専任媒介で売れない原因|3か月の目安と会社側か価格側かの見分け方

専任媒介で売れない原因|3か月の目安と会社側か価格側かの見分け方

専任媒介で売り出して2か月。内見が数件あったきりで、会社からは「価格を下げましょう」と言われた。本当に価格の問題なのか、会社が動いていないだけなのか。ここで判断に迷う人は多いはずです。

先に答えを書きます。首都圏の中古マンションは、売り出しから3か月以内に成約するのが約半数(2025年・東京カンテイ)で、3か月で売れなかったこと自体は半数の売主が通る状態です。ただし売れない期間が延びるほど値下げ幅は広がり、8か月まで長引いた事例では10%を超えます。原因は会社側・価格側・物件側に分かれ、会社側かどうかは業務報告の中身・売主専用画面のステータス・ポータルの掲載という「義務の履行状況」で見分けられます。

この記事では、売れないと判断する期間の目安、専任にしたのに売れない5つの原因、会社側かを見分ける4つの確認手順、そして会社側・価格側それぞれの対処を順に見ていきます。

専任媒介で売れないと判断する期間の目安

専任媒介で売り出したのに反応が薄いとき、最初に確かめたいのは「自分の状況は本当に異常なのか」です。首都圏の中古マンションが売り出しから成約までにかかる期間を、統計で見ます。

売却期間成約の累計シェアその期間で成約した事例の価格乖離率
1か月以内22.7%−2.32%
2か月38.1%−3.84%
3か月50.8%−5.48%
4か月60.9%−6.37%
6か月73.8%−8.24%
8か月82.1%−10.81%
10か月87.9%−13.72%

東京カンテイが首都圏の中古マンションについて、最初の売出事例と取引事例を突き合わせて集計した2025年の値です。価格乖離率は「(取引価格−売出価格)÷売出価格×100%」で、値下げ幅にあたります。負の値になる事例のみが対象で、売出開始から成約までが12か月以内の組み合わせに絞って分析されています。

首都圏の中古マンションは3か月以内に成約するのが約半数

表のとおり、売り出しから3か月以内に成約したのは全体の50.8%です。裏返すと、残りの半分は3か月を過ぎても売れ残っています。専任媒介の契約期間である3か月で売れなかったこと自体は、半数の売主が通る状態で、それだけでは会社や価格の問題の証拠としては弱いままです。

6か月までの累計は73.8%で、全体の約4分の3にあたります。

原文の表現

東京カンテイは73.8%を「売り出し開始から2回目の媒介契約の有効期間が終了するまで」の値として説明しています。専任媒介の有効期間は3か月が上限なので、その2回分にあたる6か月を指した言い方です。

東日本レインズの年報でも、首都圏の中古マンションがレインズに登録されてから成約するまでの日数は、2025年で平均82.5日(前年比−3.3%、2024年は85.3日)です。専任媒介のレインズ登録は締結の日の翌日から7日以内(会社の休業日を含まず、契約当日も初日不算入で数えません)が期限なので、この2つを単純に足すと、契約から数えて3か月弱という目安になります。あくまで期限と平均日数を足した概算で、統計として集計された値ではない点は押さえておきます。

平均の裏には、1か月で売れる物件と10か月かかる物件の両方があります。自分の物件がどちらに寄っているかを、この先の章で切り分けていきます。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日) 出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」(9ページ 登録から成約に至る日数) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10)

売れない期間が延びるほど値下げ幅が広がる

「3か月で売れないのは普通」と分かっても、待つだけで済む話とも違います。同じ統計で、売却期間が長いほど値下げ幅が広がっています。

1か月以内に成約した事例では、値下げ幅の平均は2.32%で、49.6%は値下げなし(乖離率0%)で成約しています。1〜3か月をまとめた平均は3.57%で、東京カンテイはこう説明しています。

