査定に来た担当者に「このマンション、修繕積立金が高いですね」と言われた。その一言で「うちは売れないのか」と不安になる人は多いです。
先に答えを書きます。「高い」には物差しがあります。月額を㎡単価に直して、国土交通省のガイドラインの目安と、レインズが毎年出す首都圏の実勢に当てれば、自分の棟が「高い・普通・安い」のどこにいるかが分かります。そして買主が本当に嫌うのは、今の月額の高さより、これから上がることと、積立が足りていないことです。高くても、その理由と積立残高を書類で示せる棟は売れます。
この記事では、高いかを測る目安、高くなる要因、管理費の相場、買主の見方、そして高いままで売る方法まで、売主の立場で順に見ていきます。
修繕積立金が高いかを測る目安
「高い」の判定は、月額の絶対額とは別の物差しで下します。広い部屋ほど月額は大きくなるからです。
㎡単価に直して、国の目安と市場の実勢に当てると、自分の棟がどの位置にいるかが分かります。
月額を㎡単価に直して比べる
修繕積立金が高いかどうかを比べるときは、専有面積1㎡当たりの月額に直します。
㎡単価の出し方(仮定の例)
修繕積立金 月18,000円 ÷ 専有面積 70㎡ = 約257円/㎡・月
管理費 月15,000円 ÷ 70㎡ = 約214円/㎡・月
合計 約471円/㎡・月
月額と専有面積は読者が入れる値です。専有面積は登記簿の内法面積か、売買契約書の面積に置き換えて計算します。
この㎡単価を、次の3つの物差しに当てます。
- 国土交通省のガイドラインが示す目安
- 東日本レインズが毎年公表する首都圏の成約物件の実勢
- 国土交通省の全国調査の平均
3つとも㎡単価か戸当たり月額で公表されているので、自分の数字と並べるだけで見当がつきます。仲介会社の「高いですね」の一言は、この物差しに当てて初めて意味を持ちます。
国土交通省ガイドラインの㎡単価目安
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)は、収集した長期修繕計画の事例366事例から、計画期間全体における修繕積立金の平均額を専有面積1㎡当たりの月額で示しています。
| 地上階数/建築延床面積 | 平均値 | 事例の3分の2が包含される幅 |
|---|---|---|
| 20階未満・5,000㎡未満 | 335円 | 235〜430円 |
| 20階未満・5,000㎡以上〜10,000㎡未満 | 252円 | 170〜320円 |
| 20階未満・10,000㎡以上〜20,000㎡未満 | 271円 | 200〜330円 |
| 20階未満・20,000㎡以上 | 255円 | 190〜325円 |
| 20階以上 | 338円 | 240〜410円 |
単位は円/㎡・月で、機械式駐車場の分は別枠です。幅は「事例の3分の2が包含される幅」で、事例の上下6分の1を除外した範囲を5円単位で表したものです。機械式駐車場がある棟は、機種ごとの1台当たり月額に台数を掛け、総専有床面積で割った額を加算します。
自分の㎡単価が該当する区分の幅の中に入っていれば、国の目安の範囲内です。幅の上限を超えていれば、目安より高いと言えます。
先ほどの例の257円は、5,000㎡以上〜10,000㎡未満の平均252円とほぼ同じで、幅(170〜320円)の中にあります。この棟を「高い」と呼ぶのは無理があります。
出典: 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
レインズの首都圏の実勢と築年・規模別の傾向
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は、同機構を通して成約した首都圏の中古マンションについて、管理費と修繕積立金の実勢を毎年公表しています。
2025年度は、1戸当たりの月額が管理費13,895円、修繕積立金13,910円、合計27,805円でした。㎡当たりでは管理費217円、修繕積立金217円、合計434円です。前年度比では、㎡当たりの管理費が0.6%上昇、修繕積立金が5.8%上昇、合計が3.1%上昇で、修繕積立金の側が大きく動いています。
| 区分 | 修繕積立金(円/㎡・月) | 管理費+修繕積立金(円/㎡・月) | 年間の対成約単価比率(合計・%) |
|---|---|---|---|
| 首都圏 | 217 | 434 | 0.60 |
