修繕積立基金とは|修繕積立金との違いと相場・資金計画への影響

修繕積立基金とは|修繕積立金との違いと相場・資金計画への影響

新築マンションを買うときは、毎月の積立のほかに、引き渡しのときだけまとめて払うお金を用意します。

このお金は額の大小では負担の重さを測れないので、月々払う分と将来の増え方まで足した総額で確かめます。

本記事では、一度だけ払う分と毎月払う分がどう違うのかを、買い替えの資金への響き方まで含めて説明します。

修繕積立基金とは?新築マンションの引渡時に払う一時金

修繕積立基金は、新築マンションを買うときにかぎって、引き渡し時に一度だけまとめて払う一時金です。

この章では、その正体と、なぜ新築のときにかぎって一括で必要になるのかを押さえます。毎月の修繕積立金との違いは次の章で整理するので、ここでは基金そのものに絞って見ていきます。

引渡時に一度だけ支払う新築マンションの一時金

修繕積立基金は、新築マンションの引き渡し時に一括で払う初期費用です。

支払うのは、売買契約を結んだあと、購入手続きの最終盤にあたる引き渡し・決済の場面です。毎月コツコツ積み立てるお金ではなく、この一回きりで完結します。

大きな特徴は、新築マンションでだけ発生する点です。同じマンションでも中古で買う場合には求められません。すでに前の所有者のもとで積み立てが進んでいるためで、この違いは買い替えの検討でつまずきやすいところです。

販売資料や重要事項説明書では、「修繕積立準備金」「修繕積立一時金」といった別の名前で書かれることもあります。呼び名は違っても、引き渡し時にまとめて払う一時金という中身は同じものです。

新築の購入時に一括で集める理由

新築は入居の時点で修繕のための積立がまだ積み上がっておらず、初期の修繕原資を補うために、引き渡し時に基金でまとめて先に確保します。

新築の分譲マンションは、売り出しやすさから、当初の毎月の積立金を低めに設定して販売されることが多くあります。ところが、そのままでは最初の大規模修繕に向けて原資が足りなくなりがちです。大規模修繕工事の周期は、国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインで「外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期は部材や工事の仕様等により異なりますが、一般的に12〜15年程度」とされています。この不足を前もって埋めるのが、基金の役目です。

引き渡し時に集めた基金は、管理組合がまとめて保有し、将来の修繕にあてる原資として積み立てられます。毎月の積立金が十分にたまるまでの、いわば初期の備えを先に厚くしておく仕組みです。

基金の額は、長期修繕計画をもとに算定されます。同じガイドラインは、計画期間を「30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上」と定めており、新築時については「経年が30年程度において実施が見込まれる昇降機設備の取替えなどを含めた期間以上」としています。つまり基金は、新築から30年程度の修繕を見込んだ計画を土台に決められているということです。なお長期修繕計画は5年程度ごとに見直すのが原則で、見直しにはおおむね1〜2年かかります。自分のマンションの計画期間や次の大規模修繕の予定は、長期修繕計画書で確かめられます。

出典: 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月7日改定)

中古マンションで基金が要らないのも、同じ理屈です。すでに何年も積み立てが続き、修繕の原資がある程度たまっているため、あらためて一時金を集める必要がないからです。

マンションから新築マンションに買い替え|資金と段取り マンションから新築マンションに買い替え|売却と入居の段取り

修繕積立基金と毎月の修繕積立金の違い

両者は別物です。基金は入居時に一括で一度きり、積立金は入居後に毎月ずっと払い続けます。目的は地続きでも、担う局面が違います。

混同しやすい三つのお金を、まず表で並べます。

項目支払うタイミング回数主な使途
管理費入居後・毎月継続日常の管理・清掃・点検
修繕積立金入居後・毎月継続将来の大規模修繕
修繕積立基金引き渡し時一度きり初期の修繕原資

管理費は日常の管理にあてる別のお金で、修繕とは目的が違います。ここからは、基金と積立金の二つに絞って違いを見ていきます。

一括で払う基金と毎月払う積立金(支払い方の違い)