売り出し開始からの3ヵ月間では最初の売出価格から概ね5%以内の値下げで成約に至っていたことになる。

一方、8か月まで長引いた事例の値下げ幅は10.81%、10か月では13.72%です。乖離率のシェアで見ても、10か月まで長期化した事例では「−20%超」が27.7%を占め、全体の4分の1を上回ります。売れない期間が延びると、売主は時間と価格の両方を失う形になります。原因の切り分けを早く始める理由は、ここにあります。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日)

2026年は成約が減り在庫が増える局面にある

売れない原因を自分や会社に求める前に、市場全体の向きも確かめます。東日本レインズの月例速報によると、2026年8月度の首都圏中古マンションは、成約件数が3,180件で前年同月比マイナス10.5%、5ヶ月連続の減少です。在庫件数は48,235件で前年同月比プラス8.2%、6ヶ月連続の増加で、増加率は拡大傾向にあります。成約㎡単価は81.60万円/㎡でマイナス3.8%と4ヶ月連続の下落、成約価格は5,129万円でマイナス2.8%です。

売り物件が増え、成約が減っている局面です。同じ価格・同じ広告でも、買主が比べられる物件の数は1年前より増えている計算になります。

つまり「専任にしたのに売れない」の一部は、市場側の要因です。会社の力量や価格の問題と切り分けて考えると、値下げや会社変更を急いで損をする形を避けられます。時点の情報なので、売り出し中は毎月の速報で更新します。

出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度」

内見の有無と申込みの有無で状態を分ける

原因を切り分ける入口は、内見と申込みの数です。売れない状態は、大きく2つに分かれます。

一つ目は、内見そのものが来ない状態です。買主が物件の情報に出会えていないか、情報を見て候補から外している可能性があります。原因は情報の露出(レインズ登録・ポータル掲載・写真)か、売り出し価格の設定にあります。

二つ目は、内見はあるのに申込みが来ない状態です。情報は届いていて、興味も持たれています。原因は部屋の状態や見せ方、または価格と内見の印象の差にあります。

専任媒介では2週間に1回以上の業務処理状況の報告が法律上の義務なので、問い合わせ数・内見数・内見後の反応は報告書に載っているはずです。載っていなければ、それ自体が会社側の確認項目になります。次の章から、原因を1つずつ見ていきます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第9項)

専任にしたのに売れない原因

売れない原因は、会社側・価格側・物件側の3つに分けられます。どれか1つとは限らず、重なることもあります。

原因区分
物件の情報がレインズとポータルサイトに出ていない会社側
写真と販売資料が買主に届いていない会社側
売り出し価格が成約事例から外れている価格側
内見で部屋の状態が足を引っ張っている物件側
他社からの紹介を止める囲い込みが起きている会社側

物件の情報がレインズとポータルサイトに出ていない

買主が物件を知る経路は、レインズ経由で他の不動産会社が紹介する道と、SUUMOなどのポータルサイトで直接見つける道の2つが中心です。どちらかが閉じていれば、内見は途絶えます。

専任媒介では、レインズへの登録が法律上の義務です。期間は宅地建物取引業法34条の2第5項の「国土交通省令で定める期間」で、施行規則15条の10が専任媒介契約は7日(専属専任媒介契約は5日)と定め、同条2項が休業日数を算入しない扱いを置いています。標準の専任媒介契約約款も、契約締結の日の翌日から契約書に記載する期間内に登録すると定めています(第4条1項4号)。登録すれば全国の不動産会社が買主に紹介できます。これが遅れている、または登録内容が不十分だと、他社経由の買主が途絶えます。

ポータルサイトへの掲載は会社の運用です。掲載していない、掲載しても写真が数枚しかない、掲載順位を上げる枠を使っていない、といった状態では、買主の目に触れる回数が減ります。専任媒介は成約すれば手数料が会社に入る契約なので、広告を絞る理由は本来薄いはずです。売主の側からは「1社に任せた物件は途中で他社へ移りにくいので、後回しにされているのでは」と映ることもあり、そう感じたときは次の章の確認手順で事実を当てます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第4条)

