選び方で、自分の結論に近づけます。

3つの組み方を一覧で比較する

3つの組み方は、返済期間・毎月の負担・団信・名義という軸で特徴が分かれます。

通常ローン親子リレー・ペアリ・バース60
返済期間完済時年齢の線(最も多いのは80歳未満)で短め子の年齢基準で長期期限なし(死亡時に清算)
毎月の負担期間が短く重め二世代で分け軽め利息のみで最も軽い
団信・健康加入が条件親子いずれか1名前提とせず通りやすい
誰が返す・名義本人親から子へ引き継ぎ本人(元金は売却で)
向いている人安定収入・健康な人承継前提の家庭月負担を抑えたい人

表の縦軸を、自分の状況に当てはめて読みます。健康と収入に不安がなければ通常ローン、年齢で期間が足りなければ親子リレー、毎月の負担を最優先するならリ・バース60が近づきます。

一つの軸だけで選ぶと、後で行き詰まります。毎月の軽さでリ・バース60に決めても、家を残したい思いが強ければ後悔につながります。複数の軸を重ねて、譲れない条件から絞っていくと選びやすくなります。

「売却手取り+年金収入−生活費」から借入の上限を決める

借入の上限は、売却の手取りを頭金に見込んだうえで、年金収入から生活費を引いた「返せる額」から逆算します。

まず、毎月の年金収入を確認します。総務省の家計調査(2025年平均)では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で、実収入が254,395円、税や社会保険料を差し引いた可処分所得が221,544円でした。これに対して消費支出は263,979円で、可処分所得を42,435円上回っています。平均では毎月の支出が手取りを上回っており、返済に回せる余力は残らない計算です。だからこそ、自分の家計に置き換えて余力を確かめる作業が要ります。

出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」

次に、自分の家計に置き換えます。年金や再雇用の収入から、食費や光熱費などの生活費を引いた残りが、返済に充てられる上限です。ここに住居費や医療費の増加も見込み、余裕を持たせた金額にとどめます。

[返せる額の出し方(例)]

  • 毎月の収入(年金+再雇用):22万円
  • 毎月の生活費:18万円
  • 返済に回せる上限:4万円 → 余裕を見て月3万円までに抑える

ここに、売却の手取りをどれだけ頭金に回すかを重ねます。頭金を厚くすれば毎月の返済は軽くなりますが、手取りを住まいに使いきると、急な出費や長生きへの備えが薄くなります。生活防衛資金を確保したうえで、頭金に回す額を決めるのが安全です。

返せる額と頭金が決まれば、組み方も自然と絞られます。余力が小さいならリ・バース60や親子リレー、頭金を厚くして毎月を抑えられるなら通常ローンが候補に入ります。売却の手取りが残債を下回るオーバーローンの場合は、残債の清算にあわせた別の手当ても必要になります。

状況別にどれを選ぶか|健康・団信/家族・相続/売却手取り・手元資金

同じ「返せる額」でも、健康・家族・手元資金の状況でたどり着く答えは変わります。

健康や団信に不安がある場合は、団信を前提としないリ・バース60か、団信が任意のフラット35が残ります。年齢で返済期間が足りないなら、子を後継者にできる親子リレーが現実的です。家を子に残したい家庭なら、自宅を手放すリ・バース60は外れ、通常ローンか親子リレーに寄ります。売却の手取りを頭金に厚く回せるなら、通常ローンで毎月の負担を抑える選び方もできます。

なお、境界の確定や接道、再建築の可否、屋根や外壁のまとまった修繕費といった論点は、戸建てや土地を売り買いする人の話で、マンションから住み替える人には基本関係ありません。マンションでは、売る側も買う側も、管理の状態や修繕積立金の積み立て具合が評価に響く点を押さえておけば十分です。

どの道を選ぶ場合も、出発点は今のマンションがいくらで売れ、手取りがいくら残るかの把握です。手取りの見込みがわかれば、頭金に回せる額と必要な借入額が定まり、3つの組み方の比較が一気に進みます。まずは複数社の査定で、今の住まいの相場をつかむことから始めます。

まとめ:60代の住宅ローンを年金から組むなら、住み替えのトビラ

60代の住宅ローンは、頭金の厚さで組める形そのものが変わります。今の住まいを売って手元に入る分を多く回すほど、抱える返済は小さく収まります。

返済を小さくするには、売って手元に入る額を先に確かめます。頭金が読めないまま話を進めると、健康や年齢の関門で断られたときに打つ手がありません。

借り方を選ぶ前に、年金で毎月いくらまで出せるのかを出しておきましょう。住み替えのトビラでは、年金で暮らしながら返す組み方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。