マンションの売り時2026|成約単価は5月から下落中

マンションの売り時2026|成約単価は5月から下落中

「2026年もマンションは上がり続けるから売り時」という説明を、いくつも読んできたはずです。

ところが2026年8月の東日本レインズの速報では、首都圏の中古マンションの成約㎡単価は5月から4か月続けて下がり、在庫は6か月続けて増えています。

この記事では、2026年の市況がいまどこにいるのか、売り時と言われる4つの理由がどこまで生きているのか、年内に売り切るなら何月に何をするのかを、一次データの数字で順に見ていきます。

2026年のマンション市況の現在地

「上がり続ける」と書いた記事の多くは、2026年の初めに出たものです。

その後に公表された一次データは、違う向きを示しています。まず、いまどこにいるのかを数字で確かめます。

成約単価は2026年5月から下がり始めた

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が毎月出している首都圏の中古マンション市場の月例速報では、成約㎡単価は2020年5月から72か月連続で前年同月を上回っていました。2026年4月度の速報にも「20年5月から72ヶ月連続で上昇」と書かれています。

その連続上昇が、2026年5月に止まりました。

2026年8月度の速報では、成約㎡単価は81.60万円で前年同月比マイナス3.8%、4か月連続の下落です。前月比でも3.1%下がり、1990年10月の水準(83.50万円/㎡)を下回りました。

2026年8月度(首都圏・中古マンション)数値前年同月比
成約件数3,180件−10.5%(5か月連続減)
成約㎡単価81.60万円−3.8%(4か月連続下落)
成約価格5,129万円−2.8%(4か月連続下落)
在庫件数48,235件+8.2%(6か月連続増)

2026年の初めに書かれた記事が「上昇が続く」と書いていたのは、その時点では正しかったのです。ただ、いま判断に使う数字は、この8月のものです。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年4月度

売り出し価格と成約価格の差が開いている

成約単価が下がる一方で、売りに出される価格は上がり続けています。2026年の市況を読むうえで、ここがいちばん大切です。

同じ8月度の速報で、新規に登録された物件の㎡単価は116.81万円で前年比プラス21.5%、2024年5月から28か月連続の上昇です。在庫として残っている物件の㎡単価は119.36万円で、前年比プラス28.4%でした。

2026年8月度㎡単価前年同月比
成約した物件81.60万円−3.8%
新規に登録された物件116.81万円+21.5%
在庫として残っている物件119.36万円+28.4%

売り手が「このくらいで売れるはず」と出す価格と、買い手が実際に払う価格の差が、月を追うごとに広がっています。在庫が6か月続けて増えているのは、この差の中に入った物件が残っているからです。

つまり2026年は「価格が下がった年」というより、「売り手の希望と買い手の実勢が離れ始めた年」です。この見方を持っておくと、あとで出てくる値付けの判断が変わります。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

都心と郊外で件数と単価の動きが逆になっている

首都圏をひとまとめにした平均の裏で、地域ごとの動きは分かれています。8月度の地域別の数字を並べます。

地域(2026年8月度)成約件数の前年比成約㎡単価前年比
東京都区部−20.6%132.69万円−0.3%
東京都多摩−9.5%59.90万円+9.1%
神奈川県−4.3%60.08万円+2.0%
埼玉県+5.4%44.35万円+2.0%
千葉県+0.3%41.68万円+5.1%

都区部は単価がほぼ横ばいのまま、件数が2割減っています。速報は区部の成約㎡単価を「20年4月以来76ヶ月ぶりに下落」と書いています。価格は粘っているものの、その価格に付いてこられる買い手が減っている姿です。

一方で多摩や埼玉、千葉は、件数を保ちながら単価がまだ上がっています。都心で買えなくなった人が、外側へ動いているとも読めます。

自分の物件がどちらの側にいるかで、「売り時」の意味は変わります。平均の数字は市況の向きを知る材料にとどめ、自分の位置は同じ棟や同じ駅の直近の成約で確かめるのが基本です。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

2026年がマンションの売り時と言われる理由

成約単価が下がり始めたと聞いて、「もう遅いのか」と思った人もいるはずです。

それでも2026年が売り時と言われるのには、4つの理由があります。どれも本物の理由です。そして、どれも時間が経つほど弱くなります。

  • 成約単価は下がり始めても水準はまだ高い
  • 在庫が増えきる前のほうが比べられずに済む
  • 金利が上がる前に買いたい人が動いている
  • 住宅ローン減税の延長で中古の買い手が増えている