写真と販売資料が買主に届いていない

情報が出ていても、中身が弱ければ買主は候補から外します。ポータルサイトで最初に見られるのは写真です。暗い、傾いている、生活感が強い、枚数がわずか。こうした写真は、内見に進む前に落とされます。

販売資料も同じです。間取り図、設備の一覧、管理費と修繕積立金、管理規約の要点、周辺環境。買主側の不動産会社は、これらが揃った物件から順に顧客へ紹介します。資料が薄い物件は、紹介の優先順位が下がります。

専任媒介の会社には、契約の相手方を探索し、契約の成立に向けて積極的に努力する義務があります(専任媒介契約約款第4条1項1号)。国土交通省の運用指針は、専任媒介の依頼を受けた会社について、成約へ向けて積極的に努力するに当たって具体的に行う措置(指定流通機構への登録のほか、広告、他の宅地建物取引業者との連携等)を依頼者に明示することとしています。写真の撮り直しや資料の整備は、その措置の中で最も費用がかからない部分です。売主が「写真を撮り直してほしい」と頼めば、断る理由はほぼ見当たらないはずです。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第4条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①)

売り出し価格が成約事例から外れている

内見が来ないときに真っ先に疑われるのが、価格です。東京カンテイは2025年の分析で、築浅物件を中心に「過度な“チャレンジ価格”」を設定するケースが多かったと述べたうえで、こう書いています。

相場を度外視した価格設定が為された物件の中には相応な値下げを余儀なくされるケースも出始めている。

買主とその会社は、同じマンションや近隣の直近の成約事例を見ています。成約事例より高い価格は、内見の候補に入る前に外されやすくなります。

出発点は、査定額と売り出し価格の差です。査定額に「上乗せ」した価格で売り出した場合、その上乗せ分が成約事例からの乖離になっています。宅地建物取引業法34条の2第2項は、会社が売買すべき価額について意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければならないと定め、標準の専任媒介契約約款も、媒介価額の決定に際して価額に関する意見を述べるときは根拠を示して説明すると置いています(第4条2項1号)。「高いから下げましょう」だけでは根拠として足りない状態です。成約事例と自分の物件の差を、数字で出してもらいます。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第2項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第4条)

内見で部屋の状態が足を引っ張っている

内見はあるのに申込みが来ない場合、原因は部屋の中にあることが多いです。買主は写真で期待を持って来て、実物で判断します。

荷物が多くて広さが分からない、水回りの汚れや臭い、暗い照明、壁紙の傷、ベランダの状態。写真では見えなかった点が、内見で「候補から外す理由」になります。

買主は内見後に「なんとなく違った」と言う。会社の報告書には「部屋が思ったより狭く感じた」「水回りが気になった」と書かれている。写真の印象と実物の差が、候補から外す理由になっている。

管理の状態も見られます。共用部の掃除、掲示板の内容、修繕積立金の残高と長期修繕計画。これらは売主が変えられない部分ですが、事前に説明資料を用意しておけば、買主の不安を減らせます。内見後の反応は、会社の報告書に「引き合いの状況」として書かれるはずです。「もう少し安ければ」なのか「部屋が思ったより…」なのかで、次に打つ手が変わります。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①イ)

他社からの紹介を止める囲い込みが起きている

会社側の原因として、囲い込みがあります。国土交通省と4つの不動産流通機構が売主向けに出したチラシは、一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主双方の媒介を行うことを目的として、故意に物件の取引状況を隠し、売主の意向に反して物件の紹介を行わないような行為を指す、と定義しています。売主から見ると、内見が来ない理由が分からないまま時間が過ぎます。

会社の動機は報酬の仕組みにあります。自社で買主も見つければ、売主と買主の両方から報酬を受け取れます。専任媒介では他社が買主を連れてくると買主側の報酬は他社に入るため、自社で探したい力が働きます。