| 築10年以内 | 167 | 436 | 0.37 |
| 築11〜20年 | 231 | 456 | 0.50 |
| 築21〜30年 | 239 | 441 | 0.66 |
| 築30年超 | 218 | 413 | 1.03 |
| 50戸未満 | 245 | 484 | 0.73 |
| 50〜99戸 | 216 | 424 | 0.63 |
| 100〜149戸 | 202 | 394 | 0.61 |
| 150〜199戸 | 197 | 397 | 0.58 |
| 200戸以上 | 197 | 412 | 0.46 |
レインズは「1㎡当たりの修繕積立金は築10年を超えると200円台前半に上昇。規模が大きくなると低下傾向。」とまとめています。50戸未満の小規模な棟は、合計で484円と9区分の中で最も高くなっています。地域別では、東京都区部が管理費261円、修繕積立金233円です。
この集計は、2025年1月より築年月・管理費・修繕積立金の項目についてレインズへの登録が必須化されたことに伴い、建築年・総戸数・管理費・修繕積立金がすべて登録された物件のみを抽出したものです。首都圏の成約物件の値なので、他の地域の棟は参考値として見ます。
自分の棟の築年と規模の区分と比べると、「同じ条件の棟の中で高いのか」が分かります。
出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)
年間額の成約価格に対する比率で重さを測る
買主にとっての修繕積立金の重さは、月額ではなく、物件価格に対する割合で決まります。
レインズは、年間の管理費・修繕積立金が成約㎡単価の何%に当たるかを「対成約単価比率」として公表しています。2025年度の首都圏平均は、管理費0.30%、修繕積立金0.30%、合計0.60%です。
この比率は築年で大きく変わります。築10年以内は合計0.37%ですが、築30年超は1.03%です。価格が安い築古の棟ほど、同じ月額でも価格に対する重さが増すからです。
1970年代とバブル期の1980年代後半から1990年代前半に建築された物件は管理費と修繕積立金(年間)の対成約単価比率が高く、二つの山を形成。
売主が知っておくべきなのは、買主は「月額が高い」ではなく「この価格でこの維持費は重い」と感じている、という点です。自分の棟の年間額を㎡単価で割って比率を出し、0.60%からどれだけ離れているかを見ると、買主の目線に近づけます。
出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)
修繕積立金が高くなる要因
㎡単価で比べて「高い」と分かったら、次はなぜ高いのかです。
要因の多くは建物の構造で決まっていて、管理組合の努力では変えにくいものです。逆に言えば、要因を説明できれば、買主は「この棟なら仕方ない」と納得します。
総戸数が少ないと1戸の負担が重くなる
修繕工事の費用には、戸数に関係なく決まる部分があります。外壁の足場、屋上の防水、エレベーターの更新は、一般に、50戸の棟でも200戸の棟でも1基・1棟あたりの工事費の水準は近くなります。戸数が少ないほど、それを割る人数が減り、1戸の負担が重くなります。
レインズの2025年度の規模別では、50戸未満の棟は修繕積立金が㎡当たり245円、管理費との合計で484円と、全区分の中で最も高くなっています。100〜149戸の棟の合計394円と比べると、㎡当たり90円の差です。70㎡なら月6,300円の差になります。
小規模な棟の売主は、この差を「無駄」ではなく「構造上の必然」として説明できます。一般に、小規模な棟は管理組合の合意形成が早く、修繕の意思決定が速いという利点もあり、買主に伝える材料になります。
出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)
タワーマンションは修繕費が高い
地上20階以上の超高層マンションは、修繕工事費が増える傾向があります。国土交通省のガイドラインは、その理由を次のように書いています。
超高層マンション(一般に地上20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高くなる等のため、修繕工事費が増大する傾向にある
このためガイドラインは20階以上を別枠にして、平均338円、幅240〜410円という目安を示しています。20階未満の平均252〜335円より高い水準です。