成約単価は下がり始めても水準はまだ高い

「下がり始めた」と「安くなった」は別です。

2026年8月の首都圏の成約㎡単価81.60万円は、上昇が始まった2020年5月の52.03万円と比べると、およそ1.57倍の水準にあります。

70㎡の物件で置き換えると、2020年5月の平均では約3,640万円、2026年8月の平均では約5,710万円です(どちらも首都圏平均の㎡単価に70をかけた目安の値です)。4か月続けて下がったとはいえ、6年前に買った人にとっては、まだ大きく上の位置にいます。

2020年より前に買った人ほど、この差は大きくなります。「下がり始めた」のニュースだけで諦める前に、自分が買った価格と今の成約価格の差を先に確かめるのが順番です。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2020年5月度

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

在庫が増えきる前のほうが比べられずに済む

在庫件数は2026年8月で48,235件、前年比プラス8.2%です。しかも速報には「増加率は拡大傾向に」と書かれています。増え方が速くなっている、という意味です。

買い手は同じ駅、同じ築年帯の物件を横に並べて比べます。在庫が増えるほど比べられる相手が増え、選ばれるためには価格を下げるか、条件で勝つかのどちらかになります。

これから売りに出る人より先に出るほど、比べられる相手が少ないうちに買い手と出会えます。「在庫が増えきる前」は、売り時と言われる理由の中でもとくに時間に縛られた理由です。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

金利が上がる前に買いたい人が動いている

日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導水準を「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げました。あわせて基準貸付利率も1.25%に変わっています。

住宅ローンの変動金利は、多くの銀行が4月と10月に基準となる金利を見直すとされています。6月の引き上げ分は2026年10月の見直しに反映され、新しい金利の適用は11月以降になると見られています。一部の銀行は9月に先行して引き上げたとも伝えられていますが、実際の時期と幅は銀行ごとに違うので、借りる銀行の公式の発表で確かめる必要があります。

次の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日に開かれます。買い手の立場で考えると、「上がる前に借りて、上がる前に決めたい」という動きが9月から10月に集まります。売り手にとって、この時期の買い手は決断が早く、価格交渉も浅くなりやすい相手です。

金利そのものの長い推移や、固定と変動のどちらを選ぶかという論点は、住宅ローン金利の推移と見通しをまとめた記事で扱っています。

出典: 日本銀行 金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日)

出典: 日本銀行 金融政策決定会合の日程

住宅ローン減税の延長で中古の買い手が増えている

買い手の側の制度も、2026年に変わりました。住宅ローン減税は令和8年度税制改正で延長され、入居日が2030年(令和12年)12月31日までなら対象になります。

既存住宅(中古)の借入限度額と控除期間は、住宅の性能で次のように分かれます。

既存住宅(中古)の区分借入限度額控除期間
認定長期優良住宅・低炭素住宅3,500万円13年
ZEH水準省エネ住宅3,500万円13年
省エネ基準適合住宅2,000万円13年
その他の住宅2,000万円10年

子育て世帯・若者夫婦世帯には上乗せがあり、認定住宅とZEH水準は4,500万円、省エネ基準適合住宅は3,000万円になります。控除率は期間中ずっと0.7%です。床面積の要件は40㎡以上で、合計所得金額が1,000万円を超える人と上乗せ措置を使う人は50㎡以上が必要です。

中古でも減税が使えると分かった買い手が増えるほど、中古の売り手には追い風になります。気をつけたいのは、自分の物件がこの4区分のどれに入るかで、買い手が受け取る控除の総額が変わる点です。この違いは最後の章で使います。

出典: 国土交通省 住宅ローン減税(令和8年度税制改正後)Q&A

出典: 国土交通省 住宅ローン減税

「2026年は売り時」という言葉の出どころ

この言葉は、査定を取りたい会社や、媒介契約を結びたい会社の側からもよく出てきます。理由そのものは、ここまで見たとおり本物です。ただ、どの理由も自分の棟に当てはめて初めて意味を持ちます。言葉だけを受け取って動く前に、次の章の原因と、自分の数字を見ておくのが安全です。

2026年の売り時を難しくしている原因

売り時と言われる理由の裏側には、同じ2026年に売却を難しくしている原因があります。

原因が分かると、値付けや動く時期で対処できる範囲が見えてきます。

  • 金利上昇で買い手の借入可能額が減る
  • 売りに出る数が成約の数より早く増えている
  • 近所の売り出し価格で値付けすると成約帯から外れる
  • 投機的な取引を抑える税制の検討が始まった