2025年1月からは、この行為に制度の歯止めがかかっています。レインズの登録事項に「当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況」が加わり(施行規則15条の11第2号)、取引状況の登録が義務になりました。登録される状況は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類で、運用指針は、専属専任媒介契約・専任媒介契約に基づき登録した物件について取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、法65条1項の指示処分の対象となるとしています。売主は登録証明書の二次元コードから売主専用画面に入り、自分の物件の状況を確認できます。見抜き方の詳細は別の記事で扱います。

出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の11第2号) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 9(1))

原因が会社側にあるかを見分ける確認手順

原因の切り分けは、会社側の義務が果たされているかを確かめるところから始めます。義務は法律と約款で決まっているので、売主が確認を求めるのは当然の行為です。4つの順で見ます。

  • 業務報告に行った措置と引き合いの状況が書かれているか
  • 売主専用画面のステータスが公開中になっているか
  • ポータルサイトの掲載と写真を自分で確かめる
  • 値下げの助言に成約事例の根拠が付いているか

業務報告に行った措置と引き合いの状況が書かれているか

専任媒介の会社は、2週間に1回以上、当該媒介契約に係る業務の処理状況を売主に報告する義務があります(宅地建物取引業法34条の2第9項)。国土交通省の運用指針は、報告すべき事項を「宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行った措置(指定流通機構への依頼物件の登録、広告等)、引き合いの状況等」としています。

つまり報告には、何をしたか(どの媒体に掲載したか、チラシを何部配ったか)と、どんな反応があったか(問い合わせ数、内見数、内見後の感想)が書かれているべきです。「頑張っています」「反応は今ひとつです」だけの報告は、義務の中身から外れています。

購入の申込みがあったときは、これとは別に遅滞なく報告する義務があり(同条8項)、運用指針は、依頼者の希望条件を満たさない申込みの場合等であっても、その都度報告する必要があるとしています。「申込みはゼロです」と言われたときに、条件が合わない申込みまで含めた話かを聞き返せる根拠がここにあります。

報告が電話だけで記録が残っていないなら、メールで文書にしてもらうよう頼みます。過去の報告をさかのぼって読み、措置と引き合いが書かれているかを確かめます。書かれていなければ、原因は会社側にある可能性が高く、次の対処の章に進みます。書かれていて内見が来ていないなら、価格側の確認に進みます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第8項・第9項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①イ・ロ)

売主専用画面のステータスが公開中になっているか

レインズに登録すると、会社は登録を証する書面(登録証明書)を遅滞なく売主に引き渡す義務があります(宅地建物取引業法34条の2第6項)。登録証明書には売主専用画面に入るための二次元コードが記載されており、これは令和7年(2025年)1月4日からのシステム変更によるものです。

画面に入ると、自分の物件の取引状況が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれかで表示されます。売り出し中で申込みも入っていないのに「公開中」以外になっていれば、他社からの紹介が止まっています。覚えのない「売主都合で一時紹介停止中」は、会社に理由を聞き、是正を求めます。事実と異なる登録は指示処分の対象なので、会社の側も是正に動きます。

なお運用指針は、会社が登録証明書を交付する際に、レインズのステータス管理機能を通じて最新の登録内容が確認できることを依頼者に分かりやすく説明することが望ましいとしています。説明のないまま証明書を受け取ったときは、その場で使い方を聞けます。登録証明書そのものが届いていない場合は、登録が遅れているか、されていない可能性があります。契約から7日を過ぎていれば、登録の有無と証明書の交付を会社に確かめます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第6項) 出典: 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」(令和6年12月24日) 出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 9(1))

ポータルサイトの掲載と写真を自分で確かめる

会社が「ポータルサイトに載せています」と言っても、売主自身が確認する方が早く済みます。SUUMO、LIFULL HOME’S、アットホームなどで、マンション名と階数、または駅名と価格帯で検索します。

確認する点は3つです。掲載されているか。写真は何枚あり、明るく広く見えているか。紹介文に物件の強み(角部屋、リフォーム歴、眺望など)が書かれているか。同じマンションの他の部屋が売りに出ていれば、その掲載と見比べます。