基金は引き渡し時に一括で一度きり、積立金は入居後に毎月ずっと払い続けます。

すでに今のマンションで毎月の積立金を払っている方にとって、いちばんの違いは「回数」と「タイミング」です。積立金は入居しているあいだ、毎月休みなく続きます。一方の基金は引き渡しの一度きりで、その後に基金として請求されることはありません。

買い替えでは、この二つが別々にのしかかります。新居の引き渡し時に基金をまとめて払い、入居が始まれば今度は毎月の積立金が新たにスタートします。一時金と毎月の負担は、時期も性質も別のものとして分けて考えると整理しやすくなります。

目的は同じ大規模修繕、担う局面が異なる

どちらも将来の大規模修繕にあてる原資という目的は同じで、だからこそ混同されますが、基金は入居時の初期の備え、積立金は入居後の継続的な積立という、担う局面が違います。

基金と積立金がまぎらわしいのは、行き着く先が同じだからです。集めたお金はどちらも、12〜15年程度の周期でめぐってくる大規模修繕という同じ目的に使われます。ゴールが一緒なので、つい同じものに見えてしまいます。

違いは、その原資をいつ・どのように用意するかという局面にあります。基金は入居のスタート時点でまとめて備えるお金、積立金は暮らしながら少しずつ積み上げるお金です。スタートの備えと、継続の積み上げ。この二段構えで初期からの修繕原資をまかなうのが、新築マンションの一般的なかたちです。

修繕積立金の値上げで住み替え?生涯コストで考える 修繕積立金の値上げで住み替え(買い替え)?生涯コストで考える

修繕積立基金の相場は?金額の目安と変わる理由

相場の目安はありますが幅が大きく、金額だけで物件の負担は測れません。

ここでは、金額のおおよその目安、額を左右する要素、そして額の見方の注意点を順に見ていきます。

修繕積立基金の相場の目安

修繕積立基金には公的な統計があります。国土交通省の令和5年度マンション総合調査に「新築時の修繕積立基金」の項目があり、管理組合1組合あたりの総額が公表されています。ただし1戸あたりの額は公表されていません。読み方に注意が要るのはこの点です。

全体の平均は1組合あたり1,901万円(回答1,522組合)です。ただしこの平均には、基金が「0円」と回答した管理組合が20.8%、「不明」が34.4%含まれています。総戸数の規模別に見ると次のとおりで、規模が大きいほど総額も大きくなります。

総戸数基金の総額(1組合あたり平均)
20戸以下341万円
21〜30戸391万円
31〜50戸846万円
51〜75戸1,482万円
76〜100戸1,665万円
101〜150戸2,185万円
151〜200戸2,693万円
201〜300戸4,973万円
301〜500戸4,947万円
501戸以上13,593万円

この総額をそのまま「相場」として受け取らないでください。1戸あたりに直すには割り算が要ります。各階級の総額平均を、その階級の中央値にあたる戸数で割ると、おおむね15〜24万円/戸になります(21〜30戸なら391万円÷25戸で15.6万円、51〜75戸なら1,482万円÷63戸で23.5万円という具合です)。これは公表値ではなく、こちらで割り戻した概算です。

ただし、この概算は下限側の推計です。基金が0円の管理組合20.8%を含んだ平均を割っているためで、実際に基金を徴収したマンションに限れば1戸あたりの水準は上振れします。また、調査の対象は既存マンションの管理組合(完成年次の古い物件を多く含む)であり、いま新築を買う方が払う額とは母集団が違います。完成年次が新しいほど総額は大きく、令和2年以降完成の物件では1組合あたり5,686万円でした。

出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」概要編同 データ編

金額を左右する要素(物件規模・専有面積・構造)

基金の額は、物件の規模・専有面積・構造・立地などで動きます。

  • 専有面積が広い住戸ほど高くなりやすい
  • タワー型など構造や共用設備が手厚いほど上がりやすい
  • 総戸数が少ないほど、一戸あたりの負担が重くなりやすい