金利上昇で買い手の借入可能額が減る

買い手の多くは、毎月の返済額から逆算して借りられる金額を決めます。金利が上がると、同じ返済額で借りられる金額が減ります。これが売り手の価格に直接はね返ります。

モデルケースで計算します。仮定値は、毎月の返済額13万円、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス払いなしです。金利も下の表の値を仮定として置いたもので、実際に借りられる金額は銀行の審査で決まります。

変動金利(年・仮定値)借りられる金額(概算)
0.5%約5,008万円
0.75%約4,801万円
1.0%約4,605万円
1.25%約4,420万円
1.5%約4,246万円

金利が0.5%から1.25%に上がると、同じ月13万円の返済でも、借りられる金額は約590万円減ります。買い手の予算がこの分だけ小さくなるので、売り手の価格には、その分の指値が入りやすくなります。

自分の物件の価格帯で置き換えるなら、次の式で確かめられます。

借りられる金額=毎月返済額×{1−(1+月利)^(−返済回数)}÷月利 (月利=年利÷12、返済回数=年数×12)

自分の買い手が使いそうな金利は、想定する銀行が公表している最新の金利を当てはめて計算します。

売りに出る数が成約の数より早く増えている

2026年8月度の首都圏では、新規に登録された物件が15,627件で前年比プラス9.7%、3か月連続の増加でした。同じ月の成約は3,180件で前年比マイナス10.5%です。

売りに出る数が増え、買われる数が減っています。この2つが同時に起きているので、在庫は6か月続けて積み上がっています。

売り手にとっての意味は、「自分の物件を選んでもらう競争が、月を追うごとに厳しくなる」です。競争が厳しい局面では、最初の1か月の反響がその後の売れ行きをほぼ決めます。出し方を誤ると、在庫の山の中に埋もれます。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

近所の売り出し価格で値付けすると成約帯から外れる

値付けのときに多くの人が参考にするのは、不動産ポータルに出ている近所の売り出し価格です。2026年は、この方法が危ない年です。

在庫の㎡単価が119.36万円、成約の㎡単価が81.60万円。首都圏平均で見ても、売りに出ている価格と実際に売れる価格には大きな開きがあります。近所の売り出し価格を基準にすると、成約できる価格帯の外側に自分の物件を置くことになります。

いちばん近い参考は、同じ棟や同じ駅で直近3か月に成約した価格です。成約価格は仲介会社に頼めば、レインズの成約事例として見せてもらえます。売り出し価格は「売り手の希望」、成約価格は「買い手が払った額」と分けて見るだけで、値付けの精度は大きく変わります。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

投機的な取引を抑える税制の検討が始まった

国土交通省は2026年8月28日に「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」を公表しました。その中の「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」に、次の一文が入っています。

都心の大規模マンションを中心とした近年の新築マンション価格の高騰に対応するため、実需に基づかない投機的取引を抑制するための方策について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる

書かれている対象は新築マンションの短期転売で、税目や税率はこれから決まります。方向性が定まるのは年末の税制改正大綱です。

中古を売る人に直接かかる税とは別の話です。ただ、都心の価格を押し上げてきた投資目的の買い手が慎重になれば、都心の中古の買い手の層も変わる可能性があります。都区部で件数が2割減っている動きと合わせて、「投資の買い手に頼る値付け」は2026年には通りにくくなったと考えておくのが無難です。

出典: 国土交通省 令和9年度国土交通省税制改正要望事項

2026年に売るか待つかを分ける判断基準

市況の向きは分かりました。それでも、売るか待つかは市況の予想で決めるものではなく、自分の数字で決めるものです。

判断に使う基準は4つです。

  • 同じ棟の直近成約と在庫の件数で自分の位置を確かめる
  • 残債を返して住み替えの頭金が残るかを計算する
  • 住み替え先のローン金利も一緒に上がると考える
  • 1年待つ費用と期待する値上がりを比べる

同じ棟の直近成約と在庫の件数で自分の位置を確かめる

首都圏平均の成約㎡単価は、市況の向きを知る数字です。自分の物件の値段を決めるのは、同じ棟か同じ駅の、直近の成約価格です。

確かめる順番は3つです。

  1. 仲介会社に、同じ棟の直近1年の成約事例を出してもらう
  2. いま同じ棟や同じ駅で売りに出ている物件の数と価格を見る
  3. その売り出し価格が、直近の成約価格より高いか低いかを見る