掲載がない、または写真が数枚だけなら、会社に掲載と撮り直しを頼みます。運用指針は、専任媒介の依頼を受けた会社に、成約へ向けて具体的に行う措置を依頼者に明示することを求めているので、「どの媒体に、いつから、写真は何枚で」を文書で示してもらう根拠になります。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①)

値下げの助言に成約事例の根拠が付いているか

会社から「価格を下げましょう」と言われたとき、根拠が付いているかを確かめます。標準の専任媒介契約約款第5条は、媒介価額が地価や物価の変動その他事情の変更によって不適当と認められるに至ったときは、会社は売主に対して媒介価額の変更について根拠を示して助言する、と定めています。査定額そのものについても、宅地建物取引業法34条の2第2項が根拠の明示を会社に義務づけています。

求める根拠は、直近の成約事例です。同じマンションか近隣で、築年・階・面積・方角の近い部屋が、いつ、いくらで成約したか。それと比べて自分の物件の売り出し価格がどれだけ高いか。この差が示されれば、値下げの幅を判断できます。

「反応が薄いので、まず200万円下げましょう」と言われた。成約事例を求めると、同じマンションの下階が3か月前に売り出し価格より150万円安く成約していた。差は分かったが、その部屋の写真は12枚、自分の部屋は4枚だった。

根拠が付いていない値下げの提案なら、まず上の3つ(報告・ステータス・掲載)を確かめます。情報の露出に問題がないと確認できて初めて、価格の問題に絞れます。順番を逆にすると、会社側の問題を値下げで埋めることになります。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第5条) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第2項)

会社側に原因があるときの対処

確認の結果、報告が薄い、ステータスに問題がある、掲載や写真が不十分、といった会社側の原因が見えたときの対処です。4つあります。

  • 広告と報告の具体的な措置を文書で追加してもらう
  • 担当者の交代を会社に頼む
  • 3か月の満了で更新しない選択肢を使う
  • 登録や報告の義務違反があるなら解除の条項がある

広告と報告の具体的な措置を文書で追加してもらう

最初の手は、会社に具体的な措置を文書で約束してもらうことです。運用指針は、専任媒介の依頼を受けた会社に、成約へ向けて具体的に行う措置(指定流通機構への登録のほか、広告、他の宅地建物取引業者との連携等)を依頼者に明示することを求めています。

契約書の備考欄か別紙に、掲載するポータルサイト、掲載開始日、写真の撮り直し、チラシの範囲と回数、報告の頻度と方法(メール)を書いてもらいます。運用指針は、標準媒介契約約款として定められた契約書に「相手方を探索するために行う具体的措置(指定流通機構への情報登録、広告等)に関する条項の追加」や「業務処理状況の依頼者への報告、連絡等に関する条項の追加」を行っても、標準媒介契約約款に基づく契約として扱う範囲に入るとしています。追加した条項はアンダーライン等で明示する決まりです。

口頭の「やります」では、2週間後に比べる材料が残らないまま終わります。文書に残すことで、次の報告で「約束した措置が行われたか」を確かめられます。会社にとっても、その物件を優先して動く理由になります。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 2(2)②ロ・6(3)①) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 備考・専任媒介契約約款第4条)

担当者の交代を会社に頼む

措置を約束しても動きが変わらない、報告が改善しない場合は、担当者の交代を会社に頼みます。契約は会社と結んでいるので、担当者を替えても契約はそのまま続きます。

頼み方は、感情ではなく事実で伝えます。「〇月〇日の報告に措置と引き合いの記載がなかった」「ポータルサイトに掲載がなかった」「登録証明書が未着」など、確認手順で得た事実を並べます。会社の店長や責任者に伝えると、動きが変わることが多いです。