大きく重い建物ほど将来の修繕費がかさむため、その原資となる基金も連動して大きくなります。同じマンション内でも、広い住戸ほど負担が増える配分がとられるのが通常です。

専有面積は、基金の額に加えて、毎月の修繕積立金の水準にも関わります。こちらには公的な目安があり、国土交通省のガイドライン(令和6年6月改定)が、地上階数と建築延床面積で5つに分けて示しています(機械式駐車場分を除く)。

地上階数/建築延床面積事例の3分の2が含まれる幅平均値
【20階未満】5,000㎡未満235〜430円/㎡・月335円/㎡・月
【20階未満】5,000㎡以上〜10,000㎡未満170〜320円/㎡・月252円/㎡・月
【20階未満】10,000㎡以上〜20,000㎡未満200〜330円/㎡・月271円/㎡・月
【20階未満】20,000㎡以上190〜325円/㎡・月255円/㎡・月
【20階以上】240〜410円/㎡・月338円/㎡・月

自分の物件がどの区分かを先に確かめてください。335円は「20階未満・5,000㎡未満」の1区分の値で、20階以上(338円)や5,000〜10,000㎡(252円)の物件に当てると、方向の違う誤りが出ます。また、平均値だけでなく「事例の3分の2が含まれる幅」も併せて見てください。ガイドライン自身が「傾向にはばらつきが大きいため」この幅を示していると書き、さらに「修繕積立金の額が、この幅に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断されることになるわけではありません」と断っています。

機械式駐車場がある場合は加算があります(加算額=1台あたり月額の修繕工事費 × 台数 ÷ 総専有床面積。たとえば3段昇降式なら1台あたり月5,840円)。

出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)

出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改訂)

基金の額だけで負担の大きさは判断できない

基金が安いからお得とは限らず、毎月の積立金や将来の値上げ計画まで合わせて見る必要があります。

販売時の見栄えをよくするために、基金や当初の月額を低めに抑えた設計もあります。入口の負担が軽くても、入居後の積立金が数年ごとに引き上げられていけば、長い目で見た負担はむしろ重くなることがあります。

当初の月額を低く設定し、計画的に増やしていく「段階増額方式」をとる物件があります。どれくらいの割合で採られているかを集計した統計は確認できていませんが、月額の実態からはその形跡が読み取れます。令和5年度マンション総合調査の月/戸あたりの修繕積立金は、完成年次が平成7〜平成16年の物件で14,317円と最も高く、平成27年以降の物件では11,405円と最も低いという結果でした。新しい物件ほど月額が低く、年数とともに上がっていく形です。「築古ほど高い」と単純に言えるわけではない点にもご注意ください。

今の基金と月額だけを見て安いと感じても、10年後・20年後にいくらまで上がる計画なのかを、長期修繕計画で確かめることが欠かせません。

出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」概要編同 データ編

見るべきは、入口の一時金の大小ではなく、入居後の数十年でならした総額です。基金・毎月の積立金・将来の増額予定をひとまとめにして、「この物件を持ち続けると修繕にいくらかかるのか」で比べると、金額の意味を取り違えずにすみます。

修繕積立基金が買い替えの資金計画に与える影響

基金は引き渡し時の諸費用に上乗せされ、買い替えの自己資金の計画に直接ひびいてきます。

ここでは、必要になる現金、住宅ローンに含められるか、そして住み替えならではの見込み方を順に見ていきます。

引渡時にまとまった現金が必要になる

基金は諸費用の一つとして、引き渡しのときにまとまった現金で必要になります。

物件の代金とは別に、登記費用や火災保険料などの諸費用と並んで、引き渡し・決済の場面で一括して出ていきます。その諸費用がどのくらいかも、あわせて見ておいてください。

購入時の費用のうち、額が売買価格から決まるのは、仲介手数料・印紙税・所有権移転登記の司法書士報酬・抵当権設定登記の司法書士報酬の4つです。この4つを積み上げると、売買価格3,000万円で116.54万円(売買価格の3.88%)、5,000万円で182.54万円(3.65%)、1,000万円で50.04万円(5.00%)となり、価格が上がるほど比率は下がります。なお司法書士報酬の2つは日本司法書士会連合会のアンケートの全国平均で、固定資産評価額の合計1,000万円・債権額1,000万円という設例に対する額です。法定額ではありません。