タワーマンションの買主は、この事情をある程度知って探しています。売主が説明すべきなのは、「タワーだから高い」ではなく、「ガイドラインの20階以上の幅に収まっている」かどうかです。幅の中なら、タワーとして普通の水準と言えます。
眺望や共用施設の価値は、修繕積立金の高さと引き換えに得ているものです。買主が高さを気にしたときは、その対価として何が手に入るかを、共用部の内覧で示すのが近道です。
出典: 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
機械式駐車場の修繕費が積立金に乗る
機械式駐車場は、一般に、定期的な部品交換と装置の更新が必要で、その費用は大きくなります。国土交通省のガイドラインは、機械式駐車場の修繕工事費を1台当たり月額で示しています。
| 機種 | 1台当たり月額 |
|---|---|
| 2段(ピット1段)昇降式 | 6,450円 |
| 3段(ピット2段)昇降式 | 5,840円 |
| 3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210円 |
| 4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235円 |
| エレベーター方式・垂直循環方式 | 4,645円 |
| その他 | 5,235円 |
この値は、収集した長期修繕計画の事例117事例から算出した数値で、5円単位の表示です。加算額は、1台当たり月額×台数÷マンションの総専有床面積で計算します。ガイドラインは、駐車場の維持管理・修繕工事費を管理費や修繕積立金と区分して経理している場合など、機械式駐車場の修繕工事費を駐車場使用料収入で賄うこととする場合には「『機械式駐車場がある場合の加算額』を加算する必要はありません」としています。使用料収入で賄えない棟では、その分が修繕積立金に乗ってきます。
売主は、自分の棟の駐車場の台数と機種、使用料の収支を管理組合の資料で確かめ、積立金のうち駐車場分がいくらかを把握しておくと、買主への説明が具体になります。
出典: 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
築年が進むほど積立額は上がる
修繕積立金は、築年とともに上がるのが普通です。レインズの2025年度では、㎡当たりの修繕積立金は築10年以内が167円、築11〜20年が231円、築21〜30年が239円で、築10年を超えると200円台前半に上昇します。
理由は2つあります。1つは、新築時に段階増額積立方式で低く設定された額が、計画どおり引き上げられていくこと。もう1つは、築年が進むほど必要な工事(給排水管・エレベーター・外壁)が増え、長期修繕計画の見直しで積立額が上がることです。
築20年前後の棟の売主が「高い」と言われたときは、同じ築年帯の実勢(231〜239円)と比べます。その範囲なら、築年相応です。買主も、築20年の棟には築20年なりの積立金を見込んでいます。
出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)
均等積立で最初から必要額を集めている棟は高く見える
修繕積立金の積み立て方には、計画期間中均等に積み立てる「均等積立方式」と、当初の積立額を抑え段階的に値上げする「段階増額積立方式」があります。国土交通省のガイドラインは、次のように書いています。
将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。
均等積立の棟は、同じ築年の段階増額の棟より、初期の月額が高く見えます。けれども、その分だけ先に積み上がっていて、将来の引き上げ幅は小さくなります。段階増額の棟は、今は安く見えても、計画どおりに後から上がります。
出典: 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
管理費が高い場合の目安と買主の見方
修繕積立金と並んで、管理費も「高い」と言われることがあります。管理費は国の目安が用意されていない領域なので、実勢で比べます。
ここでは管理費の相場と、高くなる要因、買主への伝え方を見ていきます。
管理費に国の目安はなく実勢で比べる