担当者が替わっても会社の方針が変わらない場合は、次のh3の選択肢に進みます。

3か月の満了で更新しない選択肢を使う

専任媒介の契約期間は法律で3か月が上限です(宅地建物取引業法34条の2第3項)。これより長い期間を定めたときは3月とされます。更新は依頼者の申出によるもので(同条4項)、これらに反する特約は無効です(同条10項)。標準の専任媒介契約約款も、更新をしようとするときは有効期間の満了に際して売主から会社に文書等で申し出るものとしています(第15条2項)。運用指針は、更新の申出は有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定するのは許されない扱いとし、依頼者の申出があっても会社が更新に同意しないときは契約は更新されない扱いだとしています。

つまり、会社側に原因があると判断したときの最も摩擦の小さい出口は、3か月の満了を待って更新しないことです。契約書に「自動更新」と書いてあっても効力を持たない扱いで、違約金も費用償還も発生せずに終えられます。満了後は、別の会社と専任を結ぶ、一般媒介に切り替える、のどちらも選べます。

満了の前に「更新しない」と伝えるかどうか、伝えるならどう言うか、満了後の進め方は別の記事で扱います。ここでは、更新は売主の申出がなければ起きない、という法律の仕組みを押さえておきます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第3項・第4項・第10項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第7条・第15条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑧)

登録や報告の義務違反があるなら解除の条項がある

3か月を待たずに契約を終えたい場合、標準の専任媒介契約約款には解除の条項が2つ置かれています。

一つ目は第16条です。売主または会社が契約に定める義務の履行に関してその本旨に従った履行をしない場合には、相手方は相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは契約を解除できます。レインズに登録しない、報告をしない、といった義務違反がこれにあたります。

二つ目は第17条です。会社が業務について信義を旨とし誠実に遂行する義務に違反したとき、契約に係る重要な事項について故意もしくは重過失により事実を告げず、または不実のことを告げる行為をしたとき、宅地建物取引業に関して不正または著しく不当な行為をしたときは、売主は契約を解除できます。第16条と違って催告の手続を条件に置かない作りです。

一方、会社の責めに帰すことができない事由によって契約が解除されたときは、会社は履行のために要した費用の償還を請求できます(第14条1項)。その額は約定報酬額を超えられません(同条2項)。途中解約の手続きと、違約金や費用償還の扱いは別の記事で扱います。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第14条・第16条・第17条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑦・⑨)

価格と物件側に原因があるときの対処

会社側の義務が果たされていて、それでも内見が来ない、または内見後に申込みが来ない場合は、価格と物件側の対処に移ります。3つあります。

  • 値下げは成約事例の根拠と幅を決めてから行う
  • 写真と部屋の見せ方を変えて内見の反応を上げる
  • 買取や売却保証を出口として比べる

値下げは成約事例の根拠と幅を決めてから行う

値下げは、根拠と幅を決めてから行います。根拠は、会社に出してもらった直近の成約事例です。約款第5条により、会社が媒介価額の変更を助言するときは根拠を示すことになっているので、成約事例の提示を求めるのは契約の中の話です。自分の物件との差が分かれば、下げる幅の目安が立ちます。

幅の目安は統計にあります。東京カンテイの2025年の分析では、売り出しから3か月以内に成約した事例の値下げ幅は平均3.57%で、この3か月間は概ね5%以内の値下げで成約に至っていたとされています。最初の値下げをこの範囲で行い、反応を見るのが一つの目安です。

現場では、一度に大きく下げると買主側の会社に次の値下げを待たれる、小刻みに何度も下げるとポータルサイトの価格変更履歴で売れ残りの印象が付く、といった見方も語られます。この点を裏づける統計は見当たらないため、幅と回数の決め方は、成約事例との差という数字の側から組み立てます。値下げの時期と幅の決め方は、別の記事で詳しく扱っています。値下げの前に、次のh3の「見せ方」を先に試す順番も検討します。

不動産売却の値下げタイミングはいつ?幅と下げ方の目安 不動産売却の値下げタイミングはいつ?幅と下げ方の目安 マンションの売り出し価格の決め方|検索の価格帯から逆算する マンションの売り出し価格の決め方|検索の価格帯から逆算する

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第5条)