この積み上げには、登録免許税・不動産取得税・火災保険料・住宅ローンの事務手数料と保証料、そして修繕積立基金を含めていません。登録免許税と不動産取得税は課税の元になる金額が固定資産税評価額で、売買価格からは決まらないためです(金額を出すには、固定資産税の課税明細書か固定資産評価証明書で自分の評価額を確かめるか、仲介する不動産会社に聞いてください)。火災保険料・事務手数料・保証料は保険会社と金融機関ごとに違うため見積書で、基金は物件ごとに違うため重要事項説明書で確かめます。

住宅ローンでまかなえるのは基本的に物件価格が中心で、こうした諸費用は手元の自己資金から用意するのが通常です。基金の分は、頭金とは別枠で手元の計画に組み込んでおいてください。

出典: 国土交通省告示第1552号国税庁「No.7108 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」結果

住み替え(買い替え)では、今の家の売却代金が入るタイミングと、新居の支払いのタイミングがずれることもあります。売却のお金が入る前に基金や諸費用の支払いが来る場合は、その間をつなぐ資金をどう用意するかも、早めに考えておくと安心です。

住み替えの頭金はいくら必要?自己資金をいくら残すかで決める 住み替え(買い替え)の頭金はいくら必要?自己資金をいくら残すかで決める

住宅ローンに含められるか

住宅ローンの諸費用枠に含められる場合もありますが、扱いは金融機関や商品によって異なります。

民間の住宅ローンには、物件価格に加えて諸費用も借り入れできる商品があり、その枠で基金をまかなえるケースもあります。長期固定のフラット35でも、一定の諸費用を融資の対象に含められる場合があります。ただし、何がどこまで対象になるかは商品ごとに違うため、利用を考えるローンの条件を個別に確かめることが欠かせません。

注意したいのは、諸費用を借り入れに回すと、その分だけ借入額が増え、総返済額も膨らむ点です。手元の現金で払うのか、借り入れに含めるのかは、当面の資金繰りと長い返済の負担を見比べて決めると、無理のない計画になります。

住み替えでは戻らない積立金と新たな基金の両方を見込む

今の家で払ってきた修繕積立金は戻らず、新居では基金が別途要ります。買い替えでは、この両方を前提に資金計画を組みます。

マンションを売っても、これまで積み立ててきた修繕積立金は戻ってきません。積み立てたお金は個人ではなく管理組合のもので、売却時に清算して返してもらう性質のものではないからです。今の住まいに払い込んできた分は、いわば置いていくお金になります。

そのうえで、新居となる新築マンションでは、修繕積立基金を新たに払うことになります。つまり買い替えでは、戻らない過去の積立金と、これから要る新たな基金という二つの負担が重なります。基金は「すでに払ってきたお金の延長」ではなく、まったく新しい持ち出しとして、買い替え予算に必ず見込んでおくことが大切です。

あわせて考えたいのが、入居後の毎月の負担です。新居では基金を払ったうえで、管理費と修繕積立金を毎月払い続けます。売却で今の維持費から解放される一方、新居では新たな維持費が始まります。引き渡し時の一時金と、その後ずっと続く月々の負担、その両面を並べて見ておくと、買い替え後の家計を見通しやすくなります。

まとめ:修繕積立基金を将来の分まで足すなら、住み替えのトビラ

修繕積立基金の額が軽いか重いかは、月々払う分と将来の増え方まで足した総額で確かめます。入居のときの額だけで比べると、そのとき安く見えた建物のほうが、住み始めてからの支払いは多くなります。

確かめるには、引き渡しのときに一度だけ出ていく分を、毎月の負担と分けて数えます。ひとまとめにすると、手元の現金がいつ足りなくなるのかが見えません。

資金の計画を固める前に、一度だけ払う分がいくらかを売り主に尋ねておきましょう。住み替えのトビラでは、新築マンションを買うときの一時金も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。