修繕積立金には国土交通省のガイドラインがありますが、管理費の目安は国から示されていない領域です。管理費は、管理員の勤務形態や清掃の頻度、共用施設の有無で棟ごとに大きく違うからです。
比べる物差しは実勢です。レインズの2025年度では、首都圏の成約物件の管理費は1戸当たり月13,895円、㎡当たり217円でした。東京都区部は1戸当たり15,291円、㎡当たり261円と高めです。
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たりの管理費の総額の平均は17,103円で、総戸数規模が大きくなるほど低くなる傾向があります。この調査は、管理組合を対象に4,270通を配布し、1,589管理組合から有効回収した結果です。
自分の管理費を㎡単価に直し、217円(首都圏)や自分の地域の実勢と比べます。大きく上回っていれば、次に見る要因のどれに当たるかを確かめます。
出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度) 出典: 国土交通省 令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕
管理費が高くなる要因
管理費が高くなる主な要因は、一般に次のとおりです。
- 管理員が常駐している(日勤・24時間有人)
- 清掃の頻度が高い、または専門業者による清掃
- 共用施設が多い(ラウンジ・ジム・ゲストルーム・プール)
- エレベーターの台数が多い、または高速仕様
- 総戸数が少なく、固定費を割る人数が限られる
- 管理会社への委託費が高い
前の5つは「サービスの対価」で、買主にとって価値でもあります。最後の委託費だけは、管理組合の交渉や管理会社の変更で下がる余地があります。
総戸数の影響は統計にも出ていて、令和5年度マンション総合調査の月/戸当たりの管理費の総額は、総戸数規模が大きくなるほど低くなる傾向があります。売主は、自分の棟の管理費の内訳を管理組合の収支報告で確かめ、どの要因で高いのかを言えるようにしておきます。「常駐管理員がいて、清掃が毎日入る」と言えれば、高さは価値に変わります。
出典: 国土交通省 令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕
管理費と修繕積立金の合計で比べる
買主は、管理費と修繕積立金を分けて見るより、合計で「この物件の維持費」を見ます。片方が高くても、合計が実勢の範囲なら、買主の月額計算では目立ちにくいです。
レインズの2025年度の首都圏の合計は㎡当たり434円です。築年別では413〜456円、規模別では394〜484円の幅にあります。自分の棟の合計㎡単価をこの幅と比べます。
合計で比べる(仮定の例)
管理費214円 + 修繕積立金257円 = 471円/㎡・月
首都圏平均434円より37円高いが、50戸未満の平均484円より低い。
→ 小規模な棟としては実勢の範囲内、と説明できる。
合計が幅を超える場合は、修繕積立金と管理費のどちらが押し上げているかを分け、それぞれの要因を説明します。
出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)
管理の質を内覧で伝える
管理費が高い棟には、その分の管理の質があるはずです。それは書類より、内覧で共用部を見せたときに伝わります。
エントランスの清掃、掲示板の整理、自転車置場の整列、ゴミ置場の清潔さ、植栽の手入れは、買主が無意識に見ている点です。管理員が常駐していれば、内覧の時間帯に挨拶をしてもらうだけで、印象が変わります。
売主にできるのは、内覧の前に共用部を自分の目で見て、気になる点を管理員や理事会に伝えておくことです。管理費の高さを「管理が行き届いている証拠」として買主に見せられれば、値引きの理由にはなりにくくなります。
買主が修繕積立金の高さをどう見るか
「高いと売れない」と言われる理由は、買主の予算の組み方にあります。買主の種類によって、修繕積立金の見え方は違います。
売主は、自分の棟の買主がどの層かを想定して、伝え方を変えます。
実需の買主は月額合計で予算を組む
自分で住む買主は、住宅ローンの返済額に管理費と修繕積立金を足した「月額合計」で予算を組みます。修繕積立金が同じ条件の棟より月5,000円高ければ、年6万円、10年で60万円の差です。買主はこの差を物件価格に置き換えて、「その分安くしてほしい」と考えます。