同じ棟で在庫が2件以上出ていて、しかも直近成約より高い価格で並んでいるなら、待つほど比べられる相手が増えます。逆に在庫がなく、直近成約が自分の想定より高いなら、急ぐ理由は薄くなります。「売り時」は首都圏で決まるのではなく、自分の棟で決まります。

築年数の帯ごとに売り時がどう変わるかは、マンションの売り時と築年数をまとめた記事で扱っています。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

残債を返して住み替えの頭金が残るかを計算する

売却で受け取る金額から、ローンの残債と諸費用を引いて、住み替え先の頭金が残るかを先に計算します。

この計算を飛ばして「売り時かどうか」だけを考えると、いざ売れたときに次の家が買えない、という事態が起きます。

計算に入れる項目は6つです。売却価格の想定(直近成約を基準にした額)、ローンの残債(金融機関の残高証明で確認)、仲介手数料、抵当権抹消などの登記費用、印紙税、引っ越し費用です。売却益が出る場合は譲渡所得への課税も差し引きます。所有期間5年・10年といった税率の節目や、住まなくなってからの期限は、マンションの売り時の全体をまとめた記事で扱っています。

2026年に特有なのは、売却価格の想定を「4か月連続下落」の後の成約価格で置くところです。半年前の査定額をそのまま使うと、手取りを多く見積もりすぎます。

住み替え先のローン金利も一緒に上がると考える

売る側の判断だけを見ていると、「もう少し待てば戻るかもしれない」と思えてきます。ところが住み替えでは、買う側にも同じ金利がかかります。

2026年10月に変動金利が見直されれば、新しく借りる人の金利も上がります。売る時期を1年遅らせて売却価格が同じだったとしても、住み替え先のローンの金利が0.25%上がれば、35年の総返済額はその分だけ増えます。

たとえば4,000万円を35年・元利均等で借りる場合、金利が1.0%から1.25%に上がると、毎月の返済額は112,914円から117,635円へ約4,700円増え、総返済額は約4,742万円から約4,941万円へ約200万円増える計算です。借入額・期間・金利はいずれも仮定値で、実際の返済額は借りる銀行の条件で変わります。

住み替えの判断は、売却価格の増減と、購入側の金利の増減を同じ表に載せて決めます。片方だけを見ると、答えが逆になることがあります。

1年待つ費用と期待する値上がりを比べる

「待つ」にも費用がかかります。持っているだけでかかる費用を1年分書き出して、期待する値上がり幅と比べます。

待つ間にかかる費用(1年分)自分の額
管理費
修繕積立金
住宅ローンの利息(変動なら上がる可能性)
固定資産税・都市計画税
合計

たとえば管理費と修繕積立金で月3万円、ローン利息が年40万円、固定資産税が年12万円なら、1年待つ費用は約88万円です。この3つはいずれも仮定値なので、自分の通帳と納税通知書の額に置き換えて合計します。そのうえで、この額を上回る値上がりを、成約単価が4か月続けて下がっている局面で期待できるかを考えます。

「待てば上がる」と言えるのは、上がる根拠を自分の言葉で言えるときだけです。根拠が言えないなら、それは判断というより願望に近いと考えておくのが安全です。

2026年中に売り切るための進め方

2026年のうちに売ると決めたなら、残りの月数は限られています。

市況の向きを踏まえた進め方を、時間の順に並べます。

  • 年内に引き渡すなら9〜10月の売り出しが最後になる
  • 売り出し価格は在庫の単価ではなく成約の単価から決める
  • 変動金利が改定される前の買い手に内覧を集める
  • 省エネ基準の証明で買い手の減税枠を広げる

年内に引き渡すなら9〜10月の売り出しが最後になる

東日本レインズの2025年の年報では、首都圏の中古マンションが登録から成約に至るまでの平均日数は82.5日でした。約3か月です。成約したあと、買い手のローン審査と決済、引き渡しまでに1〜2か月かかります。

段階目安の期間
査定・媒介契約・売り出し準備2〜4週間
売り出しから成約まで約3か月(2025年平均82.5日)
契約から決済・引き渡しまで1〜2か月

逆算すると、12月中に引き渡すには、遅くとも9月から10月の初めには売り出している必要があります。それより遅くなると、引き渡しは年明けにずれます。

年内にこだわる理由があるなら、たとえば住み替え先の入居日が決まっている、住まなくなって3年目の年末が近い、といった事情です。事情がないなら、無理に年内に詰めるより、1〜3月の買い手が増える時期に成約を合わせる進め方もあります。

出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2025年)