写真と部屋の見せ方を変えて内見の反応を上げる

内見はあるのに申込みが来ない場合、値下げの前に見せ方を変える余地があります。費用が小さく、取りかかりやすい順に並べます。

売主側でできるのは次の5つです。

  • 荷物を減らして広さを見せる
  • 水回りを清掃する
  • カーテンを開けて昼の時間帯に内見を入れる
  • 照明を明るいものに替える
  • 玄関とベランダを片づける

会社側には、写真の撮り直しと紹介文の書き直しを頼みます。写真は片づけた後、昼の自然光で撮り直します。内見の曜日と時間帯を広げる(平日夜や日曜午前も可にする)ことで、内見数が増える場合もあります。

内見後の反応が「もう少し安ければ」に集中しているなら価格側、「部屋が思ったより」に集中しているなら見せ方側です。報告書の引き合いの状況を、この観点で読み直します。

買取や売却保証を出口として比べる

期限までに売る必要がある場合は、仲介で売り続ける以外の出口も比べます。一つは不動産会社による買取です。買主を探す期間の代わりに、価格の面で折り合いをつける形になりやすく、その分だけ引き渡しの期日が読めます。

もう一つは売却保証です。一定期間内に仲介で売れなければ会社が買い取る仕組みで、専任媒介を条件にしている会社があります。東急リバブルの「リバブル売却保証システム」は、適用基準の「媒介契約」の欄を「専属専任・専任」とし、保証額を「当社査定価格90%以下かつ1億円以下」(首都圏エリアのみ1億5,000万円以下)、販売期間を「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」としています。適用の可否と保証額は同社の査定によると注記されています。

保証があると安心ですが、出口の価格が査定の90%以下と決まる形でもあります。運用指針は、一定の期間中に売却ができなかったときに会社が媒介価額を下回る価額で買い取る旨の特約について、売主が会社に安く売ることを義務付けず、売主の希望があれば会社が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えない、としています。裏返せば、売主の側に「その価格で売る義務」が生まれる書き方になっていないかが見るところです。使うなら、保証額を先に確かめます。

売り急ぐ事情がなければ、いったん売り出しを止めて市況を待つ判断もあります。ただし、2026年8月度の首都圏は在庫が6ヶ月連続で増えている局面で、待つほど有利になるとは限らず、売却期間が延びるほど値下げ幅が広がる統計もあります。期限と価格のどちらを優先するかを決めてから、出口を選びます。

出典: 東急リバブル「リバブル売却保証システム」 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑩) 出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度」

まとめ:売れない原因は、期間の統計と会社の義務の履行状況で切り分ける

いちばん重いのは、「3か月で売れない」がそれだけでは異常の証拠にならないという点です。首都圏の中古マンションで3か月以内に成約するのは50.8%、6か月までで73.8%です(2025年・東京カンテイ)。一方で、値下げ幅は8か月まで長引いた事例で10.81%、10か月で13.72%まで広がります。待てば売れるかどうかを感覚で決める前に、自分が統計のどのあたりにいるかを置いてから、原因を会社側・価格側・物件側に分けます。

次の一歩は、これまでの業務報告を全部読み返すことです。専任媒介の会社には2週間に1回以上の報告義務があり(宅地建物取引業法34条の2第9項)、報告すべき事項は運用指針で「探索するために行った措置」と「引き合いの状況等」とされています。措置と引き合いが書かれているなら情報は出ていて、原因は価格か見せ方の側に寄ります。書かれていないなら、まず会社側の義務の履行から確かめます。ここを飛ばして値下げに進むと、会社側の問題を自分の売却代金で埋める形になります。

そのうえで、登録証明書の二次元コードから売主専用画面に入り、ステータスが「公開中」かを確かめます。値下げの提案を受けたら、成約事例という根拠を求めます。3か月の満了で更新しないという選択肢は、法律が売主に残しているものです。住み替えのトビラでは、専任媒介で売れないときの期間の目安と原因の切り分け方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。