買主の月額計算(仮定の例)
ローン返済 10万円 + 管理費 1.5万円 + 修繕積立金 1.8万円 = 月13.3万円
修繕積立金が1.3万円の棟なら月12.8万円。差は月5,000円、10年で60万円。
買主はこの60万円を、価格交渉の材料にする。
住宅ローンの審査でも、一般に、管理費と修繕積立金を含めた月々の支払いで返済の余力を見る金融機関があります。扱いは金融機関ごとに違うので、買主の借入可能額がどこまで縮むかは、買主側の事情として構えておきます。
売主にとっての要点は、買主が「月額の差×10年」程度の額を交渉の材料にする、という規模感の目安です。それ以上の値引きを求められたら、根拠を聞き返す余地があります。
投資家は利回りの目減りで見る
投資家は、修繕積立金を利回りの目減りとして見ます。管理費と修繕積立金はオーナーの負担で、一般に、家賃に上乗せするのは難しいからです。
表面利回りと実質利回り(仮定の例)
価格2,000万円・家賃 月10万円 → 表面利回り 年120万円÷2,000万円 = 6.0%
管理費+修繕積立金 月3.3万円 → 年39.6万円
実質利回り (120万円−39.6万円)÷2,000万円 = 約4.0%
月額が高いほど、表面と実質の差が開く。
投資家に売る場合は、実質利回りを先に提示し、長期の安定性を伝えます。投資家は一時金や値上げのリスクを嫌うので、積立残高が十分な棟は、月額が高くても評価されます。
買主が本当に嫌うのは今後の値上げと積立不足
買主が修繕積立金で本当に警戒しているのは、「今の額が高い」ことより、「これから上がる」「足りていない」ことです。今の額が高くても、それが必要額で、残高が十分なら、買主は「将来の負担が読める棟」と受け止めます。
逆に、今の額が安くても、積立不足で大規模修繕の前に一時金や値上げが待っている棟は、買主にとって最も避けたい物件です。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが36.6%、不足がある割合が20%超のマンションが11.7%ありました。
買主側の仲介会社は、重要事項調査報告書で積立残高・滞納額・変更予定を見て、この判断をします。売主は、自分の棟が「高いが十分」なのか「高いのに不足」なのかを、報告書と長期修繕計画で先に把握しておきます。
出典: 国土交通省 令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕
積立残高が十分なら高くても評価される
修繕積立金の高さは、積立残高とセットで評価されます。高い月額を長年集めてきた棟は、残高も積み上がっています。長期修繕計画で、次の大規模修繕の費用を残高でまかなえる見通しなら、買主にとって「一時金の心配がない棟」です。
確かめる資料は3つです。
- 長期修繕計画の残高推移(工事の年にマイナスにならないか)
- 重要事項調査報告書の修繕積立金会計の繰越額と借入金残高
- 直近の大規模修繕の実施年と工事内容
この3つが揃っていれば、「月額は高いが、その分だけ建物に積み上がっている」と説明できます。買主にとっての安心材料は、月額の安さより、将来の見通しが立つことです。
修繕積立金が高いマンションを売る方法
高い理由が分かり、買主の見方が分かれば、売り方は決まります。
鍵は、高い理由と残高を書類で示し、価格を成約事例で決め、値引き要求には目安で返すことです。
高い理由と積立残高を書類で示す
修繕積立金が高い棟を売るときは、次の書類を手元に揃え、買主に見せられる状態にします。
- 長期修繕計画書(積立額と残高の推移)
- 重要事項調査報告書(残高・滞納・借入・変更予定・積立方式)
- 大規模修繕の履歴(実施年と工事内容)
- 管理組合の収支報告(管理費の内訳)
- 駐車場の台数・機種・収支(機械式の場合)
これらに、㎡単価の計算と、ガイドライン・レインズの目安との比較を1枚にまとめて添えると、買主は「高い理由」と「その分の価値」を一度に理解できます。
仲介会社に任せきりにせず、売主が自分で1枚にまとめるのが、他の売主と差がつく準備です。仲介会社の担当者も、この1枚があれば買主に説明しやすくなります。
価格は同じ棟や同規模の成約事例で決める
売り出し価格は、修繕積立金が高いことを理由に最初から下げる必要は薄いです。参考にするのは、同じ棟の成約事例と、近隣の同じ築年・同じ規模の棟の成約事例です。同じ棟の事例なら、修繕積立金の水準は同じなので、その影響はすでに価格に織り込まれています。