売り出し価格は在庫の単価ではなく成約の単価から決める

2026年の在庫増局面で、いちばん差がつくのが値付けです。基準は在庫の㎡単価ではなく、成約の㎡単価に置きます。

進め方は3段階です。

  1. 同じ棟や同じ駅の直近3か月の成約㎡単価を仲介会社に出してもらい、自分の専有面積をかける
  2. その額から、売り出しから成約までに動く値引き幅を見込む
  3. 上限と下限を決めて、どこまでなら下げるかを先に決めておく

首都圏平均では、新規登録価格6,751万円に対して成約価格5,129万円と、大きな開きがあります。2の値引き幅は、自分の棟の「売り出し価格と成約価格の差」を過去の事例から拾うのがいちばん近いです。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

「高く出して様子を見ましょう」と言われたら

この提案は、媒介契約を結びたい側の提案であることも多いです。断るより、条件を付けます。たとえば「最初の2週間で内覧が3件なければ価格を見直す」と決め、反響の件数と見直しの日付を書面に残します。在庫が増えている年は、最初の1か月で成約帯にいるかどうかが、その後の売れ行きを決めます。

変動金利が改定される前の買い手に内覧を集める

2026年10月の変動金利の見直しの前は、買い手の動きが集まる時期です。「借りられる金額が減る前に決めたい」買い手は決断が早く、価格の交渉も浅くなりやすい相手です。

この時期を狙うなら、内覧の受け入れを9月から10月に集中させます。売り出し前に終えておく準備は、次の3つです。

  • 週末の内覧枠を多めに開ける
  • 写真と間取り図を先に整える
  • 管理費と修繕積立金の額を最初から開示する

買い手のローン審査には、金融機関によって事前審査で1週間前後、本審査で2〜3週間かかります。10月の改定前に融資を実行したい買い手は、9月中に契約を決めたいと考えます。9月17日・18日の金融政策決定会合の結果次第では、この動きがさらに前に寄ります。売り手が9月中に契約できる準備を整えておくと、この層を逃さずに済みます。

出典: 日本銀行 金融政策決定会合の日程

省エネ基準の証明で買い手の減税枠を広げる

住宅ローン減税の既存住宅は、認定長期優良住宅・低炭素住宅とZEH水準省エネ住宅が借入限度額3,500万円・控除期間13年、省エネ基準適合住宅が2,000万円・13年、その他の住宅が2,000万円・10年に分かれます。自分の物件がどの区分に入るかで、買い手が受けられる控除の総額が変わります。

その他の住宅と省エネ基準適合住宅では、借入限度額はどちらも2,000万円ですが、控除期間が10年と13年で3年違います。控除率0.7%で限度額いっぱいまで借りた場合、この3年の差は最大で約42万円です。子育て世帯・若者夫婦世帯なら限度額そのものが3,000万円へ上がり、差はさらに開きます。

区分を証明する書類には、建設住宅性能評価書や住宅省エネルギー性能証明書などがあります。分譲時の資料や管理組合の保管書類に、住宅性能評価書があるかを先に確かめます。2000年代以降の分譲マンションには、設計・建設住宅性能評価を取っているものが一定数あります。

証明があれば、買い手は「その他の住宅」の枠ではなく、省エネ基準適合住宅の枠で減税を受けられます。買い手の側の手取りが増える材料なので、売り出しの資料に「住宅性能評価書あり」と書けるだけで、同じ価格でも選ばれやすくなります。証明が手元にないときは、仲介会社を通じて取得の可否を確かめます。

出典: 国土交通省 住宅ローン減税(令和8年度税制改正後)Q&A

まとめ:2026年の売り時は成約帯で出せるかで決まる

2026年のいちばん重い答えは、「価格が下がったかどうか」より「売り手の希望価格と買い手が払う価格が離れた」ことです。首都圏の成約㎡単価は81.60万円まで下がった一方で、在庫の㎡単価は119.36万円まで上がりました。この差の中に値付けを置いた物件が、48,235件の在庫として積み上がっています。

次の一歩は、同じ棟か同じ駅の直近3か月の成約価格を仲介会社に出してもらい、そこに自分の専有面積をかけて上限と下限を決めることです。この一歩を飛ばして近所の売り出し価格に合わせると、最初の1か月の反響が取れないまま在庫の側へ回り、値下げを重ねることになります。

そのうえで、自分の物件が住宅ローン減税のどの区分に入るか、住み替え先のローンが10月以降にいくらになるかを、今月のうちに確かめてみてください。住み替えのトビラでは、2026年の市況データと金利・制度のカレンダーから見た売り時の判断も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。