近隣の棟と比べる場合は、月額の差を価格に置き換える幅を自分で計算しておきます。月5,000円の差なら10年で60万円が目安で、それ以上の差を価格につける根拠は薄くなります。
査定額を受け取ったら、「修繕積立金の高さをいくら引いていますか」と聞いてみましょう。根拠が感覚的なものであれば、目安と実勢を示して見直しを求めます。
値引き要求には目安と実勢で返す
買主から「修繕積立金が高いので値引きを」と言われたときの返し方を用意しておきます。
値引き要求への返し方の例(先ほどの仮定の例の棟=修繕積立金257円/㎡・月の場合)
- 「㎡単価に直すと257円で、国土交通省のガイドラインの目安(5,000㎡以上〜10,000㎡未満の平均252円・幅170〜320円)の中にあります」
- 「築11〜20年の首都圏の実勢は231円、50戸未満の棟の平均は245円で、この棟はその近辺です」
- 「管理費との合計は471円で、50戸未満の平均484円より低い水準です」
- 「積立残高は次の大規模修繕の費用を上回っていて、報告書でも一時金の予定は『無』です」
数字で返せると、買主も仲介会社も「高い」を値引きの理由にしにくくなります。逆に、感覚で「そんなに高くない」と返しても、交渉は動きにくいです。
値引きに応じる場合も、「月額の差×10年」の範囲に収めます。それを超える要求には、根拠を聞き返します。
投資家には実質利回りで提示する
修繕積立金が高い棟は、実需の買主だけに絞ると買主の母数が減ります。投資家にも広告を出すと、母数が戻ります。
投資家向けの提示では、家賃相場から表面利回りを出し、管理費と修繕積立金を引いた実質利回りを先に示します。高い月額を隠さず、その代わりに「積立残高が十分で一時金の予定がない」「大規模修繕済みで当面の工事がない」という長期の安定を伝えます。
賃貸中の部屋なら、入居者が付いたまま「オーナーチェンジ」として売れます。仲介会社に、収益物件としての広告も出してもらいましょう。
売れないときは価格・会社・買取の順で見直す
売り出して3か月ほど(目安)反響がない場合は、次の順で見直します。
| 順序 | 見直すこと | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 価格 | 成約事例と比べ、月額差×10年の範囲で調整 |
| 2 | 仲介会社 | 棟の取引実績があるか、投資家にも広告しているか |
| 3 | 買取 | 仲介の想定価格と並べて、急ぎ度に見合うか |
最初に価格を大きく下げるのは避けます。修繕積立金が理由で反響がないのか、価格そのものが相場より高いのかを、仲介会社に反響の中身を聞いて切り分けます。
仲介会社の変更は、「この棟を扱ったことがあるか」「投資家向けの販路があるか」で選びます。買取は最後の手段で、仲介で売れた場合の想定価格と並べてから決めます。
まとめ:高いかは㎡単価で決まり、理由と残高を書類で示せる棟は高いままで売れる
いちばん重いのは、「高い」の判定を月額でなく㎡単価で下すことです。修繕積立金 月18,000円は、70㎡なら約257円/㎡・月で、国土交通省のガイドラインの目安(20階未満・5,000㎡以上〜10,000㎡未満の平均252円、幅170〜320円)の中にあります。レインズの2025年度の首都圏実勢も㎡当たり217円、管理費との合計434円で、築年と規模の区分ごとに幅があります。この物差しに当てずに下された「高いですね」の一言は、値引きの根拠としては弱いままです。
次の一歩は、自分の月額を専有面積で割って㎡単価を出し、重要事項調査報告書で積立残高・滞納・変更予定を確かめることです。ここを飛ばして売り出すと、買主側の仲介会社が報告書を見た時点で交渉の主導権が移り、根拠のない値引きに応じる流れになります。先に数字を持っていれば、「幅の中にあります」と自分の言葉で返せます。
そのうえで、管理費との合計を実勢の幅と比べ、高い理由が構造によるものか、サービスの対価かを言えるようにしておきます。住み替えのトビラでは、修繕積立金が高いマンションの売り方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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